短歌味体Ⅲ-1

    1201首
(2015年08月21日~2016年09月16日) 

目次


短歌味体 Ⅲ      日付
短歌味体Ⅲ  1- 3 始まりシリーズ 2015年08月21日
短歌味体Ⅲ  4- 6 始まりシリーズ・続  2015年08月22日 
短歌味体Ⅲ  7- 9 今がすべてだシリーズ  2015年08月23日  
短歌味体Ⅲ 10-12 残土シリーズ   2015年08月24日
短歌味体Ⅲ 13-15 対話シリーズ  2015年08月25日 
短歌味体Ⅲ 16-18 対話シリーズ・続  2015年08月26日 
短歌味体Ⅲ 19-21 対話シリーズ・続   2015年08月27日 
短歌味体Ⅲ 22-24 対話シリーズ・続   2015年08月28日 
短歌味体Ⅲ 25-27 ひとりシリーズ  2015年08月29日  
短歌味体Ⅲ 28-30 回想シリーズ   2015年08月30日 
短歌味体Ⅲ 31-33 太宰治シリーズ・註を付す 2015年08月31日 
短歌味体Ⅲ 34-36 ひとりシリーズ・続  2015年09月01日  
短歌味体Ⅲ 37-38  2015年09月02日 
短歌味体Ⅲ 39-41  2015年09月03日 
短歌味体Ⅲ 42-44 イメージシリーズ  2015年09月04日  
短歌味体Ⅲ 45-46 内と外シリーズ   2015年09月05日 
短歌味体Ⅲ 47-48 内と外シリーズ・続    2015年09月06日 
短歌味体Ⅲ 49-51 少年の日々シリーズ・註を付す 2015年09月07日  
短歌味体Ⅲ 52-54 少年の日々シリーズ・続 2015年09月08日  
短歌味体Ⅲ 55-57 2015年09月09日 
短歌味体Ⅲ 58-60 どんどんシリーズ  2015年09月10日 
短歌味体Ⅲ 61-62  2015年09月11日  
短歌味体Ⅲ 63-65 「国東半島祈りの心―神と仏と人が暮らす里」(NHK 2015.9.12)を観て  2015年09月12日
短歌味体Ⅲ 66-68 音のふしぎシリーズ  2015年09月13日 
短歌味体Ⅲ 69-71 秋空シリーズ  2015年09月14日  
短歌味体Ⅲ 番外 少し縁ある阿蘇の地を思い  2015年09月14日
短歌味体Ⅲ 72-73 秋空シリーズ・続  2015年09月15日 
短歌味体Ⅲ 74-76 イメージみどりシリーズ  2015年09月16日 
短歌味体Ⅲ 77-79 政治論シリーズ  2015年09月17日  
短歌味体Ⅲ 80-82 ダメージファッションシリーズ   2015年09月18日
短歌味体Ⅲ 83-84 ダメージファッションシリーズ・続    2015年09月19日
短歌味体Ⅲ 85-87 つながりシリーズ    2015年09月20日 
短歌味体Ⅲ 88-90 つながりシリーズ・続   2015年09月21日  
短歌味体Ⅲ 91-92 つながりシリーズ・続    2015年09月22日  
短歌味体Ⅲ 93-94 つながりシリーズ・続     2015年09月23日  
短歌味体Ⅲ 95-96 つながりシリーズ・続  2015年09月24日 
短歌味体Ⅲ 97-100 つながりシリーズ・続   2015年09月25日 
短歌味体Ⅲ 101-102 つながりシリーズ・続  2015年09月26日 
短歌味体Ⅲ 103-105 ぱくりんちょシリーズ  2015年09月27日  
短歌味体Ⅲ 106-108 ふるふるシリーズ  2015年09月28日 
短歌味体Ⅲ 109-111 つながりシリーズ・続  2015年09月29日 
短歌味体Ⅲ 112-113  2015年09月30日  
短歌味体Ⅲ 114-115  2015年10月01日 
短歌味体Ⅲ 116-118  2015年10月02日 
短歌味体Ⅲ 119-120  2015年10月03日 
短歌味体Ⅲ 121-122   2015年10月04日  
短歌味体Ⅲ 123-125 指令シリーズ  2015年10月05日 
短歌味体Ⅲ 126-127 指令シリーズ・続  2015年10月06日 
短歌味体Ⅲ 128-130 時の流れシリーズ 2015年10月07日 
短歌味体Ⅲ 131-133 時の流れシリーズ・続  2015年10月08日
短歌味体Ⅲ 134-136 言葉の迷路シリーズ  2015年10月09日 
短歌味体Ⅲ 137-139 言葉の街シリーズ  2015年10月10日 
短歌味体Ⅲ 140-141 言葉の迷路シリーズ・続 2015年10月11日  
短歌味体Ⅲ 番外  2015年10月11日 
短歌味体Ⅲ 142-144 風シリーズ  2015年10月12日 
短歌味体Ⅲ 145-147 ひとシリーズ  2015年10月13日  
短歌味体Ⅲ 148-150 2015年10月14日 
短歌味体Ⅲ 151-154 言葉の迷路シリーズ・続 2015年10月15日 
短歌味体Ⅲ 155-157 いろいろシリーズ  2015年10月16日 
短歌味体Ⅲ 158-161 いろいろシリーズ・続   2015年10月17日 
短歌味体Ⅲ 162-165  太宰治シリーズ・続 2015年10月18日  
短歌味体Ⅲ 166-168 畑からシリーズ 2015年10月19日 
短歌味体Ⅲ 169-171 人と人シリーズ  2015年10月20日  
短歌味体Ⅲ 172-174 人と人シリーズ・続 2015年10月21日 
短歌味体Ⅲ 175-177 ナノシリーズ  2015年10月22日 
短歌味体Ⅲ 178-180 ナノシリーズ・続  2015年10月23日  
短歌味体Ⅲ 181-185 置き字シリーズ  2015年10月24日 
短歌味体Ⅲ 186-189 音の根っこシリーズ  2015年10月25日  
短歌味体Ⅲ 190-191 音の根っこシリーズ・続   2015年10月26日  
短歌味体Ⅲ 192-194  2015年10月27日 
短歌味体Ⅲ 195-197 なんにもない一日シリーズ  2015年10月28日 
短歌味体Ⅲ 198-200 微シリーズ  2015年10月29日  



短歌味体 Ⅲ  日付
短歌味体Ⅲ 201-203 らっしゃいシリーズ  2015年10月30日 
短歌味体Ⅲ 204-206 らっしゃいシリーズ・続  2015年10月31日 
短歌味体Ⅲ 207-210 微シリーズ・続  2015年11月01日
短歌味体Ⅲ 211-213 簡単に語れるかシリーズ  2015年11月02日 
短歌味体Ⅲ 214-218 葬式よりシリーズ 2015年11月03日 
短歌味体Ⅲ 219-223 葬式よりシリーズ・続 2015年11月04日  
短歌味体Ⅲ 224-226 比喩シリーズ  2015年11月05日
短歌味体Ⅲ 227-229 微シリーズ・続  2015年11月06日
短歌味体Ⅲ 230-231  2015年11月07日 
短歌味体Ⅲ 232-234 色々シリーズ   2015年11月08日  
短歌味体Ⅲ 235-237 疲れたらシリーズ 2015年11月09日 
短歌味体について 2015.11.09   
短歌味体Ⅲ 238-240 色々シリーズ・続  2015年11月10日  
短歌味体Ⅲ 241-244 アルアリハル砂漠シリーズ  2015年11月11日 
短歌味体Ⅲ 245-247 巨シリーズ  2015年11月12日
短歌味体Ⅲ 248-251 接続論シリーズ  2015年11月13日 
短歌味体Ⅲ 252-255 接続論シリーズ・続  2015年11月14日 
短歌味体Ⅲ 256-260 接続論シリーズ・続   2015年11月15日 
短歌味体Ⅲ 261-266 接続論シリーズ・続    2015年11月16日  
短歌味体Ⅲ 267-272 接続論シリーズ・続   2015年11月17日  
短歌味体Ⅲ 273-278 接続論シリーズ・続   2015年11月18日 
短歌味体Ⅲ 279-281 意味もなくシリーズ  2015年11月19日 
短歌味体Ⅲ 282-284 意味もなくシリーズ・続   2015年11月20日 
短歌味体Ⅲ 285-287 意味もなくシリーズ・続    2015年11月21日  
短歌味体Ⅲ 288-290 無シリーズ 2015年11月22日 
短歌味体Ⅲ 291-294 無シリーズ・続  2015年11月23日 
短歌味体Ⅲ 295-298 もの・こと・こころシリーズ 2015年11月24日 
短歌味体Ⅲ 299-302 もの・こと・こころシリーズ・続  2015年11月25日  
短歌味体Ⅲ 303-306 もの・こと・こころシリーズ・続 2015年11月26日 
短歌味体Ⅲ 307-309 日々いろいろシリーズ  2015年11月27日  
短歌味体Ⅲ 310-313 日々いろいろシリーズ・続   2015年11月28日 
短歌味体Ⅲ 314-318 わたしはシリーズ  2015年11月29日 
短歌味体Ⅲ 319-321 わたしはシリーズ・続  2015年11月30日 
短歌味体Ⅲ 322-325 音の根っこシリーズ・続  2015年12月01日 
短歌味体Ⅲ 326-329 政治論シリーズ・続 2015年12月02日  
短歌味体Ⅲ 330-333 政治論シリーズ・続 2015年12月03日
短歌味体Ⅲ 334-336 日々いろいろシリーズ・続 2015年12月04日 
短歌味体Ⅲ 337-342 宗教論シリーズ 2015年12月05日
短歌味体Ⅲ 343-345 宗教論シリーズ・続  2015年12月06日 
短歌味体Ⅲ 346-349 むずかしいシリーズ  2015年12月07日 
短歌味体Ⅲ 350-353 むずかしいシリーズ・続  2015年12月08日  
短歌味体Ⅲ 354-356 つながるシリーズ  2015年12月09日 
短歌味体Ⅲ 357-360 つながるシリーズ・続  2015年12月10日 
短歌味体Ⅲ 361-363 つながるシリーズ・続  2015年12月11日 
短歌味体Ⅲ 364-367 つながるシリーズ・続  2015年12月12日  
短歌味体Ⅲ 368-371 つながるシリーズ・続  2015年12月13日 
短歌味体Ⅲ 372-374 わけわからなくてもシリーズ  2015年12月14日 
短歌味体Ⅲ 375-377 わけわからなくてもシリーズ・続   2015年12月15日 
短歌味体Ⅲ 378-380 おもいシリーズ  2015年12月16日 
短歌味体Ⅲ 381-383 おもいシリーズ・続   2015年12月17日 
短歌味体Ⅲ 384-386 つながるシリーズ・続   2015年12月18日 
短歌味体Ⅲ 387-389 つながるシリーズ・続 2015年12月19日 
短歌味体Ⅲ 390-392 記憶シリーズ  2015年12月20日 
短歌味体Ⅲ 393-395 記憶シリーズ・続  2015年12月21日 
短歌味体Ⅲ 396-398 記憶シリーズ・続  2015年12月22日 
短歌味体Ⅲ 399-401 対話シリーズ・続  2015年12月23日 
   
