詩『言葉の街から』 ③


(2021年1月2日~2022年12月31日)

 目次


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 日付
1314-1316   対話シリーズ 2021年01月02日
1317-1320   対話シリーズ 2021年01月03日
1321-1323   対話シリーズ 2021年01月04日
1324-1327   対話シリーズ 2021年01月05日
1328-1331   対話シリーズ 2021年01月06日
1332-1335   対話シリーズ 2021年01月07日
1336-1340   対話シリーズ 2021年01月08日
1341-1343   対話シリーズ 2021年01月09日
1344-1347   対話シリーズ 2021年01月10日
1348-1350   対話シリーズ 2021年01月11日
1351-1353   対話シリーズ 2021年01月12日
1354-1356   対話シリーズ 2021年01月13日
1357-1360   対話シリーズ 2021年01月14日
1361-1364   対話シリーズ 2021年01月15日
1365-1368   対話シリーズ 2021年01月16日
1369-1372   対話シリーズ 2021年01月17日
1373-1376   対話シリーズ 2021年01月18日
1377-1380   対話シリーズ 2021年01月19日
1381-1383   対話シリーズ 2021年01月20日
             対話シリーズ 特別篇 2021年01月20日
1384-1386   対話シリーズ 2021年01月21日
1387-1389   対話シリーズ 2021年01月22日
1390-1393   対話シリーズ 2021年01月23日
1394-1396   対話シリーズ 2021年01月24日
1397-1400   対話シリーズ 2021年01月25日
1401-1404   対話シリーズ 2021年01月26日
1405-1408   対話シリーズ 2021年01月27日
1409-1411   対話シリーズ 2021年01月28日
1412-1414   対話シリーズ 2021年01月29日
1415-1418   対話シリーズ 2021年01月30日
1419-1422   対話シリーズ 2021年01月31日
1423-1426   対話シリーズ 2021年02月01日
1427-1430   対話シリーズ 2015.2.2からほぼ毎日詩 2021年02月02日
1431-1434   対話シリーズ 2021年02月03日
1435-1437   対話シリーズ 2021年02月04日
1438-1440   対話シリーズ 2021年02月05日
1441-1444   対話シリーズ 2021年02月06日
1445-1448   対話シリーズ 2021年02月07日
1449-1452   対話シリーズ 2021年02月08日
1453-1455   対話シリーズ 2021年02月09日
1456-1459   対話シリーズ 2021年02月10日
1460-1463   対話シリーズ 2021年02月11日
1464-1467   対話シリーズ 2021年02月12日
1468-1471   対話シリーズ 2021年02月13日
1472-1475   対話シリーズ 2021年02月14日
1476-1478   対話シリーズ 2021年02月15日
1479-1482   対話シリーズ 2021年02月16日
1483-1486   対話シリーズ 2021年02月17日
1487-1490   対話シリーズ 2021年02月18日
1491-1494   対話シリーズ 2021年02月19日
1495-1497   対話シリーズ 2021年02月20日
1498-1501   対話シリーズ 2021年02月21日
1502-1505   対話シリーズ 2021年02月22日
1506-1509   対話シリーズ 2021年02月23日
1510-1513   対話シリーズ 2021年02月24日
1514-1517   対話シリーズ 2021年02月25日
1518-1521   対話シリーズ 2021年02月26日
1522-1525   対話シリーズ 2021年02月27日
1526-1529   対話シリーズ 2021年02月28日
1530-1533   対話シリーズ 2021年03月01日
1534-1536   対話シリーズ 2021年03月02日
1537-1539   対話シリーズ 2021年03月03日
1540-1542   対話シリーズ 2021年03月04日
1543-1546   対話シリーズ 2021年03月05日
1547-1550   対話シリーズ 2021年03月06日
1551-1554   対話シリーズ 2021年03月07日
1555-1557   対話シリーズ 2021年03月08日
1558-1561   対話シリーズ 2021年03月09日
1562-1565   対話シリーズ 2021年03月10日
1566-1569   対話シリーズ 2021年03月11日
1570-1573   対話シリーズ 2021年03月12日
1574-1577   対話シリーズ 2021年03月13日
1578-1581   対話シリーズ 2021年03月14日
1582-1585   対話シリーズ 2021年03月15日
1586-1589   対話シリーズ 2021年03月16日
1590-1593   対話シリーズ 2021年03月17日
1594-1596   対話シリーズ 2021年03月18日
1597-1600   対話シリーズ 2021年03月19日
1601-1603   対話シリーズ 2021年03月20日
1604-1607   対話シリーズ 2021年03月21日
1608-1611   対話シリーズ 2021年03月22日
1612-1614   対話シリーズ 2021年03月23日
1615-1618   対話シリーズ 2021年03月24日
1619-1622   対話シリーズ 2021年03月25日
1623-1625   対話シリーズ 2021年03月26日
1626-1629   対話シリーズ 2021年03月27日
1630-1634   対話シリーズ 2021年03月28日
1635-1638   対話シリーズ 2021年03月29日
1639-1642   対話シリーズ 2021年03月30日
1643-1646   対話シリーズ 2021年03月31日
1647-1649   対話シリーズ 2021年04月01日
1650-1652   対話シリーズ 2021年04月02日
1653-1656   対話シリーズ 2021年04月03日
1657-1660   対話シリーズ 2021年04月04日
1661-1664   対話シリーズ 2021年04月05日
1665-1670   対話シリーズ 2021年04月06日
1671-1674   対話シリーズ 2021年04月07日
1675-1678   対話シリーズ 2021年04月08日
1679-1682   対話シリーズ 2021年04月09日
1683-1685   対話シリーズ 2021年04月10日
1686-1690   対話シリーズ 2021年04月11日
1691-1694   対話シリーズ 2021年04月12日
1695-1697   対話シリーズ 2021年04月13日
1698-1700   対話シリーズ 2021年04月14日
1701-1703   対話シリーズ 2021年04月15日
1704-1707   対話シリーズ 2021年04月16日
1708-1711   対話シリーズ 2021年04月17日
1712-1715   対話シリーズ 2021年04月18日
1716-1719   対話シリーズ 2021年04月19日
1720-1723   対話シリーズ 2021年04月20日
1724-1726   対話シリーズ 2021年04月21日
1727-1730   対話シリーズ 2021年04月22日
1731-1734   対話シリーズ 2021年04月23日
1735-1738   対話シリーズ 2021年04月24日
1739-1742   対話シリーズ 2021年04月25日
1743-1745   対話シリーズ 2021年04月26日
1746-1748   対話シリーズ 2021年04月27日
1749-1752   対話シリーズ 2021年04月28日
1753-1756   対話シリーズ 2021年04月29日
1757-1759   対話シリーズ 2021年04月30日
1760-1763   対話シリーズ 2021年05月01日
1764-1767   対話シリーズ 2021年05月02日
1768-1771   対話シリーズ 2021年05月03日
1772-1775   対話シリーズ 2021年05月04日
1776-1779   対話シリーズ 2021年05月05日
1780-1783   対話シリーズ 2021年05月06日
1784-1787   対話シリーズ 2021年05月07日
1788-1791   対話シリーズ 2021年05月08日
1792-1795   対話シリーズ 2021年05月09日
1796-1799   対話シリーズ 2021年05月10日
1800-1803   対話シリーズ 2021年05月11日
1804-1807   対話シリーズ 2021年05月12日
1808-1811   対話シリーズ 2021年05月13日
1812-1814   対話シリーズ 2021年05月14日
1815-1818   対話シリーズ 2021年05月15日
1819-1822   対話シリーズ 2021年05月16日
1823-1826   対話シリーズ 2021年05月17日
1827-1830   対話シリーズ 2021年05月18日
1831-1834   対話シリーズ 2021年05月19日
1835-1838   対話シリーズ 2021年05月20日
1839-1842   対話シリーズ 2021年05月21日
1843-1846   対話シリーズ 2021年05月22日
1847-1851   対話シリーズ 2021年05月23日
1852-1856   対話シリーズ 2021年05月24日
1857-1860   対話シリーズ 2021年05月25日
1861-1865   対話シリーズ 2021年05月26日
1866-1869   対話シリーズ 2021年05月27日
1870-1873   対話シリーズ 2021年05月28日
1874-1876   対話シリーズ 2021年05月29日
1877-1880   対話シリーズ 2021年05月30日
1881-1885   対話シリーズ 2021年05月31日
1886-1889   対話シリーズ 2021年06月01日
1890-1893   対話シリーズ 2021年06月02日
1894-1897   対話シリーズ 2021年06月03日
1898-1901   対話シリーズ 2021年06月04日
1902-1905   対話シリーズ 2021年06月05日
1906-1909   対話シリーズ 2021年06月06日
1910-1913   対話シリーズ 2021年06月07日
1914-1918   対話シリーズ 2021年06月08日
1919-1923   対話シリーズ 2021年06月09日
1924-1927   対話シリーズ 2021年06月10日
1928-1930   対話シリーズ 2021年06月11日
1931-1934   対話シリーズ 2021年06月12日
1935-1938   対話シリーズ 2021年06月13日
1939-1942   対話シリーズ 2021年06月14日
1943-1946   対話シリーズ 2021年06月15日
1947-1950   対話シリーズ 2021年06月16日
1951-1954   対話シリーズ 2021年06月17日
1955-1958   対話シリーズ 2021年06月18日
1959-1962   対話シリーズ 2021年06月19日
1963-1966   対話シリーズ 2021年06月20日
1967-1970   対話シリーズ 2021年06月21日
1971-1974   対話シリーズ 2021年06月22日
1975-1978   対話シリーズ 2021年06月23日
1979-1982   対話シリーズ 2021年06月24日
1983-1986   対話シリーズ 2021年06月25日
1987-1990   対話シリーズ 2021年06月26日
1991-1994   対話シリーズ 2021年06月27日
1995-2000   対話シリーズ 2021年06月28日
2001-2004   対話シリーズ 2021年06月29日
2005-2009   対話シリーズ 2021年06月30日
2010-2013   対話シリーズ 2021年07月01日
2014-2017   対話シリーズ 2021年07月02日
2018-2020   対話シリーズ 2021年07月03日
2021-2024   対話シリーズ 2021年07月04日
2025-2028   対話シリーズ 2021年07月05日
2029-2032   対話シリーズ 2021年07月06日
2033-2036   対話シリーズ 2021年07月07日
2037-2040   対話シリーズ 2021年07月08日
2041-2044   対話シリーズ 2021年07月09日
2045-2048   対話シリーズ 2021年07月10日
2049-2052   対話シリーズ 2021年07月11日
2053-2056   対話シリーズ 2021年07月12日
2057-2060   対話シリーズ 2021年07月13日
2061-2064   対話シリーズ 2021年07月14日
2065-2068   対話シリーズ 2021年07月15日
2069-2072   対話シリーズ 2021年07月16日
2073-2076   対話シリーズ 2021年07月17日
2077-2080   対話シリーズ 2021年07月18日
2081-2084   対話シリーズ 2021年07月19日
2085-2088   対話シリーズ 2021年07月20日
2089-2092   対話シリーズ 2021年07月21日
2093-2096   対話シリーズ 2021年07月22日
2097-2100   対話シリーズ 2021年07月23日
2101-2104   対話シリーズ 2021年07月24日
2105-2108   対話シリーズ 2021年07月25日
2109-2112   対話シリーズ 2021年07月26日
2113-2117   対話シリーズ 2021年07月27日
2118-2121   対話シリーズ 2021年07月28日
2122-2125   対話シリーズ 2021年07月29日
2126-2129   対話シリーズ 2021年07月30日
2130-2133   対話シリーズ 2021年07月31日
2134-2137   対話シリーズ 2021年08月01日
2138-2141   対話シリーズ 2021年08月02日
2142-2146   対話シリーズ 2021年08月03日
2147-2150   対話シリーズ 2021年08月04日
2151-2154   対話シリーズ 2021年08月05日
2155-2158   対話シリーズ 2021年08月06日
2159-2162   対話シリーズ 2021年08月07日
2163-2166   対話シリーズ 2021年08月08日
2167-2170   対話シリーズ 2021年08月09日
2171-2174   対話シリーズ 2021年08月10日
2175-2178   対話シリーズ 2021年08月11日
2179-2182   対話シリーズ 2021年08月12日
2183-2186   対話シリーズ 2021年08月13日
2187-2190   対話シリーズ 2021年08月14日
2191-2194   対話シリーズ 2021年08月15日
2195-2198   対話シリーズ 2021年08月16日
2199-2202   対話シリーズ 2021年08月17日
2203-2206   対話シリーズ 2021年08月18日
2207-2210   対話シリーズ 2021年08月19日
2211-2214   対話シリーズ 2021年08月20日
2215-2218   対話シリーズ 2021年08月21日
2219-2222   対話シリーズ 2021年08月22日
2223-2226   対話シリーズ 2021年08月23日
2227-2230   対話シリーズ 2021年08月24日
2231-2235   対話シリーズ 2021年08月25日
2236-2238   対話シリーズ 2021年08月26日
2239-2242   対話シリーズ 2021年08月27日
2243-2246   対話シリーズ 2021年08月28日
2247-2250   対話シリーズ 2021年08月29日
2251-2254   対話シリーズ 2021年08月30日
2255-2258   対話シリーズ 2021年08月31日
2259-2262   対話シリーズ 2021年09月01日
2263-2266   対話シリーズ 2021年09月02日
2267-2270   対話シリーズ 2021年09月03日
2271-2274   対話シリーズ 2021年09月04日
2275-2278   対話シリーズ 2021年09月05日
2279-2282   対話シリーズ 2021年09月06日
2283-2286   対話シリーズ 2021年09月07日
2287-2290   対話シリーズ 2021年09月08日
2291-2294   対話シリーズ 2021年09月09日
2295-2298   対話シリーズ 2021年09月10日
2299-2302   対話シリーズ 2021年09月11日
2303-2306   対話シリーズ 2021年09月12日
2307-2310   対話シリーズ 2021年09月13日
2311-2314   対話シリーズ 2021年09月14日
2315-2318   対話シリーズ 2021年09月15日
2319-2322   対話シリーズ 2021年09月16日
2323-2326   対話シリーズ 2021年09月17日
2327-2330   対話シリーズ 2021年09月18日
2331-2334   対話シリーズ 2021年09月19日
2335-2338   対話シリーズ 2021年09月20日
2339-2342   対話シリーズ 2021年09月21日
2343-2346   対話シリーズ 2021年09月22日
2347-2350   対話シリーズ 2021年09月23日
2351-2354   対話シリーズ 2021年09月24日
2355-2357   対話シリーズ 2021年09月25日
2358-2361   対話シリーズ 2021年09月26日
2362-2365   対話シリーズ 2021年09月27日
2366-2369   対話シリーズ 2021年09月28日
2370-2373   対話シリーズ 2021年09月29日
2374-2377   対話シリーズ 2021年09月30日
2378-2381   対話シリーズ 2021年10月01日
2382-2385   対話シリーズ 2021年10月02日
2386-2389   対話シリーズ 2021年10月03日
2390-2393   対話シリーズ 2021年10月04日
2394-2397   対話シリーズ 2021年10月05日
2398-2401   対話シリーズ 2021年10月06日
2402-2405   対話シリーズ 2021年10月07日
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4220-4223   対話シリーズ 2022年12月30日
4224-4228   対話シリーズ 2022年12月31日







詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1314
大ざっぱでいい時もあれば
あっ そこは
と微妙なそれはびみょうな時があるらん


1315
会社を背負ったセールスも
人と人との
仲にもびみょうな時があり


1316
だからさ大ざっぱの時は
ほんとうに
おおざっぱをらんらんららんと歩くのさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1317
一日のほとんどが気づかれない
心臓の鼓動みたい
時間の川に足は浸かっている


1318
瞬間 言葉の足が
風になびき
小さく点ることがある


1319
心働かなければ
人として
生きてはいけない?


1320
人間界の峠を下ってゆくと
寡黙な自然
心は自然に揺れている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1321
「何を言っているのか、さっぱりわからん。」
言葉の
三浦海岸の方からひと波来る


1322
打ち上げた岸辺には瑠璃色の
花火や
仕掛けの残骸が落ちているのかもしれない


1323
別にこちらの岸辺から
くり出すこともない
おお久しぶりにいい天気だな

 註.
万葉集には天皇など貴人を讃える歌があったと思う。信長や秀吉の時代には側近も芸術も讃えることしかできなかったろう。現在では、公的な人も文学・思想において批評の対象となり得る。
 





詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1324
今日も言葉の街に
出かけて行く
通りはひっそりとしている


1325
心の傾きに微かに
にぎやかな
音も匂い立つ言葉通り


1326
差し掛かる言葉の木
の小枝を
折って見る ああいい匂い


1327
言葉の通りには
にんげんの
あらゆるものが滴と降ってくる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1328
言葉の街にぼくの知らない
言葉知らない
物語 潜んでいるような



1329
気配はある ぼくの言葉通りから見た
街外れには
知らない言葉たちがもやもや通っていく


1330
ここは言葉だけでできている
街だから
どんなものでも言葉の姿で通っていく


1331
言葉が感じる 言葉が押し合いへし合い
ぶつかり合い
殴り合いも愛もあるさ言葉の街




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1332
言葉の街は自分で作るのさ
小道を引き
見慣れた言葉の花も植える


1333
時間も人も天気も
自由にできる
だから問題は選択の内にある


1334
いくつもの言葉の街が
点っている
のがここから見える


1335
言葉の道を作る茶店も作る
峠を越えると
遥かに言葉の海が光っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1336
どんなことでも人間的
言葉たちは
気ままに振るまっているか言葉の街


1337
と どこからか 何者かが
吐かれた言葉を
計量・計測・対照している感じがある


1338
そんなこと知ったことか
とツッパっても
ドスドスドスドスコーイの風が吹く


1339
言葉が放つ空気と
寄せ来る
大気とが押し合いへし合いの物語


1340
だから言葉の街でも
気ままそうでも
化粧したり身構えたりしてるんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1341
言葉の街の太古の岸辺から
小石をひとつ
きみは拾い上げた小石ひんやり


1342
手から出ていくものと
入ってくるもの
がイメージの岸辺でぶつかり合う


1343
言葉の小石から見知らぬイメージ
の村に入る
歌が粗末な概念の舟に乗って力強く揺れている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1344
あっふおっふお うっふおっふお
歌は村から
時間の川を上り巡り下り踏みしめる


1345
歌の呼吸は小さな明かり
無数が
村の内を照らしている


1346
取り立てて批評は要らない
踏みならす
手足が内側ではかっているさ


1347
遠い 世界の外のことは知らない
(拙い?)
概念の舟に乗り揺り揺られている それが全てさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1348
その服感じいいね
と同じイメージ道
を歩いていた 太古の村よ


1349
もう忘れられてしまったもの
に出会いに行く
頭脳の超高速計算ではダメだな


1350
〈スイーツ!〉 縮退した
霊魂の香り
たぶん遙かなイメージ道をたどってきたんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1351
獣の道と人の道
別れ始めて
もう何十万年になるか


1352
現在の食肉と愛玩の
アンビバレント
たぶん遙かな別れの眼差しにもあったか


1353
人と獣、人と人との
アンビバレント
たぶん人は育ちが悪い自然の使徒なのか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1354
例えば歯が痛む
昨日までの
窓の内外が輪郭くっきりしている


1355
こんなささいなことに・・・
気づかないけど それでいいさ
薄氷の上を気楽に歌い踊る日々


1356
白骨の御文深く
沈めて
日々忙しく歩いていくんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



1357
伸びに伸びて気になる鳴る
道に足踏み
坂道下るように床屋に向かった


1358
行ってみればくよくよ悩む
ほどはなくて
さあどうぞとまたもてなされる


1359
さっぱりした頭で風を切る
また少しばかり
改まった一日の中をゆく


1360
通りの植え込みのみどりも
昨日より
いい感じで立ち上がって来る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1361
そんな抽象の果てまで
旅するなんて
難しいな でも人はイス力ンダルを目指す


1362
言葉のいくつもの峠
を越えて
超言葉・超人(ちょうひと)へ旅をする


1363
遙かな言葉以前の海
この言葉以後の遙かな海
超言葉の海面が光っている


1364
イメージの小舟に乗って
なめらかに
言葉の両端まで行き来したいな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1365
純水の中を潜行する
直前の
先行者はいない 水が冷たいな


1366
言葉も何も溶けてしまって
純水の中
底流している気配がある


1367
微かに匂う味する
響きがある
イメージ野が鼓動している


1368
遠い山間から立ち上る
煙のように
人の匂いが漂っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1369
雲を眺めていると
何かに
見えてくるミエテクル


1370
身近な人が死ぬ前に
枕元に立ち
消えていくと聞いたことがある


1371
どうしたことだろう
今の科学
にはいくつもの科学が重層している


1372
〈雲〉がただの雲に感じられない
遥か太古には
まぼろしの命の道が鼓動していたものか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1373
山を見ていると対称の
アンバランスに
吸い込まれそうになるな 聳(そび)える山よ


1374
謙虚とも見間違う
丁寧な儀式
華々しい神話が始まる


1375
自然と人のバランスを回復しようとする
秘密は
神話の中に横たわっている


1376
人力を得た今は見下ろす
自然界
コロナの逆襲にわれらうろたえる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1377
誰もが自分の知らないところで
この世界への誕生!
が決定され歩み始める


1378
気づいた時は遅いんだよ
汽車に乗っていて
乗車気分のほかは 他はない?


1379
(おいおいおい)追いすがる
疑問符を
世界はひんやりと拒絶する


1380
そんな場所からきみの
世界との
物語がはじまりはじまり




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1381
この宇宙内でしか語れない
宇宙の外
あるかないかどんなかな?


1382
カナカナ カナカナとヒグラシが鳴く
言葉では
語れないことがある (この流れる感じ)


1383
アルアル それでもあるるかん
なくなく言葉で
語ってしまうことがある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ 特別篇


カードをめくったら
真理の国!
は血塗られて疾うに終わってしまった


イカレているクソッタレの
トランプ病!
それでも人間だものと青汁を飲む


本当は (深く飲み込んで)
ほんとうは
人も世界も奥深く静かに進行している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1384
日々の重力下に誰もが
ちらりと
感じるまぼろしのような過(よぎ)り しっ


1385
〈詩〉は大道無門
夢の流れに
みどりの芽が潜んでいる


1386
〈詩〉はしわしわになっても
日差しに
みどり輝き流れる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1387
〈詩〉はカジュアルな服の
裏地さ
カッコ付けてもいいけど目立たないな


1388
〈詩〉は慌ただしい日々を
旅する
心の裏地さ 誰もがふと立ち止まる


1389
〈詩〉は感じる ひそかな
世界の出入り口
深みを流れるものに会おうぞ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1390
わからなさの深みではなく
表層で
世界は揺れぶつかり反発し合っている



1391
読点、読点、とおてんとおてん
重ねても
世界の靄(もや)は二手に分かれていかない


1392
句点が打てない所では
(ふうん どうかな)
と立ち止まりまた進んでいく


1393
例えばUFOと宇宙人に会ったと言う
木村さん
ぼくは(ふうん)と読み過ぎていくさ

註.『奇跡のリンゴ』の木村さん




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1394
世界に追い込まれた
人人は
逆襲のシャアと立つかひっそりと心の足抱え座っている


1395
煙は上がらない世界の
深みでは
無数の物語が日々泡立っている


1396
人と人との摩擦や明日の生活
どうしよう
うつむく泡音が微かに聞こえるような




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1397
心にも言葉にも軌跡がある
A→Bには
瞬時に押し寄せた無数がある


1398
ひとつの選択には
ひっそりと
別れの心や言葉たちが佇んでいる


1399
それは仕方のないこと
とうつむいて
静かに背を向けていく人がいる


1400
二人の出会いには
気づかれない
誰かの悲しみのしずくが滲(し)みている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1401
言葉がA→Bに向かう
道には
無数の走法があり


1402
瞬時で見えないようで
確かに
通って行ったリズムや匂いの余韻がある


1403
自分でもわからないほどの
時代と
シームレスのA→B


1404
心臓の拍動に
気を向けるように
シームレスの丘陵に立つ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1405
「だからあ」と言う時には
言葉は
階下に苛立ち居る顔をしている


1406
「要するに」と言っても
この現在を
抜け出ることができるわけではない


1407
大気圏を抜け出る火だるまの
言葉たちよ
知らぬ間に地上に落下している


1408
言葉では言えない言葉でしか言えない
ダブルバインドの
静かの海に心は浸かっているよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1409
こんな場所そんな風
何度も
出会ってきたな 今はその渦中


1410
出会っては気分新たに
また退いていく
潮の香りが曳いている


1411
時折訪れる
そんな場所
心解(ほど)いてぼんやりと眺める




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1412
(かんじてる)ことと「感じてる」という言葉
の間には
飛び越えたオランダの水路の物語がある


1413
ちぎれた水草たちが
水路を
下って行くのが見える


1414
(かんじてる)ことと「感じてる」という言葉
の間の
もやもや物語は尽きることがない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



1415
イメージ野の切り拓かれた
小道を
イメージ束たちが微微微光り次々に飛んでゆく


1416
ぅぅう (小道ニ落チタ
〉トイウ言葉
葉ヲブルント震ワシ座ル)


1417
次に〈〉が座り
うお〉が
イメージの尾ひれを揺らす


1418
イメージ野に火の手が上がる
うお〉たちが
赤い川の物語をうねり流れていく



詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1419
(魚が暗い水面を
ぴしゃり
と打つ)イメージが訪れる夜


1420
〈魚が泳いでいる〉と記す時
言葉は
この時代いまここに瞬時に出航してきた


1421
この時代の深みから言葉は
色香をつけて
ゆらゆら漂い出してくる


1422
〈青い夜〉と言えば、ほら
昼間でも
青い夜がゆっくりと立ち上がる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1423
流れ出す 〈あ〉が
流れに入る
〈お〉も流れて来る いろが芽を出す 瞬時


1424
青い通路を〈あ〉〈お〉が
流れてゆく
まだ言葉の椅子の手前の極微の時間


1425
流れにふと立ち止まる
言葉の〈あお〉
前方の言葉の岸辺をぼんやり見ている


1426
この固まりになる前の
何か なにか
忘れてきたものがあったような 〈青〉




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1427
言葉を語るきみは
心の色や匂い
放ちながら言葉の林や街をゆく


1428
言葉を書き付けるきみは
菜の花や柊(ひいらぎ)や
いっぱい積み込んだ言葉の舟になる


1429
トゲの痛みやきいろのいい匂い
の余韻
抱えて静かに帰途につく


1430
帰りの舟は言葉の波紋
響かせて
きみの心の川を下ってゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1431
深刻なそぶりとか華やかな音やリズム
の軽やかに打ち寄せる
言葉の街 いいさ そのレイヤーでも


1432
作り物めいた生の音や言葉やダンス
のシームレスな言葉通り
ぼくは無心に通り抜ける


1433
ぼくの心はこのレイヤーじゃない
広告が中空に座し
音も言葉もダンスもパペットパペット


1434
よろこびもかなしみも
パペットの
無のハートを下って行く (疲れ果ててる?)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1435
時代の中のいくつかのレイヤー間
を人は行き来する
小さな光たちが反響している


1436
時代も人も無意識の
レイヤーがありそう
突き動かされて歌い踊ったり不安だり


1437
意味を越えた峠から
シュールな街へ
ダイブする心こおろこおろと




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1438
土の匂いには遠くなった
街中を
古い写真のように歩いていく


1439
こぼれ落ちる砂のよう
確かなものは
セピア色に染まっていく


1440
春 ふくらむはるの
芽はまだか
沈みゆく風景の中土のからだが立っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1441
レイヤーの間(あわい)から
次々に
現れては消える泡の戦士たち


1442
古いレイヤーを押しのけて
レイヤ姫がまた一人
〈広告宣伝〉に釣り上げられて来る


1443
不和ちゃんもガチくんも
生まれたばかり
のレイヤーをお行儀良く磨いている


1444
(ホントに待ってたんだよ)
声援に
レイヤーの上で垢抜けていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1445
(確かにそこを通って
ここまで来た)
疑いは木霊して増殖する


1446
振り返ると靄(もや)がかかり
シームレスの
時空がぐらり揺れた


1447
ぽつぽつと降ってきた青
の滴が ほら
乾いた心の肌に滲(し)みていく


1448
ホワイトハウスは停電だ
宇宙本部が地上を制圧するぞ
みえるきこえる第六感する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1449
時代の大気が降り
続いている
まるで自然そのもののよう


1450
いま息詰めて考え事を
していたか
うつむいて少し大きな息をする


1451
無意識のように時代は
取り込まれ
吐き出され続けているいるか


1452
時代のまぼろしのイルカが
苦しげに
跳ねたのが見えたような気がする




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1453
「一人かよ」というネガティブ峠
を越えていくと
ひとりありのまま人間力深く触れる


1454
ひとりの力は無ではない
ほんとうに
考え抜いた言葉は小さな共鳴する


1455
互いに知らないレイヤーに
静かに
言葉たちが集まっている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1456
「こんなあ」「そんなにも」
バランス崩れ
谷へ言葉が転がっていく


1457
「そんなことが」「許されるのか」
ナントの勅令
届かない丘の上 暗雲深い


1458
「もおもおもおもお」
もうもうと
二人の間に煙立ち込め目に滲みる


1459
忙しい人間界
日々言葉が
前線でドラマを演じ続ける




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1460
「言葉なんて枯れ葉さ」
と素通りする
でも涙に濡れた葉、喜びにふるえる葉もいるぞ


1461
外見にはカラカラと転がる
言葉たち
乾いてイメージの命もない?


1462
枯れ葉でも言葉は
深く殺傷する
ことがある 夕暮れの暗い道


1463
ひと揺れでも言葉は
深みから
共鳴の波を誘い出してくる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1464
いろんな所でいろんな人が
いろいろと
やっている 時に煙が上がる


1465
天然水と入っても加工されている
人の心も
加工・仮構・河口に言葉が出る


1466
大悪も大善もめったになく
誰かがついやってしまう
小さな悪いこと 小さな良いこと


1467
大いなる自然の超善にも
超悪にも
人間はかないやしない 南無




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1468
(あ あ あ あ あ) ああこの〈あ〉の
頂から
眺めている見知らぬ音の街


1469
(お お お お お) おお〈お〉の
音井戸を
ずずずずずずーんと沈んでいく


1470
そんな馬鹿なと言われても
同じ音にも
時代の色や匂いがあり


1471
ああここは集落五番の
匂いがする
ぼくもきみも同じ匂い人か




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1472
(ここのカレーはいいよなあ)
カレーを目にした一瞬
肉迫する言葉が熱く匂う味する


1473
生たまごがぷるんと見える
見揺る
生きものじみて言葉がうろたえる


1474
スイカという言葉からは
若葉の
ぐんぐん伸びてるイメージが流れ出す


1475
にぎやかな言葉社会を築き上げ
言葉は自信過剰
もの・ことから乖離してしまったシマッタ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1476
「星がきれいね」
「・・・
うん とってもきれいだ」


1477
「星がきれいね」
「粗田根」
二つの言葉の川が流れている


1478
「ほしきれい!」
「ああ」
言葉川が交差してドラマは進行する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1479
言葉は実った果実
乾いた外肌も
内の潤う貯水池もあり


1480
果実は落ちてころころと
今度は
ひとり外気の中に匂い立つ


1481
言葉の果実はひとり
自足しているのか
触れる手を待っているのか


1482
言葉の果実の中の椅子は
一つだけなのか
二つなのか無数なのかよく見えない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1483
言葉の身をよじっても
この言葉
を超えて行くことができない 焦(ショウ)


1484
言葉では言えない
ことでも
言葉で言うしかない 浅(セン)


1485
(うーんうまくいくかな
どうなるかな)
飛んでしまった言葉のバンジージャンプ 安(アン)


1486
言葉への細い糸の上
ゆらゆらしながら
行きつ戻りつしている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1487
近代の助走
牧歌的言葉の
序奏時代は疾(と)うに終わってしまった


1488
現代は言葉過剰の
迷路の中
歌を無くした疲労野時代


1489
トリビアルに突き進んだり
下り坂46で
群れていったり 言葉よ


1490
止まらない言葉と沈黙が
背中合わせ
乖離解離乖離もう何海里になるか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1491
若い言葉たちが型に沿って
からだ揺らす
歌い跳ねている それもいいさ


1492
ぼくはと言えば〈歌〉という言葉の内へ
入っていく
乾いてしっとり感がないな


1493
〈歌〉、イメージは港を出る
舟がない
ネガティブな空気が重いぜ


1494
〈歌〉が遠い時代のことのよう
に感じられる
no nature no nature 人工自然の尾根をゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



1495
たぶん身も心も浸かっている
言葉モード下で
言葉の内側に入っていく


1496
ひとつひとつの言葉には
確かに
内側というものがありそうな感じがする


1497
一つの文字をじっと見ていると
ゆらゆらと
始まりの内側に誘い込まれていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1498
日々自然に使いこなす
皿のよう
盛り付けられて言葉が行き交う


1499
悲しいことがうずく時
太古の叫びが
言葉の内側に無音で響いている


1500
楽しいことがある時は
言葉の内の
自然と転げていく微笑み坂


1501
ああ今日も日が差している
言葉の内側が
少しばかりあったかい




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1502
雄鳥も着飾り魅惑のダンスする
人は羽ばたき
どこへ飛んで行こうとするのか


1503
飛んでバードアイ 見える見える
見えるぞ
バーチャルでも真に迫っている


1504
今 その 漂う自由感
それが
それが欲しいんだねきっと それって?


1505
それ、って言われても
隔靴掻痒
言葉の深い芯の方に沈んでいて




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1506
言葉の表層ばかりが
嵐に
小舟が揺れ揺られではなく


1507
言葉は深みまで
ひとすじの
ぴいーんと張り詰めていて


1508
あいさつは言葉の上層で
アイマイミーと
やりとりして別れていく


1509
深みでは(相変わらずだね)と
誰もが
「永久革命者の悲哀」の顔をする




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1510
言葉の外皮がぶつかり合う
すばやい
内から加減乗除が起動し


1511
利害損得ばかりでなくとつぶやきつつ
言葉の内からは
自然に加減乗除の手が伸びている


1512
加減乗除しながらも
止むに止まれぬ
にんじょうが内から湧くこともあり


1513
時代の空気に屈折して
しまったなあ
言葉よ 無心の歌がない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1514
「゛」をつけると自信が出る
んだよなあ
「あ゛したはきっと晴れる」


1515
「ま」を取ると落ち着く
んだよなあ
「今日 も 無事 に 一日 が お わ る」


1516
タヌキが知らぬ間に
現れている
「あしはきっと晴れる」


1517
言葉もその人なりに遊ぶんだね
ほらほら
タイ・ボクが倒れそうだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1518
〈ある〉と信じられているもの・ことが
線や点と掘り出され
文字に信が付与されていく


1519
起源を薄くなぞりながら
一画二画と
言葉の森を土足(つちあし)で歩いてきた


1520
今はもう瞬時に文字ができる
言葉の街を
手が疾走していく


1521
書いたりすることがそんなに
増えたはずはないのに
書字狂の現代をどこに行く




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1522
五十音のひとつとすれちがう
と 自動ドアのよう
するすると接続していく


1523
「や」という言葉にぶつかった
柳田国男ではなくて
今日は話題の山田さん や やや すっから菅と続いていく


1524
人間は言葉人言葉病にかかって
しまった
もうその土俵で言葉相撲を取るしかない


1525
時には遊び相撲をのんびりと
また時には
きまじめに言葉相撲を取る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1526
たぶん人は我知らず
あっつ熱の
言葉というものを手にしてしまった


1527
(語りたくない) (書きたくない)
ということが
言葉の始まりにはあったろうか


1528
習いたての小さい子は
よちよちと
くり返す言葉道をたどってくる


1529
それは戻り道のない
言葉の街への入口
(前に進むしか道はないんだよ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1530
よけるぶつかるにげる
ちんもくする
そうやって歳を重ねてきた


1531
だから「機械学習」では
つかめない
言葉はわりきれない揺らぎなのさ


1532
時には言葉の内に
しいんと
深みまで下ることもありをりはべり


1533
また時には詩語の中を
ひとり
らあらあと歌い歩む



詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1534
ネコはニャアというほかないが
にんげんも
時にはニャアで終わりたい


1535
〈ニャア〉の内には たぶん
そのネコの
心模様が折り畳まれている


1536
人は過去を反芻したり
確率分布で
未来を予想したり 言葉は忙しい




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1537
誰もが思いつきそうな
言葉があり
誰も思い浮かべそうにない同じ言葉の表情がある


1538
同じ言葉の駅から
出立するのに
言葉の風景が違っているぞ ここはどこだ


1539
言葉が記号に過ぎないならば
さらばだ
AIが人に取って代わるさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1540

言葉のからだも歳を取るか
ええっと
あれ、あれ、あれはなんだったかな


1541
確かに地下を流れている
カナート
感じはするがその像を結ばない


1542
(あわあわ)と放っていた
言葉たち
今はもう老いてなお言葉の底に漂う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1543
裸のままでは恥ずかしい
からではなく
言葉は文身もすれば服も着てしまう


1544
時間とともに色褪せる
言葉の服よ
今でもしっくりくるかい


1545
店の奥には言葉の古着が
まだ掛かっているよ
羽織袴に草履も付いて


1546
(本日は晴天なり
そこもとは
うーむ 男子でござるな)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1547
なぜか時間を逆走して
にん げ ん  かい の
バリアー超 え て いっ  た


1548
分化してきた言葉たちが
はがれ落ちる
壁面みたいに落ちていく


1549
そこは大いなる自然の
柔らかな
懐 ではなくて 沸き立つ物語


1550
身に着けてきた言葉たちは
溶け合って
みぼりぬあわあわと響き合う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1551
ダン と的の中心深く
刺さった
感じがしないんだよなあ


1552
言葉は言葉の流れの中
砂金でも探すように
言葉探しをくり返す


1553
あ それそれと思っても
書き留めずに放っておくと
砂金窟はふさがってしまった


1554
(まあいいか)と思いまた歩き出す
またいつ出会えるか
わからないけど小光は目指す




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1555
「さびしい夕暮れ」は U●
「楽しい広場」は ∴U
イメージが固まっていく


1556
「川原の少年」は 小さな水音
帰り着いた
「家族の少年」は Tシャツの寝そべり


1557
新しいイメージ新しい言葉
きらきらり
破片のように古い空から舞い降りてくる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1558
後ほんの少しのしょうゆ
が少なかったら
いい言葉の味が出ていたのにな


1559
料理のように各々計量したら
グー!
といくだろうか いかないだろうな


1560
意図と無意図が
織り成される時
無意識からみたいにいい言葉の味が出ることがある


1561
「元気づけよう」なんて思ってはいけない
我知らず
「元気づけ」が滲み出す ビミョウなドア




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1562
今日もドアを開けて
ゆっくりと座る
言葉の舟が身動(じろ)ぎしている


1563
昨日もそっちに進んだけど
刻限が違う
下ってみるか 景色が濃い影を落としている


1564
ああ、あれは 夕暮れに土道を
駆けて帰る
少年のぼくだ (どんな靴を履いていたっけ)


1565
ここでは時間も場所も
自在に
変幻する (自在に?)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1566
水面下では誰もがあぶくを立てている
見えない泡だから
気にもしないで立てている


1567
あぶくが濃い色に染まっている
見たくはない
哀しい色のあぶくが日々倒れ伏す


1568
ニュースに釣られてしまって
事件となる
あぶくの哀しいドラマの結末を知る


1569
炎上するニュースになるなんて
思いもしないで
誰もがあぶくを立てている水面下




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1570
泡の内側に入りたいな
と願うと
するりと内側に入っていて ああこの感じ


1571
さっきまでの外とは違って
言葉の内の球面には
しゃぼん玉の虹色漂っている


1572
この言葉の泡の内側の
感触は
何とも言いようがないな た、他、太、手、多


1573
言葉の舞台の震央には
まだまだ
不可思議な大気や風が流れている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1574
泡・立ち・ゆく 言葉たちには
いくつかの
時間の層があって火花散っている


1575
散りゆく花のように
沸騰するある頂点から
はらりと言葉が折れ落ちてくる


1576
言葉を召還する
のはぼくだ
まだ十分に乗り慣れていない馬にも乗る


1577
言葉はいくつかの時間の荷
気づかない
内に背負い込んで来る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1578
始まりはつながりの中にあり
知らぬままに
言葉をくり返しなめ回す


1579
言葉はぼくのものであって
ぼくのものじゃない
そんな庭に言葉の桜が咲き始める


1580
今では桜という言葉は
誰の所にも飛び込んでゆく
そうしてひとつひとつの桜を生きる


1581
今年ももうすぐ桜が咲き始める
西行の桜通りに
言葉の桜も帯のように咲き出してゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1582
〈さ・く・ら〉と言葉道をたどってみる
思い初めの
時と場所が何にも浮かばない


1583
それでも〈さくら〉つながりの
現在の
おもいおもわれは確かにある


1584
いちいち口に出さなくても
〈さくら〉
とつぶやく流れには始まりが畳まれてある


1585
それでもされども
しかれども
始まりの不明が気にかかる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1586
野良ネコのお家はどこ?
たずねても
言葉の飛び石が絶たれていて


1587
しばらくの付き合いに慣れて
GPS首輪を付けたとしても
野良ネコのお家事情の物語は不明だろう


1588
それでも不明はあきらめられず
何度も
unknown橋を渡っていく


1589
何気ないそぶりで立っている
人は誰もが
この世界の深みに立ちたいと思う時がある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1590
おもいおもわれ潜り抜け
おもい
水圧の深みに下りてゆく


1591
上の方ではおもいおもい
おもいおもわれ
日々くり返されている


1592
簡単な解決の糸口はなく
誰もがそうするほか
なくなく泡を立てている


1593
何か手がかりがあるような
気がして
深みに下りる ここはどんな時空か




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1594
深みに引きこもって
ばかりは居られない
身体の芯から日差しが恋しくなりもする


1595
表面から深みから
それぞれが
絶対の優位を持つことはない


1596
表面と深み、(せざるを得ない)と(したい)、光と影
のあわいに
この世界の重力圏がある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1597
(あいつにはもうひと言も
言いたくない)
言葉が凍る深みに立つ夜


1598
朝になるとまた顔が合う
相変わらず
あの人の顔がゆがんで見える


1599
ふうっと下りて行くと
(ああ ぼくの
心もゆがんでいるのだろうなあ)


1600
深みと表面を行き来しながら
くり返し
くり返す〈愛〉のレッスン




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1601
(どうしてやろうかこうしてやろうか
そうしてやろうか)
妖怪みたいな言葉の沸点にいる


1602
その一点を踏みゆけば
行けば忘我の
峠を越えてしまいそうな


1603
そ・う・な バランス崩れ
パ リイイン 覆水不返
左翼崩れネトウヨ崩れ恋愛崩れ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1604
ふいに花散る
ちるちるみちる
言葉の融点を通過している


1605
確かに今通過している
花の匂う圏内を
深く吸い込んできた言葉よ


1606
深い時間の井戸から
自然に湧き立つ
自然水のような言葉たちの振る舞う


1607
色んな心模様を放つ
内蔵する
言葉場よ ジジもババも生き生きしてるぞ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1608
この世には、防御も攻撃も無縁な
〈し〉としか言えない
静かな深みがあり


1609
その道を下ってゆくと
人間界のはずれ
星星や遠い光りに触れ黙するしかない言葉の


1610
いつもは近場の土手に腰を下ろし
目にする種々(くさぐさ)が
今だけは遠のいている


1611
いずれの場合も黙する
言葉の
内側をゆらゆらと滑っていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1612
「エブリデイ」「エデエイ」
「エイデイ」
そこまでは行けそうなスラングストリート


1613
言葉が逆走する溶けていく言葉たち
「ママ ごはん」
「ママごはん」「マママンマ」「マン マ」


1614
ゆらゆらと逆走する
ぼくの言葉に対向する
不審顔の現在の言葉たち




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1615
初めて文字が彫り込まれていく
岩が変身していく
別のひとつの世界が浮上する 初(はつ)日の出


1616
(ああこれは 岩であっても
もう岩ではないんだね)
(人の手によって注ぎ込まれた銑鉄の流れ行く)


1617
文字が生まれ色んなものに
書き記されていくと
世界も微妙に変位していく 感じる


1618
筆順が生まれ流れ出す
世界へ
世界から 動き出すイメージ 満潮の?