   
 短歌味体 Ⅲ 日付
短歌味体Ⅲ 番外  2015年12月23日 
短歌味体Ⅲ 402-404 ひと休みシリーズ  2015年12月24日 
短歌味体Ⅲ 405-407 人界の今シリーズ  2015年12月25日 
短歌味体Ⅲ 408-411 一日シリーズ  2015年12月26日 
短歌味体Ⅲ 412-414 一日シリーズ・続  2015年12月27日 
短歌味体Ⅲ 415-418 イメージシリーズ・続   2015年12月28日  
短歌味体Ⅲ 419-421 イメージ論シリーズ  2015年12月29日  
短歌味体Ⅲ 422-425 イメージ論シリーズ・続  2015年12月30日 
短歌味体Ⅲ 426-428 喩シリーズ  2015年12月31日 
短歌味体Ⅲ 429-431 新年へシリーズ   2016年01月01日
短歌味体Ⅲ 432-434 朝シリーズ    2016年01月02日
短歌味体Ⅲ 435-438 朝シリーズ・続   2016年01月03日
短歌味体Ⅲ 439-441 なんでもないけどシリーズ  2016年01月04日
短歌味体Ⅲ 442-444 静かな夜シリーズ   2016年01月05日
短歌味体Ⅲ 445-447 なんでもないけどシリーズ・続  2016年01月06日
短歌味体Ⅲ 448-450 てにをはシリーズ  2016年01月07日
短歌味体Ⅲ 451-453 てにをはシリーズ・続   2016年01月08日
短歌味体Ⅲ 454-456 言葉の距離感シリーズ   2016年01月09日
短歌味体Ⅲ 457-459 背伸びシリーズ  2016年01月10日
短歌味体Ⅲ 460-463 ほっと一息シリーズ  2016年01月11日 
短歌味体Ⅲ 番外  2016年01月11日 
短歌味体Ⅲ 464-465 ほっと一息シリーズ・続    2016年01月12日
短歌味体Ⅲ 466-468 デビッド・ボウイシリーズ   2016年01月13日
短歌味体Ⅲ 469-472 いいねシリーズ  2016年01月14日
短歌味体Ⅲ 番外   2016年01月14日  
短歌味体Ⅲ 473-475 いいねシリーズ・続   2016年01月15日
短歌味体Ⅲ 476-479 リズムシリーズ  2016年01月16日
短歌味体Ⅲ 480-481 リズムシリーズ・続   2016年01月17日
短歌味体Ⅲ 482-484 ああそこはシリーズ  2016年01月18日
短歌味体Ⅲ 485-487 視線の不確定性原理シリーズ  2016年01月19日
短歌味体Ⅲ 488-490 視線の不確定性原理シリーズ・続  2016年01月20日
短歌味体Ⅲ 491-492 あかんシリーズ  2016年01月21日
短歌味体Ⅲ 493-494 ああそこはシリーズ・続    2016年01月22日
短歌味体Ⅲ 495-497 ああそこはシリーズ・続     2016年01月23日
短歌味体Ⅲ 498-499 チャレンジシリーズ  2016年01月24日
短歌味体Ⅲ 500-501 ああそうかそうなんだシリーズ  2016年01月25日
短歌味体Ⅲ 502-504 かいだんシリーズ   2016年01月26日
短歌味体Ⅲ 505-507 かいだんシリーズ・続 2016年01月27日
短歌味体Ⅲ 508-510 かいだんシリーズ・続  2016年01月28日
短歌味体Ⅲ 511-514 かいだんシリーズ・続   2016年01月29日
短歌味体Ⅲ 515-517 かいだんシリーズ・続    2016年01月30日
短歌味体Ⅲ 518-521 かいだんシリーズ・続     2016年01月31日 
短歌味体Ⅲ 522-524 あらあらシリーズ  2016年02月01日
短歌味体Ⅲ 525-528 付「一年経って」  2016年02月02日
短歌味体Ⅲ 529-532  2016年02月03日
短歌味体Ⅲ 533-535 『母型論』(吉本隆明)に寄せてシリーズ 2016年02月04日
短歌味体Ⅲ 536-538 『母型論』(吉本隆明)に寄せてシリーズ・続 2016年02月05日
短歌味体Ⅲ 539-542 言葉の下層シリーズ  2016年02月06日 
短歌味体Ⅲ 543-545 風シリーズ  2016年02月07日 
短歌味体Ⅲ 546-549 言葉の下層シリーズ・続 2016年02月08日  
短歌味体Ⅲ 550-552 物語論シリーズ  2016年02月09日 
短歌味体Ⅲ 553-555 言葉の渡世シリーズ   2016年02月10日
短歌味体Ⅲ 556-559 言葉の渡世シリーズ・続   2016年02月11日
短歌味体Ⅲ 560-562 言葉の渡世シリーズ・続 2016年02月12日
短歌味体Ⅲ 563-565 言葉の渡世シリーズ・続 2016年02月13日
短歌味体Ⅲ 566-569 言葉の渡世シリーズ・続  2016年02月14日
短歌味体Ⅲ 570-572 言葉の渡世シリーズ・続  2016年02月15日
短歌味体Ⅲ 573-575 異常時シリーズ  2016年02月16日
短歌味体Ⅲ 576-578 知らないシリーズ   2016年02月17日 
短歌味体Ⅲ 579-581 ひとりひとりシリーズ  2016年02月18日 
短歌味体Ⅲ 582-584 ひとりひとりシリーズ・続   2016年02月19日 
短歌味体Ⅲ 585-588 あわいシリーズ   2016年02月20日  
短歌味体Ⅲ 589-592 あわいシリーズ・続   2016年02月21日  
短歌味体Ⅲ 593-595 あわいシリーズ・続  2016年02月22日 
短歌味体Ⅲ 596-598 なにかかにかシリーズ 2016年02月23日 
短歌味体Ⅲ 599-601 あわいシリーズ・続   2016年02月24日  
   
   
  短歌味体 Ⅲ   日付
短歌味体Ⅲ 602-604 グローバルシリーズ   2016年02月25日
短歌味体Ⅲ 605-608 春シリーズ   2016年02月26日
短歌味体Ⅲ 609-611 言葉の渡世シリーズ・続   2016年02月27日
短歌味体Ⅲ 612-614 ほっと一息シリーズ・続    2016年02月28日
短歌味体Ⅲ 615-618 百人シリーズ  2016年02月29日
短歌味体Ⅲ 619-621 音遊びシリーズ 2016年03月01日 
短歌味体Ⅲ 622-624 百人シリーズ・続  2016年03月02日 
短歌味体Ⅲ 625-627 わかれ目シリーズ  2016年03月03日
短歌味体Ⅲ 628-630 わかれ目シリーズ・続  2016年03月04日
短歌味体Ⅲ 631-633 物語論 シリーズ・続 2016年03月05日
短歌味体Ⅲ 634-636 見てるだけシリーズ 2016年03月06日
短歌味体Ⅲ 637-640 即興シリーズ 2016年03月07日
短歌味体Ⅲ 641-643 ずれシリーズ 2016年03月08日
短歌味体Ⅲ 644-647 どうしたものかシリーズ   2016年03月09日
短歌味体Ⅲ 648-650 どうしたものかシリーズ・続  2016年03月10日
短歌味体Ⅲ 651-653 即興シリーズ・続  2016年03月11日
短歌味体Ⅲ 654-656 即興シリーズ・続   2016年03月12日
短歌味体Ⅲ 657-659 即興シリーズ・続   2016年03月13日 
短歌味体Ⅲ 660-662  シミュレーションシリーズ  2016年03月14日
短歌味体Ⅲ 663-665  シミュレーションシリーズ・続  2016年03月15日
短歌味体Ⅲ 666-668 即興シリーズ・続  2016年03月16日 
短歌味体Ⅲ 669-671 即興シリーズ・続   2016年03月17日
短歌味体Ⅲ 672-673 物語シリーズ   2016年03月18日
短歌味体Ⅲ 674-675   2016年03月19日
短歌味体Ⅲ 676-678 言の葉シリーズ  2016年03月20日
短歌味体Ⅲ 679-681 言の葉シリーズ・続   2016年03月21日 
短歌味体Ⅲ 682-684 入口シリーズ  2016年03月22日 
短歌味体Ⅲ 685-687 グローバルシリーズ・続   2016年03月23日 
短歌味体Ⅲ 688-690 入口シリーズ・続  2016年03月24日 
短歌味体Ⅲ 691-693 世界視線シリーズ  2016年03月25日 
短歌味体Ⅲ 694-696 誰にでも通じるかなシリーズ   2016年03月26日  
短歌味体Ⅲ 697-700  2016年03月27日
短歌味体Ⅲ 701-703 感嘆詞シリーズ   2016年03月28日
短歌味体Ⅲ 704-706 言葉の表層からシリーズ  2016年03月29日 
短歌味体Ⅲ 707-710 言葉の表層からシリーズ・続 2016年03月30日 
短歌味体Ⅲ 711-714 言葉の中層からシリーズ 2016年03月31日
短歌味体Ⅲ 715-717 言葉の中層からシリーズ・続  2016年04月01日
短歌味体Ⅲ 718-720 言葉の深層からシリーズ 2016年04月02日 
短歌味体Ⅲ 721-723 言葉の深層からシリーズ・続  2016年04月03日  
短歌味体Ⅲ 724-726 はるシリーズ  2016年04月04日  
短歌味体Ⅲ 727-729 はるシリーズ・続   2016年04月05日  
短歌味体Ⅲ 730-731 はるシリーズ・続    2016年04月06日 
短歌味体Ⅲ 732-734 はるシリーズ・続 2016年04月07日 
短歌味体Ⅲ 735-737 はるシリーズ・続   2016年04月08日 
短歌味体Ⅲ 738-741 はるシリーズ・続  2016年04月09日
短歌味体Ⅲ 742-743 通り過ぎるシリーズ 2016年04月10日
短歌味体Ⅲ 744-745 通り過ぎるシリーズ・続  2016年04月11日
短歌味体Ⅲ 746-748 イメージ野シリーズ 2016年04月12日
短歌味体Ⅲ 749-751 イメージ野シリーズ・続  2016年04月13日 
短歌味体Ⅲ 752-753 2016年04月14日
短歌味体Ⅲ 754-757 ブーメランシリーズ 2016年04月15日 
短歌味体Ⅲ 758-760 ブレーメンの音楽隊シリーズ  2016年04月16日
短歌味体Ⅲ 761-763 ブレーメンの音楽隊シリーズ・続  2016年04月17日
短歌味体Ⅲ 764-766 ブレーメンの音楽隊シリーズ・続  2016年04月18日
短歌味体Ⅲ 767-769 イメージ論シリーズ・続  2016年04月19日
短歌味体Ⅲ 770-772 イメージ論シリーズ・続   2016年04月20日 
短歌味体Ⅲ 773-775 震災シリーズ 2016年04月21日
短歌味体Ⅲ 776-777  ほっと一息シリーズ・続 2016年04月22日 
短歌味体Ⅲ 778-780  重層シリーズ  2016年04月23日  
短歌味体Ⅲ 781-783  重層シリーズ・続   2016年04月24日  
短歌味体Ⅲ 784-788  重層シリーズ・続   2016年04月25日
短歌味体Ⅲ 789-792  農に出てシリーズ  2016年04月26日
短歌味体Ⅲ 793-796 張り合いシリーズ  2016年04月27日
短歌味体Ⅲ 797-799 一瞬シリーズ 2016年04月28日 
短歌味体Ⅲ 800-801 一瞬シリーズ・続  2016年04月29日 
   
   
 短歌味体 Ⅲ  日付
短歌味体Ⅲ 802-805 一粒のシリーズ  2016年04月30日  
短歌味体Ⅲ 806-808 一瞬シリーズ・続 2016年05月01日 
短歌味体Ⅲ 809-811  対話シリーズ・続 2016年05月02日 
短歌味体Ⅲ 812-814 人はなぜかシリーズ 2016年05月03日 
短歌味体Ⅲ 815-817  対話シリーズ・続  2016年05月04日  
短歌味体Ⅲ 818-820 しまったシリーズ  2016年05月05日  
短歌味体Ⅲ 821-823 いいなシリーズ  2016年05月06日 
短歌味体Ⅲ 824-826 いやだなシリーズ   2016年05月07日 
短歌味体Ⅲ 827-829 しまったシリーズ・続 2016年05月08日 
短歌味体Ⅲ 830-832 いいなシリーズ・続  2016年05月09日 
短歌味体Ⅲ 833-835 いやだなシリーズ・続  2016年05月10日
短歌味体Ⅲ 836-838 何にも言わなくてもシリーズ  2016年05月11日 
短歌味体Ⅲ 839-842 無シリーズ・続 2016年05月12日 
短歌味体Ⅲ 843-845 ぶらんこシリーズ  2016年05月13日
短歌味体Ⅲ 846-848 ふくらみシリーズ 2016年05月14日
短歌味体Ⅲ 849-851 やわらかシリーズ  2016年05月15日 
短歌味体Ⅲ 852-854 詩と歌シリーズ 2016年05月16日 
短歌味体Ⅲ 855-857 もやもやシリーズ 2016年05月17日
短歌味体Ⅲ 858-860 イメージシリーズ・続 2016年05月18日 
短歌味体Ⅲ 861-863 いちにいさんシリーズ  2016年05月19日
短歌味体Ⅲ 864-866 この今のシリーズ  2016年05月20日
短歌味体Ⅲ 867-869 ふれるシリーズ   2016年05月21日
短歌味体Ⅲ 870-872 おはようシリーズ  2016年05月22日 
短歌味体Ⅲ 873-876 色々シリーズ・続 2016年05月23日
短歌味体Ⅲ 877-879 言葉の旅シリーズ 2016年05月24日
短歌味体Ⅲ 880-882 言葉の旅シリーズ・続  2016年05月25日 
短歌味体Ⅲ 883-885 越境シリーズ  2016年05月26日 
短歌味体Ⅲ 886-888 越境シリーズ・続  2016年05月27日 
短歌味体Ⅲ 889-891 越境シリーズ・続  2016年05月28日 
短歌味体Ⅲ 892-894 いいもんねシリーズ  2016年05月29日 
短歌味体Ⅲ 895-899 いいもんねシリーズ・続   2016年05月30日  
短歌味体Ⅲ 900  2016年05月31日  
 短歌味体 Ⅲ   日付
短歌味体Ⅲ 901-903 イメージ論シリーズ・続  2016年06月01日   
短歌味体Ⅲ 904-906 越境シリーズ・続 2016年06月02日 
短歌味体Ⅲ 907-909 ふれるシリーズ・続  2016年06月03日
短歌味体Ⅲ 910-912 静かなシリーズ  2016年06月04日 
短歌味体Ⅲ 913-915 微分シリーズ  2016年06月05日
短歌味体Ⅲ 916-918 微分シリーズ・続   2016年06月06日
短歌味体Ⅲ 919-921 びぶんシリーズ 2016年06月07日
短歌味体Ⅲ 922-923 びぶんシリーズ・続 2016年06月08日
短歌味体Ⅲ 924-926 四字熟語シリーズ 2016年06月09日
短歌味体Ⅲ 927-929 二度三度シリーズ 2016年06月10日
短歌味体Ⅲ 930-931 二度三度シリーズ・続 2016年06月11日 
短歌味体Ⅲ 932-934 二度三度シリーズ・続 2016年06月12日  
短歌味体Ⅲ 935-937 どうしようかなシリーズ  2016年06月13日
短歌味体Ⅲ 938-940 どうしようかなシリーズ・続  2016年06月14日
短歌味体Ⅲ 941-943 そんなことシリーズ 2016年06月15日
短歌味体Ⅲ 944-946 あんなことシリーズ  2016年06月16日
短歌味体Ⅲ 947-949 何してるのシリーズ 2016年06月17日
短歌味体Ⅲ 950-951 何してるのシリーズ・続 2016年06月18日
短歌味体Ⅲ 952-953 こんなことシリーズ 2016年06月19日
短歌味体Ⅲ 954-956 ええっとねシリーズ 2016年06月20日 
短歌味体Ⅲ 957-959 微シリーズ・続  2016年06月21日
短歌味体Ⅲ 960-962 微シリーズ・続  2016年06月22日 
短歌味体Ⅲ 963-965 いいなシリーズ・続  2016年06月23日
短歌味体Ⅲ 966-967 入口シリーズ・続  2016年06月24日 
短歌味体Ⅲ 968-970 人のあわいシリーズ 2016年06月25日
短歌味体Ⅲ 971-973 人のあわいシリーズ・続 2016年06月26日
短歌味体Ⅲ 974-976 こうそくシリーズ  2016年06月27日
短歌味体Ⅲ 977-979 政治論シリーズ・続   2016年06月28日 
短歌味体Ⅲ 980-982 人のあわいシリーズ・続  2016年06月29日
短歌味体Ⅲ 983-985 うるさいシリーズ 2016年06月30日
短歌味体Ⅲ 986-988 ブチ切れシリーズ 2016年07月01日 
短歌味体Ⅲ 989-991 光と影シリーズ  2016年07月02日
短歌味体Ⅲ 992-994 光と影シリーズ・続 2016年07月03日
短歌味体Ⅲ 995-997 視線の深度シリーズ  2016年07月04日
短歌味体Ⅲ 998-1000 視線の深度シリーズ・続 2016年07月05日
   
   
 短歌味体 Ⅲ   日付
短歌味体Ⅲ 1001-1002 境目シリーズ  2016年07月06日 
短歌味体Ⅲ 1003-1005 言葉シリーズ  2016年07月07日
短歌味体Ⅲ 1006-1008 夢シリーズ   2016年07月08日
短歌味体Ⅲ 1009-1012 言葉シリーズ・続  2016年07月09日
短歌味体Ⅲ 1013-1015 言葉シリーズ・続   2016年07月10日 
短歌味体Ⅲ 1016-1018 言葉シリーズ・続 2016年07月11日
短歌味体Ⅲ 1019-1022 言葉シリーズ・続    2016年07月12日
短歌味体Ⅲ 1023-1025 イメージシリーズ・続 2016年07月13日
短歌味体Ⅲ 1026-1027 言外のシリーズ  2016年07月14日 
短歌味体Ⅲ 1028-1030 ふとシリーズ  2016年07月15日 
短歌味体Ⅲ 1031-1033 二重奏シリーズ 2016年07月16日
短歌味体Ⅲ 1034-1035 二重奏シリーズ・続  2016年07月17日
短歌味体Ⅲ 1036-1038 無意識シリーズ 2016年07月18日 
短歌味体Ⅲ 1039-1040 無意識シリーズ・続 2016年07月19日
短歌味体Ⅲ 1041-1042 無意識シリーズ・続 2016年07月20日
短歌味体Ⅲ 1043-1044 もしくは抜字シリーズ 2016年07月21日
短歌味体Ⅲ 1045-1046 解読シリーズ  2016年07月22日
短歌味体Ⅲ 1047-1049 農事シリーズ   2016年07月23日
短歌味体Ⅲ 1050-1053 農事シリーズ・続    2016年07月24日
短歌味体Ⅲ 1054-1057  『日本はなぜ、「基地」と「原発」を留められないのか』(矢部宏治)を読んでシリーズ 2016年07月25日 
短歌味体Ⅲ 1058-1059 人付き合いシリーズ  2016年07月26日
短歌味体Ⅲ 1060-1062 言葉のいのりシリーズ 2016年07月27日
短歌味体Ⅲ 1063-1064 言葉のいのりシリーズ・続  2016年07月28日
短歌味体Ⅲ 1065-1066 言葉遊びシリーズ 2016年07月29日
短歌味体Ⅲ 1067-1069 葉シリーズ  2016年07月30日 
短歌味体Ⅲ 1070-1071 イメージシリーズ・続 2016年07月31日
短歌味体Ⅲ 1072-1073 イメージシリーズ・続 2016年08月01日
短歌味体Ⅲ 1074-1076 人付き合いシリーズ・続 2016年08月02日
短歌味体Ⅲ 1077-1078 服シリーズ 2016年08月03日
短歌味体Ⅲ 1079-1080 服シリーズ・続 2016年08月04日
短歌味体Ⅲ 1081-1082 服シリーズ・続 2016年08月05日 
短歌味体Ⅲ 1083-1085 服シリーズ・続 2016年08月06日
短歌味体Ⅲ 1086-1088 服シリーズ・続  2016年08月07日
短歌味体Ⅲ 1089-1092 ぼんやりとシリーズ 2016年08月08日 
短歌味体Ⅲ 1093-1095 ぼんやりとシリーズ・続 2016年08月09日
短歌味体Ⅲ 1096-1098 ぼんやりとシリーズ・続  2016年08月10日
短歌味体Ⅲ 1099-1101 情感シリーズ  2016年08月11日
   
   
 短歌味体 Ⅲ    日付
短歌味体Ⅲ 1102-1103 情感シリーズ・続 2016年08月12日
短歌味体Ⅲ 1104-1106 情感シリーズ・続 2016年08月13日
短歌味体Ⅲ 1107-1109 情感シリーズ・続 2016年08月14日
短歌味体Ⅲ 1110-1112 情感シリーズ・続  2016年08月15日
短歌味体Ⅲ 1113-1115 情感シリーズ・続   2016年08月16日
短歌味体Ⅲ 1116-1117 情感シリーズ・続 2016年08月17日
短歌味体Ⅲ 1118-1120 服シリーズ・続 2016年08月18日
短歌味体Ⅲ 1121-1123 情感シリーズ・続     2016年08月19日
短歌味体Ⅲ 1124-1126 関わりシリーズ 2016年08月20日
短歌味体Ⅲ 1127-1128 関わりシリーズ・続 2016年08月21日
短歌味体Ⅲ 1129-1131 あれは何だったかなシリーズ  2016年08月22日
短歌味体Ⅲ 1132-1134 関わりシリーズ・続  2016年08月23日
短歌味体Ⅲ 1135-1137 あれは何だったかシリーズ・続  2016年08月24日
短歌味体Ⅲ 1138-1139 関わりシリーズ・続  2016年08月25日
短歌味体Ⅲ 1140-1141 あれは何だったかシリーズ・続 2016年08月26日
短歌味体Ⅲ 1142-1143 あれは何だったかシリーズ・続 2016年08月27日
短歌味体Ⅲ 1144-1148 ちょっといいですかシリーズ 2016年08月28日
短歌味体Ⅲ 1149-1151 ちょっといいですかシリーズ・続  2016年08月29日
短歌味体Ⅲ 1152-1155 内外シリーズ 2016年08月30日
短歌味体Ⅲ 1156-1157 夏シリーズ 2016年08月31日
短歌味体Ⅲ 1158-1159 夏シリーズ・続 2016年09月01日
短歌味体Ⅲ 1160-1162 秋シリーズ 2016年09月02日
短歌味体Ⅲ 1163-1166 秋シリーズ・続 2016年09月03日
短歌味体Ⅲ 1167-1171 言葉の風景シリーズ 2016年09月04日
短歌味体Ⅲ 1172-1175 服シリーズ・続 2016年09月05日
短歌味体Ⅲ 1176-1177 音の感触シリーズ 2016年09月06日
短歌味体Ⅲ 1178-1180 追い詰めシリーズ 2016年09月07日
短歌味体Ⅲ 1181-1183 秋シリーズ・続  2016年09月08日
短歌味体Ⅲ 1184-1185 追い詰めシリーズ・続 2016年09月09日
短歌味体Ⅲ 1186-1187 追い詰めシリーズ・続 2016年09月10日
短歌味体Ⅲ 1188-1189 秋シリーズ・続 2016年09月11日
短歌味体Ⅲ 1190-1191 秋シリーズ・続  2016年09月12日
短歌味体Ⅲ 1192-1193 なんにもないシリーズ  2016年09月13日
短歌味体Ⅲ 1194-1195 なんにもないシリーズ・続  2016年09月14日
短歌味体Ⅲ 1196-1198 なんでもないけどシリーズ・続 2016年09月15日
短歌味体Ⅲ 1199-1201 固有値シリーズ 2016年09月16日 












   [短歌味体Ⅲ] 始まりシリーズ



夢現 生まれ落ちては
参道の
手すり温もり戻り旅立つ



始まりの言葉以前を
たどろうと
不明に煙るのどのふるえる



どこどこへ?不明を滑る
参道は
びよーんとのびる冷気が上る




   [短歌味体Ⅲ] 始まりシリーズ・続



はじまりはどこか照れくさい
儀式染みて
不明の過去を塗り飾り立てる



なんにも言わなくても
双方向
に流れ流るるを支流の流る



ずずっと動き出したら
まてえまてぇ
声を限りに叫び寄せても




   [短歌味体Ⅲ] 今がすべてだシリーズ



時は日々波立ち泡立ち
くり返す
それでも今がすべての顔して



われ知らず生産=消費す
今の今
誰もが今を味わい尽くす?



にぎわいの残土のように
降り積もり
時の地層に人待ち顔に眠る




   [短歌味体Ⅲ] 残土シリーズ



10
押してみても押し返される
足跡も
日々ダンスする余韻降り積もる


11
どこからか「もういいかい?」
に促され
一歩踏み出し切り開きゆく世界


12
食べものはからだに降り積もり
残土は
知らないところを巡る巡りゆく




   [短歌味体Ⅲ] 対話シリーズ



13
「どうしたの」「なんでもないよ」
山と谷
深い落差にひゅうと風の鳴る


14
「どうしたの」「なんでもないよ」
くり返す
人みな湛(たた)える沈黙の水圧


15
「どうしたの」「なんでもないよ」
染み渡る
言葉の誘う言葉の流れがある

 

 註.「言葉の流れ」は、例えば、〈これからさきは娘にきこえぬ胸のなかでいう〉(吉本隆明、詩「佃渡しで」)。





   [短歌味体Ⅲ] 対話シリーズ・続



16
「あばばばば」「うーんそおーね」
まぼろしの
小さな虹がふたりに架かる


17
たずねられなんにも答え
なくっても
それで対話ということがある


18
たずねられなんにも答えず
三十年後
取り出し開く 対話がある




   [短歌味体Ⅲ] 対話シリーズ・続



19
「どうしたの」「ううん ちょっとね」
引き裂かる
遠い匂い 今(コォーン) まぼろしのよぎる


20
「どうしたの」「ううん ちょっとね」
断裂の
遠い硝煙 微(ビィー) まぼろしに煙る


21
「どうしたの」「ううん ちょっとね」
人はみな
ふいと時間の波に足すくわるる




   [短歌味体Ⅲ] 対話シリーズ・続



22
まぼろし深こう咲く花は
人みな知る
どこにでも咲くその花この花


23
不明の雪異色(こといろ)に舞う
ユーとわたし
の谷間に〈冬〉が揺らぐ


24
「あ それそれ」「えーと どれですか」
すれちがう
風の時間が異色に染まる




   [短歌味体Ⅲ] ひとりシリーズ



25
生まれ出てくもの糸糸
糸つながり
ぴいんと張ってゆるゆるみ消ゆ


26
ひとりとて色色つながり
一色(ひといろ)に
無数の色粒溶け込んでいる


27
しずかな時間に溶けて
鼻歌を
歌っているよ「ひとり上手」




   [短歌味体Ⅲ] 回想シリーズ



[短歌味体 Ⅲ] 回想シリーズ


28
気付いたらテーブルに着き
頬杖の
しずかにこちら眺めている


29
振り返る知らぬ間に
肌触れる
ひんやりして現在(いま)に匂い立つ


30
そういえばそんなことあった
と時間の
沼に沈み入りしゅわしゅわわ




   [短歌味体Ⅲ] 太宰治シリーズ



31
言葉には歩む歩幅の
匂い立つ
歩み去り行く固有の癖は


32
気になると歩みは揺れる
ハイハイの
遠い記憶が染み流れ居る


33
断崖に追い詰められた
ような匂い
きりきりきりとどこへ墜ちゆく



 短歌味体Ⅲ 太宰治シリーズ・註



 親が無くても子は育つ、という。私の場合、親が有るから子は育たぬのだ。親が、子供の貯金をさえ使い果している始末なのだ。
 炉辺の幸福。どうして私には、それが出来ないのだろう。とても、いたたまらない気がするのである。炉辺が、こわくてならぬのである。