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1619
(やっぱり実際に目にすると
違うなあ)
まんかいの白い桜の花花花


1620
白い輪郭を目がたどる
ゆっくりと
立ち上がって来る(いのちの)というほかない言葉


1621
そうして〈白〉にいのちが染まる
いのちを
背負ってくる白しろ白


1622
近づけば人の心と同じく
白の内に
ほのかに色色流れている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1623
「いちめんのなのはな」と
何度も何度も
打ち放った詩人の言葉の通路を思う


1624
色や匂いだけでなく
まるごとのいのちを
柔らかく掬い取ることは難しい


1625
いちめんのなのはなの中に
ひとつの
黄色が匂い立っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1626
どんなに言葉を尽くしても
もうその先は
そんな途絶える道を行っているような 言葉よ


1627
簡単なことみたいに
自信に満ちて
投げかけられる 言葉に一挙に蝟集する時間


1628
答の手前で黙々と
反芻するほかない
言葉言葉言葉 言葉以前のことば 言葉以後のことば


1629
例えばカズオ・イシグロの言う「リベラル」は
わかりそうな気がする
けれどこの地では「リベラル」も「保守」も家路にたどり着けない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1630
どんな感じ考えも
自由だ
現実とかすりもしない思想も自由だが



1631
されどされどもしかれども
誰もが引き寄せられる
この世界の重力圏


1632
この世界と人の有り様の
絶対性に
誰もが日々屈折していく


1633
たぶんおそらくおもほえらく
○×の手前で
ひとりの内では帳尻は合っている


1634
希望は明日
は昨日よりもちょっとだけ
いい感じの鼓動を打ちたく思う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1635
言葉と人がしっとり
隙間なく
張り合わさっている


1636
心の歩みとともに
言葉も歩む
はらはら散るさくら散ってゆく


1637
政治家の言葉のように
言葉と人が
乖離して言葉の肌も乾いて見える


1638
心は言葉と別れて
閉じこもる
カワクカワクカワイテのどが歪む




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1639
人と人とが出会う時
言葉たちも
出会いをくり返している


1640
射す眼差し言葉には言葉も腫れ上がり
ころころと
内へ下って行くのがわかる


1641
例えばにぎわいのパプリカには
背景の生育環境や虫食い
受難の日々も思い思われ思うぞよ


1642
やわらかな一人サイズの
言葉には
恥じらいがちに(やあ)と言葉出る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1643
ひとりの言葉がひとりの言葉に出会う
だがしかしけれども
相手は百人力を誇りぞろぞろ従えてる


1644
「・・・リコールするぞ!」イイネイイネイイネ
「・・・リコールするぞ!」
イイネイイネイイネイイネイイネイイネ


1645
「自由ねえ、ひとりのんびり土手に寝転ぶことかな」
「さにあらず
自由はA君の自由B社の自由N国の自由だ」


1646
ソフトな言葉みたいで
近づいてよく見たら
硬すぎる言葉(チャイナマーブルかよ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1647
イモトアヤコの眉毛マジック体があるように
人の顔には
いろんな表情のスタイルがあり


1648
文字に斜体やゴチック体があるように
同じ言葉でも
いくつかのスタイルがあり


1649
ザクザクルンルンもじもじと
書かれた言葉も
ありありと表情を放ってくる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



1650
晴れても曇っていても風は吹く
自然だからだろうか
人間も自然の一部だ


1651
雨だし出かけるの嫌だな
と思い沈んでも
今日も言葉は出かけて行く


1652
生きてるかぎり 言葉よ
今朝も出かけては
夕方には帰ってくるさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1653
言葉はいつも想定・戦略・布陣・防御・攻撃している
わけではない
経済や政治から遠く離れてフォークリフトを動かしている


1654
色恋も沈黙の静かな駆け引き
とは限らない
ふたりただ同じ水面を眺め溶けている


1655
今日は天気が良いから
いつものコースから
30㎝ずれて進もうかな


1656
仕事の中にも好みや遊びが入り込む
ちっぽけかもしれない
外からははっきりと見えないかもね




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1657
ほとんどが〈平等〉が望ましいと思うけど
理念と現実の解釈学により
現実の場面では《平等》や〔平等〕や【平等】になってしまう


1658
確かに子どもも大人も老人も
例えば食べ物
一律には提供できない


1659
理念と現実の間には
ひとつの橋の現在があって
理念≡現実の悪平等を避けている


1660
母権制や父権制の崩れ果てた現在までの
途方もない時間を思う時
ややこしいなと青空のような〈平等〉を沈黙の内に思い描く




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1661
勝ち組負け組は体育祭に限らず
この社会の
隅々にまで浸透・支配し寛(くつろ)いでいる


1662
議論ならたかが一対一の峠を越えると
ただ言葉の
世界論・関係論の深さの違いが黙してある


1663
この社会には依然として
無意味なムイミー
人人は疲労摩耗・回転・持続のスイマーだ


1664
例えば安藤昌益の
無言が
現在においてなお異彩を放っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1665
言葉はいくつかの結合手を秘めて
ひとりの人間
によって主要に語られ書かれる


1666
「オリンピック」という言葉も
人それぞれに
付加されるイメージが違って


1667
コロナにピクピクするイメージや
汗のメダルや
固有のイメージをまとって来る


1668
ソフトな顔して無理強いの
手をつながせよう
と接着剤の付いた「オリンピック」もある


1669
関係者はコロナ困難の前線でも
「いいことですから、前に進めてください。」
と張り詰めた神経伝達回路を隠して語る


1670
「じゃあ きみのオリンピックはどうなのさ」って?
そんなもん
知ったこっちゃねえよ 無、無無無無無さ。




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1671
言葉は独り身でありたいのか
誰か相手が欲しいのか
霧の谷間に言葉が響いている


1672
自己対話の言葉もあれば他者への呼びかけもある
無意識の岸辺に立つと
言葉そのものの曖昧さが際立ってくる


1673
「ねえねえどうなのよ アンタ」と問い責め立てても
たぶん言葉は
責められる理由がわからない


1674
言葉はほんとに独りの時にも結合手を感知されたり
饒舌なアジテーションの時には
ひとりぼっちになることがあるあるあるるかん




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1675
初期条件は、宇宙も人にも保存されるとして
自然から目覚め
分離・独立してしまった人間の


1676
最初のひと声の
〈う〉や〈あ〉の
内側の景色を流れるものよ


1677
おそれおののきこころふるわせ
溶け合って
目覚めのただひと声の言葉の響きよ


1678
けものとして駆けてきた
ものたちよ
今しずかにはがれ落ちていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1679
ずいぶんと言葉時間が経ち
ある時
初めて海を見た 〈う〉


1680
つぶやいた〈う〉という言葉には
海の青や波立ち
日の輝きも折り畳まれていた


1681
ある時書かれた〈海〉という文字からは
恐れおののきと
波しぶきや滴のしたたりが見えた


1682
今ではずいぶん色褪せ
言葉は
記号の重量が増してきた? UMI




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1683
物語の中の非情の男
とは違って
人の表面は澄んだり濁ったりアクが出たり


1684
冷たく突き放す言葉、
トイレから出て手を洗う言葉、
パンケーキに微笑む言葉、一人の言葉のスペクトル


1685
言葉と言葉が出会う、すれ違う、
反発する、共鳴する、
時には言葉たちが神話する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1686
この森に言葉を摘んで
配置していく
のは確かにぼくなんだけど


1687
ぼくは目にしている
言葉たちが
干渉したり共鳴したりすれ違ったり


1688
例えば乾いた言葉群が
潤い求める言葉を
こっそり牛のように誘導している


1689
「えー冷たいしっとり
アイス言葉
アイスの森はいかがですか」


1690
もうここは心ころころ転がり去り
言葉ばかりが
当たり前みたいに行き交う言葉の街




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1691
今年もまた神社の楠の大木も
若いみどりに
華やいでいる 日に溶けてみどりは沈黙


1692
微かに流れはあるんだろうな
日差しに
若いみどりが呼吸している


1693
言葉は近づく近づく
そこが行き止まり
と言われても突き抜けて近づこうとする


1694
若いみどり流れる
葉揺れの内側に
言葉は触れたがっている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1695
「うれしいな」と「うれしいね」
の谷間には
渡るのが難しい吊り橋がある


1696
(かなしいな)と(かなしいね)
の静かな無言たちが
コンビニ前で坐っている


1697
表層で「今日はいい天気だね」
と言葉を交わしても
深層は黙流している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1698
人と人との言葉の断層を
ひらりんと飛び越す
コマーシャルみたいなのっぺりゲンガー言葉


1699
催眠術やドラッグによると
断層は
ひとっ飛びであるらん


1700
それもこれもあれも
人の世よのう
古びてもニュータイプでラン!ラララン




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1701
言葉よ言葉、それもいい
これもいい
あれもいい、でも背中がよく見えないな


1702
言葉よ言葉、言葉さん
なんにもあげられない
けど複雑な素顔を見せてほしいな


1703
曇り空雨空晴れた空
いろいろあるね
みんながいるひとつの言葉が欲しいよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1704
「パプリカっていい歌だと思う
けどもっといい歌
が欲しいな」「何か文句あるのかい?」


1705
「てゆーか 『NHK2020年応援ソング』なんだぜ」
「ベストセラーだけど
そーゆー赤一色に釣り上げられる歌なんだよね」


1706
(日差しには少なくとも
七色のスペクトルがあるように
七色顔に開かれた歌が欲しいな)


1707
「そんなに欲しいのなら自分で作っちゃえばいいのに」
「たぶん人の心の海から
専門家は釣り上げ洗い磨き差し出すんだろうな」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1708
例えば異音も無く急にPCが壊れて
書き立ての言葉
が失われてもそれはそれで仕方がない


1709
どんなに棒きれ振り回しても
小から大まで
〈仕方がない〉ことはある


1710
し、しっ しが通る
しもまた
最上級の仕方がないものか


1711
冷えていくしの通路を
コート着た
言葉たちが追いかけていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1712
近代以降はウソかホントか
顔を見ればわかる
といかない複雑系


1713
ウソかホントかが走行すると思っている道路で
ウソホントウソントウソント
のあおり運転で迫ってくる


1714
迫るウソントはまるでオレオレ詐欺
オーレオレオレ
ウソントになぎ倒されている正常圏内


1715
舞台の裏ではウソもホントもなく
ただ強いられた
今の細道を涙こらえて立ち働いている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1716
言葉はくたびれたら
行間に
しずかに目をつむって立っている


1717
呼び出された言葉は横になれない
姿は消せない
風に癒されることも無く立ち続ける


1718
言葉の宿屋は言葉の街にあり
呼び出されるまでは
他の言葉と区別無く埋もれて眠る


1719
確かに人無くしては
言葉はない
けれど言葉も一人歩きはする




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1720
(例えばある人の表情は
概念の固有性だ)
と抽象の坂を上る


1721
抽象の坂を上っていく
ぼくの言葉の胸には
実感の鐘が静かに鳴っている


1722
ひとつの生きた〈抽象〉には
無数の生命(いのち)の
波立ちうねりが把捉され共鳴している


1723
気まぐれな思いつきが駆動する
アクロバットな概念群は
干からびた生命の抽象記号と戯れる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1724
風に抽象の葉が揺れる
みどりのイメージ
濃くなり言葉を急きたてる


1725
滑走する準備がまだできていない
言葉には
肌に合うイメージの衣装が必要だ


1726
ぴったりフィットする
着心地いいな
を求めに求める言葉たち




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1727
もし居心地の悪い服を着ていたら
言葉は
肌に潤い欠けてぼんやりしてるか


1728
すべすべつるつるしない
肌合いに
言葉はいら立ち立っている?


1729
そんな言葉の滴りから
相手(読者)は
シンデレラの窮屈靴を感じている


1730
相手は自分なりに言葉を切り取り
味わう
けど一連の言葉の表情は敏感に感じ取る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1731
言葉は生きものではない
けれども
言葉が人を追い詰め殺すことがある


1732
言葉は生きものではない
けれども
木に彫られたものたちのように生命(いのち)を放つ


1733
言葉は生きものではない
けれども
人の生命(いのち)の道に続いて伸びる


1734
確かに言葉の街や
言葉の部屋部屋を
捜索しても言葉の正体は不明だ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1735
言葉にもおじさんおばちゃん
頭カタイ役人やスケベや
理屈っぽいクレタ島人がいて


1736
つまり人間界のあらゆるものが
射影し
言葉の街や表情を形作る


1737
この人間界を超えたものと対応する
圏外の言葉たちの
小さなあぶくも星々のように見える


1738
脱ぎ捨てられた言葉の靴よ
それって
シンデレラの物語とは限らないぜ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1739
どうする?こうする?そうする?
思い悩みも
必ずいつかどれかの門を潜(くぐ)っていく


1740
生まれ育ち言葉で考える
ことが自然となり
もう言葉以前には戻れないね 黙狂の矢場徹吾も語り出す



1741
誰もが言葉を背負ってしまっている
からには 手ぶらで
緘黙してこの世界を旅することはできないよ


1742
たとえ言葉を喋れない人も
沈黙の海に
絶えず言葉のさざ波を立てている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1743
ドラマ同様に言葉も遊ぶんだ
きみは歌え
ぼくは踊る らっぷりっぷろっぷりっぱ


1744
ドラマ同様に言葉も悲しむんだ
きみは泣け
ぼくは心深く沈む 微韻微遠微湾


1745
ドラマ同様に言葉も笑うんだ
きみは微笑め
ぼくは大笑いさ 46の丁!


1745の自作自註
賭け事は時代劇で観る位だけど、当てたら緊張からはじけるその喜びはいかほどか。そしてここには、小泉進次郎も46%含まれている。





詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1746
神々しい文字の始まり
から遠く
裃(かみしも)や普段着の世界に着地した


1747
それでもピーンと張り詰めた戸を潜り
とめ・はね・はらい
ゆっくりと文字が浮上してくる


1748
同じ文字なのに言葉が違う
固有の水波をかぶり
ひとりの文字顔が浮かんでいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1749
緩急の手から離脱して
今や一瞬の
電子の文字が現れる


1750
どこへ行ってしまったか 古びた文字たちよ
もはや微かな
墨の匂いも筆触もしない


1751
それらはキーボード上の
一瞬一瞬に
折り畳まれ濃縮されてしまったか


1752
普段着ばかりに見える世界を
文字たちは
気楽に出入りしている?




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1753
始まりはよちよち歩き
誰もが
おそるおそるキーを押してゆく


1754
画面に浮かぶ文字たちが
まぶしい
女の子たちのように見える


1755
今ではすばやい手さばきで
出会いは
自然さの深い井戸の底に沈んでいる


1756
くり返しこんなステップを
踏んできたんだ
われら人間族は




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1757
立ち上がって歩き出した
これはもう
世界のはじまりイッチ二イッチ二


1758
からだもこころもことばも
これはもう
絡み合ってイッチ二イッチ二


1759
上下左右分離対立の人の世の
心体言道を今日も行くのさ
ああ日差しが温かいイッチ二イッチ二




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1760
始まり慣れ親しんだドラマの
何シーズン
終りなんて考えもしなかった


1761
物語は終わる(おわるんだ)
物語も
死ぬ 死んでも輪廻転生する


1762
ほらまたひとつ新しい物語
が生まれているよ
前のの生まれかわりかな


1763
物語の通りで楽しんだ
数々の物語の
葉葉が踏みしだかれて匂い立っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1764
辱められた心のために
刃を振り下ろす
時代劇の全否定は重たく哀しいね


1765
全ゆる場面で全肯定も全否定もなんだか
死の匂いする
そっちの道は途絶えていてヤバいよ


1766
中空から見ればおんなじことさ
全肯定も全否定もはがれ落ちて
人の歩むリズムと足跡に溶けてしまう


1767
アリさんみたいに地上を旅する
われらは
全肯定や全否定の薄隣の喜怒哀楽道を歩む




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1768
階段を上っていくと
同じ言葉の
濃度・色合いが変わっていく


1769
ほんとは一段下の
言葉だから
無理したこわばりが籠(こ)もっている


1770
無言でいたかったのに数段も
駆け上がらなくては
ならなかったからうわずる言葉


1771
記号の街の通りでも
言葉は
色んな表情を放っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1772
記号の顔も持つ言葉が
記号を語れない時
言葉は引きこもるグレゴール・ザムザだ


1773
言葉がないわけではない
そんな時言葉は
沈黙の内を流れるバブルジェットかもしれない


1774
言葉は人と同じく欠陥品だ
CMみたいに
人魅(ひ)きつけるお約束はしない


1775
しないといっても単に記号の言葉だけ
でいいなら
「全集中!」って言葉は言うよ書くよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1776
メイメイメイわたしはメイ
明明明ぼくもメイ
さあさあささあぼくらのお通りだ


1777
言葉は明るく楽しくてもいいんだけど
明るく楽しくなくっちゃ言葉じゃない
というじりじり無言圧教はまずいな


1778
うまい語りもできずに
言葉の太宰治が
言葉の暗黒面にしょんぼり下りて行く


1779
時には 明るさにも暗さにも固執せず
ひとつのスペクトル帯を
できるだけ気ままに滑っていたいぜ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1780
気まま言葉が通りを歩くと
色んな言葉たちが
空気感やにらみの圧をかけてくる


1781
あちこちそちこち
ぶつかりながら
気ままの言葉は角が丸くはならない


1782
気ままなのに内心深く
ツッパって
角は角のままままよと歩いている


1783
あああれは元気もらう系これはヨイショ系
それはネトウヨ系
はるか向こうに黙する無名系を感じている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1784
「花も嵐も踏み越えて」
ゴチック体の
言葉が進む突き進んでいる


1785
オットットット言葉場の
空気・視線に押し押され
ゴチック言葉が倒れる


1786
倒れても倒れても進む
ゾンビとなって
幻の街を突き進んでいる


1787
風に揺れるみどりの言葉の街
からだを持たない
ゾンビ言葉が感染感染染染染 見える




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1788
照れながら少し離れて
観ていた
「巨人の星」 (少年のぼくは何に照れていたものか)


1789
まゆ毛濃い言葉の巨人の星が
ひび割れて
「割れて砕けて裂けて散るかも」


1790
時代の残骸を踏みしめて
まゆ毛マジックの
イモト言葉が画面を駆け巡る


1791
言葉は手を組み血も流す
仮想の戦士にもなる
けれど夕暮れにはひとり家路に着く




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1792
たぶん言葉は偶然に生まれ
それぞれの地に
当たり前みたいに降り積もる積もる積もる


1793
途方もない時間のあれこれに
積積積と積もる話は
寡黙にただ微笑むばかり


1794
毎日が言葉の服を
着たり脱いだり
面倒だなとは思わない言葉人


1795
言葉は乖離もする
意味をはがし
意味を隠し意味を軟禁する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1796
時には言葉の積もる話を
してみたい
異人さんも積もる話があるだろう


1797
たぶん互いににゃんにゃんわんわん
くらいにしか聞こえない
でも異人さんもおんなじ言葉人なんだ


1798
なんだかふしぎな気分
かんぶんこぶんぶんぶん
姿形が違ってもおんなじ言葉虫が飛んでいる


1799
ことばむしむししても
どこまでも
ついてくる圏外超える言葉虫




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1800
気になる気になるなあ
一人がつぶやき叫んだ「あ」
がどうして共有の〈あ〉になったのか


1801
見えない見えないなあ
〈あ〉から抽出された〈a〉、
〈e〉〈i〉〈o〉〈u〉としぼり出される光景


1802
教え導く母がいないのに
時間の岸辺で
無数の行ったり来たりか


1803
踏み固められ抽出された
言語野の
抽象の階段をどこまでも上っていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1804
〈街〉に〈まち〉のレイヤーを見る
(そんなことってあるよね)
新しい芽が出ている《街》の風だ


1805
通り沿いのとある建物のドアを押す
小さな光
の粒々がこぼれ出す (街も生きているんだね)


1806
通りの人の表情が
どことなく
感じがいい空気に触れる


1807
どこか感じが変わったなと感じる時
たぶん内には
みどりのりゅるりゅるると流れている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1808
シュールレアリズムの峠を越えて
言葉たちは
どこまでも足を延ばしている


1809
幻のリンゴに触れる
あるみちの感触が
ひとつの帯域を流れる


1810
抽象のさびしい岸辺で
(おまえは何をしているの?)
という反響を言葉は胸にしている


1811
やっぱり言葉がたずねてしまう
語られない言葉
は遙か言葉の村の起源、反復、構成、変位か




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1812
たった1g多すぎたから
よく効く薬 いい感じの味の
言葉の峠を越えてしまった


1813
言葉以前の小さな子が
ちゃんと感じ分けるように
確かにびみょうなレイヤーがある


1814
精神の空気感って
この列島に限らず
人は包み包まれている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1815
例えば学校の先生は
もやもやあっても
目に見えない組み立ての教育のラインに立つ


1816
それはほっとけば治るよと言わない医者は
もやもやあっても
きちんと薬を出す医療のラインに立つ


1817
いろんなところのもやもやは
深いレイヤーで
避けがたいひとつの流れになっている


1818
それでももやもやの靄の中
突き抜けていこう
とする言葉は必ず生まれる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1819
記号論の言葉脳神経学の言葉栄養学の言葉
政治学の言葉
経済学の言葉 区画された言葉だらけだ


1820
そんな枯れ葉ばかりの
言葉の区画の下で
ことばが泣いている笑っているぼんやりしている


1821
「言葉は日々何をして居る?」
「言葉には養分や消化吸収は無用だ」
「言葉には義務・任務・防衛が必要だ」


1822
ことばはもちろん生きている
なぜという
言葉の圏外で日々呼吸し生きているさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1823
晴れた休日に上がる
しゃぼん玉
は判読できない虹色言葉


1824
いくつもの言葉の住む
しゃぼん玉
からひそひそ聞こえる


1825
泡泡のコネクティングルーム
を通して
ひそひそ言葉が行き来している


1826
慇懃(いんぎん)に制圧するゴチック言葉
とは違って
ひそひそにしか住めない言葉がある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1827
始まりは奥深くから湧いてくる
ひとつの
はだか言葉みたいな叫びだった


1828
別の理由から覆ったり飾ったり
してるうちに なんだか
はだかの言葉は恥ずかしくなってしまった


1829
はだかで眠るとしても
目覚めたら
言葉は服を着て出かける


1830
言葉と言葉がすれ違う
ぶつかる
言葉たちはぶつぶつつぶやく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1831
言葉ウィルスに感染した
〈あ〉がちょっと変
〈・あ〉になってしまっている


1832
〈・あ〉は言葉の街角を
今では自然に
60°の扇形に曲がっていく


1833
〈×あ〉は街角に激突し
〈▲あ〉は
街角をよけて遠回りして行く


1834
言葉ウィルスには足がない顔がない
生命(いのち)のふるえがない
例えば東京事変の乾いた歌うたい風に乗って来る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1835
言葉ウィルスは「ゲンキアタエル」
「ゲンキモラウ」
の客引きの街角に潜んでいる


1836
(縛り縛られ縛られる羽(う))
「絆」が唱えられるとき
言葉ウィルスに感染している


1837
「イヤサレル羽」と告解する
言葉から
言葉ウィルスが発散している


1838
元気という言葉は平和と同じく
何のふしぎもない?
「ゲンキ」がビミョウに震えている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1839
橋を渡り終わって さてと
曲がる時
うっ(右) とこだわりが走る


1840
他人が目に入らない
風景の中
う(有) 自分だけが浮遊している


1841
ふわふわと飛んでゆく
気分にはなれない
う(羽) イカロスの翼


1842
言葉が推移していく
流れの渦中に
いっしゅんの瞬く〈う〉がある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1843
「黙っていたらわからないじゃない」
に呼応するでもなく
今では自然に言葉が流れ出す


1844
はた目にはわかりにくいけど
言葉への無数のいとは
等質ではなく強弱・pHもある


1845
張り詰めた大気の中
言葉の岸へ
心イオンたちが泳動する


1846
自分の部屋みたいな
沈黙の海から
いろいろ切り整えて出かけてくる 言葉よ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1847
静かな夜中 ひとり
微かな
世界の物音に耳を澄ます 脱


1848
大きな流れの面があり
誰もが 脱
その流速を背に受けている


1849
流れる 流される
その文目(あやめ)も分かず
流れ流れる流されるう 脱


1850
片付くことがないほど
次々に
感じ考えるものが現れる 脱


1851
わかっていても抜けられない
しがらみ
からみからむからむーちょ 脱




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1852
確かに前を見ている
けれども
ぼんやりしていることはある


1853
先生に叱られる少年も
職場で
注意されている人もまた


1854
次々に繰り出される言葉の
力線に
乾いた言葉か沈黙で迎え撃つ


1855
別のクリアーな流れに浸かって
じいっと
自分の身も心も抱きかかえている


1856
そんな踏み固められた世界が
ひっそりと
言葉の街の裏手にはある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1857
『スタートレック』の転送装置みたい
瞬時に
幻の岸辺に立つ 言葉の旅程が始まる


1858
後は人力で言葉の手足を
動かして
言葉の舟を操(あやつ)っていく


1859
霧が出ている水草もまといつく
まだ気配の言葉に
どこからか沈黙のアナウンスがある


1860
〔水草ハ絡ミツク棘モアル
手デ払ウト痛イゾ〕
という趣旨の稲妻が走る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1861
くよくよしても始まらない
病気やケガや
身体の不自由になる前に 黒雲


1862
黒雲ばかり見つめていると
黒くなる
心を抱えて言葉の森をさ迷う


1863
暗い不毛の森で
きみは出会うんだ
金剛石みたいに堅い不動の言葉に


1864
言葉も神も超えた
名づけようもない
世界内 われらは日々泳いでいる


1865
その時はその時さ 折り返して
じっくり考えればいい
くよくよしても始まらない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1866
ひとりとふたりが溶けているから
時には
心は以心伝心する


1867
ひとりとふたりが溶けているから
朝日に照らされて
言葉はやさしい葉を開く


1868
途方もなく深い時間の海から
心も言葉も
ひとりとみんなを実装して瞬時に立ち上がって来る


1869
滴るみずみずしさが
知らぬ間に
心言葉を突き動かしている そんな夕暮れもある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1870
張り詰めなくても瞬時に
織り上がる言葉
〈わたし〉には古い遺伝子も起動している


1871
〈ぼく〉〈俺〉〈自分〉と
手を替え品を替え
ても同じ言葉の海から浮上する


1872
濡れた言葉の葉葉からは
深みから
いくつもの朝の匂いがする


1873
言葉をちぎってもんでみる
あの遠い
村のはじかみの匂う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1874
あ 忘れ物しちゃった
(ま いいか)
なんとかなるだろう たぶん


1875
(あ そのことは触れてはいけない)
だったな
ええい ままよ 前に進むしかないな


1876
あ 〈あ〉の一語の峠で戦っている
妥協している
撤退している 感じる見える




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1877
アッドオッドノッド
付け加えることもふしぎも
うなづくこともなく意味もなくつぶやく


1878
少年の日意味もなく
棒を振り回していた
無意味の意味というのはありそうだ


1879
意味がそれではと引き返す
そこから始まる
意味もなくの階段がある


1880
意味もなく一段二段と
下りて行く
言葉の肌に風が寄せている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1881
カチカチ山の向こうにも
こちらにも
もう一つのカチカチ物語がある


1882
価値がないと断罪する価値峠には
関所抜けの
反価値や無価値も通りすぎる


1883
価値峠の価値・反価値・無価値
をカチカチ鳴らしながら
価値と無縁に通りすぎる者がある


1884
ちょうど授業中の子どもの
想世界みたい
価値の部屋で価値を超えている


1885
価値峠の麓には価値にまみれて
行きつ戻りつ
「あどけない空の話」の足裏がある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1886
誰もが渦中で感じていた
見えない権力線
の流れをフーコーはあぶり出した


1887
権力は植物や動物由来だろうか
権力を消そうという
〈平等〉の内側は人間に始まるか


1888
じゃあねと退職するまでは
権力線の交錯する
社会の渦中に日々入っては帰る


1889
権力なんて知らずにいのち始まり
権力も眼中になく
ではさよならと人間界から消えていくんだね




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1890
世界を少し背負って無惨に死んでいく
登場人物も
カチカチ山の向こうは見えない


1891
物語の世界内に起こる
他人の裏切りも
明日のこともわからない


1892
語り手に手を取られて
物語の
世界内の日々を生きる


1893
作者も読者も物語の外
並行世界に
神のように呼吸している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1894
ハンカチを広げてみる
草の匂いがあり
ハンカチが少し異邦に匂う


1895
みよちゃんに借りたハンカチは
価値・反価値・無価値
の圏外で風に揺れている


1896
仕方なく価値論の部屋にいても
今はもう
みよちゃんのハンカチばかりが気にかかる


1897
手巾(ハンケチ)も様式と個性とで
縫い合わされ
文目もわかぬ振る舞いをする

註.「手巾」芥川龍之介 青空文庫




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1898
殺意に飲まれた弥吉は
大波に乗って
一人の男を殺(あや)めてしまった


1899
けれど端役(はやく)のせいかその心よ
鏡によく映されることなく
ドラマの裏手に消えていった


1900
ドラマの表通りでは
弥吉は下手人
という視線に満ちていた


1901
満ちた潮に浸かって
ドラマは
善悪のクリアーな差異を奏でている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1902
主人公の花房出雲
第三シーズンで
生真面目から女好きになってしまったよ


1903
(どうしてそうなっちまったのかって?
そう言われてもなあ)
花房出雲(中村吉右衛門)は不審に天を仰ぐ


1904
(確かに俺はそうなっちまった
でも俺のせいじゃないよな)
神のような世界からの噴流を受けている花房出雲(中村吉右衛門)


1905
バーチャル世界では今日も神作者にいと操(あやつ)られ
若い女の子たちが
元気にかわゆくダンス・ダンス・ダンス




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1906
投げ出された作品には
作者はもう
関与するこはできない 子が家を出て行く


1907
不動の分断された世界に
読者は
近づくことはできる ただ感じ解読する


1908
作者や時代の意識無意識の破片を
集めては
抽出する手触りするイメージ群


1909
現実と同じく動かしようのない
物語の地平に立って
人物たちの好みや振る舞いには心波立つ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1910
何のためらいもなく
「元気与える」
と語るスポーツ選手 『ためらいの倫理学』


1911
「げんきあたえる元気与える
ゲンキアタエル
元気与えるアタタタタ!」


1912
(元気与えるゲンキヲアタエル
ゲ ンキキ アタ
エル エルランゲンプログラム!)


1913
個性の服を脱いだらあらゆる言葉は
太古からの
強弱・連結・深度のスペクトルに分布する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1914
選択された言葉たちは
現在のどこかと共鳴する・異和する
ある文脈を引き連れている


1915
例えばきれいだなと選んだ
風景画像も
現在のゴミゴミ澱む流れが目の裏にある


1916
喜怒哀楽・利害損得の向こうへ
言葉たちの無意識は
現在を引き連れ自己組織化したいのだが


1917
簡単に軍事力を誇り語る文脈は
平板な力の政治・外交視線に通ず
言葉の裏に潜む永遠の対立あるいは利害の固守


1918
女性・差別・ハラスメントの一群は
しがらみしがらむ
関係の澱みを突き抜けてくる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1919
近代を上り詰めて
百数十年
もはや万葉はあの渓谷遙か


1920
「近代の超克」なんてカッコつけちゃって
そこに生身の言葉
参加していたんだろうかね もう現代だ


1921
現在もまたカッコつけばかりの
(くうそくうそ
くそうくうそでござるよ)


1922
「仮面ライダーセイバー」も過剰イメージ
はぎ取れば
古臭い友情物語 子どもをナメテはいけない


1923
言葉もイメージも過剰な
世界の渦中を
くうそを抱きながら誰もが泳いでいるよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1924
言葉が揺れている
風に 人に
現在に 揺れている


1925
ひとりの固有の芯から
幾層も七曲がりして
言葉は浮上する


1926
言葉は人でも心でもなく
人や心でもある
微妙な位置を占めているよ


1927
言葉には血が通っている
こともあれば
人工血液も流れている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1928
言葉が触れると何かどこか
が動く
自分の内だけでなく動く


1929
言葉になってしまった人だから
あらゆるものに
作用・反作用のベクトル場が見える


1930
幻視・幻聴ではなく
街の通りから
強弱の力線が伸びうねりけむっている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1931
季節の通りを歩いている
同じ桜 同じ定型
の内にあっても見晴らす風景が違う


1932
鎌倉や平安のきらびやかな桜の光景が
無音と共に
イメージ展開するわけでもない


1933
見晴らしは心の内景
概念に乗らず 気ままに
いい感じの曲線を滑っていく (あっ桜の匂う)


1934
桜の木の下で靴ひもを結び直していると
遠い吉野の あの
桜の歌が響いてくることがある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1935
〈あ〉が見あたらないから
ほんとは、見とぅろぅのぉい
朝に朝もなく響きの母音〈a〉も無音


1936
無音のグレーの朝でも
舟は出る
みゅずがきゅれ 〈い〉が失踪している


1937
失踪した〈い〉の流れは
縮合して
新たな補修が始まっている


1938
赤ちゃんなら何のふしぎもない
〈あ〉や〈い〉の未明
おぶおぶ んまぁんまぁ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1939
時間の井戸から言葉を汲(く)み
飲んでみる
(うわっ まずいなあ) 確かにまずい?