 ついさっき私は、「義のために」遊ぶ、と書いた。義? たわけた事を言ってはいけない。お前は、生きている資格も無い放埒病の重患者に過ぎないではないか。それをまあ、義、だなんて。ぬすびとたけだけしいとは、この事だ。
 それは、たしかに、盗人の
三分の理にも似ているが、しかし、私の胸の奥の白絹に、何やらこまかい文字が一ぱいに書かれている。その文字は、何であるか、私にもはっきり読めない。たとえば、十匹のが、墨汁の海からい上って、そうして白絹の上をかさかさと小さい音をたてて歩き廻り、何やらこまかく、ほそく、墨の足跡をえがき印し散らしたみたいな、そんな工合いの、かな、くすぐったい文字。その文字が、全部判読できたならば、私の立場の「義」の意味も、明白に皆に説明できるような気がするのだけれども、それがなかなか、ややこしく、むずかしいのである。
 こんな
譬喩を用いて、私はごまかそうとしているのでは決してない。その文字を具体的に説明して聞かせるのは、むずかしいのみならず、危険なのだ。まかり間違うと、鼻持ちならぬキザな虚栄の詠歎に似るおそれもあり、または、れるばかりに図々しいの皮千枚張りの詭弁、または、淫祠邪教のお筆先、または、ほら吹き山師の救国政治談にさえ堕する危険無しとしない。
 それらの不潔な
と、私の胸の奥の白絹に書かれてある蟻の足跡のような文字とは、本質に於いて全く異るものであるという事には、私も確信を持っているつもりであるが、しかし、その説明は出来ない。また、げんざい、しようとも思わぬ。キザな言い方であるが、花ひらく時節が来なければ、それは、はっきり解明できないもののようにも思われる。
  (「父」 太宰治 青空文庫 ※ルビははずしている。)


 大原富枝に『アブラハムの幕舎』という作品がある。いわゆる「弱者」と呼ばれる、この社会から一段落ちこんだひっそりした場所を内面とする主人公の物語だったと思う。それはまた、この社会に湧き上がってくる、一見凶悪に見える事件の主人公たちの内面にも通じる世界である。そのような内面を穏やかな色調で明るみの下に開示して見せたという意味でこの作品は画期的であった。

 この太宰治が造型した「私」は、作者に似ている。この「私」は、家族の者たちから見て、どうしようもない父親に見えるだろう。さらに家族以外の外からの視線でも、どうしようもない性格破綻者や生活破綻者と映るのかもしれない。作者はそうした外からの視線を内省として語り手でもある「私」に加えている。そうして、「私」の内からの視線と外からの視線とがぶつかり合う対立の場を超えて、「私」には弁明したい何かや執着せざるを得ない何かがある。それがこの作品の中心の舞台である。

 作者が「私」に語らせる判読できない文字(言葉)は、その外面から自分はどのように見なされているかという像を「私」は受けとめつつも、どうしても生活世界で普通に振る舞えない心の在所を無言の叫びのように語っている。このはっきり判読できない文字という比喩は、卓抜な比喩の表現であるとともに、断定調では言い尽くせない作者太宰治の倫理の有り様を語っていることになる。そして、未だかつてないこういう表現、こういう心の在所をわたしたち読者の前に開いて見せたということは画期的なことであったと思う。そのことがこの作品を優れたものにしている。

 そして、「私」が比喩的に語ったような心の有り様は、同じような形で、あるいはいくぶん薄められた形で、現在、事件として現象する若者たちの非行の内面や、あるいは十分に理屈立てて自分を語ることのできないすべての少年少女たちの内面に通ずる、響き合うものを持っている。大原富枝の『アブラハムの幕舎』は、こういう内面の開示の系譜の上に位置づけられるのではないか。

 付け加えれば、「私」の言葉では言い様もない心の在所は、作者太宰治がなんどもなんども訪れた場所であった。そしてその言い様もない心の有り様がどこから来るのかは、作者太宰治には自覚的にはついには明らかに触れ得なかったのだと思われる。吉本さんが『母型論』などで明らかにしようとした人間の生誕の不幸の物語、言いかえれば「私」にとっての「母の物語」の不幸が、それを突き抜けようとする太宰治の抗いを含みつつ、くり返す波のように太宰治を生涯にわたって追跡し、追い詰めていったものと思われる。「花ひらく時節」は、何人もの作者たちによって切り開かれる他ないようなとても大きな、しかも現在的な課題であるように見える。





   [短歌味体Ⅲ] ひとりシリーズ・続



34
ふだんは日差しに溶けて
安(アン)ひとり
次元の裂け目押し開く音する


35
話し合いにそっぽ向く者
静(セイ)必ずあり
今流れ来る少年の日々


36
内なる火燃え続ける
自足(ジソク)5m
カタツムリの石橋渡る




   [短歌味体Ⅲ]



37
秋の午後うとうとふいと
半世紀
少年の川にきらり跳ねる魚(うお)


38
ふねがあり時間の海に
航行する
太古の舟か未知のshipか




   [短歌味体Ⅲ]



39
ずいぶんと近づいても
造花の葉
生命(いのち)流れずしいんとしてる


40
フィギュアに生命(いのち)吹き込む
イメージは
数万年の幻想力(ファンタジー)


41
慣れ慣れて出会いの初めの
造り花
いまここに流る艶(つや)やかなみどりの

 註.対自然でも、対人でも、相手が生命あるなしに関わらず、人はイメージとしての生命を創出し、付与することができる。





   [短歌味体Ⅲ] イメージシリーズ



42
ちろちろと水の流れる
薄い膜
隔てて流るうねる匂う水音


43
引き込まれイメージの川
を流れる
干からびた川底を潤す


44
作り物なのに生臭い
はぜの木に
手触れなくとも赤く発火す




   [短歌味体Ⅲ] 内と外シリーズ



45
渦 下る 外も内でも
下降の同一性(くだること)
しかしけれども逆接の色々


46
ぼんやりと座り続ける
光景の
流れに入れば丘陵(おか)を上り下り




   [短歌味体Ⅲ] 内と外シリーズ・続


47
言葉の村を踏み越えて
耳慣れた
同じ言葉も着慣れぬ新服(ふく)


48
言葉の古い国境(くにざかい)
いくつ越え
たらまぼろしの集落に立つ?

   註.「国境」の国は、もう今では死語になっている、あなたのお国はどこですかなどの出身の地域ということ。国というと、私たちの外にそびえる国家ばかりになってしまっているが、クニという言葉の歴史は、どういう道筋をたどったろうか。





   [短歌味体Ⅲ] 少年の日々シリーズ


49
耳当てる線路のレール
しいん深
ひんやり未知に触れる少年


50
数人で木によじ登り
我ひとり
木の実(註)つかみかねて飛翔すイカロス

 註.長いのでブログに掲載。


51
地に墜ちて落ちぶれ帰る
イカロスは
階段でころびと母に答える


  50註.
 この「木の実」は、検索していたらどうやらイヌビワというものではないかと思われた。しかし、樹木ではなく木に絡みついた蔓科の植物だった印象がある。家の近くの道沿いに一本の割と大きな木があった。それに絡みついた蔓にはイチジクの小さいようなものが実を付けていて、わたしはまだ小学校の低学年だったと思うが、近所の少年たち三四人で木に登ってその実を採って食べていた。

 ところで、その実か植物のことをわたしたちは「ぶっく」と呼んでいた。イヌビワの別名で検索しても見つからなかった。わたしの耳に残る音では確かに「ぶっく」だから、おかしいなと思いながら調べていたら、(イヌビワ 別名 ぶっく 長崎)で検索してみると、ヒットした。ああ、やっぱりという気分だった。

 ブック(長崎)    イヌビワの方言
 ブックノキ(長崎)  オオイタビの方言

 木に巻き付いている画像がネットにあったから、いずれもイチジク属であり実も似ているが、イヌビワではなくオオイタビだったのだと思う。

 では次にそれをなぜ「ぶっく」と呼ぶのかということだが、少年の頃はそんなこと気に掛けたことはなかった。今では気に掛かるようになってしまった。辞書を調べていて、仏供(ぶく、ぶっく)という言葉に出会った。仏前に供える物のことらしい。白い樹液を出すイヌビワに相当すると思われるもの(「ちちの実」)が万葉集に2例あるらしい。このイヌビワを仏前に供えるという例には出会えなかった。素人の思いつき程度の直感に過ぎないが、「ぶっく」とおそらく音読みで呼ぶことから、イヌビワは仏、あるいはそれ以前は神に、供えるものではなかったろうか。





   [短歌味体Ⅲ] 少年の日々シリーズ・続


52
何にも波風立たない
多くの日々
少年の肌柔らかに下る


53
兄弟と親戚の子等と
川泳ぎ
深みにはまり独りもがき抜ける


54
死に瀕し時間の流れ
ゆっくりと
スローモーションの、渦を離脱す




   [短歌味体Ⅲ] 


[短歌味体 Ⅲ] 


55
強いて絆言わずとも曇(ドン)
あぶり出す
つなぎつながれこの世の縁は
 
 
56
たいせつなことは裏通り
柔らかな
微風の内に立ち、消えゆく


57
沈黙の内に語り
走りゆく
押し広がるコミュニケーション

 註。人の日々言葉にならぬ言葉、声にならぬ声、着飾ることのないすっぴんの、沈黙の内に流れゆくもの、政治や文化上層の得意げなおしゃべりの雑音を超えて、ほんとうはそれがこの世の主流を形成してきたし、形成する。そして、わたしの言葉もまた、そこに。





   [短歌味体Ⅲ] どんどんシリーズ


58
どんどん と どどどんどんぱ
(花火上がり)
どどんどんどん(仰ぎ見る顔)


59
ころがって どん 川に入り
どんどんと
小さ舟下りどんドン・グリコ


60
どろーんど・ん どんどん
    どん
どどん
       どん
探知・追跡、上下左右




   [短歌味体Ⅲ] 


61
いつどこでどんな出会いの
あったっけ
我知らず湧き出すメロディー

 註.この場合のメロディーは、検索してみると次の歌。明治の唱歌。「夕空晴れて秋風吹き……」(「故郷の空」)



62
左足から踏み出した
のかどうか
階段の中途に不明の秋風




   [短歌味体Ⅲ] 「国東半島祈りの心―神と仏と人が暮らす里」(NHK 2015.9.12)を観て


63
見えねども信じるこころ
ありありと
ほら今ここに イメージの生動(うねる)


64
うみやま静かにひかえ
丘越えて
ふるうイメージの隆々(りゅうりゅう)


65
神仏に新米を供う
くり返し
引き継がれ来てどこへ去りゆくか

 註.大分は、若い頃バイクで臼杵の石仏群や近くの馬頭観音や磨崖仏などの写真を撮りに行ったことがある。臼杵の石仏群の大日如来だったか、まだ修復されずに頭が下に置いたままになっていたような。





   [短歌味体Ⅲ] 音のふしぎシリーズ


66
イヤホンも付けてないのに
しいん深
外は夕凪内は夕波


67
I don't know.(アイドーノー)と言ってるのに
愛殿が
目を見開いて遠くから駆けてくる


68
古来からの露の音色を
計測す
今も内に響き合う滴




   [短歌味体Ⅲ] 秋空シリーズ


69
ふしぎにもまたもやこんな
秋だなあ
秋の居住まい肌を触れゆく


70
秋空の非情にも
分かれゆく
大水の後内と外とに


71
思えきみひとりの部屋から
中空で
みんなシェアする滲み入る秋空




   [短歌味体Ⅲ] 番外 少し縁ある阿蘇の地を思い


人並みに和らぐ大地も
荒れ狂う
巨人のような時もあったか


地に降り立ち日々くり返す
日差し浴び
人の匂いを放ち放たれ


大観峰から見渡せば
遙かに
緑の布地に織り込み来た人模様

註.「大観峰(だいかんぼう)。阿蘇北外輪山の最高峰に位置する天然の展望台。」




   [短歌味体Ⅲ] 秋空シリーズ・続


72
秋空が迅(ジン)染みてくる
あ・き・み・は
バターのように溶けて秋風の中


73
秋空が腎(ジン)染みてくる
あ・き・み・は
バターになって溶秋風(ヨウシュウフウ)




   [短歌味体Ⅲ] イメージみどりシリーズ


74
数えても一葉二葉と
流れ出し
溶けて流れるみどりの奔馬(ほんば)