1940
まずさには生理的・精神的な
二重の慣れが
オールドファッションを嫌がるみたいにドアを閉じる


1941
砂糖を知らない塩あんの言葉も
物珍しいかもしれない
でももうそこには戻れない


1942
同じ人間が同じように
時代に閉じこもって
それぞれの時代を波乗りしている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1943
言葉の街の通りを気ままに歩く
カッコつけた
コマーシャル言葉が付いて来る


1944
小さい子でもどんな人かわかる
肌感覚で
言葉を見通すことができる


1945
ここは趣味通りそこは確率統計通りあそこは法通り
知識ばかりの
言葉通りってうんざりだな


1946
人の手垢と匂いの付いた言葉は
ずっと向こう
沈黙の森に行き来している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1947
時間の海深く潜ってゆく
・・・  ・・ ・・・・
浮上してくる うっぷ 泳法が難しいな


1948
姿形はチャイナブランド
で変身していても
性格は変わんねぇな


1949
今や欧米ブランドも底をつき
それでも
すがる悲しい遺伝子


1950
現在の愛・loveの下の方にも
苦しい〈愛〉が見える
上の方に《あい》を手探りしている

註.吉本隆明『超恋愛論』を読んで。




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1951
気楽な同僚ならスキキライは
(ふうん そうなんだ)
で終わり散り散りになる


1952
ところがお札を配られ
好きか嫌いか
はっきり示せと迫られて


1953
言葉場は制服色に染まり
好き嫌いの
二項対立の峠を言葉はじりじりと越えている


1954
好き嫌いは対話の始まり
もしくは保留
から対話の死まで伸びていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1955
例えばぼくは〈リベラル〉を語らない
たかが百年にもならない
よそ行きの言葉だからさ


1956
漢語もカタカナ語も借りものだ
それは仕方がない
ただ借りっぱなしじゃぼくらの名前がない


1957
明治にも中国由来の〈維新〉が
カッコ付けで
血を流し今なお模倣している


1958
外来性のカッコ付けた衣服では
満たされないものが
内からふつふつと湧いてくる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1959
この列島の問題群は射影される
時空を違えた
さまざまの小風景の中に


1960
精神の負の遺伝子も
歴史の中
手渡され眠り目覚め駆動する


1961
膜を隔てた思い
(重いなあ課長)
いってもいっても膜を透過できない


1962
先ずは警戒せよ ふふ負負負
世界はひとつながり
というのっぺり言葉がゆるキャラで迫る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1963
そこに自然な姿で
いい感じに
小さな花が咲いている スポットライトは当てない


1964
濁りのない言葉の姿に
しばらく
立ち止まる 大きな声では追わない


1965
時には否定のネコの爪は収めて
小さな言葉が
くつろぐ場所がある 瞬


1966
少しでも力入れ過ぎたら
変色する
びみょうな言葉の帯域がある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1967
対面して語り合いながら
交差しない
言葉通りにぼんやり立っていることがある


1968
その言葉を喋りながら
何か別のことが
のどにつかえているような


1969
この言葉を書きながら
別のことを
探索している霧中


1970
何が言いたいのかどこへ行きたいのか
と問い詰められても
答えようもない霧の言葉道




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1971
(アンタなんかキライだ)
と口に出すことなく
そんな素振り自体が去っていく


1972
口に出してしまったら
言葉たちは
関係をガラスのように砕く


1973
ガラスの山を踏み越えてしまったら
言葉たちは
血で血を洗う 黒の閉域


1974
誰もが言葉の人だから
ほんとうのことと
言葉の悪とを荷の深くに沈めて今日も旅ゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1975
赤ちゃんが歌う少年が歌う
青年が壮年が
老年が歌うそれぞれの世界を歌う


1976
人間界は大人の歌が真ん中にどんと座り
主のように見えて
老若男女思い思いに歌っている


1977
人に限らず生きものなら
この大地に居れば
歌を歌うことがあるのだろう


1978
歌は 歌は たましいの
かどわかしではなく
存在の芯からふるえる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1979
〈大文字の政治や思想〉を語らなくても
構わないさ
語らない無言の内に語られている


1980
語られない〈  〉は
語られた
言葉の川に匂い立つ


1981
日々湧いては消えていく
小文字のつぶやきは
血の通う言葉の流れだ


1982
ぶつかり屈折しぶつかり
よけまたぶつかる
無数の小劇が生活の思想を形作る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1983
自分の社会椅子を持たない
若い言葉たちは
コンビニの前に座りくつろぐ


1984
(生活実感や根拠なんて
どうでもいい
ただからだ生き生きしてるからいい)


1985
信の言葉が欲しいから
言葉のからだは
言葉の森の抽象の小道を駆けて行く


1986
(椅子なんて要らねぇよ
バーチャルな
世界のイスがあるからイイッスよ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1987
眠りの峠を下ってゆく
波がゆらゆら
言葉の水面も凪いでいく


1988
ちえちゃんもかいくんも
散らかった部屋から
眠りのドアを押していく


1989
眠りの水辺には
吸い寄せられて
全ての生きものたちが集まり来る


1990
生きものたちとは無縁
みたいに
木の葉が一枚散っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1991
知らぬ間に目が開いている
朝という言葉が
遠くにぼんやり見える


1992
ひとりひとり目覚める
朝がゆっくりと
人の言葉の圏内に入ってくる


1993
言葉の木の葉が 自然に
慌ただしい朝の方へ
舞い落ちていく


1994
(ああ 今日もまた
眠りから
立ち上がり世界の朝にやって来たんだ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1995
その道は吠える犬がいるから
言葉を沈めて
しずかにそうっと通り過ぎる


1996
(つながれているから
吠えても大丈夫)
と思い思われ圧が来る ((信じられない))


1997
どこから恐れは湧いてくるのか
「いつもつながれている」
という確証が得られない不安


1998
この世界には確証なんてない
代わりに
自分は勘定に入れない確率論が脅迫する


1999
苦苦苦苦苦 いつ揺れるかわからない
大地を気にしすぎても
仕方ないさと今日をわたっていく


2000
全ての事象はにんげんの
認識空間内で連結され得るから
コロナワクチンの話ではないということもない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2001
〈あ〉につきまとわれ
ほっとする間もない
心にくっついて〈あ〉心になっている


2002
朝、(あさか)とつぶやいたのに
心の内では
(〈あ〉あさか)と鳴り響いている


2003
お店の人も〈あ〉色に見え
出されたコーヒーも
〈あ〉匂いが立ち上る


2004
世界は〈あ〉世界に変異し
ぼくは絶えず
〈あ〉変換に追尾される




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2005
思いがけず宝くじが当たった
そんな空気で
〈い〉が降ってきた


2006
世界が慈母の方に傾いて
優しげな顔をしている
それでも〈い〉言葉の列には加わらない


2007
言葉の街には破片の〈い〉が降り注ぎ
〈い〉〈い〉〈ゐ〉〈い〉〈い〉
元気与えるぞとパレードしている


2008
足りない足りない〈い〉は足りない
何が足りない?
しっとりした内側がない 空空空空洞


2009
ひと言も語らなくても
語っている
ということがある 中空に懸かる「五輪霧中」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2010
〈あ〉や〈い〉のそれ以前があるから
〈あ〉〈い〉わかる
微妙な違いを追跡できる



2011
さらに振り返ると それ以前は
どうやって
形成された言葉の地層なんだろうか


2012
ことばがとびはねるたべるわらう
ことばがねむる
の向こうから大文字の言葉は寄せて来る


2013
大文字の言葉は網目が粗いから
硬直したことばだけ
きままなことばはすくい取れない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2014
言葉となった心は
もはや離脱して
言葉の街に陳列される


2015
誰が何と言おうと見向きもされなくても
言葉たちは
善悪の彼岸の夢を抱いて眠る


2016
うまく言えなかった心は
うなだれて
心の通路を帰って行く


2017
〈うまく言えないけど〉と付帯する
言葉自体に
ある新たな言葉の街の予感がある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2018
青空を前にして口にする
言葉はないなあ
目にしながら内に〈あおぞら〉とつぶやく


2019
好き合った二人とは違って
長く連れ添った
二人にはただ青空がある


2020
例えば欧米の言葉過剰の
キスやパーティー
とっても気恥ずかしいんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2021
aisiteru → 愛してる →
愛しとーと
とメールすることもあるさ


2022
スマホ時代になっちゃって
気にも留めなかった
のを気にする時代が幕開けた


2023
心と言葉のつながりは
シームレス
プロバイダーはめったに意識しない


2024
緊迫した場面の渦中では
心と言葉は揺れ揺られ
断たれた沈黙の断崖に向かい立つ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2025
言葉の峠を下る
同じ人なのに
こうも匂いや感じが違う


2026
サムシンぐわっ
と言葉をはがす
作り物めいた風が吹いている


2027
その地の水もH2Oには違いない
異人となって
水を飲むワラッが解離している


2028
ダジャレを操るデーブ・スペクター
日本語の味や匂いがしない
長いウィルス罹患期があったに違いない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2029
(んまっんまっ)が少しいい気分
でなかったら
ガサガサ降り積もるンマッンマッ


2030
異国語がヘレン・ケラーの水
となったとき
(んまっんまっ)が鳴り響いている


2031
びみょうな場所
びみょうな言葉
なかなか語り出されることがない


2032
心と言葉が柔らかく揺れている
ほんとうのかくめいは
必ずその通路を通る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2033
シロアリにまた食われている
関係の虫食い葉
身をよじりみどりを求めている


2034
微量でも二人の内から
みどりが
散布されるならば ならば


2035
みどりは過去の内の
葉々であり
未来の内の葉々である


2036
日に映えるみどりの葉々が
揺れている
手の届くか届かない焦れったい




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2037
あと一歩踏み込んだら
何かが
深い所で動き出すような


2038
そんな思いがあって
時には ふと
深呼吸をしてみる言葉


2039
大げさな言葉は入らない
二人の通路を
小さな水の泡みたいに浮上する


2040
朝が水泡に包まれて
弾ける予感の中
言葉は淡い虹色の表情を浮かべてる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2041
「平和の時代」と言うけれど
踏んでしまった
のが地雷ということもあるかもしらん



2042
石橋を叩くにはいいかげん過ぎて
タッタカター
タッタッターとぼくは渡ってゆく


2043
もったいぶるでもないゴリゴリ
合理でもカンカラ管理でもない
・・・デナイことばかりはわかっている


2044
消去法の先に
柔らかな世界線が
広がっているのかどうか どうか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2045
いえないことば 言えない言葉を
言おうとして
バイクをぶっ飛ばす


2046
劇薬のような風に
息が苦しい
言葉は言えない癒えないいえないよお


2047
いえないことば 家ない言葉
まだまだうまくいえない
ホームレスの言葉が冷たい雨に濡れている


2048
「どっちなの?」と言われても
絞りようがない
ぼやけた画像が ほら確かにある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2049
他人のそれには立ち尽くす
あれこれそれと
かき混ぜてもそれには届かない


2050
米流の行動心理学の言葉も
欧米流の記号論理の言葉も
届かない言葉がある


2051
ただ立ち尽くすほかない
言葉の
底流する微かな気配する


2052
言葉にはみちのみらいが詰まっている
潜在している
それはただ感じることしかできないな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2053
ほ はは ふ 言葉が揺れている
し ささ そ
小さく言葉が揺れているよ


2054
ゆらゆらゆら くるくるくる
風がなくても
言葉が舞い落ちていく


2055
言葉の内へ入ってゆく
葉脈が
みどりに色付いて走っている


2056
サ行に足を踏み入れダ行を抜け
ア行から
出ていく 残り香の言葉の響きがある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2057
ふ ふふ 思い出し笑い
の言葉たち
ふと異場所にこぼれ出る


2058
「ふ ふふふ」と切り取られて
解析される
言葉たちは居場所をなくしている


2059
(ふ ふふ)が戻っていく
言葉の旅
には過去が生きて跳(は)ねている


2060
「そこ いや そこではなくて
ここだよ ここ」
隔靴掻痒の言葉の靴たちが行き交っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2061
言葉の鼻が近づく
プリンスメロンの
黄みを帯びた薄緑のなだらかな丘の匂う


2062
言葉のからだの内には
言いようもない
イメージの匂うばかりだ


2063
確かにある 言葉に変身しても
概念の外皮を
ただなぞるだけのような言葉


2064
そこで言葉以前に立ち尽くす
好きな二人と同じく
言葉は沈黙の内にくつろぐのさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2065
シームレスの心と言葉
の間には
超時間の踏みしめられた通路がある


2066
いくつもの継ぎ目が見える時
きみは
心と言葉をつなぐ橋の上に無言のムンクと立つ


2067
この橋を渡っていくのは
仕方がない
おもい無言を抱えて行く


2068
この世に生まれた者ならば
誰もが
この橋を行き来してきたんだね




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2069
喜橋 怒橋 涙橋 普通橋
橋は色色に
染め上げられてことばたちは渡って行った


2070
橋にこぼれ落ちたのは
言葉になれなかった
楽屋の素顔のエロスたち


2071
何事もなかった
ように(どうしたのじゃ?)
ことばは次々と葉を開かせていく


2072
花開いた言葉たちが
シームレスの
言葉の地平に化粧顔で立ち並んでいく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2073
目覚めると言葉の街の
ある通路に立っている
宇宙線がきらきら降っている 見える


2074
天空の△が通過する
通路では
意味を帯びて▲に見える


2075
言葉の街のにぎやかな通りに出る
▲を芯にして
○で包んだものを売る売人もいる


2076
星降る夜の静けさのドアにも
○や◎や□や
ヤンヤヤンヤと音立て来訪する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2077
霧深いアリューシャン列島
言葉も煙る中
弓なりに進む シベリアはまだか


2078
黙する石原吉郎のシベリア
香月泰男の 内村剛介の
ラーゲリのシベリアはまだか


2079
星明かりの下に野営する
星野道夫らの
大自然のシベリアはまだか


2080
無数の黙するシベリア
の時間の中へ
言葉は手をかじかませながら触手を伸ばす




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2081
ふという言葉が落ちてくる
ふふふと波紋が広がる
ふの韻が手肌に広がる


2082
ふという言葉に触れる
ことばのからだ
の冷えた小道に沿って進んでみる


2083
浮 浮 浮 負の符
譜 譜 譜譜
微かな音の譜 負の符と寄せて来る


2084
(ここもすくい取って欲しい
んですけど・・・)
と澱みが漂い寄せて来る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2085
耳は眠っていた あの空に書かれた文字は
〈し〉だったか
〈つ〉だったか判然としない


2086
誤字脱字の可能性もある
あれこれ
突き詰めていくと靄(もや)が懸かる


2087
校正の雪原をアイマイミー
とすべるすべるなら
どうってことないさ


2088
突き詰めといいかげんの
間(あわい)に
今日も朝が動き出している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2089
ものごとを突き詰めていく
Aと非Aに層分離する
と思っているとつんのめる


2090
圧を加えて二項対立
に持ち込んでも
不確かさがあばれるあばれる


2091
論理の石垣にしっかりと
座していたはずの
パラパラと外れゆく言葉たち


2092
時空がねじれていく
言葉たちは
ダリの絵の中の風景を呼吸する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2093
心から言葉までの距離は
不確定 ふかくてい
瞬時もあれば五十年もあり


2094
(ああ こういうことか)
と実感する
いろんな時間の言葉がある


2095
ある時青年は
心-言葉を言ったり来たり
ついにカフカの城の門前に倒れる と思った


2096
と思っても遙か青年を
通り過ぎてみると
迷路は自然と解(ほど)けている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2097
ひとりの内で時間の波を被りながら
言葉は育つ
増殖する変位する


2098
ということは子どもの頃の〈あ〉と
青年の〈あ〉と
老年の〈あ〉とは同じで違う


2099
人類史も幼年期の〈あ〉と
青年期の〈あ〉と
老年期の〈あ〉とは同じで違う


2100
ひとつの場所ひとつの視線から
迷妄だ科学だとか
きみは頑(かたく)なになってはいないか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2101
もちろん文脈の流れがあり
〈オリンピック〉という同じ言葉が
ひとつひとつ違う色でパタパタしている


2102
〈オリンピック〉のスローガンなんて
儀式語さ
中身はスッカラ菅で直ちに空に消える


2103
(おっとう ぶつかっちゃうじゃないか)
〈オリンピック〉を
ぼくは無色で避(よ)ける


2104
(人の世に無意味なものがあるかい?)
という言葉に
ぼくは意味・無意味を超えた世界に静かに下り立つ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2105
子どもなら楽しい〈うんこ!〉
(ひゃっひゃっひゃっキャッキャッ)
みたいに言ってはいけない言葉場があるようなのだ


2106
言葉には見えない鳴子
が張り巡らされていて
一斉に視線が立ち上がって来る時がある


2107
〈すききらい〉から〈好悪〉の場面に
移った時
言葉の服もフォーマル・ウェアになっている


2108
自営業者の田中さんは
気を遣わない
いつもカジュアルな言葉の服着ている(いいな)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2109
Aでもなく非Aでもなく
圏外圏内でもなく
aでも非aでもなく渦中にいる


2110
可能かと問うことは
自覚の過程
渦中を木の葉の言葉が一枚泳いで行く


2111
例えば縁遠い人の結婚式
に出ていたら
言葉は綿毛のように自然に流れていく


2112
濃度の濃い渦中では
言葉はAか非Aか 圏内か圏外か
相変わらず激しく二層分離・対立しているねえ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2113
ぱぱ・・パンツ・・・(いやあ 何だったかな
今はもう
あんまりパンツとかは言わないな)


2114
昔村上春樹の作品の真似して
ボクサーパンツを買って
はいたことがある ちょっと窮屈だった


2115
私の行く量販店はなぜか近年
白ブリーフのみ残して
全てボクサーパンツになってしまった


2116
(なぜかなあ しまったなあ
昔買っていたようなブリーフ!
無いなんて う) アマゾンに注文した


2117
誰にでも取りあえずパンツ
の物語
があるよねえ あったと思う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2118
「波動砲いきまーす!」
ぶおおおおおおー
ってならないんだよな 生身の世界は


2119
小さな心や言葉の破片に
ぼくらは日々つまづく
壮大な善や悪の妄想の圏外を生きている


2120
ドア押して気軽に仮想世界
に入り込み
「反日!左翼!軍事!」 熱中ダンスダンスダンス


2121
身近な人のひと言に
揺れる揺れる揺れるよお
震度6 (ぼくらアリさんみたい)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2122
時には準備体操もせずに
ドボンと飛び込む
こともあるさ 即興詩


2123
もうふだんはほとんど気にしないけど
since 2015.2.2
ほぼ毎日詩 7000余首


2124
こんなことしなくても
振り返れば
生きてるだけで誰でもスゴイよね


2125
毎日が選手たちのように忙しくても
暇でもいいさ
感じいい足どりがあればね




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2126
言葉は恐ろしいものね
遙か始まりに
大いなる自然と出会った その記憶よ


2127
動物たちとさびしく別れ
大いなる自然の真っ只中
鬼面の慈母が信じられない!


2128
しまったしまったもう戻れない
不明と混乱の椅子
言葉は神の物語を招喚する


2129
(なんでこんな世界に生まれちまったんだよ)
たくさんの泡が
いつの時代にも降り積もっている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2130
言葉の街は広告宣伝の時代
(コマーシャル!
って言わないと実情とズレるかな?)


2131
コマーシャル言葉は制圧する
街の隅々まで
浸透しぼくらをソフトに包み込む


2132
(そんな恥ずかしい言葉
で上がり込むんじゃない!)
ぼくは黙ってチャンネルを変える


2133
誰もがふしぎに思わなくなったコマーシャルの異常気象時代
おお あの家にぽつぽつ掛けられていた
カクイわたの看板広告が懐かしいぞ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2134
ぼくはコマーシャル言葉
を使わない
ざらざらごつごつふわふわしてる言葉だ


2135
使わないと言っても誰もが
時代のコマーシャルの海
に浸かっている 浸透している


2136
「わたしはきのう五輪を観ました。」
というきみの言葉は
どんなコマーシャルなんだい?


2137
言葉を分離する 分離分離
独立ってうまくいかないね
どこかコマーシャルの匂いが残る言葉




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2138
時代の服はきみにフィットする
かもしれないし
そうでないかもしれない


2139
いずれにしても微かに
汗ばんだり
冷えたりするだろう


2140
コマーシャル言葉はのっぺり
んりん音がする
見えない世界に鳴子の音がする


2141
コマーシャル言葉はぼくらの身ぐるみはがし
よそ行き言葉の
時代の服を着せる 魔法だね




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2142
(うーん、ちょっと待てよ)
時代の言葉は
母などを通して小さいぼくを貫き蓄積してきたか


2143
コマーシャル言葉は現在の
時代の言葉
今や空気や風に乗ってぼくらを貫く


2144
例えば〈スイーツ〉という言葉
を初めて耳にした日
ビミョウな感情の揺れを覚えている


2145
時代の空気の中 小さなかくめいの
言葉が
物語を包んで放たれる (まんじゅうではダメか?)


2146
いったん空気の中を漂うと
(超ウケる!)
に支えられコマーシャル言葉に変身する スイーツ!




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2147
コマーシャル言葉を見聞きする
ぼくらは気楽だ
制作者たちは必死で冗談を言う


2148
華やかなコマーシャル言葉も
雨降らしや
送風機の風によって構成される


2149
コマーシャルを振り切れない
言葉たちは
無意識の内に意味を込め妥協する


2150
何ものにも奉仕しない
ピュアな 一人っきりの
コマーシャル言葉はあり得るか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2151
(やっとCM制作終わったぜ
あの場面は
ちよっと恥ずかしかったな)


2152
コマーシャル言葉から帰還しても
リンリンリン
この世の〈法〉に触れたなら召喚される


2153
登場人物を脱いでくつろいでいると
コマーシャル言葉の正義から
断罪・賠償請求される


2154
おどけたコマーシャル言葉の
世界の本心って
はっとするほど怖いものだね




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2155
血を流すよりはと競技が始まったか
その流れの中に
誇示も勇気も遊びも湧いてきた


2156
上り詰めてスポーツと呼ばれ
今や張り詰めた誇示ばかりが
コマーシャル言葉とともに花盛りだ


2157
スポーツに興味は無いが
例えば町内で
加わって競技するなら面白かろう


2158
付き人がいてもスポーツ言葉は
一人っきりだ
コマーシャル言葉を背にいっときくつろいでいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2159
コマーシャルの遙か始まりは
(ぼくってカッコいい?)
(わたしパワーあるでしょう?)かもしれない


2160
コマーシャルの階段を上り
メダルをもらう
光り輝く言葉が人々の上を駆けていく


2161
干からびたシャーマンとタヌキみたいな巫女が
「コロナ感染拡大は五輪と無関係!」
と叫んでる ぼくらにコマーシャル言葉は無力だ


2162
(右手と左手で同時に
二つのことをやり続ける
互いに無関係ってあり得ないだろう?!)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2163
「山下くん、コロナだって。『自宅療養』だよ」
「だいじょうぶかな・・・」
(・・・金、金メダルです!とうとうやりました!)


2164
(上からの業務命令みたいなものだから
放送してるけど、チグハグだな
分裂しそう・・・)「コロナ感染が今日も最大更新です。」


2165
コロナオリンピックコロナ
オリンピック
コロナリンピック!ピクピク


2166
対立矛盾の中を潜(くぐ)り抜けると
『自宅療養』の山下君
は手持ち無沙汰に静かにテレビを観戦中




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2167
言葉が記号だったら
世界は
AIみたいにシンプルさ


2168
膨大な情報でも
スイスイスイ
上手に波乗りしていく


2169
言葉は記号ではないから
ひとつの言葉に
くり返し十年でも行きつ戻りつする


2170
記号性過多と情の過多
間(あわ)いから
言葉が身をよじっている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2171
(うわあ このスイカうまいなあ
このビミョウな甘さ)
記号は情に圧倒されている


2172
言葉は情と記号を併せ持つ
無意識的に
瞬時に配合され言葉が放たれることもあり


2173
これはよく計量計算されて
こちらの方に
発射されている言葉だなというのもある


2174
自給自足の世界から
時給の世界へ
言葉は肉太の万葉から神経質な計算の時代に迷い込んでいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2175
(今日も仕事か)
とつぶやきながら
田中さんはいつものように自宅を出た


2176
職場に着いて髪など整え
司会業の服を着る
(変身!)とつぶやかなくても変身してる


2177
いつもの田中さんの口調とは違う
丸くなった言葉たち
輝きと感動の演出路を流れていく


2178
田中さんの中にも
何種類かの
田中さん言葉が横たわっている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2179
遙か心の海から
打ち上がる
言葉にはひとつの夢がある


2180
言葉を放つと人を傷つけ
言葉に触れると
血が滲むことがあり


2181
元気与える・もらうという
ふざけた暖簾を避(よ)け
血の滲んだ言葉の手を手当てする


2182
沈黙の中穏やかな日差しと風と
言葉たちは
ひとつの根深い夢を見ている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2183
手書きする文字たちが
手の呼吸に
合わせて飛び跳ねる


2184
言葉の無意識は
文字たちの
ゆがみや揺らぎに刻まれている


2185
キーボードを飛び跳ねる
言葉の手の
無意識はイメージの森に格納される


2186
なんどもなんども愛につまづいた青年が
イメージの森の
木々をなぎ倒し焼き払っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2187
ゆっくりと建つ家と違って
目にもとまらぬ速さで
柱や横木等が組み合わさって文字が立つ


2188
文字を覚え始めの頃は
なぜチューリップの絵を描くのか
と同じ疑問の舟に乗りカクカク漕ぎ出していた


2189
今はもうシームレス
けれど文字の流れに
ふと覚え始めの頃の不安が浮かぶ


2190
青天のhappyならば
「ハッピー!」
と声にも文字にもこぼれ出るだろうが・・・




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2191
ここまで言葉の道を歩いてきた
からにはもう
口を閉じて歩み切るほかないな


2192
言葉のエンジンふかしながら
この言葉道
を通り過ぎていく若者たちもいる


2193
言葉が絡み絡まり追跡され
(もう とっても苦しくって)
この言葉道から消失しようとする言葉たちも過(よぎ)る


2194
(苦はなってみないとわからない
のかもしれない)
言葉のぼくは ただ黙して苦海に立つ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2195
他人の家を訪れたら
言葉の動線も
少し遠慮がちにカクカクしてる


2196
国際政治学者も社会学者も
テレビに浸かって
テレビ学者に変身して泳いでいるよ


2197
他者の言葉や組織の言葉が
鮮やかな雄鳥
のダンスみたいに見えることはないか


2198
イカレルイカレル
他者や自分の言葉に
イカレルことがあるぞ (小声で Be honest !)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2199
「言葉は、カンケイするぞ!カンケイするぞ!」
とつぶやかなくても
言葉の街でしっかり関係し合っている


2200
ぼくの言葉の気持ちにぶつかってくる言葉
衝突は量子レベル
ぶつかりもすり抜けも無心の揺らぎもある


2201
言葉の街の言葉場は
ミラクルだから
因果律を超えた姿の言葉たち


2202
目に見える言葉たちが
量子領域を通過するとき
無意識の交換が成されているよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2203
言葉を覚え始めた頃・・・
のことは
道が切断されていて行けない


2204
ふと小学校に立ち寄ってしまい
小さな椅子に
座ってみた驚きのような


2205
言葉の時間道は
ひっそりとして
起源をたずねる言葉もほとんどない


2206
起源がわからなくても 言葉たちは
たぶん自然に
起源の浸透している道を歩んでいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2207
(始まりはよく覚えてないな)
と言っても
今ここに生きて歩いている


2208
不明の始まりの方から
見ても
ここから今を見ても たぶん同じだ


2209
〈問うこと〉も〈自体を生きること〉も
たぶん同じなんだ
〈今ここに〉が生きることを促している


2210
〈今ここにあること〉の
過去も未来も
うまく言えないな ただ生きて在る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2211
遙か太古に人が初めて海を見た
高ぶる心の波
を抱いたまま黙って帰って行った


2212
くり返しくり返して
人はある時〈う〉とつぶやいた
自然が彼の中に静かに座した


2213
次々に葉を茂らせ
言葉が育つ
繁り枯れ繁り言葉の村ができた


2214
言葉の運命の道が
開けて
言葉の街がにぎわいだした




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2215
(ええっと あれは何だったかな)
イメージは
ちゃんとわかっているのに名が下りてこない


2216
ネットで調べたら
〈ドローン〉
羽根を高速回転しながら現れた


2217
頭上遙か無音無数の
ドローンが飛んでいる
ぼくは見られているぼくらはそこから見ている


2218
そんな視線がありうるなんて
自在に上下左右
新しい視線が現れる ドロンパ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2219
慣れない銀行のATMの前で
吸い込まれていった
立ちつくす不安たち


2220
ネット注文の振り込みも
(不審なことが起こらないだろうか・・・)
と不安を反復したことがある


2221
慣れ慣れて今ではもう
身も心も
言葉も自然なATM人ネット民


2222
こうしてぼくらはみんな
システムを
体の内にしまい込み自然に接続していくんだな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2223
文字を知らない時は
見た目と音の「みかん」だった
文字とともにいろんなみかんを知った


2224
習い立ての文字のみかんは
今までの「みかん」と違った
なんか作り物めいてしっくりこない


2225
文字のみかんは便利そうだ
生活域を振り切って
自在に遠くまで群れを成して飛んでいけるんだ


2226
向こうに知らなかった言葉の街が
できていた
ほくの生活圏外にあった




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2227
ほんとうはこちらも言葉の街だ
文字はない
沈黙の部屋から入ったり出たりしている


2228
日々の手足の動きや眼差しの
流れに沿って
この言葉の街は身をふるわせる


2229
ここでは眼差しやふんいきが
言葉の街を形作っている
意味はなくても匂いはある


2230
文字の舟に乗らなくても
向こうへは
この地の匂いそのままで行けるんだよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2231
始まりはすべて模倣
から始まるね
言葉も技術もヨチヨチと歩く


2232
模倣の始まりは
少しぎこちない
まだまだ固有値が見えないぞ


2233
模倣をくり返しくり返し
重ね描き 少しずつ
デッサンにイメージの命が点(とも)る


2234
模倣と創造とが
固有の値の
峠で出会っている 点っている


2235
ところではじまりのはじまりの
はじまりは不明だ
果てしない時間の通路の中の黙歩行




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


全体への註.
つきの光に花梨(くわりん)が青く垂れてゐる。ずるいなあ先に時が満ちてて (岡井隆)
の模倣詩(本歌取り)の試み。


2236
やわらかな日差しと風が出ている ああやっぱり行ってきたんだね


2237
夏空の下の水の流れさらさらと そうだねその感じぴったりだ


2238
むこうには雨雲が出ている まだ早過ぎるかもしれないなあ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2239
石けんをつけたタオルを
くり返し洗う
なかなか泡が消えないなあ


2240
刺さった言葉のトゲが
抜いても抜いても
なくならない


2241
もう言葉が尽きるか
と思いきや
昔話みたい次々に転がり出てくる


2242
言葉は命の波立ち泡立ち光と影
生きているなら
点り続ける街灯みたい




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2243
「人は何のために生きているのか」
(ナンノタメニ・・・)
人間や人間界を超えたところに根源解はありそうな


2244
人間界のお約束に従って
直ぐに解の出る
数式や競技もある局所系


2245
少なくとも大文字や
自信過剰の
言葉たちは局所系の解である


2246
(うまく言えないけど)や
(よくわからないな)の
圏内に解は横たわっている感じがする




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2247
X軸とは交わらないから
解はない
とX軸上の視線は答える


2248
いわばあの世の数の解なら
虚数解として
X軸上からも拡張解が見えるよ


2249
数学に限らず
解を求めて
たくさんの拡張と複雑化を歩んできた


2250
たぶん太古も今も
ふと心の裏通りを駆けて行く
この世界の根源解を求めている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2251
赤ちゃんや老人やからだ不自由な人には
効率や成果や
生産性、全く関係ないよね


2252
社会の手綱とってると勘違いしてる
人の壮年期の言葉や論理が
社会を締め上げている


2253
しずかにゆっくりぼんやりの
言葉たちが
制圧されるとヤバいよ


2254
よく噛んでよく考えて
よく眠り
時にはバカをやりにっこり笑う いいね




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2255
小さな子どもは付いていく
親鳥を追うヒナのように
子どもの言葉はアワアワと付いていく


2256
青年は湿地に足とられながら
ひとり圏外へ圏外へ
言葉は不安の服着て離脱する


2257
アジアの専制に虐げられた
貧しい言葉の根は
大人になっても親を呼ぶ国を呼ぶ(ひとり行かんかい!)


2258
(ほうらまた 帰ってきたね)
今度はきみが
親になるんだよ(朝がまぶしいかい)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2259
綿毛がふわふわ漂っている
微妙なナノ風に
位置情報は乱れる


2260
仕事を少しさぼって
ぼんやりと
人の流れや大空を眺めている


2261
どうなのどうナノドウナノと
ナノレベルまで
追及の手が伸びてくる


2262
防戦はナノレベルの
湿地帯に
無言で立ちつくす




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2263
ナノ世界はナノの累乗軌道
を走っている
疑問符たちは後方になぎ倒して走る


2264
苦しげな疑問符の花が
(ドウナノドウナノ)
軌道のあちこちに小さく咲いては枯れる


2265
ナノ世界の極微の宇宙で
(もしかしてビョーキかな?)
追い詰められて空中戦をくり返している


2266
押されるおされるオサレル
しゃれた流行の服着てカッコつけても
土俵際までオサレテイルよ ヤバいね




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2267
欧米並みに言葉だらけに
見えているとしても
言葉の水面下で盛んにやり取りしている


2268
マスコミやSNSから流れ来る
空虚な政治性の言葉
どんぶらこどんぶらこと通り過ぎる


2269
見知った人にはやわらかなあいさつ
スカスカの政治性には
身構える身構えるてるんだよ


2270
コロナ禍でも心には
マスクはしない
できるだけフツーに歩くんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2271
コロナ禍コロナカころなか
(あっ、お父さん
今日は星が見えるよ)


2272
・・・酸素飽和度90%・・・酸素投与・・・
(まぼろしかな
虫の鳴く声が聞こえるような)


2273
私たちは万全の態勢で臨んできましたが
(ガーガーうるさいわよ
もっと静かに遊びなさい)


2274
縄文海進みたいに
世界が傾いている
人々はマスク付けてうつむき加減に歩む




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2275
言葉は今やMRIざっくり
の視線を帯びている それでも
体の巡りと心模様との接続帯がよくわからない


2276
精神分析も心理学も
緻密の言葉の丘から
遙か病の言葉に乾いたのどを伸ばしている


2277
現在の頂から
大らかに滑り降りる
にはまだデッドロックが突き出ている

註.deadlockに誤用のdeadrockも含めている。


2278
気ままな散歩とこの道しかダメ
弛緩(しかん)と緊張の
カルデラにわれらは日々立ち回る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2279
列車の窓にふと目をやると
青年の顔が
うっすら映っていた


2280
駅での見送りの場面のように
照れくさい
椅子に固定されたような不安の


2281
洗面の時ふと鏡面に
ぶつかる心は
他人がいなくても照れるなあ


2282
どうなんだろう 女の方が
鏡面は
ミラクルなふんいき漂うと思う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2283
巫女や卑弥呼の遺伝子みたいに
鏡面には
魔法が潜んでいるような


2284
ぼんやりと見つめている
と世界が揺らぐ
鏡面にひとすじのひかりの道が走る


2285
普通の鏡が魔法の鏡
と二重化する
期待と失望が融合していく


2286
(かがみよかがみかがみさん
加賀美代!)
無言の内の鏡言葉が今日も熱い




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2287
電波の満ち満ちた世界を
言葉も映像も
光束となって飛び交っている


2288
なんのふしぎもなく
電波が
神のような仕事をしている


2289
言葉は光、光は言葉
を越えた峠から
言葉たちは普通の顔して下ってくる


2290
(そのことがなんにも影響しない
ってないよなあ)
手書きの言葉は死に瀕している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2291
手書きが死んでも甦(よみがえ)る
新しい姿形で
瞬時に言葉を刻みつけている


2292
世界は変貌する 推移する
無数の死をすり抜けて
なにげない朝に出会う


2293
一つの死にはいくつもの芽が
包まれている
新しい大気に芽を出し始める


2294
言葉もまたスイーツみたいな
新顔をして
言葉の街を歩き始める




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2295
「もーね、もーね、もーね」
小さい子が
見慣れぬ涙の壁の前に焦(じ)れている


2296
転がしたひとつの小石
がこじ開けた
思わぬ心の風景一つ


2297
頭上を飛び交う言葉たち
小さい子は
大きく重く乾いた風かと思う


2298
軽重、深浅(しんせん)関わりなく
言葉は まず
小さい子、大人、老人で大断層をなす




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2299
鏡にも物の歴史があり
水鏡以来の
イメージの歴史があり


2300
風に揺れた水鏡の
景色が揺れた
何か不吉が寄せて来るぞ


2301
白雪姫に出てくる鏡は
イメージの
映し移す応答するものだったか


2302
今でも鏡は控えている
女たちには
なくてはならないものものしいぞ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2303
光が目に入る 光は光であっても
変異している
ぬくもりと心の向きを作る


2304
ああ いいねえ 日差しが
柔らかい
こんな日もあるんだ


2305
昼間は気にもしない
夕暮れの
木の葉には光が少ない


2306
夜 人の生みだす光が
遙か遠く
眼下に点滅している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2307
見知らぬものに出会う
と身構える
身と心があり そこに立ちつくす


2308
外国人に出会う
と緊張する
見知らぬ音階に身と心が固くなる


2309
足がない手がない
人でも猫でも
身構える 身と心は少しずつ解(ほど)けてゆく


2310
最初から通じ合う
わかり合える
って そんなそんなそんなあ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2311
例えば靴箱の奥
使われない
言葉たちが埃をかぶっている


2312
若い頃はよく出歩いて
にぎやかな街の通りに
言葉の足音を響かせていた


2313
今ではもう古い記憶
忘れられた
片隅でそれでも言葉の夢をみる


2314
(カッコいい言葉たちの歩く音がする
よくフィットしてるかな?)
暗がりで埃かぶったまままた朝を迎える




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2315
時々心の隅で気づいていた
(こんなつもりつもった
言葉たちをいつかは片づけなくっちゃ)


2316
小さなこころづもりは
なかなか歩み出さない
(面倒だな)と風圧に押し止められる


2317
ある時ふと思い立つ
机の上を
ざざっと真っさらにしてしまった


2318
今日の朝の言葉はどことなく
新しい
あたらしいぞことばが しばらくは流れに浸かる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2319
わりと自然に日々通り過ぎる
言葉の流れに
確かに底流しているものがある


2320
時に表面に漂うことがある
けれどけれども
表面を流れ下ることがない


2321
かき混ぜるわけでもないのに
ぽつぽつと
湧いてくる泡たちが見える


2322
これは何の光景か
不明の中にも
確実に進行しているものがある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2323
言葉と同じくお金もまた
時に人を援(たす)け
少しゆったり小舟を進ませる


2324
言葉もお金も握りしめて
少しでも上に立った
と信じる者は鈍い刃を光らせる おいおいきみだぜ


2325
星野道夫のアラスカ記によれば
クジラ漁の後 村の老女は
ネコのように自然に分け前をもらった
 
註.これに対して、例えば、厳しく条件を付けたり本人を恐縮させるような現在の生活保護制度は欠陥品というほかない。

2326
日々のあいさつのように自然に
人と人がSNSの岸辺で
言葉や作物をやり取りする いいね




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



2327
「美しく」「強く」「成長する」「国」
こんな言葉は ぼくは
一度も使ったことがない たぶん生涯使わないな


2328
加速・連結する言葉の矢に乗って
おまえは
どこにたどり着こうというのか


2329
ハリボテのまゆ毛マジック言葉に
ヤンヤヤンヤ
付いていく小言葉たちの楽隊もいる


2330
ハリボテの言葉には詐術がある
敗戦みたいに
いつかは人の広場に破局し屑となる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2331
ここで引き返すか
それとも
突き進んであのドアを開けてしまうか


2332
言葉の街の通りには
たくさんの
ためらいのことばたちがいる


2333
言葉街に漂い吹き寄せる
風の匂いに
あちこち空気を読む気配がする


2334
いいんだよ いいんだぜ
「つまらないものですが」
と遠慮恐縮しなくってもさ 進め言葉よ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2335
CGは無数の色へ
細分化する
谷間では人は途方に暮れる


2336
十数色のクレヨンも
あの頃は
出番を待ちくたびれていた


2337
手によって色と形が
画面に拍動し始める
なんて知らなかったな


2338
絵もまた上手下手
じゃないんだな
生命(いのち)の道行きが違うのさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2339
夏空から秋空へぐらり
移り変わる
恋ばなみたいなドラマが観たいな


2340
子どもの勘のように
〈秋空だ〉
見分けて心に落ちてゆく


2341
秋空がわかるという時
言葉のからだは
黙したままじっと風に触れている


2342
今年の秋は縄文海進か?
あやしい予感の
高波の風を身に受けている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2343
言葉もまたこの大気
を呼吸している
長らくの背骨のゆがみで屈折する


2344
言葉のからだに出入りする
場のドラマは不明だが
赤いブツブツが言葉のからだに出ている


2345
言葉がふとよろけることがある
あるってあるって
年とらなくても確かにあるんだ


2346
言葉道を歩いていると
やっぱり時々
気になる気になる気になるんだよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2347
侃々諤々かんかんがくがく
次々に
言葉がからだからあふれ出る


2348
四角四面しかくしめんで
笑われても
ぼくはこれしかできないんだ


2349
時に七転八倒しちてんばっとうしても
決して
言葉を抜刀したくはないんだ


2350
沈思黙考ちんしもっこうすることもあるさ
それから
外にベクトルを向ける言葉よ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2351
我田引水ガッデンインスイ
具体の現場から
遙か遠くまで離れ来てしまった。


2352
イメージの田の畔(あぜ)から
静かな夜を足踏みするが
水は勢いよく流れ出す


2353
五里霧中ゴリムチュウ
宵闇に
ひとひとひと人の気配が濃い


2354
真剣シンケンと言えば
イメージの
田にキラリ血のにおいに戦(おのの)く




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2355
今日は発声練習です
どうぞ
「あああああ ああ」(其其其其れ 其れかなあ)


2356
今日も発声練習です
どうぞ
「ははははは はは」(母大蛇母オモニ 母)


2357
今日も発声練習です
無心にね
「おおおおお おお」(・・お・翁アリケリ・・)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2358
言葉の街のくたびれた川を
一枚の言葉が
上下しながら流れていく


2359
使われなくなった言葉は
辞書のドアを押して
言葉の街から消えていく


2360
一部の通りでは言葉がお金になる
コマーシャル時代
言葉のからだは素肌がカサついている


2361
カサつきを隠すためには
くり返されるコマーシャルの
イメージのクリームを言葉の肌に塗る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2362
どんなことでも記号論理の圏外の
降り積もった現在だから
イエスかノーかすぐに答えられない


2363
問い詰められて沈黙する
言葉は 言葉よ
はっきりと申し開きしたいのに


2364
どんなゼンにも閉じた小道があり
どんなアクにも
裏返ったゼンの匂いがある


2365
ゼンアクは時代と事情
の波にのまれ
波にあらわれ相対性の岸辺に黙立する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2366
「飲み過ぎたのはあなたのせいよ」
と言われても
上るに上れぬ言葉坂


2367
あらゆる参照は閉ざされていて
ただ ただ
ぼくの言葉が急(せ)かされている?


2368
ほんとうの言葉の場所は
お互いに
違ったレイヤーですれ違っているような


2369
言葉では不可能に感じられる
山がある
それでも言葉は力入れて登攀(とうはん)する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2370
色んな小道に分かれている
言葉よ
日に照らされたひとつの大道を行けよ


2371
世界を呼び寄せ対話する
太古は詩
リズムを付けて足踏みならす詩よ


2372
しっし どの小道通ってもいいんだよ
そこに詩が
深層海流みたいに流れていれば


2373
その時詩はこの全世界と対話する
言葉 あらゆるものを
追い求める手ぶらの言葉の探索船だ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2374
行ったことがない街の通りで
見たことのない
食べ物の匂いを嗅いでいる


2375
聞いたことがないリズムの
楽隊が
通りを揺らして過ぎて行く


2376
まるでぼくがここにいない
かのように
街の通りは自足している


2377
この古い時間の街に
飛び交っている
言葉たちは太古の衣裳みたい




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2378
風に吹き寄せられて
言葉の街に 今も
降り積もる人間たちの苦葉


2379
言葉たちがそこから
表情や
陰影が彫り込まれ立ち上がる


2380
明るさも暗さも切り整えられた
言葉たちは
虚(うつ)ろな表情で通りを歩く


2381
大事故大事件にも慣れて
もうあんまり心揺さぶられることなく
言葉たちが行き交っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2382
無縁な〈未来〉が動き出し
〈みらい〉へ
〈み〉〈ら〉〈い〉へ フォーメイション!


2383
何か なにか 匂い立つ〈未来〉は
〈ら〉〈い〉〈み〉
〈らいみ〉を結びはじめる


2384
不吉な〈未来〉は
〈み〉〈い〉〈ら〉
〈みいら〉が白白白一色へ埋めていく


2385
傷ついた〈未来〉が 〈み〉 〈ら〉 〈い〉 が
元の鞘に収まり
少し新しい《みらい》がはじまる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2386
みなおしてみるみなおして
みるみな
言葉が修正される重いドアが開く


2387
いいかんじでかくいいかんじ
でかくいい
漢字が草のように風になびいている


2388
さようならさようならもう
言うことはない
さようにしておればいい


2389
ぶんぶくぶんぶくわいている
どこから
どうして湧いてくる 言葉よ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2390
言葉が言葉を思う時
抽象の滴
が落ちていく音がする


2391
人間の匂いは微かでも
人間の圏外に
抜け出すことはできない


2392
言葉を追い求め言葉に
追跡され
言葉言葉言葉のブレイクダンス


2393
眠りの中でも言葉は
拍動のように
夢の形で行き来している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2394
むむむむむやりやがったな
風景の
窓枠がゆがんで見える


2395
ムムムムム(夢夢夢無無)
いろんな破片
巻き上げてぼくは進軍する


2396
むーむー むむむむむむむー
むーむーむ
むーむーむむむ むむむむむむむー


2397
それはむりっす今のところむりです
無理道は
だあれも通れませんムリ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2398
なぜだかわからない
言葉の色
を踏んでいる 黄黄黄黄黄(キィキィキィキィキィ)


2399
黄が跳ねる まぶしいな
ああ
黄色のスカートが揺れている


2400
言葉の黄を踏んでいる
苦手だなと思う
明るすぎてぼくの言葉が萎える


2401
言葉の黄から上る
大気の中は
落ち着かないないないない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2402
言葉の青を踏むつもりが
赤を踏んでしまった
不穏な空気が湧いてくる


2403
青あおはまだか赤い
赤いレイヤが
空気を締め上げる


2404
切断された時の中では
受け入れられない
時間ばかりと対面対話する うっ


2405
うああおあおと青がなびいている
まぼろしではなく
確かに流れ出すクラックがある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2406
「ほんとうにタダなんですか」
「本当に無料ですよ
無料キャンペーン実施中!」


2407
「うーん 疑問なんだけど
それだけがタダ?」
「それは無料ですよ」


2408
「うーんうーん どうしようかな?」
「簡単ですよこの書類
に記入するだけでいいんですよ」


2409
文目(あやめ)も分かぬコマーシャル言葉
コマーシャル・言葉へ
分離抽出できない時代に突入している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2410
「それ投稿してたくさんイイネ
もらったら
お金 が もらえるんだよね」


2411
「確かにお金 も もらえるよ」
「イイネが少なかったら
少しのお金しか入らないのね」


2412
「そうだよ だから投稿には
たくさんの
イイネが欲しいなら欲しければ欲しいな」


2413
「ということは 言葉や映像は
いつも変動する
時給の波にサーフィンしてるみたい」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2414
華やかな意味通りの
表舞台では
言葉買いと言葉売りが静かに対面している


2415
売り買いされる言葉の背後には
もちろん市場(いちば)の手やりがあり
身売りを拒む言葉心もある

註.「手やり」は、市場でせりの時、買い手が購入したい品物の値段や数量を指で示すこと。


2416
売り買いの外野では
意味もなく今日も
売り言葉に買い言葉のいがみ合いもあり


2417
実を結んだ言葉たちは
一冊の本の中に
「春の日の夕暮は穏かです」と収まっていく

註.「春の日の夕暮は穏かです」は、中原中也「春の日の夕暮」より。




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2418
詩なんて恐くはないぞと言われても
詩なんて詩なんて
踏みつけ無視されても驚きはしない


2419
表通りでは言葉はバックミュージック、
客寄せのキャッチコピー、
マニュアルの言葉、添え物になっちまった


2420
太古には詩は世界との対話だった
現在でも詩は自己との対話だ
裏通りの詩は二つとも手放してはいない


2421
詩として目立たなくてもいいさ
みんなの言葉がひそかに
二つの対話を続けるだろうから




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2422
思い考え続けていると
あるときふうっと
新しい言葉が湧いてくることがある


2423
おもいかんがえおもい
かんがえおもい
あるときふうっと軽くなることがある


2424
気づかなかった未知のページ
の入口に
新しい言葉はまぶしそうに立っている


2425
新しい言葉の破片たちが
言葉の街へ
その通りをひらひらひらひら舞っていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2426
ぬけていくぬけていく
歯がぬけていく
昨日までの自然さを引き剥がしていく


2427
ヌケテイクヌケテイク
毛ガヌケテイク
髪ノ毛ガ明日ノ不安ニ揺レテイル


2428
抜けていく抜けていく
人が抜けていく
空いた場所には人形(ひとがた)の匂いがする


2429
抜けて行く抜けて行く
ふわっと
風を舞上げ過ぎて行くものがある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2430
夢の中で が抜けている
 が何なのか
よくわからないただ が抜けている


2431
救急車の音がする
確かに
はっきりと耳は聞いている 姿が見えない


2432
きょう きつか た あ
田中 んも
あんまり手伝 てくれ か たし


2433
感覚を越えた峠には
靄(もや)に包まれた
奥深い言葉が確かに漂っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2434
今年の秋はまだか
まだか
残る暑気に行方不明の秋


2435
突然にガラリとやって来て
いつの間にか
ピシャッと消えている たぶん今年の秋


2436
タタタタタ突然のタタン
タタタン
不幸は突然の秋


2437
タベルタベルタベル秋は
タタタベル
ネコも人もタタタベル秋




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2438
若い頃買ったゲーテの
『自然と象徴』
まだきちんと読み始めていないな


2439
買い換えたゲーテの『色彩論』
まだまだ
ゲーテの言葉の森の外にいる


2440
ゲーテの『色彩論』を読まずに
その言葉の道を
森の木々や空気を感じ考え歩くことは可能か


2441
ついに読まれなかった本は
言葉の道が途絶えている
けれど人ゆえに誰かがいつかその道を歩む




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2442
チャンネル変えていたらNHKは日曜討論
10月17日の朝
言葉では何とでも言えるなとチャンネル変える


2443
言葉が語り語られ書き書かれ
数万年
細分化された言葉の街に塵芥が溜まっている


2444
現場の生のものから離陸した
言葉たちよ
イメージの生の世界をさ迷っているね


2445
帰れない 帰れない 子ども時代
進むしかないんだね
沈黙の内の言葉が (わおおおん)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2446
ひとりの宇宙ともうひとりの宇宙
はた目には
同型に見えても違う星々が瞬(またた)いている


2447
通信は光速ではない
時間を掛けて
想像と内省を駆使するんだ


2448
それでも雑音や通信障害もあり
どうして
そんなき・も・ちになるのかわからないこともあり


2449
わからないわからない
シャーマンや巫女さんみたい
コッカコッカと憑かれているきみ おーいきみ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2450
そのドラマを観ても観なくても
きみの世界は
不変か (そんなことはないだろう)


2451
言葉には経済システムの
流れに乗る顔
とは別の顔があり 微美微美点っている


2452
作者も読者もそうして人はみな
経済の峠を下ったところで
生産≡消費をくり返している


2453
精神のシステムの渦中で
言葉たちも
火を点し火を分かちエナジーを吸収・解放する。




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2454
上の方では大きな網が
飛び交っている
ぼくらは例えば秋桜の花揺れを見ている


2455
「あみちゃん」なんてゆるキャラしても
網はArmy
に通じる軍事・制圧を秘めた言葉だな


2456
鼓腹撃壌するぼくらの世界
と直通しない
大網の言葉たちに隔靴掻痒す


2457
いいんだよいいんだぜ
でもしかしけれども
この一時をじゃまするんじゃねえ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2458
コスモスが少し揺れている
風の物語(内からは かぜのものがたり)
どこの内にもあるだろうな


2459
少し揺れている桃桃赤白桃
外目には
河野くんはうれしそうに歩いている


2460
そのコスモスは風の記憶を
日々新たにし
ひとりひとつの風のみちを通る


2461
内側がぼうっと光り
流れている
桃桃赤白桃(まるで地上の銀河)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2462
「コスモス」とつぶやいてみる
無言の内に
イメージ流の 色色に揺れる


2463
こすもすこすもすもす
音の踏み石が
青空の下の野を浮かべては波立てる


2464
ああはかない秋だね
透き通った
大気のなかに冷気が降りている


2465
顔を上げると人間界とは違って
どうにもならない
自然の推移と異変とに包まれている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2466
鼓腹撃壌(こふくげきじょう)なら言うことはない
列島坂2021で
歌い踊りまくる ああいい日差しだ


2467
そうでなくとも歌い踊り
描き書きまくるさ
(だいたいおまえらは何やってんだよ)


2468
ぼくらはわかりやすく言えば無党派
どんな政治集団にも
苦いコーヒーを出すさ


2469
無党派になあなあはない
きちんきちんと
目を光らせ耳を研いでいる


2470
無党派が意味をなくす日には
こちらを向いた
顔顔にお茶でも出そうか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2471
空中を大きな文字たちが
威勢良く
飛び交っている 小文字はうつむく


2472
戦艦みたいな自己意識の
大きな文字たち
硝煙も上がる 小文字はお風呂の掃除中


2473
小さい文字は自信がない
無力である
ではなくって 現実の凹凸を歩む


2474
空虚なイメージのコマーシャル峠
の麓の方
日々自らの足力で歩いて行く 小文字たちよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2475
(どうしようかな)行くか行かぬか
行けば右か左か
行かぬなら家でのんびりするか


2476
どうしようかなと心揺れる時
大方は決まっていて
傾いた針のまだためらっている


2477
ためらいが平均台を進むうち
ゆらゆらと
バランス崩して落ちることもあり


2478
どうしようかなは立ち消えて
《どうしようかな》
とまた奥深くへしまい込まれる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2479
はるかはるか道は途絶え
それでも
微かな感じだけはある


2480
たぶん意味以前の
融け合って
泳ぎゆくアワワ世界よ


2481
水切りのぴょぴょん
ぴょんぴょぴょん
沈黙の水面から言葉が匂い立つ


2482
すれ違い空気舞い上がる
黙面を
風の匂いが下ってゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



2483
世界よ、目まぐるしい世界と
深い水の静けさと
関係なさそうでありありと見える世界よ


2484
し、詩だけでできるか
世界との対話
世界を捉え尽くすこと


2485
もちろん現在までのうごめく世界だ
詩ということは
言葉、言葉で世界を捉え尽くせるか


2486
言葉しかない 言葉がある
この谷間で
詩は、詩は渦中で世界と対話し続けている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2487
あれそれこれどれもが
あって ない
有縁無縁離縁している 無輝命


2488
あれもそれもこれもどれもが
あって
ネガティブな死に瀕した世界 苦苦(クク)


2489
それはそれこれはこれ
と言っても
未分離の流れがある 深芯(シンシン)


2490
もうそれは捨てようぜ
と思っても
相変わらずそれそれそれが選択される 宇宇(ウウ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2491
それあれどれこれあれこれ
ソレソレソレ
言葉たちがしのぎを削る


2492
徒競走みたいに先頭へ先頭へ
抜けていく ソリャソリャソリャア
大文字が降りている憑いている


2493
(小文字たちは後方へなぎ倒されていく
雑草にみえる
みえるみえるぞお ソレソレソレ)


2494
言葉が競争をする?
すると世界は
速度を持った風景に見えはじめる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2495
「ぱっぱらー」前進前方赤赤赤
「ぱっぱらー」
漸進ならぬ全身前進赤赤赤


2496
擦擦擦さっさっさっ
朝露の雑草は
殺殺殺さっさっさっ


2497
上空だけでなく外も家の中もテレビも
何となく
騒々しい波立っている


2498
外からは「雑草」(と見える草)たちは
名もなく気にもせず
今日も青い風に揺れ楽しんでいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2499
鳥には相手を魅(ひ)きつける
羽飾りに
歌あり踊りありダンスダンスダンス


2500
動物界を抜け出した
人間の
歌い踊り絵描く言葉語り書く って何?


2501
ひとりひとり疑問符の椅子に座り
ゲージュツの
底の方で(わおーん)と吠えている


2502
喜怒哀楽の通りを過ぎて
言葉たちよ
世界の正体に目を凝らしている 深沈深(シンチンシン)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



2503
生きものたちが眠る夜
クールダウンして
葉脈がちろちろ流れている


2504
人の心も言葉も脱ぎ捨てられ
夢の中
夜の樹木の呼吸をしている


2505
眠りは凪(な)いだ海
木の葉の舟が
滴を動力にゆっくり進んでいる


2506
眠りが眠りの韻を下っていく
だんだん小さくなり
火が消えていく それは死?




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2507
(もうかないません お手上げです
((言葉ガナイ))
お終いですお終いです)


2508
と思ってもひとりひとり
持ち味があり
まだまだまあだだよと出番がある


2509
何か〈する〉以前にいる
〈いる〉が
この世界の土台を構成しているような


2510
ヘーゲルさんの生真面目すぎる弁証でも
土台無理な
手前にはまだまだまだたくさんのものが〈いる〉


2511
はがしはがせばはがしましょう
かさぶたの先に
たぶんまたはじまりの歌がきこえる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2512
拍動みたいに知らない所を
流れている
川が誰の中にもある


2513
どこをどう流れているか
正確な流域図は
今のところ描けない


2514
ああ あそこを木の葉が
流れている
とふと気づくばかりである


2515
流れている川の
時間の
源流もよくわからないのである




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2516
気ままに生きているようで
下りてゆくと
いろんなクモの糸が張っていて


2517
こんな所にクモの糸が
あ くっ付いた いやだな
と気ままの舞台裏もあり


2518
くちばしが刺さってくる
こともある
他人(ひと)や組織の顔をした干渉よ


2519
人は生きて在るだけで
互いに干渉し合う
波間から〈存在倫理〉も起動する

註.〈存在倫理〉は、9.11アメリカ同時多発テロ事件に関して
  吉本(隆明)さんが打ち出した人間存在の基底の概念。


2520
否定性の「干渉」ばかりではない
上り詰める以前の
はじまりの「干渉」が共鳴波を出し合っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2521
〈ちるちるみちる〉下りて来た
言葉の川を
ちるちるみちると下って行く


2522
タ行とマ行とラ行の川筋が
波が高く
散る散る桜 満ちる満ちるイメージ


2523
イメージの手前では
ちるちるみちる
るるるるると滑り台をすべっていく


2524
子どもらは意味なんか
関心もなく
ちるちるみちる坂をすべるすべる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2525
わからなくても流れて・いる
現在というものが
ぼくの中にも息づいて・いる


2526
いる・夢の時間には もしかすると
あわい青の
空がはっきりと出ているのかも


2527
知らない川が流れていても
あんまり気にもせず
日々飛び石を踏んで・いる


2528
いる・ね (そうか そうだったね)
と振り返っては
またいつものように歩き出す




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2529
どういう座礁があったのか
時に人は呼び込んでしまう
宇宙は人界を超えて深い


2530
この世界も宇宙の小さな島だが
この世界の〈倫理〉
を遙かに超える深宇宙


2531
大いなる自然の猛威に
人はくり返し挫傷する
中から〈倫理〉を生み出し来たが


2532
ご覧の通り依然として足引きずり
われら人界に宇宙を深く沈め
二重の眼差しをするのである


註.


 「ここでとりあげる人物は、きっと、千年に一度しかこの世界にあらわれないといった巨匠なのだが、その生涯を再現する難しさは、市井の片隅に生き死にした人物の生涯とべつにかわりはない。市井の片隅に生まれ、そだち、子を生み、生活し、老いて死ぬといった生涯をくりかえした無数の人物は、千年に一度しかこの世界にあらわれない人物の価値とまったくおなじである。人間が知識ーそれはここでとりあげる人物の云い方をかりれば人間の意識の唯一の行為であるーを獲得するにつれて、その知識が歴史のなかで累積され、実現して、また記述の歴史にかえるといったことは必然の経路である。そして、これをみとめれば、知識について関与せず生き死にした市井の無数の人物よりも、知識に関与し、記述の歴史に登場したものは価値があり、またなみはずれて関与したものは、なみはずれて価値あるものであると幻想することも、人間にとって必然であるといえる。しかし、この種の認識はあくまでも幻想の領域に属している。幻想の領域から現実の領域にはせくだるとき、じつはこういった判断がなりたたないことがすぐわかる。市井の片隅に生き死にした人物のほうが、判断の蓄積や、生涯にであったことの累積について、けっして単純でもなければ劣っているわけでもない。これは、じつはわたしたちがかんがえているよりもずっと怖ろしいことである。」(吉本隆明『カール・マルクス』光文社文庫)

誰もまともにこんなことを言ったことがないような、感動的な言葉である。
ただし、「幻想の領域から現実の領域にはせくだるとき、じつはこういった判断がなりたたないことがすぐわかる」と言われても、人間存在はみな同じ価値だということは現実にはなかなか了解されないような気がする。それほど私たちは歴史性や時代性を背景とする現在にがっしりと絡め取られている。

しかし、宇宙の側から(とても高い高度から)見たら、そのことは確実になり立つように見える。宇宙の側から見たら、私たち人間存在は全て、見えるとして等しく小さな点、点滅する光の粒にしか見えないのだから。





詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2533
いつものように仕事しながら
ふと顔を上げる
呼吸とともにお腹の方に静かに下るものがある


2534
ぼくらはひとりであっても
いくつもの
心の視線を日々向けている向けられている


2535
あ (あれを忘れていたな
まあ なんとかなるか)
とゆっくり収束していくこともある


2536
後引く不安がある時は
深いレイヤを
流れ続けている 時々微かに音がする




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2537
職場の店員さんの元気な声は
自分ちの時とは違った言葉
を使うけど解離ではない


2538
ぼくらは日々平均台
揺ら揺らせずに
いくつものレイアを自然に行き来する (変身!)


2539
物思いに眺めする
長雨続きに続いて
ふとひび割れ解離することもあるさ


2540
だれだってそう誰だって
秋晴れの
急にかげり曇り出している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2541
人は何度でも変身する
仮面ライダー
みたいにカッコ良くはないけどね


2542
日々ちいさなちいさな
物語をくり返す
文字に書き記すことのない 作者だ


2543
(そんなんじゃヤダー!)
若い頃は
仮面ライダーの変身!にあこがれたなあ


2544
生涯の曲線を巡ってゆくと
誰もが
世界の深みを感じる (もう秋か)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2545
やわらかなサ行の通り
を抜けていく
風のような一瞬もあるさ


2546
こちらとそちら
あちらとこちら
ちらちらする違いはまたいでサ行をゆく


2547
慌ただしく時を刻んでいるな
と感じている
ガ行の通りに入り込んでいる


2548
ガ行の冷たい風は
ガギギ ゲゲグ
言葉のからだを締め上げていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2549
我知らずにっこりする
そんなちっちゃい頃もあり
今もどこかでにっこりしているのかもしれないな


2550
意識して自覚して背筋伸ばして歩き微笑む
そんな世界も
ファッションモデルに限らず ある


2551
ぼくらは感じ考え行動する
弓なりの
生涯の方から光が当たっている


2552
いるいる 見える聞こえる世界の
渦中に
どこからか微かに光が射している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2553
人の内には時間の丘陵地があり
下の方から
吹き上げてくる光の粒々


2554
言葉の峠を越えて
(ああいいな
せいせいするな)と背を流れるときもある


2555
隠し味のように散布されていて
自分の言葉であって
自分の言葉でないような張り合わされた不安もある


2556
言葉でも説明できない
イメージや表情
が言葉の湿地帯にはある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2557
「ああ そうでしたね
はい わかりました」
やりとりの下水(したみず)に別の言葉の匂いがある


2558
そんなことまで明るみに
出さなくっても
というおもいおもいもある


2559
されどだがしかしながら
ながらえば
人も言葉も降り積もる水垢(みずあか)もある


2560
洗い落とし日に当てないと
人も言葉も
黒く澱(よどん)んでいくばかりか 人類よ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2561
日々塵界に出入りして
眠りにつく
いずれも遙か宇宙線に貫かれている


2562
確かに宇宙はここではなく
遠く 果てしなく 巨きく
感じられる 日々の意識の重力場よ


2563
塵界にもキモチいい風が吹く
だから
やってられるのさ


2564
塵芥(ちりあくた)ばかりの世界なら
蹴とばさずにおられようか
ケトバスケトバゼケトバスヨケトバゼ

註.父母が頭かき撫で幸くあれていひし言葉(けとば)ぜ忘れかねつる
                       万葉集(巻20 4346) 防人の歌




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2565
言葉もくすみ肌荒れする
しわも出る
(うわあ どうしよう)(どげんもこげんも)


2566
ありますあります言葉にも
良い顔見せる
表現技法があります


2567
言葉の街に行ってみましょう
言葉の化粧法
ぽんぽんぽんと教えてもらえますよ


2568
言葉もね ぽんぽんぽん
ってすれば幸せよ
ぽんぽんぽん ほら見ちがえるでしょう?




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2569
魔術には見つめる錯覚がある
裸の王様が見える
見える者には〈ぽんぽんぽん〉が効かない


2570
言葉は魔術か
魔術でもあったんだろうな
コワイコワイ母なる大自然に


2571
イノルイノレバイノロウヨ
(元気アタエテヨ元気モラオウ)
ほら 柔らかな日差しの慈母になったよ


2572
スサノオみたいな青年になった人類は
横着ぶりを内省してるの?それともアマテラスの悪巧み?
温暖化オンダンカオンダンカカ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2573
オオタニサンオオタニサン
親子で楽しそうに
キャッチボールしている見えます


2574
オオタニサンタノシイデスカ
無数の視線の波に
見つめられる舞台楽しいですか


2575
ソウデスカ ソレハヨカッタ
オオタニサン
あなたの心の空を鳥が一羽渡っていきます


2576
ワタシハ野球ハ興味ナイデスガ
わたしの中にも
鳥が一羽渡っています




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2577
坂ですか・・・無縁坂はどうですか
ああ もう歌われてるしイメージ悪い?
じゃあ下り坂もダメですね


2578
上り坂もダメなんですね
鯉の滝登り?
みたいで二昔前のイメージだからですか?


2579
イメージだけではだめですか
ああsakaね
坂ですか 坂じゃないとダメですか


2580
ふとした一瞬の思いつきもあるけど
バスに揺れ揺られ
イメージ坂を下ってくる saka




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2581
(一人でも多く来て欲しいな)
そんな数ばかり
気にしてもねえ


2582
(一人でも多く来て欲しいな)
そんな日当まで出して
サクラで水増ししてもねえ


2583
苦労していい料理いい話するならね
自然と
人は集まってくると思うよ


2584
相手のハートはほったらかしで
数ばかり
カズカズカズばかりにお熱を上げている現在よ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2585
暑苦しい重たい言葉だけどね
ココは手を抜けない
綿抜きもできない ただ暑苦重に耐える


2586
ソコでは(暑苦シイ)とか(呼吸困難ダ)とか
言ってはいけない
始まりは神だ神がソコに居たんだ


2587
もはや神と言えない白紙の
カミカミの
それでも人形はポイ捨てできない 遠いカミの余韻


2588
(どうでもいいんだよ)と昔は言わなかった言えなかった
家の中には
竈神水神蛇神カミカミガミガミ年中行事


2589
八百万の神々をリアルに感じた頃は
吹けばぶっ飛ぶ人間界
SDGsなんてものにはしゃぎ儲けるなんて なんて




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2590
人の不幸がなくなることがないならば
ぼくの言葉は
常にナノグラムの影を内に持っている


2591
心の原子雲の周りを巡る
オングストロームの
極微の距離を縮めようとする


2592
ぼくの旅の記録がうわべだけの
ものならば
ぼくの言葉は沈黙するだろう


2593
いさかいや戦争がついになくならないものならば
ぼくの言葉は
沈黙の丘陵地を日々上り下るだろう

 註.
言葉としての「第十八願」を意識してみました。




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2594
なぜ詩を書くのか
深みでは
よくわからない 何か流れている


2595
表層では言葉ゆえに人ゆえに
人間界の
圧に促されて書いている


2596
広告宣伝の時代の
裏通り
バーチャル空間を駆けていく


2597
言葉も詩も意味の原を超えたら
人間界のはずれ
無意味の意味に遭遇する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2598
詩はたぶん誰もが感じること
思うこと
考えることを歌うんだ


2599
自分が気づかないことは
誰かが気づく
気づきの通りには誰かがいるよ


2600
眠っていてもことことこと
ことことこと
誰かが詩の支度をしている


2601
朝になると朝食の匂いに
言葉はまた
新しい一歩を踏み出して行くんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2602
テレビの中海辺に二人
虱(しらみ)の話ばかりする少女と
それをふしぎに思う少年と


2603
登場人物たちは ついに
自らの物語のひみつ
を白日の下に知ることはない


2604
この物語もいつかは終わり
次々に
衣裳を替えてはオン・エアされる


2605
虱の話ばかりする物語も
作者たちの
生真面目なやりとりで俯瞰されている


2606
テレビを観るぼくらには
虱の話と
チラッと出てくるメーカー名が過(よぎ)り一瞬溶け合う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2607
スポーツがキライというのじゃない
黙々と走る跳ぶ投げる泳ぐ
じゃなくってカンドウ!カンドウ!って現場離れたら勘当するぞ


2608
旅行やスポーツがない時代があり
内なる火から歩み出て
今や牧歌を超えてあくせく記録に追われている


2609
からだを流れるあついもの
今やカチカチ
デジタル道を疾走している (楽しいかい?)


2610
スローライフ、わかりはするが
手足はeスポーツやるみたいに
現在を熱走して行くんだ


2611
カ・イ・テ・キの裏側には
無数の苦の影が
ククククク駆動している (どうなるんだろう?)


2612
どーすんだどーすんだ?
海面上昇しているぞお!
スンダランド どーすんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2613
PTAでも政治でも・・・でも・・・でも
中にいたら
中に漂うイメージや言葉や規範の服を着ている


2614
圏内からは意識高いか低いか
複雑系は
絞り込まれて単相に見える


2615
圏外には確かに内が見えない
ところがある
それでもしっかり圏外言葉で見ている


2616
(人や政治の濁った有り様は
そう簡単に
晴れ上がりはしないんだよな)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2617
言葉が新しく披露され
無数に着込まれ
雨風にさらされ言葉も疲労する


2618
例えば保守保守保守と
くり返されている
そのうちに言葉の捕手に変身する


2619
保守の日本保守の文化保守の美
ホシュだらけの
圏内にホシュ城が築かれホシュ人が歩き回る


2620
言葉は疲労する人の心も
疲労する
言葉と人との間の疲労波が共鳴している 見える




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2621
言葉は消えたり生まれたり
スイーツみたいに変身したりする
今日も人は言葉通りを歩いている


2622
ああ 言葉がぴかりと最後の光を放ち
魂の火を消す
言葉の街に居てもひっそり死語を生きる


2623
死語となっても死後処理されずに
使い続けられ
保守点検もなく例えば「保守」が泣いている


2624
言葉が死に言葉が疲労する
ということは
人が疲労し摩耗している (マモオーン)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2625
ちるちるみちるチルチルミチル
水位が上がっている
そろそろ出番だよ


2626
チルチルミチルイメージが
森に満ちている
物語の朝が始まるよ


2627
チルチルミチル散る散る
満ちる
森からイメージ波が立っている


2628
木の葉が散る散る物語の
始まりの道が
摘まれたベリーの色香に染まる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2629
言葉と音楽とイメージで
物語を奏(かな)でながら
フィッシング!フィッシング!


2630
コマーシャルはオレオレ詐欺みたいに
自然だから
誰でも知らぬ間にフィッシング!


2631
ぼくの感度は低すぎるから
例えばブランド品
のさばりのさばらせ イミワカンナイ


2632
この深く浸透するコマーシャル時代
ゼロ円の顔したフィッシング!
どこかに無償の言葉や音楽やイメージはないか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2633
言葉音楽イメージの流れが
押し上げる物語
(釣りしてるだけですよ魚釣れてますよ)フィッシング!


2634
(フィッシング?)なあんだ普通の
コマーシャルかあ
びっくりしたな((フィッシング!))


2635
感度感度好感度感-動-
ぼくの感度は作為には
無感度無感度向かんどす


2636
コマーシャル深深降り積もる
言葉音楽イメージだけの
偽ハートが時代を押しているのか か 時代坂よ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2637
昔はねここも泥道だったんだ
ダッタンダガラガ
ガ行通りを歩く歩く


2638
雨の日はザザザジジジ
ズゾゼゾと
泥水の飛沫がかかり滴る


2639
それでもザ行のままで
ザ行のみちを
リズムを付けて進むんだ


2640
記憶から取り出す際は
カッコよく
サ行変換してと注文されてもねえ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2641
静かな夜の言葉の森に
稲光がして
時々サージが流れている


2642
雷はこわいけど歩いていく
タンタタター
無言のリズムが言葉なのさ


2643
記号論理の雨が降り
乾いた概念たちが
潤うことなく次々に倒れている


2644
そんな言葉の森を
長靴履いて
ぼくはぐっぱんぐっぱん歩くんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2645
林の入口に立つ
槙(まき)の木の葉陰に
人形の実たちが見える


2646
夕暮れの濃くなる
入口から
木々の時間の深みを踏んでゆく


2647
身ぶるいの恐れのようなもの
が漂(ただよ)い
足音が妙にクリアーに響く


2648
(もう引き返さなくては)
背の方から
引き止める無言がある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2649
静かな林の中にも
言葉がある
言葉は時間の深みに溶けている


2650
言葉に向き合う時
相手は
人類の表情をしている


2651
軽く足を踏み鳴らしてみる
とんとんとん
時間の深みから言葉の破片が舞い上がる


2652
人類が歩いてきた(ここまで歩いて来たんだ)
恐れの道も たぶん
ぼくの言葉に響き溶けている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2653
遙かな始まりには
a e i au eu iei !
苦労はしてもサ行やウ段なんてなかった


2654
行が引かれ段が与えられ
五十音!
飛んだり跳ねたり発声練習したり


2655
例えば甘いサ行にこだわった
伊東静雄は
硝煙の後再び童話に帰って行った


2656
現在のサ行音は
「オレオレ」と
成りきり童話の中を流れている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2657
言葉の耳を傾けている時
言葉で考えている時
どこか現場を離れている


2658
それって遙かな追憶駅に
向かっている?
〈現在が全てさ〉といっても腰が浮いている


2659
言葉の始まる以前から
ずっと拍動してきている
人類の心臓は不安なんだ


2660
とりあえず〈あ〉〈お〉〈い〉〈え〉〈う〉
拍動する言葉が
今日も発声練習をしている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2661
あーかい羽根クールクル
あーおい羽根シュールシュル
歌い踊ればクシュールクルシュール


2662
心魅(ひ)かれ踊りに混じれば
クシュールクルシュール
世界が飛び跳ねるよ


2663
人間の圏外の生きものたちは
世界に疑問符を付す
こともなくじっと日差しの中に立つ


2664
それでも時には子どもでなくても
クシュールクルシュール
すべての生きものは飛び跳ねる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2665
don don dodon
どんぶらこ
どんどん どんどん どどどんどん


2666
本日は(don)御日柄も(dondon)
良く(dodon)
目出度く(Don)開催(DonDon)


2667
「オズ、知らないの?今流行ってるよ
オズ」(どん)
「オズ買いしない?とか言うんだ」(どんどんどどどん)


2668
「そんなことも知らないのか」(どんどん)
「無知だな」(どんどんどんどん)
(どん どどん どんどんどんどどん)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2669
「そこから入ってください」
はい杯這い肺
「お急ぎください」
わかりました真下増した多他他


2670
「今は山中 今は浜」
はいはいはい
「今は鉄橋渡るぞと」
肺肺肺 杯配輩


2671
「思う間も無くトンネルの」
肺灰敗
「闇を通って広野原」
羽有我唖 宇和吾


2672
「お疲れ様でした」
いえいえ癒えいい絵
「またのお越しを・・・」
いえーい!




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2673
こんにちは和いい天気ですね
ええ枝そうです
ああ有そうでした太か


2674
霧娘さん夫婦が帰って
呼来られたのですか
想それは良かったですね


2675
ああ上の娘さんでしたか香
岡山から等
お子さんたちもね音


2676
二、三日で帰られますか化
良い天気続きで出
良かったですね根




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2677
あんまり振り向く者のいない静かな夜
一滴(ひとしずく)が
水面にゆっくりと落ちる


2678
(しずくがおちてゆく)
音もなく
波紋が広がっていく


2679
(しずくの はもんの)
ゆっくりと
もとの水面に戻っていく


2680
(もとのすいめん? しずかな)
何のドラマも
起こらなかった(ようにそれは見えるなあ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2681
そこでなら(気ままに
鼻歌歌い
ダンスダンスダンス)の小世界がなくっちゃね


2682
時に冷たい大気に
心もからだも
バシギクシャクバシと身構える


2683
ああ温かい日差しだ
と溶け出すと
急に冷たい風に包まれる


2684
だからそこでは心身を解(ほど)いて
(あの人誰?
もかまわずに歌い踊るのさ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2685
泣き疲れて眠りに落ちた
小さい子の
夜は平静が覆(おお)っている


2686
内側には内のドラマの
発火・燃焼・収束
を今日も踏んできた


2687
止むに止まれぬ峠を越えて
幕が上がる
語り手も登場人物たちもいない


2688
小さい子の内のイメージ流
向き合う一人の内で
日々ドラマを反復している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2689
軽軽(けいけい)に判断してはならぬと
重重(じゅうじゅう)に
わかってはいたが重力場の発動があった


2690
広広(こうこう)とした大地を歩む
夢から醒めると
小小とした通りを歩いている まあいいか


2691
延延と続く話も
近近に終わるさ
ほら外はいい天気だぜ


2692
遠遠と近近と
対立することなく
ひとつの視線に収まっているね




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2693
持ち上げたらとっても軽かったので
軽軽軽軽
とつい心の外で言ってしまった


2694
ふしぎそうな視線が返ってきた
今度は心の中で
かるかるかるとつぶやき響かせた


2695
外からはたぶんのぞけないな
軽軽の道を
ぼくはかるがると歩いてゆくんだ


2696
あら黄色の花が咲いている
寒々とした空気の中
菜の花はサムザムサラムと咲く




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2697
誰もが感じ考えそうなことを
言葉で弾いている
(へたっぴだね) まあしょうがないか


2698
上手になりたいとは思わない
うまく言えないけど
上手もヘタウマもぼくの圏外なんだ


2699
ほら 上手には何ものかを踏み台に
跳躍してきた
変な自信のようなものが響いているだろう


2700
下手を越えた下手へ
誰もが弾いている
沈黙と言葉の峠のむこうへ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2701
近づく近づく〈あ〉の電子雲へ
じじじじじ
極微の距離でゆっくり回る


2702
精子みたいに突入する
びびびびび
イメージの命が拍動する


2703
でっかいな綿菓子みたい
無数の
イメージ束に小さな火が点っている


2704
火の点ったイメージの舟に乗る
薄闇の中
次の〈の〉の駅にすべり込む




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2705
たしかに通りすぎてきた
極微の
時間や空間が存在している


2706
(これは病的か?)いやいや
誰もが持っている
時代の自然と社会の深度は同じだ


2707
人は個性の肌を持つ視線から
深められた時代の
自然や社会の深度の窓からものを見る


2708
ふと心の匂いを感じて
肌感覚が
流れる時誰もが〈そこ〉にいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2709
たしかに通りすぎてきたが〈それ〉と指し示す
ことは難しい
ただ量子の揺らぎは感じている


2710
例えば〈たしかに〉と〈確かに〉は
通りすぎる
時空が微妙に違う


2711
〈すっきやねん〉と〈敬天愛人〉も
少年と校長みたい
に違っている


2712
通過を微分すると
〈がらん ごろん〉
と〈ギグラ ギドラ〉ほども違っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2713
スターティングブロックを蹴って
〈う〉の森に
近づく近づく(極微の距離まで?)