75
じっと見る 緑あふれる
部屋となり
ふるえ擦れ合うみどり流るる


76
じっと見る暗転の後
みるみると
大河となってみどり流るる




   [短歌味体Ⅲ] 政治論シリーズ


77
戦争も死者も遠く
霧の果て
はて?上も下もソフトイデオロギー(公的住民)が狂い咲く

 註.(公的住民)は、置き字で、読まない。例示してもいいが、余りに多すぎて挙げない。論理的に国家間関係(力の政治)など語っているようで、生活世界を離脱した空想的なソフトイデオロギーに過ぎないということ。生身の生活者住民力が試されている。



78
政治論むつかしくはないさ
太古より
受け継いで来た起源(はじまり)の事情


79
太古にも惨(ザン)今もなお
(高みの)勘違い
ひとの生きるは土の匂いの

  註.(高みの)は、置き字で、読まない。




   [短歌味体Ⅲ] ダメージファッションシリーズ


80
ああすばやい季節の暮れていく
オウジュポン
飛び石踏みゆく秋の夕暮


81
静けさと夕闇溶け合い
モンモンモン
心に波紋秋の夕暮


82
ああそれは追いすがっても
するりさらするり
秋雨に泣く秋の夕暮




   [短歌味体Ⅲ] ダメージファッションシリーズ・続


83
薄曇る画布を流るる
冷え冷えの
ひゅうひゅわわん秋の夕暮


84
石投げて時間の海から
匂い立つ
しゅっしゅしゅわあ(層成す)秋の夕暮

 註.(層成す)は、置き字で、読まない。




   [短歌味体Ⅲ] つながりシリーズ


85
ちっぽけなひとりの中に
宇宙さえ
ぐーんと縮み星の瞬く


86
はじまりはありふれた朝
ぶんぶんぶん
幼児サイズで動き回り出す


87
つながりの糸は見えない
クモのように
自然に行きつ戻りつしてる




   [短歌味体Ⅲ] つながりシリーズ・続


88
ほんとうはひとりぼっちも
あるんだよ
生まれ出る前死にゆく時でなくても


89
つながりの糸絶たれても
独りもよし
また糸は芽生えつながりもする


90
人の世はつなぎつながれ
いとからまり
でこぼこどんどん 静(セイ) いつかはふうっ




   [短歌味体Ⅲ] つながりシリーズ・続


91
つながりはつなつなつなの
暗がりに
ぴいんと張られ仕舞い込まれる


92
説明の流れているよ
水面下
響く音糸音のゆらゆら




   [短歌味体Ⅲ] つながりシリーズ・続


93
作者は私(法ホウホウ)と言い張っても
色々の
時の糸絡み合い意図を染め上げる

註.(法ホウホウ)は置き字。


94
ごろんごろん ぱあー ぱああ(^^)
ごろんごろん
ぱああー(^^) ごろんぱあああ

註.(^^)は置き字、見るだけ。




   [短歌味体Ⅲ] つながりシリーズ・続


95
(グローバルナジンザイヲ
メザシテ・・・)
・・・ち、ちがうんだよな 軽ーい言葉の(分断線)

註.(分断線)は置き字。


96
威勢よい風になびく
種々(くさぐさ)を
薙ぎ倒し倒しいとを切りゆく




   [短歌味体Ⅲ] つながりシリーズ・続


97
ケイタイも後振り返っても
帰れない
いくつもの糸につなぎつながれ


98
つながれるそんなにライン
と腐(くさ)しても
渦は巻巻また流れ出す


99
渦の中ちいさな言葉たち
厭離穢土(オンリーエード)
深く沈めて軽やかに舞い踊る


100
言葉には場と椅子があり
視線の
つながる高度・濃淡がある

 註.生活世界を超えたあらゆる言葉は、言葉の視線の占める場の高度とそこから見渡したものの濃淡の分布によって分類できそうに見える。そして、その高度が固定的かスペクトルのように可変的か、という取り得る高度の自由度が、その言葉の開かれた度合いや柔らかさに対応している。また、この高度は、空間的なものだけではなく、時間的なあるいは歴史的な深さにも対応している。これらのことは、吉本さんの普遍視線や世界視線を念頭に述べている。





   [短歌味体Ⅲ] つながりシリーズ・続


101
押し分けてつんつんつんと
迫っても
相撲のように受けたりよけたり払ったり


102
この世では誰もが「当事者」
虔十(けんじゅう)
は馬鹿にされても黙々杉を植える


 註.虔十は、宮沢賢治「虔十公園林」の主人公。
経済も教育もスポーツも、つまり現在の社会では一般に、効率や成果や機能などの本来は附随的なものが中心の座を占め、あたかもそこにのみ人間が棲息するかのような考え方が主流としてある。人間という概念が、遊びやいい加減さがそぎ落とされて、無意識的に、すなわち現在を呼吸する自然な意識として、Aか非Aかという風に二分法的に捉えられると言い換えてもよい。日常の生活や人間関係では、事はそんなに単純じゃない複雑系と分かっていても、言葉として論理化すると当事者と非当事者という風に、次のような文章のようにもなる。「当事者になるつもりがない人」(為末 大 http://tamesue.jp/20150921/)もちろん、これは著者の体験の積み重ねから来る、少し苛立ちを含む言葉であり、人間関係論ではあろう。スポーツ指導者とか何々委員とか公的にではなく、個人として振る舞う考えとしては自由でありわたしが言うべき言葉はない。しかし、著者はより多く公的立場にも立っている。そして公的な場面では、個と個という関係では捉え尽くせない集団の問題も浮上する。この著者のような考え方は、現在では割と自然なのかもしれないが、この「当事者」という言葉に少し異和を感じて。





   [短歌味体Ⅲ] ぱくりんちょシリーズ



103
生きてたらその気なくても
ぱくりんちょ
生命(いのち)から宇宙までくり返してる


104
少年の必死に描く
キャラの絵は
ぱくりんちょ彼の森を歩み出す


105
双子でもどこかちがうよ
ぱくりんちょ
顔立ち違い道別れゆく




  [短歌味体Ⅲ] ふるふるシリーズ



106
ふるふるふるふるまわってる
日差し受け
ゆっくりふるふる影差しまわる


107
ふるふる雨も降る降る
ふるふる
風も震る震る身もふるふるる


108
ふるふるふるふる時間を下り
ふるふるる
羽ふる広げ ふるふるり帰還

 註「ふるふる」のイメージの出所として。
「銀の滴降る降るまわりに,金の滴降る降るまわりに」という歌を私は歌いながら流に沿って下り,人間の村の上を通りながら下を眺めると
 (梟の神の自ら歌った謡  「銀の滴しずく降る降るまわりに」アイヌ神謡集 知里幸惠編訳 青空文庫)





  [短歌味体Ⅲ] つながりシリーズ・続



109
人はみな万万万(バンバンバン)
溶けて一つに
かたち成しても秋風は吹く


110
人ひとり迅迅神(ジンジンジン)
顔立ち
のっぺり熱く溶け入り行く


111
していても何もしていなくても
つながりの
張り巡らされ独りの光る




  [短歌味体Ⅲ] 


112
滲み入る秋 金木犀の
さんさらあ
しゅうしゅらあ匂い降る朝


113
ああ木の葉ああコノハノ
(流れ入る)
アアコノハコノ葉脈フルウ




  [短歌味体Ⅲ] 


114
秋深く黙々歩む
底の方
モノクロに色燃え立つモノローグ


115
秋深く言うこともなく
佇めり
波立つ泡立つ時間の海辺




  [短歌味体Ⅲ] 


116
秋雨の色々ぶつかり
音のする
ぱつ ぽつ ぱつ 音する夕べ


117
雨音に色は見えない
しかしかし
微小の色粒音階を上り下る


118
木々たちは日差し途切れる
夜眠る
千年の夢深々として




  [短歌味体Ⅲ] 


119
ケイタイの鮮(セン!)買った時
使い始め
手垢をかぶり芯に潜(セン!)潜みゆく


120
打ちふるう瞬(シュン!)感動は
春霞
夏から秋へ旧(キュウ!)冬と畳まる




  [短歌味体Ⅲ] 


121
とっても(うんこ)効果的なの
ほらほら(うんこ)
肌のノリがよくいい感じでしょ(ウンコ)


122
山あーの向こうかーらあ(ハアア)
下りてくる(ソレソレ)
ふーしぎーな(ハアア)風ーのー吹ーく(ソレソレ)




  [短歌味体Ⅲ] 追跡シリーズ


123
るるるんばるんばるんばば
(指令に
深く根ざして)るんばるるんば

 註.わたしはテレビで観たばかりで持ってもいないけど、そのロボット掃除機「ルンバ」のことを思い。



124
手と足がそろって歩む
(どんな指令?)
時代(とき)もあったとか目撃した少年の時


125
手で食べる箸で食べるの
境目で 
どんな物語湧き消え去ったか

註.明治期の丁髷から西欧風の髪形への変貌については、いろんなエピソードとともに記録が残されている。





  [短歌味体Ⅲ] 追跡シリーズ・続


126
外見には何にもなくても
鈍(ドン)追跡され
鋭(エイ)指令を受ける 日々の哀し味


127
がんばれと自ら指令
出す日には
軒先の朝少し重たく




  [短歌味体Ⅲ] 時の流れシリーズ


128
めいじんも言葉を帯びて
歩き回る
遙か明治を迷人のよう


129
ゆるりゆるりと言い出し始め
江戸ははる
かに暮れていき今は何の世か


 130
万葉に入りもしない
木々の葉が
色づき散って土に重なる




  [短歌味体Ⅲ] 時の流れシリーズ・続


131
砂粒のひとつひとつは
日差し受け
有為転変光り輝く


132
砂粒を差し置くように
大河は
止まることなく滔々と流る


133
砂粒と大河とは無煙?
奥底に
ひそかにつながる圏外の道




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の迷路シリーズ


134
はなうたの 聞き返せない
戻れない
文脈の裏街道(うらみち)を追う


135
あいづちの 軽い槌音(つちおと)
響かせて
門扉(もんぴ)の側(そば)にぼんやりとして


136
けんがいの 危うい道を
過ぎて行く
つながり途絶えた夕暮道




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の街シリーズ


137
ひたすらに子どものように
積み上げる
風に刃向かう砂の町並み


138
夕暮れにひとり佇む
秋大気
しいんしんしん身に染み渡る


139
寄せてくる時間の波は
ざわざわと
選んだ覚えなく鳴り響く曲




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の迷路シリーズ・続


140
明るさや部屋のふんい気
わかっても
選択・配置する不明の触手(て)


141
発射され煙り立つ弾道
見えずとも
ズン貫かれ心よろめく



  [短歌味体Ⅲ] 番外


気付くとは 人も組織も
秋深く
枯れ果てて葉のゆらゆら舞い落ちる


秋深く 人も組織も
染まりゆく
その翻る線上のみち


一歩でも 未知が行ければよい
深まる秋
数万年の遺伝子を抜け




  [短歌味体Ⅲ] 風シリーズ



142
風を押すぐんぐんぐん
がむしゃら
ではなくからだの下からぐんぐん


143
風を切る知らなかったなあ
すっぱあん
風を切りつつ峠を越える


144
風に乗るこんなにも楽に
なるなんて
「風にのる智恵子」も また人の姿か

註.「風にのる智恵子」(『智恵子抄』高村光太郎)




  [短歌味体Ⅲ] ひとシリーズ


145
おそらくは何万年も
振り返り
考えてきた人の生きる意味


146
言葉には言われなくとも
手足動き
価値線上を踊っている


147
邪悪さはどこの生まれか
ひねくれた
花や木々の不幸の物語か




  [短歌味体Ⅲ] 


148
木・花・月・作物・雑草
名前には
人の歩いた時間の詰まる


149
じゅっくい濡れた言葉でも
風のように
素知らぬ足取り抜け行くある


150
「そうですか」と「そぎゃんね」
指示する場
は同じでも彩りや匂いのちがう




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の迷路シリーズ・続


151
目覚めたら朝かと思えば
夕暮れの
つかの間の峠迷路の中に


152
くがたちの火傷なくても
罪匂う
濁る水底澱(おり)の潜む


153
人の世の迷路に佇(たたず)み
虔十は
青空の下杉苗を植える

註.宮沢賢治『虔十公園林』の主人公、虔十。


154
人の世の迷路絡まり
虔十は
すぱぱああん青空の下




  [短歌味体Ⅲ] いろいろシリーズ


155
いろいろの色も音色も
揺れ揺られ
幼稚園舎に日差し柔らか


156
いろいろの色溶け混じり
暗転し
ダークグレーの朝が始まる


157
晴天も不吉な風吹き
舞い上がる
邪悪芽生え匂い立ち始む




  [短歌味体Ⅲ] いろいろシリーズ・続


158
どうしたの って・・・・・
いろいろの
色混じり合い絡み合い・・


159
もうもうもうもう連打する
幻の
牛のように絶望の峡谷(たに)へ


160
言うに言えぬ峠からの眺め
どうしても
その場にいないと消える匂いの


161
色々の峠を下り
静かな
言葉以前の沼地に憩(いこ)う




  [短歌味体Ⅲ] 太宰治シリーズ・続(前回は、短歌味体Ⅲ31-33です)