2714
頼りはぼくの内に湧いてくる
流れている
言葉の匂い 言葉の肌合い


2715
山原(やんばる)を越えて
久高島に入る
〈た〉の森を抜けていく


2716
〈き〉に止まる 〈ウ・タ・キ〉
御嶽
よそ者のぼくにも少しなつかしい


2717
いくつもの小さな物語の芽生えと
修正と
ひとつの神話になって本道を通る


2718
海に向かって日を浴びても
(ニライカナイ?
神はやってこないんだよなあ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2719
長らくやっている手の動きから
さささささっ
と描かれているように外からは見える


2720
内で動く手慣れた手の物語は
手の年輪の中に
いつでも少し戸惑いつつ更新される


2721
手慣れた上手の線描
にしか見えなくても
浮かび上がる姿は少し中空を眺めている


2722
内と外の間にも
その関係の物語
がきちんと描かれるのを待っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2723
煙る中この一言が言えたならと行ったり来たり
燃えかすの中
一言が倒れているのが見える


2724
その一言を言ってしまったなら
人の間(あわい)に
世界が終わるかもと身震いする


2725
湧いてくる殺意と破局の予感を
深く沈めて
呼吸をゆっくりと鎮めてゆく


2726
たぶん誰もがこの一言に倒れ
その一言に
身震いする危うい世界を旅している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2727
あと一歩前に出ると
古い抒情が
流れ出す あっテーブルに滴


2728
昔は抒情の道があった
どこに通じているかも知らず
泣き濡れた心は言葉を深く散らして行った


2729
演歌が嫌いじゃない
痛切の
深みに座る座り方ひとつ


2730
人と人とは抒情以下
まとまらない言葉の肌
触れたり擦(こす)れたり触られたり


2731
言葉が乾ききっているわけではない
ただフツーの乾湿の
表情をしているだけさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2732
ザボンと音が耳を通過する
知らない人は
耳の中に波紋も立たない


2733
〈ザボン〉、シャボンセボンセシボン
にぎやかな
バーチャルザボン通りの方に流れていく


2734
知っている人はザボンの抒情歌
の手前で
きいろや微かな匂いのさざ波が立つ


2735
厚い皮をむく時の
湿った丘陵の上り下りに
難渋するイメージもやって来る


2736
向こうで絞られる〈ザボン〉の言葉は
一色のイメージへ
抒情の街の通りに飾られている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2737
日々色んな言葉が寄せて来る
ぼくの言葉の中を
通過しては反応を促す


2738
無心のあいさつ言葉なら
言葉の空洞を
青空にして通らせる


2739
コマーシャル言葉なら
微細な媚薬が
散布されている嫌な気分流れる


2740
時には反応を求めない
ガラスの破片のような
言葉たちも通り過ぎて行く


2741
そんなに焦り諦め凍り付く
言葉を抱えて
きみたちはどこへ生き急ぐのか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2742
確かに言葉たちも
大海原と
いくつもの小島を通り抜けてきた


2743
途中急な小島にほっとする
喉の渇いた言葉たちは
清水を求めて砂地にピチピチ跳ねる魚となり


2744
行き先は耳にはしているが
何もない
大海原が揺れ続いているばかり


2745
言葉たちが旅をする
いくつもの
音色の違う大波を越えていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2746
もちろん、イメージの旅さ
言葉が言葉たちを
波間の言葉たちを追跡する 追跡する


2747
先ほどとは少し違ってきた
風が 潮風が
言葉たちの表情に滲(し)みていく


2748
(今日は何か良いことがありそうな
気がする)日和から
吉凶占いの言葉たちがつぶやいている


2749
舟は海流に沿って進む
言葉たちも
揺れながら屈曲していく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2750
言葉たちの中に優しく溺れる
こともなく
縁のようになっている所に立つ


2751
出会う見る交わる感じる言葉
の肌合いには
言葉で分離しがたい微妙なところがある


2752
誰もが足抜けできない渦中から
どんな言葉も
いずれかの場所に立つほかない


2753
時間の深みから微かに舞い上がって
風が出てきた
匂いがする 感じがする さてと




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2754
人々は忙(せわ)しく通りすぎる
言葉の街の表通り
ぼくは小石をひろった


2755
ほとんど人を見かけない
言葉の街の裏通り
わたしは小さな沈黙をひろった


2756
言葉の街にも生産・交換・流通・消費
の風が流れている
コマーシャルなんてと聞き流して歩いている


2757
言葉の街から 言葉たちは飛び立つ
無償のサンタクロースみたい
手渡し 受け取られ 消化吸収されていく




詩『言葉の街から』 新年シリーズ


 謹賀新年


 [言葉の街から] 新年シリーズ

恒河沙(ごうがしゃ)の人 人 人
今年もまた
「おめでとう」「おめでとうございます」灯が点る


色色あったしあるだろうけど
今年もまた
小さな火がちろちろもえているよ


人のはじまりから引き継ついで
内に火を点し
知らぬ間に歩いて来たんだね


あ ぼくもきみもあなたも
歩いてゆくんだね
なにせこの世界の物語の主人公なんだから




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2758
問いかける問いかける
虚空に向かって?
いや、言葉の門に向かって言葉が問いかける


2759
言葉は言葉の舟に乗る
(時にはいいじゃないか)
いい日差しいい空気にくつろぐ


2760
漕いでいるわけではないのに
漕いでいる
感触と水音がする


2761
言葉の水門を潜っては
少し変わった風の匂い
水路を下ってゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2762
言葉がりんごなら同じ言葉でも
色色と違って
映え匂う通りに入り込んでゆく


2763
ぼくの前に置かれたりんご
まるかじり
したからといって本芯がわかるわけではない


2764
作者の無意識の本心は
まぼろしのりんごのよう
実在の領野を捜しても見つからない


2765
ないないナッシング
と言う側で
どこかに溶け込んでいるよなあ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2766
年末のTVの中で
ナスDが
「愛を探しに行く」というフレーズを歌っていた


2767
歌詞検索しても出て来なかったが
「愛を探しに行く」
フレーズの歌が6つもあった


2768
愛は探すものなのか
愛の手前で
ぼくは愛以前からあれこれ思い悩んでいる


2769
歌も言葉も軽くっても
いいんだろうな
重量級のぼくの言葉は愛以前に踏み迷っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2770
(う み)とつぶやくと反響し
無言の内に 瞬時に
うみが湧き揺れ動き出している


2771
脳裡から肌へ
凪(な)いだ海の
潮の匂いも流れている


2772
それを〈フェイク!〉と言うなら
言葉も人も
フェイクと言うほかない


2773
それでも言葉や人の内には
身も心も打ち震わす
フェイクの大河が流れている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2774
現在なら「ただの石 ただの線」
と見ることも可能
冷えたよそよそしい「自然」もある


2775
線が刻まれていく
ただの石なのに
ひとつの波打つ世界が浮上する



2776
こころ波打ちながら
(ふしぎだ)
という思いも重なっている



2777
無機質な自然の素材に
描く 彫る 引っかく
遙か太古から拍動する自然に近づくために




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2778
人の心も描かれた絵も
現在(げんざい?)によって
判定され包装される


2779
それではなにか満たされない
どこか 何か
残余が 触れられないままのような


2780
現在には感じ慣れた自然
以外のものが〈現在〉として
深い所から混ざり込んでいるような


2781
〈それ〉とはっきり指し示せない
何かが いつも 沈黙の内に
深くから混ざり込んできている 気配がある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2782
(さらありやまのふけかぜば
えんやえんやと)
とっとっと無意味な言葉の道に入っている


2783
使い慣れた皿からすべり落ちていく
言葉もすべる
意味の街以前の匂いがしてくる


2784
焼き物以前の 泥をこねこね
楽しそう
まるで言葉以前の子どものじのじのみたい


2785
見たいな言葉以前の
それなりに
自足した世界 日も差しているよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2786
どうしても現在の衣装から
見てしまう
でもビル群も電気も水道もガスもない


2787
遙か太古でも家も火も水もあった
今の眼からは
不便でも自足していたんだろうな


2788
おんなじ現在でも
距離があり
時間の濃度が違えば風景がゆがむ


2789
たくさんの勘違いの泡泡泡
の底流を
人の真の姿が影のように流れていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2790
例えば犬も斜面を滑り下る
子どもみたいに
何度も何度も滑り下る


2791
(このいわのでっぱりいいな)
(このほそみちいいな)
と犬も感じながら歩いているか


2792
わからない よくわからないけど
デカルトの犬から ぼくらは
そんな道まで出て来ている


2793
風が出ている木の葉が揺れる
生きものも
岩や水や大気も日差しを浴びている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2794
まず音の〈き〉に当たり
今までに見た触れた感じた
木々が瞬時にめくれてゆく


2795
〈木〉と書き記す
ひとつの木が現れ
静かに葉揺れをしている


2796
(あ、〈かぜ〉が出ているな)
と〈風〉が
呼び込まれて吹き始める


2797
言葉の街を歩いてゆく
ぼくの足は
見慣れた森の入口に立っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2798
人気(ひとけ)ない森にも小道があり
どこからか
水音が微かに聞こえてくる


2799
色んな木々色んな葉々があり
深く静かに
脈動している 触れて見たい


2800
みどりのつややかな葉
の中へ
葉脈を上り下りできないものか


2801
言葉の舟に乗りすべり込む
ボブスレーみたいに
ひとりみどりの飛沫を浴びて滑りゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2802
木の葉がゆらゆら落ちる
ぼくの内にも
〈木の葉〉が落ちてゆく通路がある


2803
言葉は伴わない 言葉以前の
漂う
ある感じが〈木の葉〉と落ちていく


2804
もう忘れてしまった 遙かな
あれらの光景
言葉を知る以前の 漂い流れ下るもの


2805
止まらない分節と遅れる総合の
世界は
それでも言葉以前と人知れず連結している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2806
見入っているドラマから
ふと目を上げる
ひたすら嘆き悲しんでいた物語世界


2807
リアルとバーチャルとが
混じり合っていく
水面(すいめん)をぼっと見ている


2808
あの素朴な自然讃歌たちは
部屋の上部に額縁として飾られていた
亡くなった者たちのように静まっている


2809
更新している更新している
君の部屋も
自然に契約更新を迫られているぞ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2810
(日々ひたすらに走っているね)
そうでもないよ
ただ言葉とにんげんの宿を探しているだけさ


2811
(少しでもそこに近づければ
道端の
花々にも心安らぐかもしれないね)


2812
いやいやそうではなくって
それらは同時革命
と思うな でないとあんまり世界は暗すぎる


2813
今日も日が差し日が暮れる
言葉は
無数の明暗線を越えてゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2814
(きみは言葉の橇(そり)に乗り
くねくねと
時間の雪原を滑ってゆく)


2815
(時に快速にうっとり
泡立つ 泡立つ心が見える)
冷エ冷エトシテ泡立ッテイルノカモシレナイ


2816
今ハ山中、今ハ浜・・・
滑リハ良イ
美シイ日本ッテ何?全テノ関所ハジャ-ンプ!


2817
(きみはひたすらに何をやっているのか)
無意識ノ
重力場ヲ突キ抜ケテミタイ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2818
木の葉が落ちてくる
見つめている
心の手が自然に伸びてゆく


2819
風は出ていない大気の道を
木の葉はひとり
ひら ひら ひらり と落ちてくる


2820
青天の透き通った大気の中
落ちる葉の
リズムの表情に触れてみたい


2821
(ヒラ ヒラ ヒラ
ヒラ ヒラリ
ヒラヒラヒラヒラヒラリヒラ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2822
田 田 田 田 田 田田 田  田 田 田田
田んぼの中を走る
切り株が残っている 田 田田 田田 田 田


2823
固い 固いなあ 他他他 他他 他他他
アスファルトを走る
土のことを考えながら 他他他 他他 他他他


2824
他 他 他 他 他 多いなあ
多多多多多
独り占め 他 多 他 多 多多他


2825
太太 手 太太手  
力強く太きこと
手 手 手 手手 太 太太太 




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2826
親から見て子は
高台から見て下は
波間の小舟みたいに見えるものさ


2827
現在には靄(もや)がかかっていて
自分の過去は
虫食いの古文書みたい


2828
親と子の物語以前には
もうひとつの
親と子の物語があり


2829
親が子だった時見えた
光景たちが
反転してもどこか疼(うず)いている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2830
いつも知らない顔の〈現在〉が
中心になっている
ずんずんずんと押し退けて立っている


2831
(あのうわたしはこれが〈現在〉なんですが)
あちこちで
色んな小さな煙が上がっている


2832
あなたの〈現在〉ぼくの〈現在〉
片手くらいは結べても
両手は無理だむりなんだよお


2833
くすぶる〈現在〉の共通解
はあるだろう
その深みには不明の個別解群が眠る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2834
(あれ 左足から歩き出したんだっけ?)
自然なことが
気がかりの水面に落ちる


2835
いつもの気にも留めない
重力から
気がかり通りへ波紋が流れる


2836
(気になる ならない 奇になる
ならない
木になる ならない 器になる ならない)


2837
越えられないいくつもの関所
泊まれない
閉ざされた宿屋 というわけでもないが




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2838
現場が終わってしまって
言葉は
追いかける追いかけるんだよな


2839
現場は 終わった
終わってしまったんだ
と風が告げても終わらない残骸がある


2840
終わらないものが言葉の舟に乗り
下ってゆく
現場感をたどるようにして漕ぐ


2841
ひたすらに漕ぐ 漕いで
漕いで
過去の自分の近傍を巡り巡る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2842
そこできみは何に出会っているのか
(わからない)
きみ自身には たぶんわからない


2843
くり返しくり返し出会う
(言葉がない)
水面には霧が出ている


2844
嫌いな色や好みの色の中から
(ああ これこれ)
いつものイメージが引き絞られてくる


2845
きみの好きや嫌いやどちらでもない
にはたぶん
ふかいふかい由緒が刻まれている (うっ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2846
うつかうつかうつうつか
(越えてしまった)
しまったしまった閉まったよ


2847
思い当たることは数々あり
(うつの葉が降り積もり)
うつうつと繁ってしまった


2848
閉まったものは開くかもしれない
(一縷(いちる)の望み)
芯までうつのうつをうつうつのうつが


2849
うつのうつはうつうつが
(うかうかと来てしまった)
うつのうちみうつうつうつみ


2850
うつぞうつぞ打つ打つぞ
(退路なくなくなく)
うつぞ撃つぞ撃ちてし止まん




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2851
いつものように渡っていく
風の道には
今朝の匂い今朝の顔がある


2852
誰にも関係の場所があり
あるあるの岸辺
に踏み入ると遠く鳴子が響く


2853
ドラマのような日々じゃない
それでも
見えないドラマが深みを進行して行く


2854
風の道にあるものたちは
風圧を受けている
うっ つっ 葉葉はゆらゆらと揺れずふんばる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2855
揺れる ゆれ る ゆ れる
微妙な どちらへ
どんなふうに 倒れ込むか


2856
期待や希望とは違う
でも通っている 道筋の
木々が陰ったり日が差したりしている


2857
人間界を超えた
宇宙 うちゅ う う ちゅう
時には果てしない深みにはまる


2858
でも重力の中心とも言うべき
この小さな世界
わけもなく鼻歌歌い歩むんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


 







 ※この詩を書いていて、ふと昔読んだ宮沢賢治の詩「蠕虫舞手」を思い浮かべた。




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2863
若い君達の前には
無限の可能性がある
なんてことは話半分さ


2864
美しい伝統文化
なんてなんてなんてね
何カッコ付けてんの


2865
貴族は曲水の宴
とイメージ
しぼりにしぼっても灰汁が漂う


2866
校長のマニュアル通りから来る
長い長い長あああい
話はひと言で良い みんなしっかりね


2867
昔々も今といっしょさ
清濁混じり合って
人が行き交っている人通り




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2868
もう言葉はない
峠の向こうには
まだまだ言葉原が続いている


2869
はっきりした意味を放っている
わけではない
日差しの中言葉たちが葉揺れしている


2870
(そちらの言葉の服は
脱いでみたら)
こと葉たちがささやいている


2871
もう言葉はない峠の向こうにも
言葉の芽が出ている
忘れている親しい世界がある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2872
上から見た金鉱みたいな招き猫のサドキンザン
コマーシャル言葉も良いけどさ
ぼくら(あっそう)と歩み過ぎる


2873
佐渡金山は語らない
言葉に呼び出されたままに
佐渡金山はイメージのショータイム


2874
佐渡金山、と言えば佐渡送り
よく観る時代劇に
時たま出てきて不幸の影が流れる


2875
今とは逆転した農業中心社会で
柳田国男は〈農の感動〉を記した
ほとんど触れられない坑道の中の言葉に触れた


2876
イメージの佐渡金山に触れなくても
言葉は触れている
坑道の喜怒哀楽の破片をすすぎ分ける




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2877
言葉を探索している
わけじゃないのに
ふいと言葉が降り注ぐ


2878
修行するぞ修行するぞ
修行するぞ
の世界内でもほっとくつろぐ時はも


2879
右に曲がるぞ右に曲がるぞ
右に曲がるぞ
と 真っ直ぐ進んでしまった


2880
明日晴れるかな晴れるかな
晴れるらん
らんらんらん走り出してしまった




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2881
太古には言葉があり
カジュアル言葉以外には
詩しかない時があった


2882
詩 詩しかないとは思わなかった
詩が 詩の 詩を 詩から
ナマズ世界をつかまえようとした


2883
ヌルヌルと言葉の手を
すり抜ける
こともあった(確かにあった世界)


2884
カミカミの言葉でも
それでも言葉と世界は
それなりに和解していた(生臭い おもたいなあ詩)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2885
もうだめかなとわかっていても
死の知らせは
夜中の電話みたいに急に訪れる


2886
見知った人の死には
ガクリと
内の方で何かが小さく倒れる


2887
そうして元を絶たれた
波紋が
遠い記憶のように揺れている


2888
たとえふざけた野郎だったとしても
死は 詩は
しずかに自然に着地する 無むむむ む




詩『言葉の街から』 対話シリーズ

★2015年2月2日からほぼ毎日詩、8年目に入ります。

2889
にんげんはもうここまで
来てしまった
しまったんだからね ああ空の青が深い


2890
真っさらな白紙から始めよう
なんてね
無理無理むりなんだよ


2891
真っさらから始めてもいいけどさ
必ずや
敷かれた道に引き込まれる


2892
紋切り型の「未知の未来」なんてね
カッコつけても
透明な言葉警察が追って追って来るよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2893
あ 読み返したはずなのに
「岩場知る」
と書いてしまったしまった


2894
追跡網は整備されてる
監視カメラもバッチリ
それでも匿名の闇に紛れて暗躍する


2895
(ちょっと違うような気がする)
追跡・捕捉・排除
完璧の国でも人は「犯罪」に入り込む


2896
(人の有り様の自然さよ)
重たい大気に
もまれもまれて起動戦士よ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2897
じりじりと自力は山に
上って行く
言葉の風圧を押し退けて行く


2898
行く行くは山の頂の
磐石に
じりじり自力は夢を見る


2899
途中で転(こ)けた小自力たち
怨嗟(えんさ)の
声が眼下に響いている


2900
(自力全開自己責任
競争狂躁急失墜
頂には少数者 何かちがうよなあ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2901
転げに転げた小自力は
のぞき込んでしまった
沼に殺意を抱いて沈んでいく


2902
打ちひしがれた小自力たち
そのときふうっと
どこからともなく他力がやって来る


2903
たたたたた タタたたタタ
多多他他手手
あっ 横並び 手が伸びてくる


2904
浮浪雲(はぐれぐも)みたいな他力の
大気に浸かっている
(ナニコレ? ワスレテイタ) 反転した世界に立っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2905
自力と他力は対立すると見えて
自他力の
圧(へ)し合い折り合い織り合いしている


2906
自自時他他他自時他時他時他時
ひとりの岸辺
寄せ来る〈他〉と湧き上がる〈自〉の


2907
表面は自他に濁っている
ようでような?
深みでは自他がからまるからまりん


2908
カンカンガクガクの玄関口から
入って行くと
分離・対立たちが溶け合っている流れがある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2909
ふと気づくことがある
うまく手が届かないけど
背中の感触のようなものが


2910
追跡妄想でもなく
確かな
ある別の流れが微かに微かに


2911
感じる時がある
並行世界の 微かな
相互浸透がはじまる時がある


2912
無意識の流れみたい
見たいと思っても
個の尖端で微かに触れる?




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2913
例えば歯が痛むくもり続きの
日々ならば
・・・・・・・とこらえてゆく


2914
身近な者の不運には
たださりげなく
-------伴走する


2915
この大地のどこかで不幸に
嘆いている 人人人
☆☆☆☆☆☆☆時には心の内で無言の手を合わせる


2916
どんな生き物であっても
不幸の影には
///////うな垂れて立つ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2917
かげがさしている影が差している
宇宙の
影が差している無意識みたいなそこへ


2918
ほら影が差しているね
影を踏むと
ひゃっとした温かみの中に宇宙がある


2919
〈ひゃっと〉に捕まるか
〈温かみ〉に捕まるか
で宇宙像が分かれていく


2920
こうして誰もがふと
見知らぬ人の顔をした
宇宙に会う会えば会いなされ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2921
同じ通りを歩いている
昨日と
景色に違いはなさそうだが


2922
思い出せない昨日の
通りの小物語
けれど何か今日と違うなと思う


2923
過ぎ去り過ぎ去る過ぎ去れば
時は 今
今が全てと思う 思ってもおもい動く


2924
今から下ったり上ったり
時間の流れに
浸かってしまう 今を生きる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2925
もめ事もなく胸騒ぎもなく
歯の痛みもなく
しぜんなら自然ならさ、もう言うことないぜ


2926
なんてね若い頃には
わからないか
ちっぽけに見えることが貴重品に感じられる


2927
過ぎてゆくことに追いすがる気はない
ただ無量のおもい
この世界の方へ返すんだ


2928
どうでもいいことはドウデモイイサと言い
そんな若い頃の口癖みたいに
この世界のリンクを気ままに滑っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



2929
今の世の中の主流(と思い込んでいる)の
言葉や論理は
欧米の波をもろに被ったもの


2930
古代なら先進中国の大波
もろに被って
上を下への大騒ぎ 集落にもトリクルダウン


2931
もちろんよそ行き言葉や論理の発生源は
今も変わらず
システムの管理者・守護者を自認する者たちだ


2932
働き盛りの大人の言葉と理屈が
その哀しい汚染の言葉が
天下統一家内安全しているのかな


2933
昔より威勢良くなっても
女子供の言葉は
あぶくみたいにしか見えてないんだろうな


2934
けれどけれどもだけんども
真主流は
小さなあぶくたちが軌道修正する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2935
同時代の中から抽出すると
スペクトル帯へ
子どもも青年も大人も老人も・・・


2936
男も女もLGBTも
抽出されて
言葉場の位置、分布、様相、権力素に変換される


2937
人の好いおじさんおばさん若者たちは
権力線を共に引き絞ることなく
例えばそれぞれの事情で家計消費を引き締める


2938
世代的には働き盛りの「勝ち組」の大人が
階層的には経営者や学者評論家が
強権力線を張り巡らせ暗躍して
社会の主流を制御制圧していると信じ込んでいるが


2939
寡黙な真主流は深層海流のよう
じわじわと
無心に表層の方へ染み出している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2940
ほんとうは良い天気の下
寝転んで
日差しが(ああ あったかいな)とつぶやくだけでいい


2941
けれど世界はおおっぴらには
そのようにできていない
そんなふうには稼働していない


2942
だから世界の縁に立つ者たちは
髪や服をいじったりして(いじったり?)
受け入れられない世界に反抗する


2943
外からは彼らが「いじっている」
と見えるのは
世界に居場所を据える重要儀式かもしれない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2944
歩いていると前から
風も当たる
はっと謙(へりくだ)りと横着の間を行く


2945
風を受けて上方へも
下方へも
進まないとすれば自然な橫超か・・・


2946
そんなに意識することなく
身についた
自然の流線に沿って進むんだ


2947
風当たりがあれば誰だって
避(よ)けたくなるものさ
自分だけのはっととりっく!




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2948
昔々子どもの言い草の
「いつどこで何時何分何秒にぼくがやったと言うんだい?」
というひねくれた応答を目撃したことがある


2949
そんなに汲汲と問い詰めて
さらり応答できる
ようには世界はできていないから笑い転げる


2950
9+9が18もあるかもしれない
2も0も
あるいは3に成る場合もあるかもしれない世界


2951
ちゃんとやることを正義とした
秒刻みで稼働している世界
の通りにはオフのオフレコの人々も通っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2952
「歩いている」と書いた
後をたどる
(あ るい て いる)だれがどこをどこへ・・・


2953
歩いている時走っているものはないか
遠く あるいは 深く
たたたたたと走っているもの・・・


2954
歩いている自分の足音に
重なってくる
音がある響きがある


2955
たたたたた田田他他他田田
他手他手多手
たたたたたと通りすぎてゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2956
ゆくゆくはどうなるものか
わからない
薄暗くなった道でもひとり行くさ


2957
(あ ゆうひがきれいだな)
という出会いもあり
夕暮れひとり、嫌いじゃない


2958
意外な出会いもあり
思い解(ほど)け
思いの思い 思い野がひろがり


2959
夕暮れのゆるやかな風に
思いなびいている
重い思いは深くに静まっている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2960
誰が成し遂げてもかまわない
じんるいだもの
発明も発見も精神や物質の開拓も


2961
ああいいな 清清するするな
こんな道
こんなものがあったなんて (いい感じ)


2962
だけど世界は〈経済〉に隅から隅まで
エンクロージャーされて
スピード感の時間と貨幣の吐息をついている


2963
主流には表層と中層と深層があり
表層が全て
のイメージではなんか違うんだよな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2964
時代の表層の重力を
感知して 街は
アクセクカタカナ語に塗(まみ)れている


2965
時代の表層の重力場を
察知して あちこちで
アクセルはググんと踏まれていく


2966
大都市の交差点を行き交う
見慣れた光景 人 人 人
の深層では途方に暮れる無言が響いてくる


2967
あらゆる牧歌が墓地に沈んでいる
深みで感じながら
もやもやの中前に進むほかないか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2968
もやもやからなだめられることなく
鋭角の言葉が
カクカクガシャン飛んでは墜ちる


2969
くり返しくり返す心の内は
(だからあ・・・)
の無言が冷たく積み重なっていく


2970
越境した者はカクカクシカジカ
に背を向けて
例えばそれぞれのモーヤモーヤ教をキツく打ち立てる


2971
目はあれども眼は見えぬ
耳はあれども何も耳に入らぬ
閉・じ・ら・れ・た おおサンタ・ルチアよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2972
(救いはあるのだろうか・・・)
この重たい閉域に
光は差すか ひかりは


2973
ふいと出る歌の破片
水面に
きらきら輝いている 見える


2974
(サンタ ルチア
サンタ ルチア)
ふしぎな念仏のように歌っている


2975
サンタルチア サンタルチアよ
舟は 舟は
どこで待っているのか どこへ向かうのか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2976
目をつぶると静かな舞台に
下りてゆく
色色の細い流線の束が流れている


2977
たぶんドラッグとは違って
静かなそれは静かな
舞台が明滅している


2978
そうか 旅は 旅は空間移動ばかりではない
ここから
この時間からダイブする


2979
(あ はるかな記憶の海の
匂いする)
サンタルチア サンタルチアよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2980
無言ではあるが
すれ違う人
道行く人にあいさつしている


2981
時にはそういうこともある
寒い冬日の
晴天の日差しの下


2982
世界がぜんたい曇り日でも
ここだけは
そこだけは 清清するな


2983
近く遠く 曇り日続きの空洞を
歩いている人々がいても
きみは(・・・・・・)の無言のあいさつしかできない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2984
世界の空中戦・情報戦、上気したテレビの神経反応よりも
きみの心に
冬の木の葉が落ちていったこと


2985
たった一枚の木の葉
ひんやりひらひら
うっすらと心の空洞を照らしてゆく


2986
家族の 社会の 国家の 戦争では
大事なことが語られない
いつも大声が場を制圧していく


2987
制圧下でも魂までは制圧できない
ひとりひとり身をよじるように
新しい芽は小さなみどり輝いている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2988
人間のこの世界線の彼方に誰もが
自分なりの「雨ニモマケズ」を
思い 描くのだろうが


2989
冷たく分かれていく
断層の手前で
かなしみの手を振っても


2990
この世界にはどうしようもなく
ひとつに決まっていく主流 深く
蠢(うごめ)く底流があり


2991
人の世界の絶対性の流れに
「雨ニモマケズ」は
直面しもがいているはずなのだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2992
うっすらと無駄な足掻きとわかっていても
精神の力学は 西南戦争へ
思い悩み引き寄せられ動いてしまう


2993
もはやもうリアルな戦争の時代の
峠は越えてきたのに
まだあちこち火の手が上がっている


2994
関係の絶対性をごり押ししたら
ゆくゆくは
その場に引き出され新しい光景を目にするぞ


2995
世界に不幸があっても 普通に
あそびはしゃぎまわっているのもいい
それも知らぬ間に世界に拮抗してはいないか


註.
心の中で、普通の人が「俺が総理大臣になったら
こうしようと思っている」ということをもてたな
ら、それでいいんですよ。あとは何もする必要な
いから、遊んでてください(笑)。
 (「吉本隆明インタビュー」 季刊誌『kotoba』2011年春号(第3号) 小学館)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


2996
沈黙の内は 外界の肯定か
否定か 無か
ムカムカしても清清しても黙って内に居る


2997
そんなことは誰にだってあるさ
言ってもしょうがない
と沈黙の内にこらえる


2998
そんなことは誰にだってあるさ
言うにはもったいない
と沈黙の内にひとり安らう


2999
沈黙は晴れがましい金銀銅と関わりなく
異次元で行動している
激しく行動していることもある ジャンプ!




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3000
(空をこえて ラララ 星のかなた
ゆくぞ・・・か)
この未来からの言葉の舌が苦みを感じている


3001
(どんぐりころころ ドンブリコ・・・)
どんぐりに遠く
けれど今日は不吉な予感


3002
(汽車 汽車 ポッポポッポ・・・)
現在の
言葉の駅から電車が滑らかに出ていく


3003
(赤い夕日が 校舎をそめて・・・)
気恥ずかしさに色褪(あ)せても
きっと今も上気(じょうき)した心揺らす高校三年生




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3004
「若者が今一番求めているものは」
とくくられる時
くくられない若者が手は上げないでいる


3005
「この中で何が欲しい」と聞かれれば
確かに
「ギガ」かもしれないかもしれないかも


3006
それを持っていない者は答えようがない
ああいい天気だ
さてと 海にでも行くか


3007
誰もが無数の声なき声をくくってしまう
こともあるかもしれない
時にはくくれない浮雲を思い浮かべたがいい




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3008
薄明かりの下グレーの服を着ていたら
そりゃあ肌も心も
沈んでゆくさ老い見え気分


3009
明るい照明の下明るい服着ていたら
肌も心も言葉も
起き上がる若見え気分


3010
おんなじ人でもそんなにも違う
気分気分
場が大切だね ばきぶんきぶんば


3011
コマーシャルの誘い舟に乗って
出て行く
それもいいさ あ 花だ花だ若見え気分




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3012
冷蔵庫の中に卵たちが
静まっている
そんな日々が気づきの外を流れている


3013
ドアが開いて劇が始まる
朝がある
卵の物語である 卵卵卵卵卵卵卵


3014
きみのイメージの中
ころころころころ
卵が移動している配列を組み替えている


3015
二人の内で火の手が上がる
許容の線から
あふれ出て行く物語の地平へ

 註・町田康「夫婦茶碗」P33 新潮文庫

例えば、オムレットが食いたくなって、妻に、オムレットを拵えよ、と命じたとする。傍らで小説本かなにかを読んでいた妻は「はい」と好い返事で立ち上がり、冷蔵庫の扉を開ける。ここだ。ここが重要なのだ。と、妻の手元を注視していると、ほらね、いわんこっちゃない、妻は、いたって無造作に、鶏卵トレイの奥の方の鶏卵を取り出しているのである。わたしは再三再四、口を酸っぱくして妻に、鶏卵使用の際にあたっては鶏卵を手前側から取ってくれろ、くれぐれも奥から取ってくれるなよ、と注意してきたのだ。





詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3016
以前はぼんやりと見ることはあっても
触手を引っ込めて
人を気にも留めることなく歩いていた(時が動いている)


3017
今 横断歩道を渡っている
今 今 今
今 商店街を抜けていく(時の岩盤が崩れ続ける)


3018
ぼくの触手がふるえている
見えない空気に
少し病的に構えている (今)


3019
ひび割れた時間と張り詰めた通り
あの丘を
手前でゆるやかに耐えている (今)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3020
人も猫のテリトリーみたいに
狭い けれど
境界から相互浸透してしまう


3021
閉まったと思っても
もう遅い
苦韻の積もる悔恨の日々もあり


3022
知らない人の煩悩や苦に
静かに 深く
共鳴してしまうこともあり


3023
春先のあったかさの匂いに
ひとり
心解(ほど)くこともある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3024
言葉はAやBやCの衣装をまとい
現在の
流れの中に浸かっていく


3025
Aが閾値(いきち)を越えてしまうと
流れ出し Bが揺らぎ
AとBがその場で共振する


3026
AがAAAならBはBbbB
同調し 移調し 異調する
押したり引いたりABABbbA


3027
AがAAAでもCは∃Cのみ
∀AAAと大声出しても
Cは無言で∃Cを示すのみ

註.∀(全称記号,全ての、任意の) ∃(存在記号,存在する)。
   いずれも数学の論理記号。




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3028
今年も梅が咲いている
木の枝枝に
白小赤白小赤白白白小赤 しろあかしあろか


3029
今そこに梅が咲いている
黙した枝の内は
はるの水がりゅうりゅうと流れているか


3030
梅が 咲いている
自然の内では
ふしぎはないのかもしれないが


3031
ぼくの中でも梅が咲き出す
イメージの流れに乗り
(ああ いまここに うめがさいている)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3032
(ああ いまここに うめがさいている)
ああ ここに
ああままこうめささいいん


3033
言葉にならない道を
歩いている
歩いているか流れているか


3034
いることだけは 確かである
そんな道を
確かな温みだけを踏んでゆく


3035
言葉にしたら消えてしまう
淡雪が
降り続くはるのみちがある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3036
確かに何か言わなくてはならない
時と場がある
黙っていたらわからないではなくって


3037
言ってもしょうがないおもいの峠で
立ち尽くす日々がある
黙っていたらわからないではなくって


3038
発語と沈黙とが等価に振れる時
指針は
この場に この場を超えて 深く深く


3039
後は気ままに振る舞えばいいさ
囲まれた世界の内で
空気を突き抜ける飛びっきりのダンス!




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3040
一つの言葉で判定される
ことがある
(きみはいつもそうなんだから)


3041
確かにひとりの語る言葉は
どこか固有の
同質性が深みから匂う


3042
だからAを語る言葉は
BについてもCについても
同時に語っていることになる


3043
(それはちょっと違うような気がする)
向こうから来るものに
ひとつの劇を潜(くぐ)って言葉は立っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3044
言葉は人をつなぎとめる
人は言葉を
ぴったりと着込んで見える(ぴったり?)


3045
時にはそこが気になって
なりなりて
ザラザラの感触に耐える


3046
なんにも気にならないということが
ただそれだけで
ステキなお気に入りの服の気分


3047
肌に触れる言葉の揺れる
他人に語りようもない
微物語が日々生まれては泡と消える




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3048
虔十はひとり木を植え木を見る
作者も語り手も
いない所で (ああいいな 清清するな)

註.宮沢賢治、童話『虔十公園林』


3049
作者は虔十を連れ出す
意味と価値の
組み替えられていく広い世界へ


3050
それでも虔十は
ひとり
木枝を見てはあはあは笑い楽しんでいる


3051
言葉は人を連れ出しつなぎとめる
けれどけれどもしかあれど
言葉の内ではひとり泣き笑いしている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3052
現場、現場現場現場と
玄馬が走る
ぬかるみの現場に足取られ


3053
変色し変な匂いの立つ
現場感
玄馬に寄せて来るゲンバ感


3054
確かに拙者は現場にはいない
直接の現場ではないゆえ
駆けつけようとも思わぬ


3055
遙か戦火に心寄せ痛まぬわけではない
されども
「紅旗征戎(こうきせいじゅう)、吾が事に非ず」

註.「紅旗征戎非吾事」(藤原定家『明月記』)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3056
「もしもし、もしももしも・・・」
もしもなどない
そのときはその時じゃ


3057
もはや拙者には殿など居らぬ
お国や城の外
ひとり玄馬を生きるのみ


3058
いくつもの仮定法の網を潜り抜け
論理の不毛なワナを払いつつ
玄馬はいつものように現場を生きる


3059
ああいい天気だ そのときはその時
いまここを守るため
また刀を取るかもしれぬな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3060
数えきれぬ現場に立ち
不本意ながらも
決断を下したことがいくつもあった


3061
暴発や自刃の手前で
半端な道へ
すり抜け下って行ったこともあり


3062
ありありと想い出すは
無、無無無無
空虚の風の中に立ち続けること


3063
若者の視線からの〈空虚〉は
老いた視線からは 〈空虚〉には違いないが
まだまだ世界の一部にしか見えない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3064
気のようなものが集まり
ひと固まりになり
自分の深みの方へ向かっている


3065
あるいは自分から反転して
向こうへ
当てもなく流れていく気団


3066
流れ出す気に目的地や目標が
あるわけではなさそうで
原子の結合手のように自然に備わっている


3067
気にも色色あって
エネルギーも熱も
放ったり吸収したり籠もったりしている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3068
「悪気はなかったんだよお」
と気の限り叫んでも
気の固まりは破局へ雪崩れてしまったんだ


3069
(そこは通ったら駄目だ)
とわかっているのに
気流が誘い込まれてしまうことがあり


3070
重たくずしんと扉が閉まる
非在の響きの中で
気は気は気は乱れ気がふれる


3071
気の迷いもなく火煙立て
ただひたすらに
悪気の道を突き進む そんなこともありか?


3072
(いや 本人はそうではないかもしれない)
あらゆる悪は善を仮装する
善悪一如の裏街道を突き進む




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3073
凪いだ木は落ち着いた匂いがする
気がかりの木は
風の現在地や強度を気に病んでいる


3074
木にも色んな気があり
街中の
通りやビルの中に佇んでいる


3075
寒気や悪気の漂う木は
通りすぎる人に
冷やっと不吉な葉揺れを感じさせる


3076
水気空気根気などが
不足していくと
呼吸も荒く肌が荒れていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3077
とってもつらいなら時には人間界の外へ
学校や会社の石ころ
を蹴りながら出かけるのもいいさ


3078
社会の外にも人間の影が差している
影を踏みながら
宇宙に出る しっとりいい響きいい匂い


3079
張り詰めた心鬱な気分
少し解(ほど)けたら
クソッタレ世界でもまた帰って行くのさ


3080
なぜかって、そりゃあ腐海臭にまみれても
ほらほらいい感じ
の世界はそこしかないからさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3081
善にも悪にも腑分けしにくい
あいまい道を
誰もが日々通っていく


3082
善悪の関所がある
善は照れくさそうに
悪は深意を刃に乗せて通りすぎる


3083
人間が設けてしまった
善悪の関所では
法の顔をしてみな通って行く


3084
法が善悪を判定する陰には
関所を日々すり抜けていく言葉があり
汚れた靴が洗って夢のドアに干してある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3085
話し合いが始まるまでは
まるで気ままに
泳いでいた魚たち


3086
避けられない話し合いに
避けられない
判定されるゆらゆら泳ぎ続ける魚たち


3087
学級会には日差しのように
外からの
視線たちも差している


3088
むずむず気になりながら
小さな魚たちは
現れる水路に沿ってよそ行き風に泳いで行く




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3089
ぼくの水面は穏やかだった
遠い戦火が
ぼくの水面を深く揺らしている


3090
自分の背中を意識するとこの水面も
色色と
波風が立って来たんだった


3091
それにしてもこの不安の伝播する
深みからは
いろんな留保が放たれ上がり問いかける


3092
いつ大波は来るかわからない
よおく時間をかみしめ
考えなくっちゃいけないなあ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



3093
水面にポツッと湧いてきた
赤い泡
どこか不調なのかなと不安が落ちる


3094
一度だけなら傾きはゆっくりと戻っていく
静かな
水面の色合いが見えている


3095
赤い泡がまた湧いてきたら
不安が
重畳して水面が揺れ出す


3096
少しばかり傾いたぼくの水面
気に刺さっている
微妙な気配が付きまとう




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3097
ほんとうに何にもない
ならば出かけよう
飢餓の域に入るわけには参らぬ


3098
思えば飢餓の峠を
勇ましく
越えていった一群がいた


3099
イデオロギーや理念は
即身成仏
に限らず今も生身を踏み越えていく


3100
ああ この 温(あった)かい
いい味する
うどんは最高だな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3101
何にもないといっても
いつものように
何かはあるさ 日々をつないでいく


3102
ほら と取り出してみせる
のは難しいけど
いい日差しいいつながりいい気分


3103
あんまり普通すぎて
気にも留めないけど
持てるものは確かにある


3104
危機に出会わなければ
気づかない
そんなありふれた もの(もの?)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3105
始めに詩がありありと
放たれていた
幼年期あるいは遙か太古の


3106
そこから物語や劇が
分離・独立した
ということは物足りなかったのか


3107
にぎやかな街の舞台に飛び交う言葉たち
カッコいいね
登場人物のスタイルも衣装もいいね


3108
舌足らずに見える詩が
のろのろ運転の
幼稚な幼年に見えてしまったか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3109
詩は例えば会議の席の
語られない
沈黙として生きている


3110
詩はまた怒られる少年の
じっと耐える
沈黙の中に生きている


3111
論理や物語の言葉の中に
はっきりと
詩は息づいている


3112
まだまだ詩は恥ずかしいのだ
太古のように
無邪気にきっぱり言い切ることが


3113
だから詩は照れくさそうに
描かれる
空中に描かれる指文字のよう




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3114
詩は 飛び石を飛ぶ
山 原 水 鶏
ほらほら ヤンバルクイナも飛び立つよ


3115
幅寄せとか意地悪なことはしない
びゅーん
詩が高速道路を突っ走るよ


3116
たくさんのクモの糸にからまって
九九九九九
詩は苦の階段を下りていく


3117
苦しかったら苦しいと
ザックリと
詩は語ることができるんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3118
なんでこの言葉なんだろう
と詩自身が
ふしぎに思う出会いがある


3119
日々の時間には 小さな
隙間があって
ふいと行列に加わって来る


3120
くるくると回しながら
行列の
リズムに合わせているが


3121
無意識のムイシュキン公爵は
行列の中の靄靄(もやもや)
矛盾に耐えられずバタリと倒れる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3122
名残惜しくても手放す
そんな場面に
誰もが遭遇するまぶしい朝


3123
古びたシャツの染みついた
汚れの個所に
目がゆき時間の海にダイブする


3124
長らく着てきたくたびれたシャツ
捨てるには惜しいが
一歩踏み出すように新シャツをまとう


3125
春、街角を曲がる時
少しばかり
古びた過去を脱ぎ捨てている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3126
内も外も言葉が過剰すぎる
社会の縁から
あふれ出してしまいそうな


3127
勢いに付き添うように
次から次に
もつれる足で言葉たちを摘んでいく


3128
摘んでいく積んでいく
しだいに
ぼくの言葉の肌が荒れていく


3129
言葉は感じている目ざしている?
ゆったりと
流れる時間の喩に浸かること




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3130
ことばがことばをことばにことばの
目まぐるしい速度の葉葉葉葉
を内部から断ち切るって不可能なのか


3131
ゲームなら目まぐるしい
疾走感快感快快快快
とっても快適なんだけどなあ


3132
選択がなく離脱できない
強制感の渦渦渦渦
素通りできずに巻き込まれる (うっ 砂)


3133
言葉の砂地ばかりを
走りながら走走走走
言葉の中枢から中枢へのワープ! (できないか)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3134
外からはひとつのボタンにすぎないのに
(がんばってね)(つらいね)(そりゃあよかった)
いろいろ色の言葉を連れて「いいね」ボタンを押す


3135
ゆっくりと木の側を通る
微かな匂い
ぼくの言葉に滲みてくる


3136
匂いには一対一対応
とは限らない
言葉の海がざわざわ波立っている


3137
前を歩く人が急にポケット
に手を入れた
どんな記憶の立ち上がったものか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3138
言葉の中枢から中枢へ
ワープ!
言葉の中で静かに目をつむる 橫超(オウ チョウ)!


3139
言葉の飽和の賑わう街
付き合うけど
いちいち付き合ってはいられない ワープ!


3140
相手の言葉の中枢から
匂う漂う
ワープ感に乗ってくるのってくる


3141
言葉の荒地が解け出して
いっとき
コーヒー・ブレイクの風が吹く




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3142
サ行を避けていく
斬惨惨惨
きみわるいきみわるいと声がする


3143
なぜかサ行を踏んでいる
さしすせ
せせせせせせせ戦そう戦争戦争


3144
暗がりを避ける気分
カ行に入る
かきくえば、せせせせせ戦争


3145
嫌なことはかえってつきまとう
ストーカーの
せせせせせせせ 戦争 今日もどんどんどん曇天




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3146
ちょっと斜めに座ってしまう
言葉は
タ行に傾いている (その角度よ)


3147
ふらんぷふらんぷ
トゥ トゥ・・・
とぅらんぷ! タ行がゆがむ


3148
遠い異国の人々が
こちらの言葉の
水鏡に映っている (知らん奴だろうに VR自然か)


3149
とぅらんぷーとぅらんぷー!
とぅらんぷーてぃん!
深層世界対立戦争の色がVRオタクに塗られていく (ヤバ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3150
「あ わんわんだね」と
思わず
小さいわが子に言ったことはあるはずだ


3151
あの太宰治でさえも 案外
小さい娘に
言ったことがあるかもしれない


3152
「素直」や「素朴」という言葉っ原
の入口の手前で
自然に飛び跳ねる言葉はある


3153
否定とか肯定、賛成とか反対
の峠を下って行くと
アイマイミーが自然に身を揺すっているぜ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3154
言葉のざわざわ流れの中で
同じ言葉でも
匂いや表情が違ってくる


3155
書かれても話されても
色々な
ふりかけのかかった味がする 言葉よ


3156
まずはなにものかへの
親和か異和か中性か
流れ出す言葉は判定されるが


3157
わっしょいとひとつに固まって
見えたとしても
デモデモデモデモそんなに単純じゃないよなあ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3158
どちらの言葉が正しいかなんて
誰もが
言葉のもやもやの渦中にいる


3159
上空からの視線の自由が
あるとしても
抽象的な話はできない


3160
見えない所で ほら
(この一日をどうしよう)
悩み苦しみ血を流す言葉が微かに聞こえる


3161
言葉にも立ち止まる柔らかな倫理があり
ゲームみたいに
無倫理を突っ走れないんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3162
言葉の倫理って何だろう
知らぬ間に
言葉の手が伸び足が出ている中で


3163
言葉の家々で生まれ
育ってきた
その言葉にならぬ肌合いの


3164
言葉の舞台なのに
言葉にならない
そんな沈む夕暮れ時がある


3165
黙する誰かのことが
深みでは
おもいおもうおもわるれ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3166
「なぜ人を殺してはいけないのか」
社会の表層に
一時期浮かび行き来していた疑念の論理


3167
十重二十重(とえはたえ)に追い込まれ
論理の峠の彼方
人は人を殺してしまうのだろう


3168
(人を殺しちゃいけねえよ・・・)
人類の
何十万年もの足音が深く響いてくる


3169
普段着から文目もわかぬ人となり
人を殺めてしまう
硝煙の戦場を今も駆け回っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3170
生け贄の生暖かい心臓を動力として
太陽を支えることができる
とアステカ人は信じてしまったのか


3171
迷妄はいくつもの横道に入り込み
信の力に支えられ
いばらの道は血を流し続ける


3172
人の意志に関わらず 自然は
慈母にも
憤怒(ふんぬ)の母にも変貌する


3173
言葉に光が差してくるまで
暗い目は
悪夢に耐え続けなくてはならなかった




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3174
また枯葉が一枚落ちた
近所の
人の死を深みで静かに見送る


3175
たとえ口うるさそうな人であったとしても
内はよくわからない
そんなものはさっぱり消し去って落ちていく


3176
遠い見知らぬ人の死も
おんなじ世界に
同じいのちとしてあったよしみで黙礼する


3177
ああこんなにも世界は
次々と
いのち輝きいのち暮れる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3178
風に葉は揺れる
生きているなら
内も脈流している


3179
通りすぎるとき
生きているなら
ふわっと舞い上がり匂う空気の


3180
生きているなら
静の中にも
たくさんの微動が見える


3181
びみょうな大気の揺れに
あ はっは
解けてしまう静の固まりもあり




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3182
黙ってひとり歩いている
内には
微小な言葉のかけらはあり


3183
思わず湧いてくる
みたいに
かすかな音楽も流れている


3184
(人はノッペリなっていないか
ノッペリ
他者理解してはいないか)


3185
複雑系の看板をすり抜け
生活の匂い漂う
階段をいつものように下っていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3186
夜中に後ろの方でまたあの音がする
(いやだなあ)
と思いながら心の線で立ち止まる


3187
ごまちゃんが吐いている
立ち去った後を
きれいにするきれいにする


3188
ひと言言いたい気持ち
が湧いてくる
(猫だし猫だから猫でも・・・)


3189
猫でなければひと言
言うだろうか
固有の自分色がいつも試されてる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3190
言葉は心と付いたり離れたり
シュールな
通路にも入り込む しゅわしゅーる


3191
言葉は大空深海深宇宙
どこまでも
かけてゆく やめられないとまらない


3192
(なちなちなちなち夏は
アゾフ海・・・)と
意味不明界にも入り込む 何しとん?


3193
日々千里をかけても
言葉には
くつろぐ宿があり おやすみ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3194
上空から眺めれば
どんな言葉も
一定のエネルギーのダンス


3195
生きているかぎり明滅する
小さな明かり
清濁を超えて流れている


3196
そうは言っても内から見れば
あ、それは あ、これは
と見つめられたら恥ずかしいな


3197
大文字や固い言葉は脱いで
うちでは
どんな言葉もくつろいでいるさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3198
((敵の兵隊さんは親切でやさしかったよ))
言葉なら
何とでも言える言えるんだぜ


3199
「敵のヘイタイさんはシンセツでヤサシカッタよ」
風に当たると
自分の言葉がギコチナイそぶりしている 見える


3200
(((見エナイ銃ガ ホラ
狙ッテイルデショウ
ダカラ私ラ高原淑女ハ冷タイ銃ダンスヲ踊ルノヨ)))


3201
(((言葉は荒廃を重ねていく
井戸が枯れている
カレーの街が恐怖に無音で叫んでいる)))




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3202
手を休めてふと気づいた
えんぴつが
ずいぶん短くなっている


3203
あたりまえあたりまえのこと
かもしれない
ものが確かに降り積もってきた


3204
人ゆえに時々はふと
そんなふうに
振り返ってみる 深みに触れる


3205
そうしてまた新しい朝
何事もなかったように
無心にあたりまえの舟を漕いでいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3206
自分のことさえわからない
ところがある
胎内から上陸した仲間だけど他人はなおさらだ


3207
言葉のない胎内のドラマを知らない
自分のも
他人のも知らないなあ


3208
言葉を知らない胎児期の風景が
ありありとあり
今ここに拍動しているはずなのに 言葉が


3209
風俗習慣の違う遙かな
地に住む人々のこと
もっとワカラナイウクラナイロシアンブルー




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3210
硝煙の舞台裏でいったい何があったのか
何があっているのか
〈わからない〉 人と人人人と人と


3211
現地のひとりひとりの
人の肌合い
の言葉をいくつもいくつも集めてみないと・・・


3212
・・・それが不可能とすれば
同型同質の
自分の足下の言葉を探ってみるほかない


3213
もちろん硝煙の匂いする
風景たちが
人々が いま そこに あることは確かだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3214
言葉の張り詰めた沼地では
互いの言葉が
足を取り合い引きずり込み合いしている


3215
押し合いへし合い足引っぱり合い
〈ほんとうのこと〉
を目指しているというのか


3216
人を誘い釣り上げる言葉たち
ネットフィシング!
フィシングフィシング楽しそうな戦争か


3217
どうしても避けられぬ時以外は
沼地は避ける
言葉はザリザリと摩耗するだけだから




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3218
脳中心の人類の段階に到って
脳ばかり
主人公になってどこにも出没する


3219
もはや主人公を求めはしないが
脳の信号系につながっている
ハートも登場人物なのに


3220
なのに脳科学ばかりが
得意げに
万能薬みたいに何にでもバッサリと


3221
脳が目まぐるしく信号する
意味の糸が張り巡らされ
脳が過熱する 迫る迫る Oh No!




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3222
言葉と言葉の相対性の
息苦しさから
言葉の沼地に召喚し断罪するネオナチ言葉


3223
苦の沼からはい上がろうとする時
関係の絶対性の壁が
弾(はじ)いたりすり抜けさせたりする

3224
勝ち組負け組なんてないさ
言葉もただ
しゃかりきの圏外でのんびりやるさ


3225
果てしない上空目線
持ってもいいけど
人の肌合いの温もりが実装されてあるならいい




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3226
手はそこまで届かない
そこに触れ得ない
としても言葉は触れる


3227
何度も行ったり来たり
振れる言葉が
共に振れるあるいは静かに退く


3228
苦の渦中にある者には
乾いた言葉も
湿った言葉も届かない ただ


3229
ただ言葉の中の沈黙が
しずかに深く
ウクライナイのダンスをしている・




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3230
「それって、何のこと?
だれのこと?」
誰々のことであり誰のことでもある


3231
現場では具体的にわかりやすく
説明する
と 抽出された抽象の滴が滴り光る


3232
幼稚園のゆるい時間の内では
疑い知らぬ言葉たちが
よちよち行き交っている


3233
タイトな時間の波に洗われ
職場のやさしい言葉も
じりじり疑心する暗鬼になる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3234
内に感じるある固まりの感覚から
〈あー〉と
言葉にあふれ出そうな勢いの


3235
でもまだまだ遠い
言葉の丘は
いくつもの黙する関所をくぐる


3236
なつかしい万葉の道みたい
にすうっと
深みから浮上できないの?


3237
不穏な天候異変と
時代の閉塞に
紆余曲折の道がどこまでも続く




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3238
つぶやきがこぼれ落ちる 見える
内向きの
対話が外の日差しを浴びている


3239
バーチャル世界にこぼれ出るように
なってしまった
つぶやきに ひとり滴は内を下ってゆく


3240
分離され二重化された
つぶやきは
あたらしい世界を生きてゆく


3241
バーチャルの井戸端付近には
色色の
つぶやきたちがシン呼吸している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3242
〈あ〉の中には色んなものがあった
ひとつに
まとまりきれない揺らぎがあった


3243
何か気がかりがあるからか
全力で前へ出る
のがどこかためらわれる


3244
日を浴びた〈あ〉が揺れている
ゆらゆら
ひとつになれない言葉のからだが


3245
ガガガガとガードレールをこすりもする
きみはあそこ行き
とどこからか指示・誘導されているよなあ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3246
「言葉は自由自在には見えない
無重力のもやの奥から
真世界主だけが言葉をもたらす」


3247
(それって何のことかわからない
言葉を超えたもの
を言葉で指し示すなんて)


3248
(まるで死 隔絶世界の死を
言葉で把捉するような
言葉の死を言葉が追いかける?)


3249
(生きものたちと違って
すべては言葉のひみつ
気流の圏内に生成生起する)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3250
大文字の大声言葉は衆を頼む
自分一人なのに
背後のライオンを感知させようとする


3251
硝煙の漂う言葉の表通りを
オーレオレオレ
と自信過剰の足どり練り歩く


3252
(いきり立って恥ずかしくないのかな)
通りかかった
ぼくらは黙してつぶやき過ぎる


3253
鏡に映る自分の言葉たちが
移っていく
(あ、それ以上進んだらダメだ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3254
赤い言葉の滴が落ちる
静かな水面に
にぎわいの音が交錯する


3255
青い言葉の滴が落ちる
静かな水面の
しずけさが響き渡る


3256
水面の赤い滴の
漂いに
青い滴が落ちていく


3257
水面に言葉の道が敷かれ
二色が
混じり合ったり分離したり 音が聞こえる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3258
(同じ目標なら好きにすればいいさ
行き方や
通路は確かにひとつじゃない)


3259
けれど遠足みたいに
思考の
道順や休息の定型言葉がある


3260
現在の思考や方法
それが最善でもあるかのように
ひとつひとつの言葉が吸い付きまね始める


3261
さあ、のび太ジャイアンスネ夫静香ちゃん
日常と戦争と
解決策をシミュレーションしようか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3262
晴れ上がった朝、運動会の
はちまきを
きりりと締めて出かける


3263
「あるある あるよ」
と言葉は
なだらかな丘陵を下り 見渡す


3264
「きりり」という言葉の矢も
当たるまでには
行ったり来たりの逡巡がある


3265
そうして朝の光景の中
言葉も
ゆっくりと目覚めてゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3266
言葉は心と連動している
それでも
言葉族の掟に従っている

3267
「ふんちゃかぽんと朝幕が上がる」
言葉は
シュールな掟の一つにすがっている


3268
「もうもうあんたなんか知らない!」
言葉にも
言葉族を離脱できないかなしみがある


3269
生きてるかぎりこの言葉界
呼吸し食べ排泄する
言葉の生を生き抜くほかないか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3270
しゃべり書くこの言葉世では
緘黙の
言葉を生きることは不可能か


3271
目や耳が不自由なように
言葉を
しゃべれない書けない人もいる


3272
そうするとこの言葉世には
〈言葉〉にならない
言葉の生もあり得ることになる


3273
拡張されて見えるこの言葉世には
触れる感じる伝わる
古くからの大道が息づいている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3274
せんそうは千層にも及ぶ
利害得失呪詛憎悪のアマルガム
船倉にきっちりと積み出港する


3275
「ぼくは戦争のことを話していないよ」
でもせんそうは
言葉だから何にでも手をつなぐ


3276
言葉は手をつなぐ
自分とも
見知らぬ他人とも 伸びていく


3277
言葉はソフトな武器にもなる
テレビの応援ソングの繰り返す
パプリカは人に種植え実らせ伝播させる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3278
彼は死んだ (彼は)(死んだ)
彼は((殺された))
彼は(((Rに殺された)))


3279
〈事実〉が 戸惑っている
(ほんとうにそうだったのか)
(誰かの手が加わっていないか)


3280
〈事実〉がフェイクの渦流にさらされ
どぎまぎ
押し流されそうに耐えている


3281
遙かヤマトタケルもまた女装して
フェイク!
敵をだまし討ちしてしまった 物語




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3282
物語は作り話なんだけど
あるあるある
水の匂いや味を汲み上げている


3283
同じ時代の川の流れ
に浸かっている
(水)という言葉が同じイメージを放つ


3284
二項対立ばかりじゃない
それを貫く
言葉の信の素振りの人類史


3285
表舞台に躍り出て〈事実〉を押し退ける
フェイク!
主流になることはないさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3286
(ぼくも言葉の職人に近づいているかな)
しょうがない思いとともに
あえいおう あえいおう とつぶやいている


3287
(いま遠く深く言葉の宿をたずねているな)
気づきが起こるとき
遙か赤ちゃんからの道のりを思う


3288
誰にもある 誰のものでもある
言葉の海から
ぼくは自分の魚を釣り上げるのさ


3289
ああこの引きの感じ
上陸した
魚の息荒く日にきらりと輝いている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3290
SNSの見慣れたボタンを押す
「いいね」にも
いろんな言葉の深さがあり揺れがあり


3291
その磁場の渦中の揺ら揺らから
あいさつする
外に立ち止まり考えることもある


3292
決定に沿って出港し流れてゆく
笹舟の
みどりに滴が残っている


3293
こちらの方に流れ着く小舟もあり
にぎわいのこのはずれに
言葉たちに小さな明かりが点る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3294
SNSの大海を言葉たちは
瞬時に渡る
外は大空が静かな青に流れている


3295
静かな無言の中にも
水音はする
言葉の荷下ろしもある荷積みもある


3296
現実と仮想の 静と動の 織り成す
波紋が立っている
ふしぎな光景を言葉たちは行き来している


3297
日々くり返し慣れていく自然さの
草原に覆われて
腰を下ろし疑念は深く沈みゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3298
群群群 供供供 群群群
(ネコも虫も音と気配に避けていく)
乾いた通りを行進する


3299
軍軍軍 具具具 軍軍軍
(ことばたちが制圧される)
ピッチリ締めた言葉の軍靴が進んでいく


3300
言葉にも種族があって
薄まゆ毛のスマート族でも
急にカッコ付けてゴチックの言葉を放出する


3301
ゴチック種族は我が物顔
にぎやかな通り
パレード調子に乗って進んでいく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3302
言葉通りを通って行く
江戸期の武士顔をして
言葉は見回しながら行く


3303
(多くの声援があるはずだ)
(あるべし
あるべしベシベシベシベシ)


3304
「何せわしはインフルエンサー!
(ゴホゴホ)」
「殿、大丈夫でござるか、ござりまするか」


3305
「心肺無用!わしは言葉
言葉であるぞ」
「それでは言葉の裾でもお持ち致しまする」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3306
言葉に乗って下っていく
りらりらりらと
つまずかないぞ 言葉よ


3307
ネコみたいにいつも「はひふへほー」
としか言わなくても
言葉は駆ける飛ぶ笑う泣く


3308
次々に寄せ固まる圧圧に
(あ う)
言葉が発車できない


3309
見送りの電車が出るまでの
ことばは
言葉の無力に崩れそうになる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3310
朝 (朝か
みどりの滴
落ちて内を下ってゆく)


3311
朝 (朝だね
側にいる人に
言葉は流れてゆく)


3312
昼 (もう昼か
少しずつ
雲が動いてゆく)


3313
夜 (風景に幕の下りて
内向きに
風景を下りてゆく)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3314
ゆくゆくは、なんて思わない
ただこの今を
現場と深く思い見るめくってみる


3315
みるみると水かさは増し
事態は
ぐらりと傾き始める


3316
メルシーとふいに声がする
そんな場面が
たしか弥生期にもあったような


3317
探索の森で立ち止まる
喩にみどりの
何か当たりがあった気がした




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3318
届きそうで届かない
未来のことばかり
行きつ戻りつして現在が泣いている


3319
その人そのもの性格が
無意識に
歩幅や歩き方や向きを左右している


3320
人を差し置いてあれこれかれこれ
抽出・抽象する
軌跡って無理がありそうだ


3321
そう なんでも 忘れられたり
覆いを掛けられたり
いつも〈現場〉はさびしそう




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3322
急がなくても焦らなくてもいい
言葉は逃げない
ずっときみの内に眠る


3323
けれど構えて向かいすぎると
言葉ウナギ
ぬるりぬらりぬるぬる言葉


3324
言葉が昨日は そこ
先ほどは
あそこに休む 今は熱い喩に浸かっている


3325
なんども行ったり来たり
言うか言わないで置くか
沈黙が身をよじっている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3326
ねじり鉢巻きの言葉が
舞台を
きりりと塗り替え絞る・・・


3327
(思い通りにならねえな)
思い思われ
きりりがゆるみ崩れていく


3328
(じれったい じれったい)
恋の歌の
歌詞みたいにねじりねじれゆく


3329
「パワハラ」「セクハラ」などの言葉を浴びながら
「共生」の地溝帯を
ひとりお祭りみたいに御輿を掲げて行ってるよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3330
「一寸の虫にも五分の魂」か
引き合いに出される
虫自体にも視線が巡り触れている


3331
「盗人にも三分の理」
この社会倫理と法を背にして
断罪する者にも白いカーテンが下りてくる


3332
「あなた方のうちで罪を犯したことのない者が、
彼女に石を投げなさい」
イエスの言葉に人も法もよろめく


3333
「河童の川流れ」とはやし立ててる者も
カッパ自身も
かっぱかっぱらったらったったと流れで踊るばかり




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3334
意味のなさそうな言葉をつぶやいている
深みでは
(いみなんていみなんていみなんて)と感じている


3335
意味ばかりをたずねる旅に出た
者たちは
人類史のいいかげんさの風に座礁する


3336
いみむいみいみむいみいみむいみ
二項対立を越えて
意味と無意味が手取り合って下ってゆく峠がある


3337
「意味ねぇじゃん」と切り取られ
捨てられる
小世界が膝(くずお)れる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3338
ノルマ・成果(わかっちゃいるけど)
(ノルマセイカ)
(いつからこんなになっちまったのか)あの星にノリマセンカ


3339
わかりました(と踵を返し)
若り真下
通りを気分晴れてゆく


3340
「あなたが受賞です」
と他人が言いわれている
僕の心は小さくひと揺れして賞外通りを進む


3341
「はい、あーんして」と恋人同士でやっている
場違いに
ちょっと照れながら(まあ、それもいいか)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3342
古い箱でも埃を払い
色鮮やかに
飾り立ててみると(古い箱)になり


3343
なんか見知らぬ人の
未知の匂いが
いい感じに匂い立つ


3344
「新しいぶどう酒を古い皮袋に入れはしない」って
入れることも多い
別に問題がすぐに起こるわけじゃない


3345
「新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるべきである」
と言っても
古い匂いを全否定してみせる古さがねえ・・・




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3346
一方に、ふてくされて寝転ぶ子どもがあり
もう一方に、
シャカシャカ運び、上げたり下ろしたりがあり


3347
NHKの応援ソングと違って
現実の動きには
相反する動きや色彩があり


3348
ひとつの流れに引き絞られても
でもしかしけれども
たくさんの沈殿物や浮遊物があり


3349
ありありとひとつの記憶
にはなりはしないぞ
ぞぞぞぞぞと浮上するものたちの




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3350
言葉を呼び寄せる以前には
気が流れ流れて
ぽわっと気分が湧き立つ感じがある


3351
小さな泡の集まりの
気分の
流れ出す街の通りは


3352
気分色に染まっている
いるいる
そこかしこに と


3353
通りを漂い流れる
気分に
ぶち壊しのコマーシャル言葉がかぶってくる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3354
微小の赤い泡の集まりの
すき間に落ちてくる
微笑に遠い青いあわあわ


3355
遠目には滑らかだった
小さな揺らぎの運動が
ギクシャクし出している


3356
あかあおあおあかと
親和することなく
ああかお あおおか と色濁っている


3357
言葉の世界でも我を忘れた自由人は
妻も子どもも非在にし
クラスター爆弾ばらまいたりミサイルも飛ばす




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3358
オーノー! キミノコトバハ
病ンデルヨ
フリツヅク雨二キミハキヅイテイルノカ?


3359
そんなことお互い様だろ
みんなみんな
世界は病んでいるのさ ヤンデルン!


3360
チョットチガウヨウナキガスル
コトバガ世界二入リ
出テ戻ッテクル ソノ通路ガ 通路ヨ


3361
知らない奴のこともビシバシ
裁断し
服や街や世界をオレ様流にデッチ上げるのさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3362
ある地域の噴煙が
世界中に広がり
世界の物や精神の流通をかく乱している


3363
人も地域も何かが降り積もった挙げ句に
噴火するのだろうが
想定外のことが転がり出てしまったと圏外はつぶやいている


3364
ププププ、プーチン!
ろしあの大地から
鄙びた言葉の帝国が兵士がパンドラの箱から出てくる


3365
プーチニズムにイカレた安全地帯からは
「トラさん、プーさん」
とDS教が道化みたいにはしゃいでいる 黙する世界が黙している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3366
「是々非々」とかではなくって もっと下り
あれもダメこれもダメ
と徹底して暗部を見る者はいないか


3367
「好きだ」「嫌いだ」「それは嫌だ」
はっきり言えない
微細な権力線の鳴子が恐いかい


3368
例えば軍備が当然・自然の
にせもの通りで
きみは何も交換するものがない


3369
にせもの通りからは「世界秩序」が見えるらしい
(もう〈上〉ばかり気にすることはない)
〈今ここの〉椅子に座る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3370
好き嫌いに関わりなく
ぼくのことばは
言葉のあらゆる通路を探索する


3371
(あ エッチ・・・)とうろたえたり
(あ きみは言葉が出せない・・・)
と戸惑ったりすることもあるさ


3372
人間だから人間なのに
人間ならば人間として
にんげんにんげんにんにんにんげん


3373
生きてる限り人間の圏外には
出られない
ほそぼそと明かりを点し通信し続ける




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3374
濁った風が吹いてくる
(あ う)
通りの脇へ避(よ)ける


3375
「24時間戦えますか」
通りから見える
昔の看板が傾き崩れている


3376
性懲りもなく
「まともにぶつかって行けよ」
と説教言葉が吹き抜けていく


3377
いいんだぜ 避(よ)けても逃げても
まともに受け止めていたら
身が持たねえ 戦法が必要だ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3378
細々(こまごま)としたものが自足している
ように見える
テーブルがドーンとひっくり返される


3379
生活の圏内から生まれた
不意打ち
(うすうすは感じられていただろう)


3380
散らばった殺意たちが
きょとんと立っている
小さな陶製の人形に硝煙を立てている


3381
どんなに過激・残虐に見えても
病の信によって
解決の長い時間が圧縮され暴発しただけの(だけの?)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3382
即興といっても
今この言葉には
今までの時間の足どりが凝縮している


3383
言葉は全ての人のものであり
同時に
言葉はたったひとりのものである


3384
だから言葉の森には
インディアンの秘密の場所みたいな
たったひとりの立ち眺める小さな場所がある


3385
そうしてたとえ言葉をしゃべれない
書けない人であっても
人ゆえに言葉で感じ考えているんだろうな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3386
雨上がりの朝
例えば
裏庭のきゅうりの葉が


3387
小さなトラブルが
雲散霧消した
人の朝もまた


3388
通俗的な『水戸黄門』の主題歌を
バカにはしない
俗の道の片側をひとり朝の歌うたいゆく


3389
小さなことがちいさなことへ
ちいさなことで
いいんだよ 雨上がりの朝




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3390
ことばが言葉に命じる
(きみの出番だ さあ 立ってくれ)
言葉はからだを揺らすばかり


3391
ことばが言葉の関係網に入る
日差しも風もあり
網目が揺れている


3392
ことばは言葉たちを呼び寄せ
自分のからだに
モビルスーツと装着する 変身!


3393
現在の意識と無意識のしずく
織り成され出立する
未来のしずくと点り出すか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3394
『暴れん坊将軍Ⅱ』を観ている
ドラマの内にいて
半身は人間の魂の道を遊行している


3395
制作者たちも俳優もドラマの内
に自足しながら内から走り出る
イメージの道を後頭部に意識している


3396
ドラマの内が太古には
この世界の成り立ちの物語
親や長老がありありと子に語っている


3397
神話や物語が必要だった
日々歩く
人の道を照らし励まし結び合う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3398
若葉が風にそよいでいる
(晴れなのに どこか曇っている気配)
いつものように人々が歩み過ぎ去る


3399
のんびりと散歩している人
(自然とフィルターが起動している)
内はよく見えない


3400
「明日までに返却してください」
〈明日〉が
《あ》《し》《た》と屈折し流れていく


3401
コロナウイルスみたいに世代次々に
バトンタッチされていく
日々の黙約から疑念の滴も滴る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3402
話される言葉はこちらの内に響き
消えていく
話した言葉も消えていく


3403
消えた言葉のあわあわの
漂う時間
ああいい天気だ


3404
書いた言葉は文字として
残る(残って居るぞ)
校正してもいいよの素振りがある


3405
ことばは言葉に引かれている
あのレールと
あの電車と街でよかったか・・・




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3406
話された言葉書かれた言葉が保存される
保存されている
ほぞんするほぞんしている


3407
なぜ保存するのか
今食べきれない
言葉は捨てずに取っておく


3408
次に食べる時は
少しばかり
味落ちしているだろうか


3409
ともかく保存されている
産業社会の要請する
無意識の価値の流れに沿って 保存。




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



3410
はらりと花が散るのを目にする
ことがなくても
言葉は振り返る


3411
自然な言葉の風景の
枠を超えて
人ゆえに言葉の街へ入り込んでいく


3412
日差しと涼しい風の
言葉の原っぱに
いつまでも寝転んでいたかった


3413
振り返る言葉はふいに起動する
寝覚めのぼんやり顔で
言葉の通りを歩いている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3414
時とともに言葉も後景へ消えていく
けれど現在は
真新しいものだけで息づいているわけじゃない


3415
過ぎ去って忘れ去られても
どこかに収蔵され
また形を変えて登場する


3416
だから言葉はいつも
どこか懐かしい
匂いを内蔵している


3417
言葉の影には無数とともに
ひとりがくっきり
居心地に関わりなく刻まれている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3418
風景に溶けていたこころが解(ほど)け
無声の内に
裸のこころが熱を持つ


3419
波が岸辺に打ち付ける
なんどもなんども
時間の岸辺を打つ打たれる


3420
ある時ふうっと言葉が湧き上がるように
〈あ〉が湧き出て
そうして〈あ、ああー〉へのみちへ入っていく


3421
〈あ〉〈う〉〈お〉〈え〉〈い〉
母音の流れる
川の水をすくい上げる 水しぶき心地よい




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3422
当たり前のように次々に
〈あ〉は生産され
消費されていく 味はそこそこか


3423
ラインを流れて行く〈あ〉
包装される〈あ〉
流通していく〈あ〉


3424
鋭く後ろを振り返ってはいけない
そうでないと
スムーズなnightは訪れない


3425
なぜか少し悲しげのフォークダンス
マイム・マイム・マイム・マイム
遠くなってしまった《あ》が懐かしいぜ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3426
人は〈あ〉を読み〈あ〉に触れる
〈あ〉の舟に乗って
ひとつの世界を疑似体験する


3427
人は旅行気分(それでいいさ)
水音にも安らぎ
心の手が水の感触に触れている


3428
けれど人は帰っていく
最後には
〈あ〉はひとり残される


3429
(そうだ)この世界の始まりも終わりも
ひとり
人々の中に現れ去ってゆく(それでいいさ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3430
ひとりじゃないのよ人は  HAHA
(と誰か歌っているけど)
人は多数の中でもひとりの席に座る


3431
ひとりじゃないのよ人は  HAHA
(と歌う時その言葉は)
ひとりの実状を見渡しねじ伏せている


3432
(ひとりでいいじゃないか)
ええじゃないかええじゃないか
気楽気ままでバカをやりええじゃないか


3433
多数の中にあらばあれよ
あれーと吸い込まれないよう
踏ん張るひとりでいいじゃないか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3434
さしすせ、せっちゃん
(だったかな いやいや・・・)
せせせ、せ、(煙の匂いがする せ)


3435
さしすせそ、(せ、せんそう)
言葉の道が
知らず知らずに屈折してしまう


3436
浅草浅草寺、せんそうじ?
行ったことない
見たことないけどせんそう・じ


3437
さしすせ、・・・・・・
目的地が靄(もや)の中
どこからかなんらかの引力に引かれ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3438
キャベツは今日は1玉150円か
希望は
1200円、(買えないわけではないけど)


3439
さあさあみなさんどうですか
今日の希望は
新鮮ですよしかも安い


3440
希望も売ってるのか
〈きぼう〉ね
希望はどこから仕入れているのだろう


3441
人工の清流に咲き乱れている〈希望〉?
ひとつずつ
手作業で摘んでくるのか機械作業か 〈希望〉




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3442
犯罪も戦争も誰もが否定するだろう
けれどそこへ到る道には
善悪を超えた止むに止まれぬ物語もある


3443
〈平和〉と同じく〈希望〉も
誰も否定しない
(おっとっと)色色の平和や希望が通って行く


3444
〈希望〉も《希望》も(希望)も
宗派みたいに
それぞれの読経と共に流れて行く


3445
ひとりにはじまり
一人に終わる
等身大のちっちゃな希望なら イイネ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3446
「希望」(きぼう)は明治期のヨーロッパ由来で
水で薄めたもの
と思ったら希望自体は昔からあったらしい


3447
昔の希望も中国由来で
どこか漢文調の
強く足踏みしめ行進するものだったか


3448
内では普段着のきぼうたちが踊っている
ばやばや
あらまほしまほしくたしたしまほしけれ


3449
明日もこんな心地よい
風が吹けば良いな
〈きぼう〉は人みな内に持つか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3450
社会に下りてくる
〈希望〉は
ポイント還元だってさ


3451
グリコのおまけが欲しくて
小さい頃
焦ってキャラメル買ったことがあったっけ


3452
ポイントもお金ばかりじゃなく
そんなわくわくと 少しは
つながっているのかもしれない


3453
それにしてもマイナンバーカードも電力需要も
その動力が
〈希望〉はポイント還元って・・・




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3454
どんよりとした曇り日の日々
どこまでも 希望は語らない
語らないことが現在の希望の姿だ


3455
希望は無言の内にこの世界を歩む
歩行のリズムに
溶け込んでいるから 希望よ


3456
沈黙の内に時折
微かに き ぼ う
鮮やかに空気を流れることがある


3457
このクニで希望を語るのは
教室に貼り出された
習字の「希望」たちみたいに気恥ずかしい




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3458
もうその先は行き止まり
としか思えなかったら
きみはどうするか?


3459
誰もがためらいがちに希望を述べる時
そうでしかない人間界のブレーキに
言葉はロックオンされている 無無無無無


3460
「行き止まり」や「希望がない」
が漂っていても
人はかき分け日々歩いていく


3461
(あ あの人は内にきぼうが
流れているのでは)
「き」や「う」の滴が後ろに落ちている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3462
論理の言葉が飛び交っている
実感の内にいるつもりで
いつも外周を巡っているなら強気の言葉も虚ろ


3463
ひとりを理解するにはトリビアトリビア
かき分けて
おぼろな中枢へアースダイブ!