162
ひとびとのマイナスの札
ばかり背負い
微笑みつつも街路独り歩む


163
いっしょならうんざりざりと
砂を噛む
独り佇む魂のスペクトル


164
人みな飛び石踏みゆくか
石と石
の間を踏む 演技ではない


165
乗り慣れた自転車の
染み付いた
哀しみ時折きいと音立てる




  [短歌味体Ⅲ] 畑からシリーズ


166
ただここに今在るから
触れている
澄み渡り日々移る秋空


167
秋空にからだ動かし
帰り来て
火燃やしした煙の匂い微か


168
しみじみと見ることもなく
別れ来て
今ここに湧く秋空模様




  [短歌味体Ⅲ] 人と人シリーズ


169
癒やされる・元気もらった
なんかいや
ナンカ変だなベタベタするう


170
この世がハエ取り紙の
地平なら
そこは自然なべたべた感か


171
長らくもこの世の人の
習いならい
半歩遅れて清濁奏(かな)づ




  [短歌味体Ⅲ] 人と人シリーズ・続


172
そこまではと白線がある
滲み入って
越境したらちゃぶ台返すよ


173
(人と人)そこをスルーしてしまったら
峡谷に
向かい隔てる 関所がある

註.(人と人)は、置き字。

174
わかり合うわかり合えない
いずれでも
波打ち渦巻く人界の内




  [短歌味体Ⅲ] ナノシリーズ


175
人ひとり カラスの鳴いてる
聴こえてる
耳の内に響き下るナノ


176
ナノなので空耳かと
見上げれば
空渡る鳥 大空に耳


177
ナノなので空耳かと
ドア開ける
他人(ひと)の事務する顔の見える




  [短歌味体Ⅲ] ナノシリーズ・続


178
ナノなので言葉の葉揺れ
瞬時に
揺れ伝わり新たな地に咲く


179
おぼろげな夢現の
境には
固まりゆく手前の言葉ナノ


180
どうナノ?こうナノ?そうナノ?
知らぬ間に
吹き寄せ絡む言葉の糸くず

 註.ナノ(nano, 記号: n)は国際単位系 (SI) における接頭辞の一つで、以下のように、基礎となる単位の10-9倍(=十億分の一、0.000 000 001倍)の量であることを示す。
1ナノメートル = 0.000 000 001メートル
1ナノ秒 = 0.000 000 001秒(ウィキペディア「ナノ」より)





  [短歌味体Ⅲ] 置き字シリーズ


181
各々の歳経る言葉の
年輪から( )
いろんな歩み方ふいと流れ出る


182
知りません(ね) 言葉の総量は
音に出ない
深い峡谷にまで及ぶ


183
(いいですよ)風に流れる
言葉ひとつ
ひとつ拾いながらまた風に流す
 
 
184
ええ。
(ああこれは 何度か通った
やわらかな
新茶を揉むみどり匂い立つ)


185
(私はやっていない
何と言い
何を掘り返そうとわたしはやっていない)

註.( )は、置き字。見るだけで読みません。




  [短歌味体Ⅲ] 音の根っこシリーズ


186
りんりりん 燃える燐々
輪りん輪
鈴々走り風になびき凛


187
さわさわさわ 静かな沢に
揺れる渦
木々多々(さわさわ)沢ざわわん


189
暗やみの無色無音の
峠から
かすかな音色の下る?洞窟




  [短歌味体Ⅲ] 音の根っこシリーズ・続


190
くる、くる止めようもなく
くるくるく
どこからともなくカムケイムカム


191
ダルだるまダルエスサラーム
ダルセーニョ
だるダルシマーどんダルベッコ

 註.ぼんやりと電子辞書を引き眺めつつ。




  [短歌味体Ⅲ] 


192
どうせいは見極めにくい
動と静
芯の方から表情変わる


193
左足から進み出たのか
わからない
ささいなことのイメージ消失


194
何だっけあの名前は?
無数のない
の河原には砂の線ばかり




  [短歌味体Ⅲ] なんにもない一日シリーズ


195
なんにも無い一日でも
何か有り
初めと終わりその道筋あり


196
ありありとイメージできない
場面でも
遠い静止も砂は流動する


197
なんにもない一日でも
時は流れ
みどり泡立ち消え積もりゆく




  [短歌味体Ⅲ] 微シリーズ


198
雨の中また小さな雨
降り始め
なじみの丘陵しっとり濡らす


199
朝早く〈アイムカミング!〉
と言いつつも
からだは秋の静かな日溜まりに


200
いつもならスルーする白線(せん)も
平均台
の上ならばゆらゆらゆらりん




  [短歌味体Ⅲ] らっしゃいシリーズ


201
抜けいくも言葉は生きる
時と場の
約束に守られ伸びゆく生命線(いのち)


202
ウォーターはワラァーでないと
圏外で
What do you meam ?返球来るらし


203
母ならば向かう子の言葉
受けとめて
あぶあぶ球に返球する

 全体の註.「魚屋のらっしゃいの声好きで買う」(毎日新聞「万能川柳」2015.10.28)を読み、きっかけとして。





  [短歌味体Ⅲ] らっしゃいシリーズ・続


204
ほんとうは作り元気かも
しれないが
飛び跳ねる魚の「らっしゃい」


205
無意味でも肌になじんで
ほのかにも
意味線上の「ラッスンゴレライ」


206
秋晴れの大気震わす
どんどん
どどんどんどん芯の言葉匂い立つ




  [短歌味体Ⅲ] 微シリーズ・続


207
選択し接続される
言葉たち
丘陵(おか)を上り下るベクトル場の


208
落とされた言葉の波紋
見えない
けれどもんもん触れ波色立つ


209
肌に触れ下りゆくゆく
言葉たち
波紋ゆらゆら深く青みへ


210
青々の遙かな深み
身震いし
上りゆく言葉に微かな青の




  [短歌味体Ⅲ] 簡単に語れるかシリーズ


211
簡単に言えば言えるか
子どもなら
論理の外から匂い見定める


212
言葉の絡み合う櫓(やぐら)
透視する
ほねほねほねの芯がうねってる


213
尽くされたひゃくまんげんも
骨がある




  [短歌味体Ⅲ] 葬式よりシリーズ


214
読経する広がる沈黙の
深みから
生死を分かつ奥深い谷


215
人並みに手は合わすれど
ナンマイダブ
声に出さない「お疲れさん」


216
葬儀終え沈黙の深み
より浮上
きれいさっぱり秋の空


217
下り下りて言葉の谷の
身内(みうち)には
湧き漂う霧に湿り気を帯ぶ


218
つながりの糸様々に揺れ
時を駆けて
来る柔らかなフラッシュバック

全体の註.久しぶりの親戚の通夜、葬式に出向いて。




  [短歌味体Ⅲ] 葬式よりシリーズ・続


219
目に入り来る次々の
木々のみどり
に生あるもののうちふるうあり


220
火葬場の白い骨となり
静かに
人(ジン)きっぱりと生死を分かつ


221
遠くの静かに揺れ揺られ
木々のみどり
生あるもののように日差し浴び


222
白い骨となり果てても
人間界(ひとのよ)超え
青い宇宙界(ほら いまここ)にこのように在り


223
読み下す不明の読経
流るれど
母子のように内で合流す




  [短歌味体Ⅲ] 比喩シリーズ


224
古ぼけた手垢の付いた
比喩を着る
他人(ひと)の歩みでもうーんかび臭い


225
マフラーを付け加えると
リニューアル
少し新たな匂い立ち始める


226
晴れ間求め喩の舟に乗り
ずんずんずん
おもい大気を遙か突き抜け・・・




  [短歌味体Ⅲ] 微シリーズ・続


227
あ 髪の毛付いてますよ
急変
する気配のような匂い立つ


228
今すぐに請(セイア!)といっても
くねくねした
道を一気に駆け上るか言葉は


229
通り過ぐ木の葉の事情
ただ揺れる
みどりの内に微かに映える




  [短歌味体Ⅲ] 


230
年老いて「いないいないバア」
再びした
後に静かに無の大地の方へ


231
おんがくの打ち鳴らし
響き合う
なびく green grass 沈黙の丘陵地(おか)




  [短歌味体Ⅲ] 色々シリーズ


232
色々の色滑り出し
流れ乗り
混じり合い隣り合い風立ちぬ


233
禁色となるまえの配置
から一歩
人の配置と同じく抜け出る


234
選ばれて配置された
色かたち
人のこころ色匂い立ち来る




  [短歌味体Ⅲ] 疲れたらシリーズ


235
疲れたらスピードゆるめ
ゆっくりと
芯に沈みつつ辺り見回す


236
荒れ模様よくなる気配
なくなくに
通り過ぎる時舞い来る木の葉


237
疲れたらささくれ立つ
飲み込んで
窓開け放つ言葉の岸辺




 短歌味体について 2015.11.09

 「短歌味体」が、2015年02月02日からほぼ毎日書き続けてⅠ・Ⅱ・Ⅲ合計で850近くの作品数になりました。途中から1000を意識するようになりました。

(短歌味体な Ⅰ 100
短歌味体な Ⅱ 500
短歌味体 Ⅲ 237)

 まずは、万人の思い思う舞台に立ってその場からの言葉を繰り出せたらいいな、次に、短詩型文学の先端的な課題に少しでも触れられたらな、また詩へ環流していくものがあればいいな、という欲張った思いでやっています。(表現は、表現内部の現在的かつ歴史的な課題を抱えていますから)

 





  [短歌味体Ⅲ] 色々シリーズ・続


238
どうしたの?と聞かれたから
いろいろ
あってねと答えても通じ合う道


239
複雑な迷路の窓を
閉めゆくと
色々のもの一つ二つに


240
概念の包むふろしき
太っ腹
色々のもの柔らかに包め




  [短歌味体Ⅲ アルアリハル砂漠シリーズ


241
つまずいてすっからかんに
なっても
生きてるかぎりまた芽吹く春


242
くたびれた言うに言われぬ
おもいもの
時の重なりの静かな浮力


243
砂を噛む乾いたのどを
流れゆく
潤いの時も蜃気楼でなく


244
一粒がこんなにも深く
染み渡る
言葉の手前の静かな丘陵地(おか)に

註.シリーズ名は、「ルブアルハリ砂漠」の語感を借用した幻の砂漠。




  [短歌味体Ⅲ] 巨シリーズ


245
黒々と舞い上がりゆく
コウモリの
無数が一つの龍とうねる

 註.インドネシア辺りだったか、昔テレビで観た情景。洞窟から一斉に飛び立つコウモリ。太古の人々は、こんなものから龍のイメージを得たのではないかと思ったことがある。



246
濁流のうねり逆巻く
大水は
魅かれ見入る身の危危危危(キキキキ)縮む


247
触れてゆく鉄のかたまり
果てもなく
大空の彼方伸びゆくような




  [短歌味体Ⅲ] 接続論・シリーズ


248
知らぬ間に幕が上がり
揺れるリズム
物語は漕ぎ出していた


249
とある舟に生まれ落ちては
流れゆく
物語の 木々や 日差し浴び


250
知らぬ間につながれていた
へその緒は
断ち切られては見えないつながりへ


251
降り積もる「いないいないバア」
肌になじみ
同じ同じ違う世界湧き出す




  [短歌味体Ⅲ] 接続論・シリーズ・続


252
少年期、日々葉を揺らし
揺れ揺られ
恐れを知らない宇宙の一点(てん)


253
出入りする世界は伸び縮む
日時計と
なじみの道を行き帰りする


254
分布する少年たちの
色合わせ
張り出してくる色色もある


255
どこからか着込んで来るぞ
少年ら
重力場に、分布し始める




  [短歌味体Ⅲ] 接続論・シリーズ・続


256
青年期、青みの糸は
打ち上がり
花火のような色々の糸屑(いと)


257
なじみ来た青の深み増し
あふれ出て
言葉の青汁匂い立たせる


258
反り合い柔らかに溶け
合いもあり
解(ほど)けぬ結び絡み合うもあり


259
裏道で受け渡しする
残虐の
鉄さびた血に虚空振り返る


260
人間界(ひとのよ)に足場をひとつ
ふたつみつ
築いては陣(ジン)眺め渡す




  [短歌味体Ⅲ] 接続論・シリーズ・続


261
なじんでたニャンコの時間
途切れ果て
今きみは遙かどんな途上(みち)にいる?