3464
大まかな社会の有り様と動きを理解するにも
トリビアトリビアかき分けて
社会の鼓動に触れるんだ


3465
難しいけどほんとうの核心がつかめたら
寝転んでいていい
彼はその通りの道を歩いて行くのだから




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3466
〈競うこと〉は価値階段の勝ち負けがあり
心の暗黒面も持つ
けれど互いを磨きもする


3467
経済と広告の時代になってしまって
あらゆるものが
〈お金〉と〈広告言葉〉に汚染されている


3468
(汚染ト言ッテモソレハ自然ナ
誰モガ普通ジャン
ト通り過ギテ行ク 「汚染」ハ現在ヲ脱ケタ視線ノ)


3469
〈名誉〉や〈お金〉にはならない
カチカチ山はVRでも今はよく見えない
現在の価値線のリンクでは人々が日々滑り舞い着地している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3470
簡単には吹っ切れないものだから
〈お金〉や〈名誉〉の
価値線のすき間から小声でつぶやく


3471
〈名誉〉は知らないけど
〈お金〉にはならない
詩は現在を超えるのにピッタシだぜ


3472
遙か現在の死後には
詩は 死に装束を脱いで
新たな風に今までのように向かえばいいかい


3473
現在のひとつ主流といっても
いくつもの層があり
詩は寡黙な層で言葉へ言葉の言葉から




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3474
(あ、ちっちっ) ちょっとしたことでも
どの言葉通りへ
踏みいれたらいいかわからない


3475
(この感じ・・・) 初夏の心地よい風の
言葉通りに
入ってしまったけどぴったり重ならない


3476
ひとつのからだを持ったことばが言葉通りに入る
酔ったことばや
化粧したことばたちが言葉に出会い纏(まと)っている


3477
だからことばと言葉のすき間には
触れられたことのない
満たされないことばのドラマが佇んでいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3478
寝覚めの夢現坂(ゆめうつつざか)をゆっくり下る
ことばの手が
もやのかかった言葉の乳房(ちぶさ)に触れる


3479
(あっ) なつかしい匂いの漂う
匂いでわかる言葉の丘陵地
姿形がおぼろげに浮かぶ


3480
この言葉通りの家並みには
覚えがある
時間のさざ波がいつものように立っている


3481
きみの現在のどこかに
そんなエロスの風景が
ひっそりしまい込まれている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3482
寝覚めのとき窓際には
確かにわが家のネコがいて
じっと外を見ている 見える


3483
まだ眠っている言葉たちの
谷を下り
黙する言葉の海に出る


3484
遙かに時間坂を下ってきたものだ
という内心に
夜露の滴と微かな硝煙の匂いがする


3485
大洋期の〈母の物語〉・・・
と口から出ることはなく
中空に懸かっている 見える

註.大洋期の〈母の物語〉は、吉本隆明『母型論』より。




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3486
大人になって社会の約束や
掟が左右上下からやってくる
けれど人は自らの固有波に揺れている


3487
人は遙かな起源の固有値を抱いて
身悶えするが
社会は均質な一般顔でやって来る


3488
語られない言葉を照らせば
おそらく人は とてもちっちゃな
自分にも社会にも安穏の理想道を踏みしめている


3489
歩いている歩いている
追い詰められてもただ我知らずには
あんのんのんあんのんのんと韻を踏んでいるか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3490
〈愛〉という同じ言葉なのに
その場のふんいきに
火照りもすれば冷たく固まるもある愛物語


3491
〈愛ちゃあーん〉と呼ぶ言葉の顔を
バカヤロウ!
《アイチャンだと?!》とクールに眺めている顔もあり


3492
「愛は地球を救う」という大げさで
無責任の
言葉もあれば寡黙で恥じらいがちの〈愛〉もあり


3493
愛燦々(さんさん)と身に降る一時もあれば
愛苦もあり
ほとんどは平穏無事に愛は台所に腰を下ろしている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3494
言葉たちはひとりひとりのことばの中に
座っている
立っている留保されている


3495
戦(いくさ)みたいに言葉が鎧を纏(まと)い
ぶつかり合う
言葉たちのやり切れない戦場がある


3496
ほんとうは人類の知恵が生み出した
母権社会と父権社会の
残骸の中で人は日々うろたえている


3497
そんな閉ざされた戦闘地域で
内田樹のことばが
冷静な戦場分析報告している
 
註.「セックスワーク-『セックスというお仕事』と自己決定権」内田樹(内田樹の研究室 2022.7.1)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3498
古いことばが言う
「古いところをふりふりふるる
新しい部分が顔を出すよ」


3499
新しいことばが言う
「新しいところを加速する
古い部分が追いすがるよ」


3500
古いことばと新しいことばが
言葉の柱をそれぞれ反対に回る
とありふれた昨日がやって来る


3501
古いも新しいも知ったことではない
ことばの青年は
とりあえず今は足を洗っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3502
言葉の街には・・・・・があって
誰もが気分良く
滑ってゆく泳いでゆく飛んでゆく


3503
思い浮かべると・・・・・は
パッと例えば
坂になり上や下に伸びていく


3504
何にでもなり得るから
・・・・・は
事前に名付けようもないみち みちのみち


3505
みちの感触が匂ってくる
するとパッと
変身!とつぶやかなくても変身している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3506
「さあ、きみはどうする、どうするんだ」
頬が張り詰める
鋭く迫る言葉は まだ ここには ない


3507
戦闘があり火柱が上がり
硝煙が漂う
ことは いま ここには ない?


3508
けれど日々の小さな場面では
鋭く迫る言葉はある
ひとりひとり言葉の舟に乗り潜り抜けていく


3509
「さあ、きみはどうする、どうするんだ」
その時ぼくは
(どうしよう)どうするかな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3510
ひとつの言葉へ志向する
と この列島の
全時間の海が幻みたいに浮上する


3511
言葉には肉があり衣装があり
ありありと
その感触や匂いを感じる


3512
言葉はぼくのものであり
きみのもの
この列島この大地すべての時間の 言葉


3513
言葉はぼく・みんなだから
ネコみたいに
どんな家にもズカズカ出入りできるんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3514
もちろん不幸の言葉の家には
遠慮がちに
出入りするということもあり


3515
また若い娘さんなのに
今どき
「・・・様」と呼称される言葉の家もある


3516
まぼろしの言葉場だけは
自由自在
人を殺めてしまうこともできる


3517
でも殺めたら身も心も
返り血を浴び
帰還兵のPTSDを抱え込む




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3518
沖縄の海で知らない漫画家が死んだ
ひとつも良いとこがなかった政治家が銃弾に死んだ
知らない所で人がひっそり死んでいる


3519
見知らぬ人の死には波風は立たない
悪印象の者の死には
心の波面は切断された空白である


3520
昭和天皇より先には死なんぞ
と戦争を潜り抜けた吉本さん
天皇の死の青空に何を思ったろうか


3521
死とともに人間界の感情・倫理を超える峠付近では
極悪非道の悪人にさえ
心のようなにんげんの波面が静かに揺れる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3522
AI短歌には血が流れていない
拍動する
イメージの生命(いのち)がない


3523
政治家の空言には
拍動する赤い血はない
AIと違って黒ずんだ血が底流している


3524
にんげんのはじまりの言葉には
何かを見て
突き動かされる〈あ〉があった


3525
言葉は人の印だから
さびしいAIは
いつまでも圏外の記号の森を出られない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3526
「人はこの地にひとり生きている」
〈この地〉?〈ひとり〉?
ひとつの認識にも無数の疑義が湧く


3527
共通の大気を呼吸し
同じ時代に生きている
が確かに異色のひとりを生きている


3528
誰かが起こした事件に
取りあえず自分は無関係
だが遠い雲の糸をたぐれば互いに微かにつながってはいる


3529
週刊誌記事のかすかなかすかにかすか野
語られない
ことばたちが漂っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3530
ひとつの言葉にも〈うそ〉と〈ほんとう〉の
配合する 微妙な
稜線があり肌合いで感じる


3531
100%の〈うそ〉と100%の〈ほんとう〉を
分離する
のはびみょうな手付きでも難しい


3532
ぼくらは純度100%の〈うそ〉と〈ほんとう〉の
誰も座れない席を心の隅に設けながら
〈うそ〉や〈ほんとう〉を語っている


3533
「うそうそ!」「え、それってほんとう?」
言葉の通りでは
〈うそ〉と〈ほんとう〉は軽い物語で流れていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3534
語っているとき並行する心が
(あ 少し照れる
ということは今ウソが混じっているな)


3535
たぶん誰もが並行している
そうして知らない間に
自分の言葉の歩みを感じている


3536
「ああ 今のはうそ、うそだよ」
と冗談みたいにして
修正を加えることもある


3537
語る言葉が修正されない
としても
並行する心は修正している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3538
晴れ上がった空の下
薄曇りの
抱えて座っている時もあり


3539
境目ではいろんなものが
ぶつぶつと
透明な泡のやり取りをしている


3540
(ああ もうやだな)と言葉の泡が
出てくる
うちはまだ大丈夫だ


3541
内向してもくもくと
埋め立ててしまった
心には開かれる窓がない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3542
閉ざされてしまうと薄暗い
部屋の中
ひとり言葉は冷たい椅子に座る 心地はよい


3543
外からは解(ほど)けばいいのに
と見えてギクギクシャク
内とは数光年隔たっている


3544
ことばがことばとすれ違う
(ああ あったかい)
言葉は要らないという野から遙か遠く


3545
ことばとことばが向き合って
(何を言っても通じない)
というおもい沈黙に立ち尽くすことがある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3546
地獄に落ちるぞじごくにおちるぞ
(じごく おちる ぞぞぞぞ)
おちるじごくごくごく地獄


3547
閉ざされた空の下では
閉じられた言葉が
くり返し心身の継ぎ目に降ってくる


3548
空は神とサタン色に染まっていて
(じごくにおちるじごくにおちるぞぞぞぞぞ)
働きアリたちが喜々として走り回っている


3549
疑念を積み上げていく余裕もなく
アクセクの
時間ばかりが流れていくアリの空




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3550
「ああ とてもいい御夫婦でしたよ」
(そんなことになるなんて・・・)
「とても驚いています」


3551
外から見る言葉の表情と
その言葉の内と
ぴったり重ならない言葉の劇


3552
言葉の外には複雑な大気
言葉の内には
引き絞られた大気の層が沈んでいる


3553
言葉が外を向く
内を向く
その間に纏(まと)ってしまうよそ行き衣装の




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3554
「ねえねえ今の聞いてた?」
と その時は
確かに別のことに気持ちが向いていた


3555
現在に過去も未来も〈気〉となって
訪れてくる
重層しているよ心も言葉も


3556
たぶん誰もがふうっと消失して
人間界の
圏外をぼんやりと歩いていることがある


3557
そんな時は人類の
さびしい岸辺
満天の星に水がゆらゆら揺れている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3558
スイカの葉やつるや実を見ている
(いいな このみどりの・・・)
若々しい みずみずしい


3559
なぜ若いみどりにばかりひかれるのか
(よくわからないな)
死を忘れるほどの生命(いのち)の発散か


3560
しばらくすると実は成熟し
葉やつるはみどりから茶色へ
次第に枯れていくんだよな 枯れて


3561
スイカも人も生命の曲線を描いていく
生と死の 混じり合って
みどりや茶色の顔をしている 生命よ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3562
みどりが生、黒が死とすれば
みどりに傾く
というのも無理はないか


3563
確かに生と死が同重量
ってことは
普通はないよなあ


3564
生と死の意識の度合は
生涯波打ち
変位していく それでも生


3565
ひとりの内 色意識も
肌年齢のよう
いろいろ揺れて泡立つ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3566
取れ立てのキュウリみたい
赤ちゃんの
手肌をことばは心地よくすべる


3567
しなびたキュウリはちょっとためらい
避(よ)けていく
確かに食べたくないだろうな


3568
倫理を越えた谷間に
にんげんの
生と死のドラマが流れている


3569
人間世界の内では
キュウリもトマトも
黙々と普通に選別されている (それって・・・)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3570
今日もSNSの川に入る
バーチャルでも気分良く
五感が目まぐるしく泡立つ


3571
川べりに静かに寝転んでもいい
中空を絶え間なく
言葉や映像が流れ過ぎてゆく


3572
物珍しいことも知らなかったことも
悪意も批判も
現在進行中のこともあり


3573
井戸端会議というには
あまりに表情薄く
それでも少し熱が入りすぎてしまう




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3574
昔パチンコに通っていた
時のような
静かな高揚感があり


3575
どこか微かに常習の匂い
ためらいも漂い
今日もまたSNSの川に浸かる


3576
(別に気にしなくていいんだよ
人はいつの間にか
ケイタイ人やSNS人になってしまう)


3577
そうしてそんな新しい
丘陵地から
また昨日と同じ暮らしが始まるのさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3578
見回し触れて選び手に入れた
新しい靴
にははずれはあっても不安はない


3579
新しいみちを通る時
靴ひもにも不安に揺れる
ああ踏み入れるんじゃなかった


3580
異和を上り詰めた心は
拒絶された
かたくなに旧道へ掛けて行く


3581
新しいみちで 人はこんなふうに
受容と拒絶の劇
を繰り広げてきたか おお背後を流れる自然




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3582
ふと目をやるとアリさんたちが
天に遠く
道の脇を這(は)うように動き回っている


3583
(天に遠く?這うように?)
わからない
わからないけどぼくらも同じく動き回る


3584
人間界の中にもシェアする
人間でないものたち
がたくさんたくさん動き回っている


3585
あ セミたちが鳴いている
雲が浮かぶ
青空に響き渡っているよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3586
どちらに行こうか思い悩み
停滞する心にも
向こうから押しかけ顔で朝が来る


3587
問題はモンダイはもんだいは
自分で選択・制御
できそうでできないなあ


3588
ひとりの主体のちからと
押し寄せる
世界の力との不釣り合いな相撲みたい


3589
観客たちはよそ事だからと
気の毒そうな視線を
放ち収め通り過ぎて行く




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3590
〈了解〉するという点では同一でも
局所のa表層のb
に固執する言葉があり


3591
局所のc表層のdに固執もあり
言葉と言葉が
対立・離反するもあり



3592
いずれの言葉も時代の主流と
ぴったり
りんりん接合・稼働しようとする


3593
言葉はこの世界をまるごと
飲み込みたい
のに狭い部屋でいつもサースティー




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3594
流れの表面では
(誰もが我先に
山に登ろうとしている)という見方もある


3595
けれど誰もが小さな〈ことば〉のひとり
「オレ様はこれだ!」
でいいんだけど 流れは深いぞ


3596
ひとりの〈ことば〉がみんなを仮構する
と とんとんとん
ちょっと近寄りがたい《ことば》になる


3597
賢治が〈ほんたうのこと〉と言った
確かに 突き抜けて 微かな
にんげんの普遍のみちがありそうな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3598
言い合いの渦中から
逃れる術はない
おもい鉄剣の幻が見える


3599
譲り合えない細い道
二人いっしょに
進めないものか 大道は靄(もや)の向こう


3600
けんか別れに終わる時
内心は
子どものそれとあんまり変わらないか


3601
世界はとっても狭くなったから
夫婦げんかの
翌朝のように世界は幕を上げる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3602
対立する二項が沸騰する
誰もが逃れられない
(ほんとうにそうか 疑義がある)


3603
戦争中でさえ社会の底
竈の火は
揺れながらも燃えていた


3604
「若見え化粧品」を買うぞという人
絶対に買わないわという人
正負の関心もなく通りすぎて行く人 が今でもある


3605
相対立する煮詰まった意味圏から
(あ 洗濯物とりいれなくっちゃ)
と圏外に走り出る 無意味圏がある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3606
(青空に雲が出ている)
O形の雲
が数時間後には寝そべるI形になっていた


3607
それだけのこと(それだけのことなんだけど)
今日この雲の変貌
が少しばかり心を流れ下った


3608
あんまりそうは意識しないけど
今この時
世界中が 人が 拍動している


3609
いつものような昼下がりがあり
プロポーズがあり
事件があり穏やかなジョギングがあり・・・






詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3610
無言でそっと肩に手を置く
ことばたちは
溶けて静かに対流し合っている


3611
難しそうな固い言葉が
語られる
大門には別の潜(くぐ)り戸がある


3612
通路を進んでいくと
語られる言葉たちの
繊維質や匂いが立ち込めている


3613
書かれ語られる言葉に誰もが
文字通りを外れて
別の匂いや感じを自然に受け取っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3614
どうぶつの人間的に見える振る舞いに
にんげんの
動物的な振る舞いを思う


3615
いちまいの葉が落ちる
それだけで
世界が表情を変えることがある


3616
一方で何枚の葉が落ちても
びくともしない
世界の表情があり


3617
けれど各地の現場では
不安動揺閉蓋平静の下
亀裂が深く広がっている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3618
『リトル・トリー』によるとインディアンは
ひとりひとり
自分だけの秘密の場所を持っていたという


3619
現代の秘密の場所は
心の内を流れる
川の川べりや深みにありそうだ


3620
毎日駅で乗り降りする
学校や仕事場へ
人は普段着の顔をして行き帰る ひろうひろうひろう


3621
(そこにどんな木々が生え
いい木の香りが漂っているのか)
そんな秘密の場所からの疑問や問いはあり得る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3622
風に木の葉が揺れるように
ひとひとひとの
無言のつぶやきが揺れている


3623
強すぎる日差しに緑の
葉脈が萎(な)える
人もまた濁った大気に心は疲労野


3624
疲労疲労疲労疲労疲労疲労野
歩いても歩いても
疲労のエンクロージャー 疲労野


3625
信じれば救・わ・れ・る
かもしれないシン・し・ら・ぬ・い
次々に投身していく 見える




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3626
同じ時代の空気を吸っている
といっても
それが各世代毎に総和されてきた


3627
だから時代の尖端と外れの方では
スペクトル
みたいに空気の層が違っている


3628
とりあえず今 この空気を巡って
ひとりひとり
無数の劇が日々演じられている


3629
吸う息と吐く息が
ひとりひとり
内なる舞台でドラマを演じ味わいなじんでいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3630
書こうとは思わない
ことを書こうとする
と藪道(やぶみち)で進むのに難渋する


3631
どうでもよさそうだったり
深刻になりそう
だったり韃靼(だったん)海峡を渡る


3632
「読んだ感想を書いてね
きみたちが
感じたままでいいんですよ」


3633
(別に何も感じない
深く揺さぶられるものも
無い 無無無無無無無)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3634
言葉にも道ができていて
定型と意識せず
自然に気ままに歩いている


3635
練り上げて道が引かれた57577
歌の定型の道も
まだ生きて言葉が通って行く


3636
(あ いま道から外れているかな)
と思う時
新しい言葉の道が戸を叩いている


3637
自然なものだったのが
窮屈に感じる時
きみは新しい言葉の道に踏み込んでいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3638
向こうから歩いて来る
田中くんを
一瞬の内に感じ取る


3639
田中くんの内なる部屋は
よくわからない
ただ足どりや表情がある


3640
人と人との境界の
外から内へ
内から外へ誰もが行き来している


3641
内核と外核が触れ合ったり
誤読誤解したり
いろいろ修正を加えたり (深海の騒)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3642
ひとり静かな部屋にいる
人の声や
物たちの音もかすかに聞こえてくる


3643
それとは別のレイヤーに
幻聴ではなく
人や物たちのささやきが聞こえてくる


3644
そうやって日々誰もが
くたびれた
心の足を投げ出して世界の声を聞いている


3645
張り詰めた心の衣装のボタン
も解(ほど)いて
少しまじめな表情で世界につぶやいているよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3646
久しぶりに床屋さんに行った
しばらくして
ケーブルテレビか演歌が流れ出した


3647
今の若い世代には
演歌はエンカ
ほどにしか聞こえないか


3648
確かに世代によって
リズムの下(もと)に
ぱあっと展開する心地よい音が違う


3649
ゆっくりと心の足が追っていく
芝居の道みたいな
うねりの演歌の道




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3650
心の足が魅(ひ)かれていく
演歌の道
〈待つ〉〈雨〉〈恋〉〈涙〉と踏んでいく


3651
霧の涙池が現れる
ほとりには
造花の花が咲いている


3652
村はずれや街外れから
追われるように
演歌の道はのびていく


3653
外れ者でなくとも涙池に浸かる
のは誰もが
内に外れ者の部屋を抱えているからか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3654
歌を聞いている時たぶん
自分の歌も
ゆっくりと流れ出している


3655
どんなにオンチであろうが
それなりの
リズムで飛び石を踏んでゆく


3656
ああそう言えばこんな
時間があったな
と自分固有の流れを渡ってゆく


3657
すばやいリズムばかりじゃないさ
川べりで
じっと何かを待つ鳥のような時間もあり




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3658
あっ(しずくがおちていく・・・)
・・・落ちていく
滴が落ちていく


3659
ゆめうつつの溶けた
滴がすうっと
わたしの内を落ちていく


3660
わたしの内とよく見えないさらに内と
あいまいな
時間の境目を縫って進む


3661
ゴチックの言葉と小刻みに揺れている
言葉とが
すれちがって分離独立していく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3662
言葉もまたスケジュールを持っている
言葉通りで
他の言葉に会って打ち合わせする


3663
言葉を話したり書いたりするのは
ひとり それでも
たくさんの調整の後に言葉は生まれる


3664
そんな言葉の舞台事情をあんまり知らない
子どもらは
現在の言葉通りを棒で図図図、図図図とすべらせゆく


3665
言葉が 喋りすぎる書かれすぎる
(読みこなせない・・・)
と思う時もう未知の事態の端に触れている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3666
千言も万言も費やしても
たぶん通じない
そんな言葉通りがある 煙 煙 煙


3667
言葉は通じたがっているか
言葉は
ひとりぼっちじゃいけないか


3668
大洋期の母子関係
に発祥する
言葉のゆめ 言葉のみち


3669
今もって自分のどこかで
響いている
(あ う あああ いあいあ うおお)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3670
昔の強権力の言葉は
直進する
考える間もなく激突してくる


3671
今の柔権力はナンみたい
やわらかい
かんでいる内にナンの道に入り込んでいる


3672
言葉はほんとうの夢を隠して
相手が受け入れる
道を用意して回り道する


3673
暴風を引き連れて
母が来るとき
言葉は夢を沈めて取引する 無無無夢無




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3674
ずいぶん酔っぱらって
通りをふらふらと(ふらふら?)
無意味な(無意味?)ステップを踏んで行く


3675
外からと内からと
こんなにも(こんなにも?)
夕暮れの風景が違うなんて


3676
「ヘンな言葉みたいなものを
つぶやきながら
あてもなくフラフラしてる」


3677
(それはちょっとちがうなあ
ら らららら
らあらあ うまく言えないけど)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3678
どこかに家路への意識はある
それでも心の足は
あてもなくふらふらダンス


3679
雷がした コワイな
さざっと雨も来るかな
雨に濡れる それもいいさ


3680
めざさないおよぎつかない
むずかしいけど
それもいい つかの間の それもいいさ


3681
世界には言葉のバリアが
張り巡らされ
気を抜くと鳴子が鳴る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3682
語られた言葉たちを
書かれた言葉たちを
絞り上げて抽出してみる


3683
全体の匂いを嗅ぎ
それから遠心分離機にかける
言葉の微粒子が舞っている


3684
どんな構成要素の
どんな配合か
言葉の岸辺まで下る


3685
言葉を前に誰もが意図する
層を下り
もっと我知らずの層まで下りていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3686
言葉は全部自分のもの
というわけでもなく
自分や他人や時代や・・・いろんなものが


3687
混じっている分かちがたく
織り上がっている
すべすべいい感じもざらざら不協和もあり


3688
見えないアリの隊列が
ランダムに
動き回っているように見える


3689
見えるのは本当かどうか
よくわからない
言葉の方にも不安があり




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3690
これは自分のものそれはきみのもの
と言葉は分けられない
そこで耐えがたい時はどうするか


3691
きみは意味に引き止められて
実家に帰ることも
家出することもできない


3692
とすればぼくときみ
背中を向け合って
意味の谷に立ち続けるか


3693
風の感触が空気の流れが固いカタイ
もう戻れないことばのぼくは
異土のカタイの道を歩いている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3694
戻らない道を進んで行ったら
もうそこは
もうもうと異類の飛び交う世界


3695
異類?まだ「異類」とは思う
だんだんと
上り詰めてなじんでいくのか


3696
もう全てがどうでもよくて
制御棒がゆるゆる
暴発の気配他人事に見える


3697
言葉にすれば ううううう
雨雨雨雨雨
羽羽羽羽得右雨雨雨羽羽有右雨




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3698
・・・ココハ胎児ノ大洋 波ガアル
言葉ハ
ナイ オマエハ全身デ感ジ ワカル


3699
(ははは どこにいる?
いてもいない
たしかに このむなしいかんじでわかる)


3700
・・・現在ハ起源トツナガリ
起源ハ
現在ニ同型デ生キテイル


3701
(これはナンジャモンジャ?
不明には
枝葉も幹もありありありと立っている)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3702
もうそこから先はわからない
宇宙の壁 それでも
手や目を継ぎ足しては追跡して行く


3703
まぼろしの階段や通路を敷き
言葉だけは
壁を脱けていこうとする


3704
自分の産まれる前や
死後のこと?
わっからないなあ


3705
もはやまじめに輪廻転生は
言えないな
だから取りあえず わからない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3706
無意味とは何か 無意味に
照明が当たる時
舞台裏に意味も立っている


3707
意味と無意味は主人公と脇役
と見られている
ふしがある ほんとうにそうか


3708
人間界の稜線に言葉はあり
意味も無意味も
等しく座って眺めている


3709
得意げだった意味が謙遜し
自信なさげの無意味が立ち上がり
そんなこともここではある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



3710
意味(無意味)が気づかれた時
自分に気づいた
子どものように世界は始まった


3711
無意味は不安と恐れに満ちた
宵闇で
意味はまぶしい日差しの朝になった


3712
無心に遊ぶ子どもの世界から
無と有の
存在論も幕開ける イナイイナイバア!


3713
とりびあとりびあ
言葉通りが細分化
錯綜としてきた とりびあーん!




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3714
「さあ おまえの持ってる言葉を出しなさい」
(別に言葉の持ち合わせはないな)
「隠してもだめだ さあさあさあ」


3715
(言葉ってぼくの金庫に入っているのか?
言葉ねえ)
「おまえは秘密の言葉を持っているはずだ」


3716
(そんなこと言われてもぼくの言葉場は
今この青空だけ・・・)
「それはお前の言葉を溶かしたものではないのか」


3717
(わからない わからないなあ
言葉は ふうっと
目の前に湧いてくるものではないのか)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3718
「意味もなく 無意味に」ではなくて
たぶん言葉をまだ知らない
子どものように意味原の手前にくつろぐ


3719
たぶんそこにも意味の芽が
意味以前の姿で
無心に風にそよいでいる


3720
「昔は昔 今は今」ではなくて
今の中に昔が
年輪になって収まっており


3721
意味と無意味 意味以前
うまく言えないけど
今の中にうまく同居しているよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3722
確かに誰にもぼんやりと
〈意味〉を見ている
昼下がりがある


3723
〈意味〉を見つめているのでも
複雑な〈意味〉の
網目を見つめているのでもなく


3724
〈意味〉を突き抜けた世界に
ぼんやりと
コンタクトを図っている?


3725
今はもう忘れてしまった
遙か自分大陸への
ファーストコンタクトみたい




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3726
空気みたいに自然になってしまっている
〈意味〉のくうきで育ち
色んな意味場に出入りしてきた


3727
(あら こんな所に糸くずが・・・)
ある時ふと気づいたら
語りくる意味波にむせるむせる


3728
たくさんの者が出入りしている
色んな意味波に乗って
生産・交換・消費してはしゃいでいる


3729
ひとつの意味場が無意味に見えたら
きみはさびしい音色を沈めて
ぼんやり遠くを眺めている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3730
ひとりの内にあることばの海
波がきらきらしている
大文字の意味には括(くく)れない


3731
微小の意味素たちがゆらゆらと
気持ちよさそうに
右に左に小さく揺れている


3732
生まれては消える泡の
小さな意味の
魚たちが時にきらりと跳ねる


3733
大文字の意味は目的地なのか
一方こちらは
ぼおっと意味浴を楽しむのである




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3734
ふだんは気にも留めないけど
誰もがあまりに自然に
意味族、意味圏にエンクロージャーされている


3735
急変身のDV言葉でもなく
明るい服や照明とともに
若見え化粧品のCMみたいに意味族はやって来る


3736
イミフルの誘いに乗ってだまされた
とつぶやいても
自己責任の意味波をかぶるしかない


3737
(イミナンテイミナンテイミナンテ)と
乾いた演歌の丘で
歌にならない意味歌をつぶやいている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3738
朝がまた始まる
意味駅を乗り降りして
いくつもの意味圏へ出入りして意味波を浴びる


3739
職場の会議の深みでは
どうでもいいやと思いつつも
意味綱にしっかりとつながれている


3740
(疲れたな 気晴らしして帰るか)
と立ち寄ると
意味が濃い意味が熱い意味湯に浸かる


3741
コマーシャルと意味の時代
意味の泳法を知らないものたちは
窓際族みたいに見られている?




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3742
いろんな所に隠れている
意味かけの
足技が痛い 痛いってゆーとるやろ!


3743
魅かれるように集まって来る
打ち上がる
意味の花火にうっとりしている


3744
新しく敷かれた意味道を
通ってこない者には
イミフイミフイミフと降ってくる


3745
その季節になると意味行事
イミフは外
意味は内 イミフは外 意味は内




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3746
言葉の街には意味があふれている
どうでもいいものも
切実なものもある


3747
言葉を見る者によって見え方は違う
けれど一様に
深意味の必死さを隠している


3748
瑠璃色の三浦半島の
種々(くさぐさ)の意味から
深意味へ下って行く


3749
と どうでもよさそうな意味の
枯れ草の下に
隔靴掻痒の深意味が座っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3750
意味を尋ねて三千里
どうして人は
意味になっちまったのかい


3751
鳥や獣には意味はないだろう
ただ意味の圏外で
天や地を動き回る (ウオッホイ)


3752
言葉を食べてしまった! 人は
気づいた時には
しまった!しまった!


3753
意味ができてしまったからには
もう突き進むしかない意味の砦
抱えきれない無言が言うのである




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3754
言葉の通りを歩いている
今日はやけに
意味波が強いなという日もあり


3755
ことばの頬に当たる意味波から
深意味へ
鬱勃(うつぼつ)とうねる 感じる


3756
古今集の仮名序を越えて
引き絞られた
閉じた言葉が人を殺傷することがある


3757
言葉は生きている 生きて拍動している
引き絞られ
矢のように飛んで意味を散布する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3758
車に乗っていた小さな意味の子
濃い意味たちに
忘れられて車内で枯れていた


3759
意味世界をまだよく知らない
小さな意味の芽は
危険も知らずひとりなごんでいた?


3760
どんなに意味を濃くしても
ひいふうみいよお・・・
把捉の手からすり抜けもする


3761
小さな意味の芽たちは
意味の峠で
濃い意味の手に水やりされ見守られている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3762
小さな意味の子たちが
意味の峠を越えて
濃い意味の村に下っていく


3763
よそ行きを着せられて
仕方なくとぼとぼ
あんまりうれしそうではない


3764
濃い意味の溝に落ちて
照れ笑いする
意味の子どももいる


3765
日々日差しを浴びて
意味の子どもは少しずつ
意味の濃い味にも慣れていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3766
それまでは家毎の匂いがあった意味が
小学校の門を潜ると
抽象の匂いする意味に変貌した


3767
意味の子どもたちには
理屈はわからない
ただ固く縁遠い匂いで感じるばかり


3768
新しいよそ行きのゴワゴワ感
きゅうくつな感じの中
意味の抽象世界に触れている


3769
意味の先生は絵の授業で
チューリップを描かせる
とまどう意味の子どもたちは意味臭に押されている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3770
少年期を脱けると もう
無意味に戯れる
あそびが途切れていく


3771
敷かれた道をカクカクと
平均台の上のよう
窮屈な意味線上を歩く


3772
それでも時にはバカをやるさ
酔っぱらって
道脇の植え込みと争うこともある


3773
イミイミイミイミ 世界よ
なんて窮屈な
意味に満ちているぞ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3774
言葉は死や死後を饒舌に考える
けれども死は
触れ得ない特異点だから・・・


3775
死に弾(はじ)かれて人間界に反転された
死の思想
となるほかにない 無、無無無無・・・


3776
そうでなければ人間界を超えた
意味の途絶える
空想となるほかない 〈死〉


3777
だから死を思うとき
ただラアラアと
人気(ひとけ)無い道をひとり歩いている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3778
動植物のままでは
そこまでは
行けない探索できない (日差しが暑いなあ)


3779
人間は言葉の舟だから
どこまでも
どこまでも行ける気がしている


3780
けれど死 死は人の圏外
何にも見えない
聞こえない たぶん無をも超えたmuの・・・


3781
控えめだった人間が成長し力を付けて
ずいぶん横着になってきた
依然として死の自然は黙している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3782
(その時はその時さ)と思い定めていても
その時の気配に
うろたえることがある


3783
ちょっとしたからだの不調にも
(死ぬんじゃないか・・・)
と行ったり来たりすることがある


3784
淡くなった愛欲の海にも まだ
追いすがる言葉があり
歎異鈔の言葉も響いてくる


3785
多言を費やした哲学言葉たちも
峠を下り
家々の明かりの中に帰って行く




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3786
何十万年も思い悩み考え続けてきた
生と死の思想
(それでもよくわかんないなあ)


3787
踏みしめられたひとつの言葉道
その濃度の傾き
今日もまたひとり入り込んで来る


3788
どう考えるかと問われてもねえ
生老病死
渦中ではよく見えないな (ただ平穏か)


3789
生きものたちは無言の哀切とともに
自然にくずおれていく
人は無言の言葉の中にくずおれていくのか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3790
(お疲れさん)とか(なんまいだぶ)とつぶやく
声には出さないが
人と同じ言葉をつぶやいている


3791
澄み切った秋空に
言葉になれなかった
剰余の煙が流れて行く


3792
(なんまいだぶ)という黒っぽい言葉
の服で十分だ
とみんなが思っているとは思えない


3793
だから秋空を深く下って行く
さびしい沈黙
を振り払うようにみないつもの方へ帰って行く




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3794
(言っても仕方がない)言葉の
進むに進めない
にぎわいの裏通りがある


3795
死の空気はそんな裏通りに
澱んでいる
言葉の内側に倒れ込む人を待っている


3796
詩は立ち上がり歩き出す
瀕死だ
死の淵から何度でも立ち上がる言葉だ


3797
言葉の沼にたくさんの心が日々投身している
詩は 生きてるかぎり
いろんな日差しを浴びて味わい歩くのさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3798
フーコーによれば生と死は
微細な分布だ
日々不可逆の交換がなされている


3799
皮膚の死細胞が垢となり
微細なレベルで
生と死は日々交換・推移している


3800
生と死を自由に行き来する
輪廻転生の
鳥がまぼろしを運んでいた時もあり


3801
生と死は不可逆の別世界から
今や無数の生と死の
運動する微細な分布になってしまった




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3802
概念や論理の死はあんまり気づかない
髪が薄くなると
小さな死葉が落ちていく感じがする


3803
(あ ずいぶん薄くなってるなあ)
と押し止めようのない
別人への不安がやって来る


3804
髪の毛が薄くなる
なればなるときなれよ
たぶん誰もが小さな死からの再生をしている?


3805
軽やかな秋の空みたいに
ならばなれよと
不安の死から戻って来れたらいいな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3806
心は閾値(いきち)を越えて死に近づく
と 身も心も
景色は遠くぼんやりとしている


3807
視線にも死の匂いがしている
見るものたちが
次々に死に着色されていく


3808
死は呼び寄せる どうでもいいか
ひどく形式的すぎるか
きらくきままのんびりは閉め出されている


3809
死は不可逆だから魅入られると
いくら門を叩いても
拍動する言葉の返答はない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3810
遠い 国や軍備などに魅入られると
「普通の日本人」と偽装して
故郷でのイエス気取りになる


3811
ふだんのやわらかな表情が
いくらか固くなり
熱を帯びている (それって小死じゃない?)


3812
ありふれた父や母たちが
火宅を放置して
固い言葉の刃に浮き浮きしている (それって小死じゃない?)


3813
火宅ではあっても 時に
ゆったり腰下ろし
風も流れる (それって生き生きしない?)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3814
ちょっと冗談を思いつき
言葉の駅の手前で
つぶやきひとり笑(え)まいする


3815
言葉の駅から乗り込んで
みんなでやりとりする
言葉遊びブースの賑わいもいい


3816
言葉は駅からどこへ向かうのか
どこへ?もあれば
どこにも行きはしないさ。もある


3817
人が生きる理由や目的をあげつらう
生真面目指南書も多い
けど理由もなくただ生きている。もとってもいいな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3818
慌ただしく服を着て
出かけて行く
避けられない用事の日もある


3819
言葉もまたその速度とともに
羽を閉じて
黙々と流れに乗っていく


3820
ああそうかそこは
そうだったんだね
言葉は目の前のものから離れない


3821
そんな遠出をしない
日々の時間の
流れの渦中にとどまる言葉もある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3822
言葉にも暗い意味の
裏通りがあり
濁りぶくぶく泡立っている


3823
秋風が下りている
空気も
いい感じに言葉の肌を流れ下る


3824
暗い意味は透明で軽そう
でもブラックホール
から抜け出せそうにない


3825
閉じた さびしい
暗い意味は だから
圏外に生きるのである




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3826
無意味の秋 「無意味の秋」か
人間界のはずれ
きみは中空を見つめてばかりいるね


3827
意味は人間界のはずれで
有意味も無意味も
粉々に崩れ始める こぎみいいかい?