262
旅ならば日々歩きゆく
浮かれ歩き
しょんぼり歩き共に歩き


263
あくせくと気付くことなく
日々歩く
今が全ての圏内に居て


264
圏外も遠い昔の
知り合いが
ふと訪れる日のように降る


265
親も居てこの子等が居て
おやおやと
糸たぐることなく日々黙々と


266
日々重ね日差しに糸は
透き通り
蒙古斑も今では遙か




  [短歌味体Ⅲ] 接続論・シリーズ・続


267
老年の、日差し弱まり
見も知らぬ
果ての方からイメージ強いる


268
赤ちゃんと逆ベクトルの
老年は
微笑みの内にしずかに下るあり


269
違うのは瀕死の視線
ぼんやりと
風景の層を貫き下る

註.「瀕死の視線」とは、臨死体験の時見られがちな、自己の斜め上方から俯瞰する視線。


270
赤ちゃんとおんなじなのは
灯台の
下に日々力(リキ)入れて歩き回る

 註.赤ちゃんも老年も、ともに「灯台下暮らし」か。試しに、ことわざの「灯台下暗し」を検索していたら、私が意味をずらして使い始めたと思った「灯台下暮らし」という言葉をすでに使っている人がいた。



271
鼻歌にばったり出会った
空模様
一人さびしい忌み言葉の降る


272
明後日(あさって)のことは知らない
今ここの
立ち上り下り(のぼりくだり)ゆくものをこそ




  [短歌味体Ⅲ] 接続論・シリーズ・続


273
つながりは言葉に溶け居り
確かめる
糸縒(よ)りかけて日に晒(さら)す


274
つながりは・・・多と暗闇(やみ)があり
多と一・・・
一と多から晴れ上がる一と一

註.「宇宙の晴れ上がり」のような、人類史の「晴れ上がり」


275
絡まりし糸糸糸の
靄(もや)を経て
一人の中に晴れ上がる宇宙(いま)


276
不在でも遠く離れても
亡くなっても
つながりの糸はまぼろしでなく


277
誰もみな無意識にも
現在(いま)の倉庫
から取り出してつながり模様色づけする

 註.
現在のようにSNSを生み出したシステムにより仮想的に距離が収縮して外国の事件でも身近に見える、思えるようになった同時代でも、隣人や遠い異国の他人のこと、あるいは、平安期や太古の人のことを思い起こすとき、自分の織りなすその考えやイメージの源は、自己やその外界の無意識的な現在的水準にある。したがって、同時代の他人や太古の人々の有り様を捉えイメージを形作ろうとするとき、どうしてもこの地の自分なりやこの地の現在なりの捉え方やイメージに着色されやすいという自然性がある。このことは、物理学の微視的、量子的な世界における「不確定性原理」のように、自己(観測者)がある時空に在る対象を調べそのイメージを得ようとするとき、自己の存在そのものが観測対象の像をかく乱してしまうということに似ている。ほんとうは、自己から空間的にも時間的にも離れた対象をできるだけそっくりそのまま理解しイメージを作ろうとするとき、とても困難なことであるが、自己にかかる重力場の自然な力を振り切って、対象の漬かっている渦中や歴史性を含めて、ありのままのイメージを浮かび上がらせるような意識的な行動が必要になってくる。自己の捉え方やイメージとして外化しようとするとき、ちょっとまてよ、という内省を走らせることが大切だ。



278
つながれつなぎつながれて
泳法は
色違いでもみな泳ぎゆくよ




  [短歌味体Ⅲ] 意味もなくシリーズ


279
遠い日々棒切れカタカタ
物や通り
に触れて行く夕暮れの少年


280
カタカタと音立て触れゆく
棒切れの
あそこまではと素振り染み出す


281
人に会い手持ち無沙汰に
窓の外
半身は草木の流れを追う




  [短歌味体Ⅲ] 意味もなくシリーズ・続


282
道々の草木に手触れ
歩みゆく
わが少年期(むかし)だけでなく大昔も

註.「大昔」、例えば『枕草子』(第二二三段「五月ばかりなどに山里にありく」)。


283
「意味もなく」と言い出すとき
意味有りの
巨きな都市が背後に控える


284
太古には「意味もなく」は
芽生えずに
大いなる自然に溶け込んでいる




  [短歌味体Ⅲ] 意味もなくシリーズ・続


285
意味有りも無しも意味ある
人間界(ひとのよ)は
大いなる自然の防波堤か


286
意味もなくぼんやり閑(カン)と
してる時
こころの重心深く下っている


287
意味もなくランラランラン
つぶやく時
意味の祖先の意味の旅してる




  [短歌味体Ⅲ] 無シリーズ


288
無といってもこの宇宙から
象(かたど)られ
なにか有の靄(もや)が漂っている


289
むむ、むむむと無に思い
あぐねても
どこからか急に転がり出る有(う)


290
「風立ちぬ、いざ生きめやも」
わけもなく
意味と無意味の谷間から湧き立つ

註.「わけもなく」は、いろいろ意味があるが、ここでは「(はっきりした)理由もなく」の意味。




  [短歌味体Ⅲ] 無シリーズ・続


291
無に入ればものみなすべて
圏外の
人知れず笑む景色外(はず)るる


292
完全無なら暗闇の
中をとぼ
とぼ歩いてる光当てもなく


293
完全に変色して
しまったら
ふとした一歩暗黒に溺るる


294
有と無とのさびしい国境(さかい)に
立つ者は
現と幻混じり揺らぐ




  [短歌味体Ⅲ] もの・こと・こころシリーズ


295
さびしい時があっても
気楽だね
ひとりが良いよと言う者あり


296
例えばネコ見てて不意と
扉開き
ころころころと心揺れ揺られ


297
ものに触れはっとするほど
冷たい!
流れ出る水に手肌固まる


298
ドア開いて忘れていたもの
おむすび
ころりんころころりんと出る




  [短歌味体Ⅲ] もの・こと・こころシリーズ・続 


299
ありありとやったと書いて
あるあるに
いやぼくは知らないよありある


300
流れ出す「ゆうきもらいました」
にいわをもつ
なんじゃそりゃあと小さくつぶやく


301
人と人生まれも育ちも
違うけど
ちがうおなじちがうの中に道が開けゆく


302
好きじゃない「げんきもらった」は
マレビトの
袖に縋(すが)らず自分で出せよ




  [短歌味体Ⅲ] もの・こと・こころシリーズ・続


303
わからないささいなようで
波風の
どっと寄せ来るバーストイントラフター

註.「バーストイントラフター」は、英語では「 burst into laughter」。


304
歳とともに見える地平と
色合いが
違ってくるくる秋の夕暮れ


305
知らなかったささいなことから
火が付いて
中はぼうぼう外はゆらゆら


306
なんにも知らなくっても
いいよいいさ
知らないようでその道歩いてる




  [短歌味体Ⅲ] 日々いろいろシリーズ


307
あいさつに相も変わらず
と答えても
微妙な偏差昨日と今日


308
一日も一時もまた
燃えている
我知らずの静かな拍動


309
通り過ぎ後振り返る
眼裏(まなうら)に
燃えてしまった灰の舞い上がる




  [短歌味体Ⅲ] 日々いろいろシリーズ・続


310
包丁を砥石に研ぎ研ぐ
亡き父の
教えた少年時思い起こしつつ


311
思い出す宴会の席
語り舞う
今は亡き同僚(ひと)の「弁慶の天草砥石」


312
耳底にかすかに残る
音の香り
この地につながり語り舞い流るる


313
研ぎ上げた包丁を
日にかざす
ゆらゆらに一瞬(ふと)日常(ひ)を超え戻る




  [短歌味体Ⅲ] わたしはシリーズ


314
はじまりは未分化のわたし
名前はない
けれど沼地にひとつ花開く


315
わたしをのぞき込んでも
深みでは
あなたと違う固有振動数


316
深みからわたし=(は)あなた
わたし=(は)
国家、宇宙とまぼろしの舟上り詰める者あり


317
まぼろしは同一化しても
くねくねと
身をよじっても身は大地に根づく


318
オレオレがオーレオレオレオレー
と必死に
歌い出しても審判はわたし

註.この作品は、二つの解釈可能性を意識した作品です。




  [短歌味体Ⅲ] わたしはシリーズ・続


319
入口で行きつ戻りつ
ためらいの
アニメの変身と違う劇の入口


320
なじめないものも時の中
少しずつ
ゆっくり熟成変身しゆく


321
わたしはたわしになれない
けれども
なんどもなんども踏み固めたわしになる




  [短歌味体Ⅲ] 音の根っこシリーズ・続


322
小さい子喜び勇んで
乗る舟は
うーうーうーううう何度も岸を出る


323
同じ赤塗り重ねても
道分かれ
「おかあさん」もひとりひとり分かる


324
もお、もお、もおもおもおお
落ちていく
言葉の谷には無数の死骸


325
考える「うーん」と巡る
地形図は
丘陵(おか)を上り下り旅してくる




  [短歌味体Ⅲ] 政治論シリーズ・続


326
そこそこ、そこは通れないよ
わたしの
みどりあふるるいつも通る道


327
流れてるけれど流れない
大きな音
粗い流線わたしの外に


328
髪整えよそ行き着て
でかけなくても
大事なことはいま・ここに・ほら


329
ああ、はい。いえいえ、はい。
ええ、ええ。
ここで行き止まり、入れませんよ。




  [短歌味体Ⅲ] 政治論シリーズ・続


330
どんなことにも現れる
個のこと
隠(イン)・彼(か)のこと誰それのこと


331
住人寄れば十人の
様々な
事情あって蟹さんになる


332
ぶつぶつとつぶやきの果て
静かに
通り過ぎゆく未来の影の


333
仲違い隣村との
いさかいに
血止めの処方知恵巡らし来た




  [短歌味体Ⅲ] 日々いろいろシリーズ・続


334
ふと眺む隣家との距離
近いけど
ぐるぐるぐるぐるぐる遠おーい


335
年重ね波風立たない
日々に見え
今までに見たカラフル流るる


336
年重ね心の歩幅
縮まって
若い頃より細やかに歩く




  [短歌味体Ⅲ] 宗教論シリーズ


337
縄文海進、海退。
大津波の
悪夢くり返す、無言のOh!


338
わたし居て石があって
しずかな
それだけでは終わらない、ある。


339
空に耳闇に目を当て
深々と
流れ来るのか流れ出すのか


340
運んでる石が急に
重くなる
信じる者は跨(また)ぎ越しゆく


341
始まりは紙以前の
神があり
紙に記された後の神がある


342
以前あり渦中があり
以後がある
遠い異国のイエスもアラーも




  [短歌味体Ⅲ] 宗教論シリーズ・続


343
ひねこびた旬のキュウリ
目にしても
自然と心は直(なお)き方に向く


344
乞食であれ付き合い長く
触れ合えば
王子を超えて親しい仲に


345
美醜とてあげつらっても
遙か深い
時間の底から疑問符の湧く




  [短歌味体Ⅲ] むずかしいシリーズ


346
偶然に箸が落ちた
だけなのに
ナノなのになぜ笑い出すのか


347
お風呂はいい加減が
自然なのに
五分遅れのいいかげんは


348
人と人こじれたラップ
修復
しようともがくもがけば深谷(しんこく)


349
針に糸通せる年齢
分布の
外にも確かにいろんな人がいる




  [短歌味体Ⅲ] むずかしいシリーズ・続


350
「たあたん たああたん」
「はああい」
流るる自然の奥処(おくが)に入る


351
わからずもなんとなくいい
感じの
つながりに触れ漬かっているよ


352
気付くのは何かの不幸
ゆえなのか
難しいこと跨(また)ぎ越す本流(ながれ)


353
戯れの構造主義も
韓流も
この列島の不明の種か




  [短歌味体Ⅲ] つながるシリーズ


354
男女(ひととひと)年重ねても
むずかしい
解けなくても気ままの自由が


355
あればいい日々歩みゆく
見慣れた
景色の中差し込む日差し


356
浴びてたら暖まりゆく
日にかざす
手は赤々と脈打ち流る




  [短歌味体Ⅲ] つながるシリーズ・続


357
遠い日の体育祭に皆
手をつなぐ
フォークダンスの心震う手


358
手と手とを取り合っていても
生まれ出る
波動の中のひとりひとりの


359
ひとりとはさびしい砦
日差しや
さえずる言葉に首出し見回す


360
まなざしの寄せ来るさざ波
ベタベタと
縄張り染みて肌触れ来るもあり




  [短歌味体Ⅲ] つながるシリーズ・続


361
つらいきびしいかなしいの
形容詞の
水底に呑(ドン)座っている


362
座している静かな森は
暗転し
いつでも臨戦態勢をとる


363
個の取るは言葉の剣(つるぎ)
すぱあーんと
空を切り裂き空気入れ替える




  [短歌味体Ⅲ] つながるシリーズ・続


364
親鸞も名声気にする
己知る
強力の本流流るる


365
流れから子どもらに混じる
良寛は
上下(うえした)目線、横から自然に


366
自然とは計らひなしに
自ずから
足踏み手振り舞い踊り出す


367
人界の主流旅する
道端に
舞い踊りつつはずれゆく者あり




  [短歌味体Ⅲ] つながるシリーズ・続


368
すごいとかかんどうしたとか
言わなくても
小さく明滅するひかりあり


369
まっくらくらと断言して
しまっても
ほんとはそれで終わりにならぬ


370
ならぬならぬときっぱりしても
ひたひたと
小声のしずく染み渡り流る


371
身にしむは言葉を越えて
峠から
七曲がり坂ぐるぐる下る




  [短歌味体Ⅲ] わけわからなくてもシリーズ


372
ひざすひざすわけわからずも
動いてる
手に手を当てると微かに鼓動


373
どこからかひざすひざす
あたたまる
ネコのように自然とくつろぐ


374
一部のみ取り出し駆動
ヒートアップ
ひざしひざす深く太くひざす




  [短歌味体Ⅲ] わけわからなくてもシリーズ・続


375
遮断すゴシックの電車
走り来る
信号・無視し横断すすっと


376
漢字と仮名の二重奏
こっそりと
谷間の夜に抜けていく参会者(ひと)