3828
透明でひんやりした
心の手が
圏外の中空に差し出されているね


3829
あれもよしそれもよし
かなしい煩悩具足の輩(ともがら)よ
歎異鈔の親鸞の言葉が響いているよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3830
心が言葉場を志向し
ひとつの言葉が選ばれる
それでも言の葉だから揺れている


3831
ひとつの言葉に定まっても
言葉は微かな
(こんなわたしでいいのかな)と不安を抱えている


3832
圏外からの風に揺れている
言葉は
圏内と圏外の境界に立っている


3833
(決めるのはわたしではない けど)
意味に浸透され意味に押され
心は踏み迷っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3834
農作業をしていると
心は無心に
社会のほうから退いている


3835
挑発的なゴチック言葉を
書き飛ばしている
SNS人間のことも考えることなく


3836
二人の世界や三人以上の世界から
解(ほど)けて
ただ無心にハブ茶を摘んでいる


3837
ヘンなSNS人間にも生(なま)の生活があり
みな同(おんな)じような顔をしている
と思えば少しは許せるかもしれないと思うのだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3838
きみも帰って行く あなたも
帰って行く
一日が沈み始める頃みんなが帰って行く


3839
なぜ帰って行くの?なんて
問うこともなく
少し軽やかに帰って行くのである


3840
帰り着けば窮屈を着慣れた
服は脱いで
心の足を投げ出すんだ


3841
スンダスンダスンダランド
ああビールがうまい
出かける明日につながれていても 一時だけは




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3842
一時の心解(ほど)けた
岸辺にも
やって来るやって来る 内から外から


3843
悩み悩まん悩めども悩もうぞ
と悩みが尽きない
日々もあり 日につなぎとめられている


3844
集めるともなく心の足どりが
負の札ばかり
集めていると裏側に抜けていく


3845
もうそこはビョーキというほかない
沼地から
無数の見えない糸がなびいてくる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3846
相手の言葉に へー(ゲル)と言ってしまう
井戸端の会話が
知識汚染されている


3847
「彼 ぽかんとしてるね」
(ポアンカレか・・・)
話者たちの言葉の出自が入り乱れている


3848
見た目聞いた耳では
(なんか違う・・・)
言葉の地域差位相の差が一瞬に感じ取れる


3849
ヘーゲルの止揚という概念は・・・
(しようねえ・・・)
ぼくならどうしようかなあ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3850
言葉のはじまりは〈あ〉〈う〉〈お〉
程度だったのに
今では生活と知識の迷路に入り込んでいる


3851
両極端の人が語り合う時
互いにすれ違い
言葉は怪訝な表情を浮かべる


3852
同じ極同士でも北極もあれば南極もあり
サラリーマンもいれば
自営業もおりすれ違いすれ違う


3853
言葉もsimple Lifeから
はるばる
高度で複雑な言葉界に入り込んでいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3854
言葉にも重い軽いがあって
重い言葉は身にも心にも張り付いて
なかなか言い出しにくいんだよな


3855
軽い言葉なら気楽に言える
言葉が外の言葉の肌に
風のように触れてまわる


3856
(いやいや 軽い言葉でも
注意が必要だ)
重い心や屈折し心には弾(はじ)かれるぞ


3857
重い軽いによって
言葉は言葉の出所を
瞬時に嗅ぎわけているようだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3858
ふりかえるふりかえる振り返る
競い合いだから
振り向かなくても後ろが気になる


3859
なるなるなるなる気になるなあ
ビジネスマン どんなに
改造人間になっても気になる


3860
走る無言の言葉の中に
前と後ろが
噴き出す汗がじっとりしている


3861
人である以上圏外には出られない
のに出ようとする
壮年はふと赤ん坊や老人を思う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3862
渦中ではそんなことはつぶやかない
(意味もないこと
意味もないことしたいなあ)


3863
意味に貫かれ意味通りしか
歩けない
遙か通りすぎてきた心がつぶやく


3864
少年期や青年期になると
意味ありげに
なってしまう意味に染まっている


3865
小さな子ども時代は意味以前
意味の視線からは
ふしぎな砂山を作っては壊している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3866
言葉にも幻のからだがあり
染みついている
ものたちがあり言葉と同時に立ち上がる


3867
例えば「主人」も「家内」も関係の視線
がなんどもくり返され
言葉を生み出し(いいね)となった


3868
時代の表情が変わって
古びた関係から
離脱してしまっても言葉は残っている


3869
新たな視線から匂い立つ
「スイーツ」!
みたいな言葉が生まれるまで




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3870
雨上がりの今日は
言葉たちが
押し黙るほど晴れ渡っている


3871
言葉がなさそうな鳥や獣たち
まなざしと声はありそう
秋空の空気に肌触れ合っている


3872
いちいち言葉にしないと
わからない
人はそうなってしまった


3873
言葉にしても右や左へ
迷路のようで
いったい何しに来たかと心迷う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3874
近くでは家を解体する音がする
もう九十代のおばあちゃんは
施設に居られる ゆく川の流れゆく


3875
この家の以前の家では小さなわたしが
生まれ育ち
何やらわからぬままに結婚式も見聞きした


3876
いろんなものが推移してきた
家も人も関係も
感傷はないただ無量の思いで歩くんだ


3877
ひとり生まれひとり死んでいく
(いいじゃないか)
遠くは正反反反合反と騒がしいが(暗闇じゃない)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3878
取り壊しや新築のように
絶えず意味は
更新更新更新されていく


3879
意味はファッションみたい
流行の波に乗り
乗ってノってノリノリだ


3880
祭りの後は意味クズだらけで
今さえ良ければ族たち
どこかへ帰って行った


3881
そうしてまた新しい朝
意味クズを寄せ集め
新しい意味のための場所を空ける




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3882
人の細胞は日々死と再生のドラマ
をくり返しているという
小意味のドラマもまた


3883
小意味を自分のものとして
なぞっていく
意味熱が心から放たれている ほっとほっと


3884
なんどもなんどもくり返す
時代の時間
普段着の意味夫婦へ擦り切れていく


3885
小さな意味たちの死と再生の影で
深層水の
大意味が深く連綿としている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3886
ひとりや家族や知り合いの
意味道を
ひとりひとり日々行き来する


3887
学校や仕事の意味網につながれていても
こんな意味道に
自然と悩みくつろぎ考える(今日はほっとするな)


3888
SNSでは真面目くさったトランプ顔で
国家伝統防衛国家と
ゴチック体の大意味道練り歩きもあり(ヘンなの)


3889
社会の異常な出来事たちは
湧き立つ泡
無言の意味道から何かを信号し続けている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3890
歩いていると声がする
「それはイミシンね」
何のことを言っているのか気にかかる


3891
意味がわからなくても
意味深はあり
意味網が作動している


3892
意味が影や深さや背後の
圏内に入る時
すなわち温かい日差しを浴びていない時


3893
イミシンがヒソヒソ発生し
背後から背後へ
感染し増殖していく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3894
言葉通りを歩いている
言葉に尽くせぬ
もやもやを抱えて歩く


3895
意味川が流れている
言の葉たちが
次々に流れて来ては水を跳ね踊る


3896
川面にひかりを浴びて
きらきら
気持ちよさそうに浸かり流れ行くもあり


3897
ぼくの放った言葉たちは
何か忘れ物した感じで
意味川に入る入るしかないな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3898
学校帰りの子どもらから
キツイ言葉が漏れる
「それってイミないじゃん」


3899
小さな子どもらも
意味風に当たっていて
もはや意味逃れはできない


3900
わりと気ままだったあの時間たち
は区画整理され
意味時間割が敷かれている


3901
漏れ逃れゆく小時間はあっても
だんだん慣れていく慣らされていく
意味時間が本流になっている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3902
独り立ちする青年期になると
もはや
意味青年に変身を遂げている


3903
変身ベルトは要らない
レイヤ毎に自在に
意味接続のオン・オフができるようになっている


3904
振り返れば遠い道のりだった
無意味に生まれ
無意味の混沌から意味につかまり意味立ちしてきた


3905
(無意味の混沌?)もう遙か霞んで
身に覚えがないが
ムイミノコントンではなかったような・・・




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3906
流れ流れてイミ・トーキョーへ
大都会の表通りは
イミジンイミ店イミ通り意味にあふれているぜ


3907
イミイミイミイミ ミイもユーも
流行のイミダンス
ヘンシン! ああらふしぎ ノッてるかい?


3908
(そんなに意味って大事なの?)
無数の疑問符たち
を押し流すようにイミ通りイミ風が吹く


3909
イミはね 大事なの
イミにイミを重ねていくと
たくさんのイミ札がお金も連れてくるんだよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3910
イミに疑問を感じた言葉たち
イミ民たちの中
ムーイミン ムーイミンとつぶやいている


3911
ムーイミンの大陸はない
ただインディアンの
ひみつの場所みたいにあちこちにはある


3912
(ムーイミン ムーイミン)
つぶやけば
ヘンシン!みたいに目の前に浮上する


3913
それって例えば喧噪の街中で
ひとり
iPodで音楽を聴いている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3914
きもちいい秋の日差し
きもちいい秋の空気
意味の手前の駅に立っている


3915
いるいる 生きものたちも
秋の渦中
落葉の間を動き回っている


3916
世界は人間界ばかりではない
振りかけても振りかけても
意味の効かない世界がある


3917
どんなに網を打っても
脱けていく
われら人にもそんな時がある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3918
ぼくはひとりの虫
色付いた落葉の森を
今日も旅する (きもちいーいなあ)


3919
上空からの視線
があることは
なんとなく感じている


3920
たぶんぼくらとは別の世界
があるのだろう
でもぼくのいまここが中心さ


3921
ああ風が吹いている
日差しもいい感じ
きょうは何しようかな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3922
〈秋〉っていいなあ
(そうだね)
いい感じに空気も流れているし


3923
(今がいちばんだね)
夏が好きな人もいるね
(ああ それぞれの秋か・・・)


3924
秋風の滑り台を
にんげんたちも
楽しんでいるみたいだよ


3925
(うん なんどもなんども
滑っているねえ)
「いい感じ」なんてつぶやいてるよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3926
向こうの世界では
このぼくらは
比喩の中で生きているらしい


3927
一寸の虫にも五分の魂
虫が知らせる虫の息
飛んで火にいる夏の虫


3928
虫がつく虫が好かない虫酸が走る
弱虫塞ぎの虫
腹の虫がおさまらない


3929
蜘蛛の子を散らす泣きっ面に蜂
蓼食う虫も好きずき
ずいぶんと人は虫付き合いしてきたもんだ


3930
他の虫は知らないが
それにしてもねえ
かすってもいないなあ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3931
街路樹に巻き付くピンクのリボン
(知ってるだけに ちょっと不吉だな)
いつものように立っているその木に


3932
巻き付くピンクのリボン
屠殺場の匂いを感じる
牛たちのように木は身震いするか


3933
肉を炒める時ぼくはつぶやくことがある
遠くの視線で
無言でつぶやき炒めている


3934
ぼくは大きい木も伐ったことがある
ただ無言でつぶやいて
大きい木の時間を何度か伐り倒したことがある


3935
今はまだつぶやくことしかできない
ただ遙か超未来にだけ
無用のつぶやきとなるのかもしれない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3936
奇数の意味の道だけ
歩いていることがある
振り返ると(無意識的だな)と思う


3937
偶数の意味の道を
やってくる人たちがいる
意味もなく平行して行く


3938
偶数や奇数に分岐する前の
ぐうすうきすうの渦があり
そのまた前のすうがありすういぜんがあり・・・


3939
いくつもの分岐点を踏み越えて
にんげんは
意味の道を歩いてきたんだな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3940
眠っていても意味縛り
に合って
意味夢にうなされる人もいる


3941
意味沼に引きずり込まれ
ジタバタと
沈む不安ばかりが湧いてくる


3942
意味があろうがなかろうが
ぼくは今この道を
秋風に乗って歩いていくのさ


3943
遠い大過去に見える
意味に取り憑かれ
意味道意味明日しか考えられないのかい




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


※時には即興詩として

3944
晴れた秋空に鳥が鳴いている
ツイツイツイチチチチ
小さな意味の道に響いている

-----------------------------------

詩『言葉の街から』 対話シリーズ


※時には即興詩として

3945
大声で語ることではない
ほんとうは
意味の道から外れてからだの内を流れる

-----------------------------------

詩『言葉の街から』 対話シリーズ


※時には即興詩として

3946
現在はコマーシャル時代
何でもハイハイハイと手を上げるアメリカ式
大きな太い意味川が流れている

-----------------------------------

詩『言葉の街から』 対話シリーズ


※時には即興詩として

3947
子どもの頃には大事なたから箱があり
見せたりあげたりしたくない
輝かしい無意味の城があった




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3948
考えても仕方ないけど
かんがえてしまう
知らぬ間に関係の意味道を歩いている


3949
理屈で断ち切れる意味
ばかりではない
くどくどと意味臭濃く追って来る


3950
晴れ上がった秋空みたいに
せいせいするな
そんなコーヒーブレイクは大切だ


3951
がんじがらめの・・・が少しは解(ほど)け
張り詰めていた
心身が陽のぬくもりを感じている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3952
向こうに意味坂が見える
楽しげに踊り歌っている
(計算された意味練習があり)


3953
楽しげに踊り歌っている
そりゃあそれでいいんだが
(意味マネジメントやお金の匂いもする)


3954
まだまだ遠い今の世だから
お金の匂い
がしてもどうってことないんだけど


3955
意味計算された歌と踊りにまみれ
お金にまみれ
無償の詩とは違ってもいいんだけれど


3956
意味計算が実行される
意味坂の歌や踊りに
疲れた聴衆へのひとしずく・・・があれば




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3957
今日も大きな銛(もり)を積んだ
意味船に乗り込み
言葉の大海に出ていくのが見える


3958
言葉の岸辺では
子どもたちが
無心に言葉の砂遊びをしている


3959
意味船には脱意味グループも
紛れ込んでいて
脱!の呪文をつぶやき続けている


3960
そんなに大意味が大事か
今ではクジラ獲らなくても平気だけど
大言葉も仕留められなくてはならないか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3961
遙か言葉の始まりは
外見には浮いた脂の漂うよう
溶け合った熱いもやもやが放出される


3962
これあれそれと指し示す
とはまだ言えないな
うつぼつと流れるマグマ流の言葉


3963
時間に時間が果てしなく積み重なり
成り成りて
ひとつの形 イメージ流が動き出している


3964
赤ちゃんがやっと歩き始める
ように言葉が立つ
イメージ流も少し自在に流れ出す




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3965
(どうしようかなあ
出かけるの・・・)
止めようかなと引き返すことはできる


3966
言葉も選択や転換や喩を取り止める
ことはできる
けれど緘黙(かんもく)し続けることはできない


3967
ある時代の言葉の流れに浸かり
ひとりひとり
固有の泳法で泳ぎ続けるほかない


3968
きみもぼくもかれも
今ここのにんげんだから
あんまり無理せず泳ぎ続けるんだよね




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3969
少しひんやり秋風が吹く
芯が疼いて
色付いた葉が落ちていく


3970
あ と思う間もなく
いつもの場所から
はらりと落ちていくのである


3971
秋という言葉の舟に乗り
秋の韻を奏でながら
落ちていく(どこへ?)


3972
同じ場所同じ韻であっても
季節によって
言葉は変面のように色変わりする




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3973
「川は流れてどこどこ行くの
人も流れてどこどこ行くの」
という歌があった


3974
そこからが分岐点だ
言葉の入口から
誰もがいろんな部屋に分かれて行く


3975
どこへということよりも
歌がどんな走法か
奏法かということが全てを語る


3976
言葉の操法が決まる
するとひとつの
顔と表情のある世界が浮上する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3977
無意味そうな言葉にも
重い軽いは別にして
選ばれた動機はある


3978
意識的な動機か
無意識的な動機かは
言葉の流れる層が決めている


3979
ついうっかりその部屋に
入ってしまった 言葉にも
無意識的な動機が背中を押したのかもしれない


3980
ぼんやりした春霞の言葉ひとつにも
そんなふうに
言葉のドラマが進行して来た




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3981
自分のことでさえよくわからない
という場面があり
何度も何度も同じような場面に立ち会っている


3982
『徴候 記憶 外傷』で中井久夫が記していた
言葉を覚える前の幼児期の記憶は残らない
ということは 言葉では言葉以前までたどれない?


3983
言葉ではたどれない 遙か時間の劇があった
そんな時間が
現在にも確かに流れている


3984
〈性格〉と呼ばれているもの
には核がある
どうしようもなく決定されてしまった核がある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3985
この宇宙のさびしい極微子から
生まれたはずなのに
いくつもの手に触れられ撫(な)でられ


3986
知らぬ間に小さな時間の庭先で
子供服を着せられ
土いじりやらおもちゃ遊びやら


3987
無心に遊び回っているのだった
ああ う おお
言葉はまだ言葉のようなものだった?


3988
どんなに未開に見えても
初心者でも
もうその道を呼吸して歩いているんだね




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3989
止まらない社会の動きが
もう少し
ゆったりゆとりを含んでいたら


3990
社会の大気を日々呼吸する
親たちも もう少し
子をやさしく見守るのかもしれない


3991
明日の時間と空気に貫かれている
親たちは 深みでは
自宅にいても心歩かされている


3992
たぶんふと訪れる後悔ばかりを
抱きしめて
ひとりひとり冷たい風にさらされている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3993
時には大善人や大悪人が現れる
でもたいていは
誰もが善にも悪にも豹変する


3994
揺れるスペクトル帯を
両極端に引き絞っていくと
善悪が大きく分離して見える


3995
魔が差してつい踏み外すことはある
あるいは見かねて手を差し伸べることもある
人はそんな道を歩いてきた


3996
積み重ねられた精神の負の遺伝子も
正の遺伝子も
手の芯にひっそり眠っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


3997
ふと小石を拾い上げている
表層では
わけもなくと言うほかないが


3998
見つめた小石にも
触れてみたら
ひんやりなどの感触があり


3999
そこに止まらず流れ出してゆく
支流は どこからか
この人の世界の本流に入り込む


4000
癖のあるひとりひとり
でありながら
知らぬ間にみんなを呼吸している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4001
ひとりは気ままで自由だな
でも少しさびしい
平均台上の日々か


4002
触れる つながる あったまる
背く 避(よ)ける
ひとりが世界の渦中にある


4003
西欧の乾いた個の哲学も
古代アジアの公中心の湿地の哲学も
どっちも(ちがうなあ)と思う


4004
歴史の時間をさらに押し開き
さびしい集落の 燃える秋
大岩戸の前でひとりひとりが踊り出している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4005
個・人 接続と分離の
長い時間が流れ
次第に析出されてきた〈個人〉


4006
わが国ではあいまいでも〈ひとり〉と〈みんな〉
がすっきりするか
ひとりの受難の歴史の舞台が開く


4007
〈ひとり〉と〈みんな〉より古く
身近なものに
〈ひとり〉と〈ふたり〉があり


4008
〈ひとり〉と〈ふたり〉にも
すれ違いもあれば
小さな日だまりもあり




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4009
心地よさは人それぞれ
ひとり座って
秋の空気と日にさらされている


4010
街路やテレビの中を
まだ信長が
歩き回っている(ヘンに感じない?)


4011
信長に扮する好感持っている俳優さん
だけどわあっ
と駆け寄りたいとは思わないんだ


4012
今までの王朝・貴族・武人中心の歴史から
ぱあっと橫超して見せた
民俗学の柳田国男、依然としてカッコいいな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4013
人間の根深い有り様に
照らされて
絶えざるかくめいということはあるだろう


4014
神々しい世界を作り上げて
はい終了
ってことはないよなあ


4015
だから「世界がぜんたい幸福にならないうちは
個人の幸福はあり得ない」
ということには疑念がある


4016
アラスカのとある岸辺に 遙か太古
漁から無事に戻る夫とそれを迎える妻の表情
を想像した星野道夫 ふたつの時間の中の小さな幸福の明かりの




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4017
粘土細工を仕上げてしまえば
確かに
清清して完成した椅子に座るだろう


4018
作り上げている途中は
無だろうか
そんなことはないよね


4019
概念ではなくて実感の道を下ってゆく
無心の内の
(作り上げる道道は何か生産≡消費してるね)


4020
風の生産、通路を通ってゆく風の消費
人の心が
風の波間に揺れている 風の劇




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4021
見た目がいろいろヘン!
(でも 遠目にそぎ落とされ飛び飛びされ
ゆがんだ画像になってしまって)


4022
そんな自信たっぷりに言われても
見ず知らずの人よ
ぼくはそんな心の顔立ちはしていないさ


4023
コマーシャル言葉の時代
実物はいいからフェイク!
若見え若見え変身!の言葉よ


4024
否定しても否定しても厚塗りされる
実感の思いは
おもいまま沈黙の渦中にいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4025
ことばが実感を離脱する時
ことばは固い衣装をまとい
モビルスーツの言葉に変身する


4026
生身のことばがたくさんの言葉たちに
取り囲まれている
繰り出すことばは跳ね返される


4027
あつい驚きとともにつかんでしまった
始まりの言葉であったが
きみは言葉の不毛を感じたことはないか


4028
何にも役立たない言葉
(役立たずの言葉?)
(遙か始まりは何かに役立てようとして生まれたのではなかった)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4029
ことばは学校に出て行かなくてはならない
動物たちと別れた人間のように
名残惜しげに振り向く


4030
ひとりひとりのことばは
社会化していく言葉の渦中
もまれるもまれるひりひりもまれる


4031
ことばは窮屈な服を着せられ
ここではゆったりと
お家(うち)みたいに寝そべることができない


4032
あのお家時代が懐かしいぞ
ネコも通らない
よそよそしい言葉道を歩いている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4033
(遠く遡ってみる)
母胎の閉宇宙では
たぶん窮屈には思わなかった


4034
閉宇宙と言っても
かすかに
外の声や気配はある


4035
閉宇宙の外らしきものを
感じながら
閉をも感じることなく自足する日々


4036
不穏な閉宇宙の場合は別として
今ここから見ると
窮屈とは無縁のいい感じだったのか


4037
きのうもあしたもなく
ただいまここの
流れたゆたいを生きる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4038
もうそれ以上は行けない
言葉の道は
途絶えて生まれる概念には生気がない


4039
けれどまぼろしのように
不確かだが
言葉のような匂いや肌感覚のような


4040
無というわけではなさそうで
今この言葉にも
溶け込んでいるような


4041
言葉のない閉宇宙時代の
言葉の萌芽の感触が
閉宇宙にびまんしている 感じる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4042
言葉に詰まることがある
言葉にするには
たくさんの障害物を越えていかなくてはならない


4043
さっさっさっと三分で
仕上げられる
とはとても見積もることはできない


4044
言葉の不可能とは
勝ち負けでも
論理の敗北でもなく 言葉の生命(いのち)を守る・・・


4045
この言葉時代の激流に
あの遙かな
言葉以前の姿で立ち尽くしている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4046
晴れ上がった秋空みたいに
わからないことが
やって来たらきみはどうするか


4047
意識する部屋から出て
手持ちの肌合いや匂いや
漂い流れを追ってゆくほかない


4048
もちろんわからなくったって
どうってことはない
晴れ上がった秋空に溶けることもある


4049
それでも人は人ゆえに
わかろうとする
その深みの欲動がよくわからない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4050
人は眠るネコも犬も眠る
生き物は眠る
眠りは無であるか 無ではなそうだ


4051
木や草花は眠るか
日が落ちるとクールダウン
葉を閉じるのもあり眠りに近そうだ


4052
日の差さない草木も眠る丑三つ時
風は眠るか 石は眠るか
眠りに近いか よくわからないな


4053
生き物に覚醒と眠りがあり
黙する自然にも
覚醒と眠りに近い表情がありそう




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4054
また今日も目が覚めた
ふしぎでも何でもない
当たり前みたいに起きて歩き出す


4055
大半は自然に振る舞い 時には
人間界のすき間から
内外のふしぎさに目覚め問うことがある


4056
目覚めと眠り、生と死
星の誕生から死まで
宇宙の表情は全宇宙の隅々にまで貫かれている?


4057
いつもはそんなことは思いもしないで
この人間界に
背を気にも留めず日々自足している?




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4058
人間界の内に自足する
にはあまりにも
苦の葉が日々舞い降りてくる


4059
ひび割れた心の葉脈
がちろちろ流れてはいる
時折ずきんと痛むんだ


4060
この世の中で片付くものはない
と漱石は語ったらしい
まことに人間界は清濁音が湧き続け


4061
遙か太古から人間界の内外に探してきた
人の生きる意味なんて
ほんとうに(わっからないなあ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



4062
歌も言葉も自然がいい
という牧歌時代
は疾うに過ぎ去ってしまった


4063
(あ それは見え見えの造花だな)と
一昔前なら
わかった 自然には負けていた


4064
今では精妙な自然に見える
造花は
自然に〈自然〉の姿で現れる


4065
人が自然の階段をさらに下ったから
今までと違った
装いで〈自然〉が行き来してくる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4066
そうやって人も自然も変貌
してきたんだね
(善悪を超えたひとすじの道がある)


4067
心はゆっくり進み
足はすばやく進み老いてゆく
その張り合わせのずれに痛む時がある


4068
頭は自在げにどこまでも遠く
飛んでゆく
心はここに深く沈んでゆく


4069
現在の促しに応えすぎれば
頭と心は
ベリベリと引き裂かれゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4070
あのインディアンみたいに
きみにも
たいせつなひみつの場所があるかい?


4071
誰かに語るものでもない
説明するものでもない
ただひとり腰を下ろすひみつの場所


4072
(おお 今日もいい風が出ている
水音もする
ひとり この場所に ひとり)


4073
芸術家なら、・・・いや詩人なら
この世界で ひとり
の意味がよおくわかるような気がする




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4074
ひとりっきり ひとりぼっち
みんなの視線で見られる
いろんな〈ひとり〉があり


4075
ひとりに生まれみんなの渦中を生き
ひとり去ってゆく
ああ《ひとり》がある


4076
《ひとり》とみんなの中の〈ひとり〉と
その間(あわい)に
ひとり日々振る舞う姿がある


4077
取り立てて ひとりを見ることもなく
みんなを見ることもなく
秋景色のように見れたらいいな 《ひとり》




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4078
ひとりが浮上してきた近代に
江戸っ子気質を背に ひとり漱石は
ひとりの哲学を煮つめていった


4079
それまではひとりは埋もれていた
押し入れや町の裏通りに
遠慮気味にひっそりと立っていた


4080
欧米の大波が目覚めさせたのは間違いない
次々に
表に立ち上がるひとり


4081
欧米の光の圧を背にして
因習に忍従するものかと
突き進んだひとり ひとり・・・




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4082
この列島という地域の
降り積もった
負の精神の遺伝子は ふかい


4083
借り物の付け焼き刃で解こうとする
そのこと自体もまた
負の精神の遺伝子だ


4084
法以外では善と悪とが判定しにくいように
精神の遺伝子の
正と負とは分かちがたく


4085
仮想の戦場ではなく
イエスの故郷みたいな
主戦場のたたかいに日が差すことは少ない


4086
そうして今なおひとりは
しっかりと踏みしめる
ひとりを確保していない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4087
人はことばになってしまった
この世界では
言葉がないと無と見なされる?


4088
けれど言葉が全てではない
ことばたちは
無の周辺でくつろいでいる笑っている泣いている


4089
立ち上がることはなくても
いろんな表情をした
絶対無の言葉も言葉に背を向けたままだ


4090
言葉に現れても現れなくても
ひとりひとり
言葉を超えたい焦りがある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4091
言葉の衣装をまとっているだけなら
ことばの人は
言葉を脱げばいい 清清するか


4092
問題は複雑だ
言葉は人の肌となっており
ことばの人は言葉なしでは生きられない


4093
情調語から概念語まで
言葉にも
起源からの積み重なりがあり


4094
言葉にエンクロージャーされながらも
ことばの人は
言葉の丘の向こうを夢に見る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4095
ことばはかくめいを夢見ている
街や通りや木々が
一瞬の内にファンタジーランドになる


4096
街や通りや木々の名前が
次々に意味をはがされ
溶けて見知らぬいい感じ野


4097
ことばのかくめいには
占拠・制圧も
主導権も軍事も要らない


4098
ただことばの芯に眠る
願望の
ベクトルが表出する虹の解放 (うふ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4099
秋が通り過ぎていく
(ぼくの内も
あきがとおりすぎてゆく)


4100
敗戦が通り過ぎて行く時
若き吉本青年も
山本さんも異様な時に静かに耐えた


4101
大きなものも小さなものも
僕の内外(うちそと)を
避けようもなく通りすぎて行く


4102
そうして少しずつ
この世の流れを
言葉の手前で感じ取ってゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4103
苦労に苦労を重ねて
少しずつ上って行く
上達するということがある


4104
けれどその道筋がすべて
ではないような気がする
みちがありそうな気配があり


4105
親鸞の〈橫超〉もまた
そんな道無きみちを
静かに指し示していたのではないか


4106
それって遊び人や怠け者に見えて
ほんとうは
遙か人の始まりからの大道ではなかったか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4107
目には見えない現在に
つなぎとめられて
ぼくのイメージは屈折する


4108
疲労のぼくがその道を行こうとするも
現在のぼくは
折り返してこの道を行ってしまう


4109
どこか深い所から湧いて来る
ものがある
かすかな気配のような感覚


4110
ぼくの現在に差している
言葉にならない
はるかな記憶のイメージ波みたい




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4111
ふと目をやると揺れている
水面に
さざ波が立っている


4112
普通に通りすぎる
背肌に
染み渡るものがある


4113
(ああ こうやってものみな動き
呼吸しているんだなあ)
なじんだ思いが背肌を流れる


4114
この現在は あまりにも慌ただしい
区画し割り当て要求する
(なんだ、なんだ、なんなんだ?!)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4115
時にはふとのぞき込んでしまい
キ キキ キキ キー
とおどろきおそれることはある


4116
触れているのに気づかない
たぶん日々の
時間の歩幅と違うんだ


4117
日差しの下の手触りのひとつひとつ
抽象の井戸は見えない
けれどふと湧き出てくる


4118
表情が急に硬くなる時
時間の井戸の深みから
吹き上がる風に触れている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4119
オレオレ詐欺も宗教も
言葉は別の顔を隠し持ち
対等は崩れ落ちる不信の未来


4120
あらゆる詐欺は親身になり
取り澄まし
正装してマレビト現れる


4121
そうしてとある街角で
急に変面する
変面する変面するよ


4122
少なくとも人を漁(すなど)る言葉でなければ
ターゲットもロックオンも
マーケティングも要らない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4123
言葉は夢を見る
命令しない
強制しない衆を頼まない


4124
舞台に十分に上りきれない
言葉は
ぎこちない響かない その無韻の響きよ


4125
言葉は理想の地図を描こうとする
囲い込まず作為せず
広告せずにもくもくと線を引く


4126
意志と内省の二層の間に
人も言葉も未来も
行き来して揺れている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4127
ことばは結合手を持っている
ひとりぼっちの少年にも
さびしい青の結合手が芽を出している


4128
みんなのおかげで生きているも
ひとりで生きるも
どこかもやもやが残る


4129
みんなの渦中を生きる
ひとりに
日差しよ 時には温かく通り過ぎてくれ


4130
たぶんみんなに埋もれたひとりも
ひとりっきりも無く
今ではもうひとり渦中を歩いて行くんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4131
ナアナアのむらの遺伝子の湯に浸かり
ひとりの芽は
萎(な)えている (ま、それもいいか)


4132
ひとりツッパリ行を突き進めば
ユーモアがあっても
漱石みたいに内臓をやられるか


4133
すぐにフタは閉まるが
言葉にしなくても
瞬時にわかるということがある


4134
この列島の根深い正と負の精神の
分かちがたい葉脈を
誰もがひとり日々すべってゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4135
ひとりからふたり
さんにんよにんとなり
見知らぬ他人が自然な家族となる


4136
まず初めての出会いがあり
くり返す内に
間の空気がやわらぎ組成が変わる


4137
見えない所で関係の糸が
織り成され
特別のふたりに今日の日が差している


4138
今ここに到るまでには
こんなにも
七曲がり八曲がり十重二十重(とえはたえ)あったんだね




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4139
ひとり おもっきりくしゃみしても
ひとり
静かだなあ(しずかだねえ)


4140
ひとりでいると自然と
内を向いている
触手はにぎやかな外を触れ回ることはない


4141
ひとりに座っていても
世界からの波は
ひとりの岸辺に寄せては返している


4142
ひとりに座っている時には
世界は遠い
重たすぎるウクライナの人々もロシアの人々も遠い




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4143
日々出かけては 帰ってくる
ひとりに座る
そんなひとりが立ち上がる時がある


4144
あくまでもひとりを砦として
ひとりの岸辺が
激しく浸食されたなら立ち上がるぜ ひとり


4145
おっとっとっと もう若くはない
それでも
心意気は この ひ・と・り


4146
「寄らば大樹の陰」「長いものに巻かれる」
壁は高く そんな時もあるだろう
でも ひとり無言に立ち尽くす




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4147
時間と空間はどこから
始まったのか では
それ以前の時空はあったのか


4148
自(みずか)らの生誕以前のことより
茫漠とした
宇宙を思う時がある


4149
生きものたちの方から見たら
自然にそうなった
としか思えない 生きている


4150
この世にはすっきり片付くものはない
という漱石の苛(いら)立ちから少しズレて
いちにいさんしひとり歩いて行くよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4151
風が出ている 髪が揺れ
ひとりが揺れている
外目にはただそのようにうつる


4152
けれどひとつの風には
いくつもの層があり
ひとりやり取りしている


4153
ひとり内にいれば
あれこれに
ひとりの階層で立ち合い続けている


4154
すっきり片付くことたまにはあるけど
だいたいは
片付いてはまた届くのくり返しだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4155
「元気与える」「元気をもらう」
好きにすれば
と思いつつ異和感が響く


4156
太古の神と人との交換
の儀式か
今なお生きている


4157
それで人は何を差し出すのか
わあわあきゃあきゃあ叫びながら
神(有名人)を祭壇に祀るのか


4158
群れの中のひとり
突っかかるわけでもなく ひとり
いい感じのひとり歌が欲しいなあ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4159
作られた時代劇の中を歩む
ひとりひとり
当時と違っても今を生きている


4160
当時は当時 今の視線を振り払って
暗中模索
の通りをひとりひとり通っていく


4161
未来からの視線で見ていることになりそうだが
想像やドラマ以外に
未来はやって来ない


4162
だからにんげんは
絶えず現在
をとぼとぼ歩いて行くんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4163
急に空気が冷たくなったね
(そうだね)
もう冬か(季節は思いがけず訪れてくる人みたい)


4164
ビワや木蓮も花やつぼみを付け
もくもくと
春への準備をしているようだ


4165
きっとにんげんたちも
季節の区切りの下で
今日と明日を区分けしながら手を動かしている


4166
現在のひとつの自然さの日々
の流れの中
誰もがふと立ち上がって背を伸ばしている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4167
この小さな世界の向こう
にもまた世界がある
ことはわかっている


4168
自分の直接の守備範囲や
責任ではない
世界がいつの間にか当然の顔を見せている


4169
警察や監獄や軍備が
そこここにあって
多くは無縁に生きていく


4170
遙か始まりは小さな集落のみ
いつの間にか世界は膨れ上がり
こちらにクモの糸を張り巡らす




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4171
小学校の門前に母といたのは覚えている
たぶん入学式だ
からだが固くもなる世界の始まりだ


4172
引き寄せたりつなぎ止めたり
粘り気のない見えない糸
避けようもなく糸がのびてくる


4173
学校は新しい世界の始まりだった
言葉は見えない糸だった
みんながなぜか急に黙ってしまうことがある教室


4174
ひとりひとり引き連れてきている
小地域のことばたち
は伏し目がちに世界を見ていた




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4175
少し息詰まる廊下に
水が流れ出す
滑らかに足は運ばれる


4176
対向する足たちには
自(おの)ずから
するり と脱ける


4177
(そんなアクロバットができるなんて
いつの間に
技を習得したんだろう)


4178
水の匂いかすか
ぼんやりした記憶の
隧道(すいどう)を下ってゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4179
いつもすり抜けることができる
とは限らない
隘路(あいろ)がにゅっうと目前に


4180
窮屈をやりくりして
心擦りむいたり
やっとこさ抜け出す日もある


4181
日差しがまぶしく
木陰の
葉の舟は微風に揺れている


4182
遊び暮らした学校以前の
無心なくうきに似て・・・
それでも不安に射貫かれてしまった日々よ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4183
明日こそはと身構えて登校する
と 傾いた大岩が
ぐらり元に戻っていることがある


4184
ふいと寄せて来る現実の場では
人と人とは
波風を払ったり浴びたり沈んだり


4185
ひとりひとりの意志と
向こうから寄せて来るものと
の避けようもないふしぎなドラマがあり


4186
静かに立ち続ける樹木のように
身深く
時間の劇の年輪を刻んでいく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4187
確かにひとりでできる
ひとりの力で
成し遂げた気になる


4188
それはいい けれど
ひとりに
力点を置きすぎるとズレていく


4189
小さなひびが広がっていく
びみょうな
ひび割れたひとりの立つ表彰台


4190
ひとりは車にも乗り
ATMも使う
現在という大きな他者に頼ってもいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4191
確かに作者はひとり
それでも生み育てた
ひとりの立つ幻の大地があり


4192
ひとりと大地の間には
絶え間なく
沈黙の交易がなされている


4193
ズームインすれば作者はひとり
ズームアウトすれば
大地が「現在という作者」になる


4194
(一端を絶対化しないこと)
ひとりから大地との間に
作者はいる 言葉はある

註.4193「現在という作者」は、吉本隆明『マス・イメージ論』より。




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4195
どう思おうといいけどさ
世界の風は
この季節にはあちらからこちらに吹いて来る


4196
みんなや世界を過剰に
重く見る
のもまた深みの流れからズレていく


4197
いくら脳の時代だといっても
なんでも脳の機能論は
肌の情感を乾いた記号化する


4198
微妙な びみょうな
ひとりと世界
の配合・構成を見通すことが大切だ


4199
世界の進む道筋がオープンで (それって いい感じ)
のものならば 誰に遠慮が要るものか
ひとりひとり 言葉の視線よ手よ追ってゆけ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4200
カジュアルな服着た言葉の「冬の枯葉」
フォーマルウェアーの言葉の「冬の枯葉」
いずれも冬の枯葉の隣に座る


4201
〈人〉の言葉は〈もの〉(対象)をどうしたいのか
ものを従えたいのか
ものと語り合いたいのか 沈黙を分かち合いたいのか



4202
にぎやかな脳ではなく内臓の
沈黙近く
〈もの〉から離れて言葉が座る


4203
時代の表層の言葉たちは
(明ルク語ラレ続ケラレナクテハナラナイ)
どこからか言葉に指令が来ている (ものものしいぞ 言葉よ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4204
ダンスだから手もつなぐ
心高ぶり手肌が触れる
そんな言葉の手もある


4205
けれど手をつながない
肌触れない
ひとりダンスの言葉もある


4206
ダンス基準法違反だよと言われようと
(幻の肌には触れている)
知ったことかとひとりダンス!


4207
もちろんいろんなダンス
あるだろう
でもひとりダンス! (これ いいねえ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4208
あ 「何何?」
ううん なんでもない
「うーん、気になるなあ」


4209
「何にも変わったものは見えないし」
今日も天気いいね
「うん ・・・」


4210
おだやかな冬の晴れ間にも
二人の間には
それぞれの時間の川が流れている


4211
無理矢理同一化も統一も
難しい
(それでいい それがいい)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4212
(あ ああ、あ。)
引きとどめようもなく
物が心が弾(はじ)けていく


4213
スローモーションで
ただ見続けるしかない
確実に壊れていく


4214
そのひと触れが その一歩が
物や心を
変位させる (もう 戻れ 無い?)


4215
静かな内省を飛び越えて
なぜいつも性急に見えるのか?
踏み出す人の言葉の足




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4216
科学がナノを手にして
質量や距離が
ナノの目で見られる時世界が深くなった


4217
そんな時代の心も言葉も
同じように
ナノ世界に下りて行く


4218
いろんなことがわかってきたとしても
にんげんは相変わらずだね
ということがある でもナノ程度は違うか


4219
たぶん見えない所で にんげんは
少しは更新している
(退化もしているかもしれないね)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4220
目立って気づくことはない
ナノに染まった街
人、心、言葉 どうナノ?


4221
深みを ナノが流れている
ナノが飛ぶ
ナノとナノとがぶつかり合う


4222
どうナノ? そうナノ。
ナノレベルで
知らぬ間に語られ始める


4223
富士ナノ、ナノ東京、南海トラフナノ
あらゆる名前が
ナノレベルで改訂されていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


4224
since 2015.2.2
偶然に
ほぼ毎日詩をつぶやき始めて八年余


4225
途中からふと毎日を意識し出し
さらに最近は
十年が心に懸かり始めた


4226
そう、吉本さんが首をかけて言い切った
毎日十年やればいっちょ前
の峠が気にかかってきた


4227
職人さんに限らず
いろんな分野でやられていることを
詩でもできないはずはない

4228
今では日々の手作業のように
なじんでいるが
時には脇道にも入ってみる







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