377
あっ忘れた何だったかな
走り去って
もう当分は再来しない予感




  [短歌味体Ⅲ] おもいシリーズ


378
(おもいぞう)ぼくの方が
おもいみたい
ごみすてのみち(ああおもいなあ)


379
おもいは同じかはかる
何はかる?
どこにはかるか千々(ちぢ)におもいは


380
端(はた)からはおもいおもいか
何おもいか
あいまいもこのおもいかおもい




  [短歌味体Ⅲ] おもいシリーズ・続


381
おもいぞうかかえきれない
おもい流れ
圧におもいはどんよりおもい


382
かるというおもいつかない
圏外は
おもい宇宙の外にあるおもい


383
おもくない?おもい聞いても
おもくない
みちみちおもいおもくなるおもい




  [短歌味体Ⅲ] つながるシリーズ・続


384
今では自然な歩み
に見えても
遙かなこだわり左足から


385
左からか右からか
回り方
にこだわりの記しっかり刻む

註.「記」は、古事記のこと。

386
今はもう忘れ果てても
血の巡り
から滲み出しこだわりの湧く




  [短歌味体Ⅲ] つながるシリーズ・続


387
あっそうだね 一瞬の内
グルグルグー
巡りに巡り橋を渡り来る


388
春風にぼおっとしてても
丘を越え
谷越え山越えグルグルグール


389
知らぬ間にあちこち探索
くたびれて
ひかり求めるお腹のグルグルグー




  [短歌味体Ⅲ] 記憶シリーズ


390
歩み来た今に湧き出す
イメージは
濁り薄らぎ湧水のよう


391
もし次に生まれ変わったら
と問われて
もう一度きりでいいよと答う

註.普通そんなあり得ない仮定の質問遊びには、遊びであってもうんざりするが。


392
自分でも無意識の場面
記憶の川に
知らない映画の流るるか




  [短歌味体Ⅲ] 記憶シリーズ・続


393
始まりのさらに向こうに
おぼろげな
月明かりの ゆらゆらゆらり


394
始まりのさらに向こうの
親類の
古い始まりつながり来る糸


395
記憶から脱色された
色思い
微かに匂い立つ時のある




  [短歌味体Ⅲ] 記憶シリーズ・続


396
あいまいみい記憶をたどる
幽冥(ゆうめい)の
ひんやりどきり肌を流るる


397
静夜の真っ暗けでも
煌々(こうこう)と
火燃え盛るとき記憶のなごむ


398
見知らぬここはどこだろう
夢の中
ぼんやり記憶を探査している




  [短歌味体Ⅲ] 対話シリーズ・続


399
すっごおい元気もらったあ
(・・・・・
雨の電車 今 駅を離る)


400
これわたし作ったのよ
(言葉から
こぼれ落つ重量(おもさ)を推し量る)


401
ありがとう(吹き下りゆく
風圧に
心地よい春のみどりの匂う)




  [短歌味体Ⅲ] 番外


1000首の峠過ぎゆく
いい景色
と余裕はなく ただ 歌の形に歩む


千の峠無数の人の
踏み固めた
道気負いなく歌の芯を旅ゆく

 註.「短歌味体な1」から「短歌味体3」現在まで1000首の道のりを歩いてきた。苦しい難所もあったし、あるのだが、日々黙々と割と気楽に歩いてきたように思う。わたしは若い頃、短期に全力出す短距離走向きで長距離走は苦手だったが、こんな風に歩くのなら長距離でもできそうだ。もう少し、歩いてみる。





  [短歌味体Ⅲ] ひと休みシリーズ


402
今日は予報と違い
日が差して
冬の朝少し暖まる空気


403
休憩は ゆったり 腰下ろす
こころの
気付かぬ椅子がどこかにある


404
ひと休み遙か思い浮かぶ
人の世が
つらくきびしくも遊びのような時を




  [短歌味体Ⅲ] 人界の今シリーズ


405
人界と大いなる自然
にまたがる
遙か古老の言葉人界に干からび


406
人界の合い言葉は
一ミリ
進んだか退いたかの花盛り


407
たましいは人界の網の目に
からまって
こんがらがって息荒れている




  [短歌味体Ⅲ] 一日シリーズ


408
眠る海意識夢うつつ
かたち成す
まぼろしもなく夜のさざ波


409
眠りから日に溶け出す
バターの朝
みどり映え閉じた葉開く

註.はぶ茶の葉のように、昼間は葉が開いていても夜は葉を閉じてしまう植物もある。


410
ぶんぶんぶん蜂のように
せわしなく
時空駆けゆく滲みたリズムに押され


411
ゆったりと風呂につかる
ひとり歌
つぶやきのように流れ落ちゆく




  [短歌味体Ⅲ] 一日シリーズ・続


412
「馬鹿言ってんじゃないよ」
黙々と
「なんでもないような事」の内側を我は流るる
 
註.「」は、いずれもふと思い浮かんだ歌謡曲の言葉。


413
関わりの人の世では
わかっていても
ぴったり言葉の手前に墜つ


414
重力に耐えかねて
昼間の
衣装(ふく)くたくたびれて眠りの海へ




  [短歌味体Ⅲ] イメージシリーズ・続


415
石 緑 みち 入る
広がる
奥行き 百行の 静けさ


416
サンダル脱ぎ ふうっ 歩く
中ドア 開ける
いつもの 光 射している


417
折り曲げてくり返し折り
曲げ重ね
煙り立ち上りくねくねりゆく


418
いちまい にまいさんまい
よんまい
微量の変位 感知さるる




  [短歌味体Ⅲ] イメージ論シリーズ


419
ありふれたただの人形
深夜には
人のイメージの舟に乗り来る


420
ただの言葉巡り巡りて
肌を流れ
熱を帯びて発火しゆく


421
ああそうかそうだったんだ
イメージが
未知の通路からほとばしり出る



  [短歌味体Ⅲ] イメージ論シリーズ・続


422
巨きな時イメージ炉から
一瞬
の内透明に抽出さる


423
イメージの生まれ育つ
旅程には
時代の貯水(みず)と人の半生織り込まる


424
イメージは自由そのもの
善悪は
軽く超えられ陸海空突き進む


425
見えずとも糸織り始め
舟を出し
粗い風景立ち上りゆく




  [短歌味体Ⅲ] 喩シリーズ


426
井戸のぞき込んでいると
湯の沸いて
湯気の中に揺れ揺らるもの


427
見知らぬもの近づいて来て
少しずつ
なじみ始める新たな景色


428
ゆ 喩 you 湯湯you喩
ゆゆゆゆゆ
弓弓弓揺揺you 弓揺弓揺弓弓you

註.「弓」「揺」は、いずれもの読みも「ゆ」。喩は自在。




  [短歌味体Ⅲ] 新年にシリーズ


429
さまざまに行事区切られ
少し照れくさく
身にまとい来てその重み自然となり来る


430
来るだろうまだまぼろしの
きびしい
寒に敷き詰められ埋もれている春


431
のんびりと日差しを浴びる
杞憂杞憂杞憂
ブレーキ踏まずなだらかに滑りゆく




 [短歌味体Ⅲ] 朝シリーズ


432
寒い朝日の差し揺れて
そらまめの
自重の内にやわらかに立つ


433
しずかでも遠いかすかな
音はする
正月も脈打つ冬の朝


434
どんなこと起こってしまっても
無心に
いつものように朝は下り来る




 [短歌味体Ⅲ] 朝シリーズ・続


435
ばたばたと時間に追われ
朝の舟
眠りの名残振り払い出る


436
ふかしてたエンジン音は
なだらかに
朝から昼へ移りゆくか


437
慌ただしい朝ばかりが
居座ると
一日はずんずん狂い始める


438
どこどこか知らなくても
まぼろしの
ゆったり始まる朝の分布す




  [短歌味体Ⅲ] なんでもないけどシリーズ


439
いつもより少しずれてた
言うほどの
ことでないようで気にかかる


440
なんでもないと言ってしまって
一瞬の
1/fゆらぎゆらゆらアンバランス

註.1/fは、置き字で読みません。


441
降り積もる雪片のような
ひらひらり
なんでもないけど溶け滲みてゆく




  [短歌味体Ⅲ] 静かな夜シリーズ


442
静かな夜いつもの窓から
越えゆくは
深く瞬く星々のみち


443
静かな夜沈黙の深み
に訪れは
静夜静夜(セイヤセイヤ)と祭りの声も


444
人界と大宇宙の
境目を
軽々と行き来する静夜!




  [短歌味体Ⅲ] なんでもないけどシリーズ・続


445
なんでもないけど道端に
小石の
ひとつあってただ座していた


446
なんでもないと言うからには
小さな火
吹き消す煙り一筋なびく


447
なんでもないと言ったとき
水面に
落ち濁り始めて消失す




  [短歌味体Ⅲ] てにをはシリーズ


448
走る走る丘越え山越え
見晴らすは
遠く海原に走っ 走っ 


449
てにをはのてを抜いたら
急停止
ゆるやかな休止の手前に倒る


450
島原の原城へ
から・を・の・が
奥深い通路下りゆく「へ」




  [短歌味体Ⅲ] てにをはシリーズ・続


451
と言われてもこうしてああし
そうなって
とっとっととと不明の森の


452
「へ」か「ほうへ」かアイマイミーは
揺れている
森の一木に中途を刻む


453
大空に「を」を目指しても
傷つき
破れ果てて落下する「を」




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の距離感シリーズ


454
山、家、イエ、いえ、雲の
動いてい
るよ、風か?
かぜのけはいここにはない


455
人からヒトそしてひとへ
近づくと
ふとえみのわきながるるあり


456
犬の走る走るハシリ
はしりきて
ぶるぶるぶるんこころおどるよ




  [短歌味体Ⅲ] 背伸びシリーズ


457
背伸びするうっうっううう
解(ほど)けゆく
凝り固まり湧き立つエナジー


458
背伸びするつま先立ちの
揺れ揺られ
青い鏡に不安な自画像


459
届かないつま先立つ
しかない
ならば手足鋭く引き絞る




  [短歌味体Ⅲ] ほっと一息シリーズ



460
コーヒーの熱い一口(ひと)下り
冷え切った
ごはん暖まり湯気の湧き立つ


461
降り積もる仕事かき分け
仕舞いには
会社のドア朝より軽く


462
どう言おうこうそうああと
巡らせる
出会ってみるとぐるぐるの止む


463
いやなこといやいやいやでも
やっている
やっと抜け出る霧が上がってる




  [短歌味体Ⅲ] 番外


番外
おやすみ2355今日の
終わりに
おはよう0655朝が始まる

註.わたしは知らなくて、わたしの奥さんが見つけた番組。
NHK『2355』(http://www.nhk.or.jp/e2355/)
NHK『0655』(http://www.nhk.or.jp/e0655/)




  [短歌味体Ⅲ] ほっと一息シリーズ・続


464
誰もが荷を横に下ろし
凪いだ海
なだらかな水面にこころ滑らす


465
(ああ)この感じ音でも色でも
言葉でも
染み渡りゆきからだ静まる

註.(ああ)は、置き字で読みません。




  [短歌味体Ⅲ] デビッド・ボウイシリーズ



466
さんまさん知らない人が
テレビ出て
電波のように驚いたこと


467
驚いた私知らない
こともあり
中性色のデビッド・ボウイ


468
この世には恒河沙(ごうがしゃ)の
無名の
デビッド・ボウイ日々紡(つむ)ぎいる




  [短歌味体Ⅲ] いいねシリーズ


469
いいねいいねそりゃあいいね
窓開(あ)いて
新たな光降り注いでる


470
人ゆえに誰かかが思い
開け放つ
夜空に新たな星の瞬く


471
それもいいけどこれがいい
なぜって
うまく言えないけどこれいいね


472
ほほえみは頬の辺りに
たどり着き
いいねいいねと沈黙の舟




  [短歌味体Ⅲ] 番外


ああ、あれはどこの者たちじゃ
無縁顔
かたっ苦しくも身も心も包む

 註.今年も偶然に「うたかいはじめちゃん」をテレビでちら見した。遙か太古の集落の辺縁に集う不思議な種族を見るようなまなざしで見た。





  [短歌味体 Ⅲ] いいねシリーズ・続


473
降下するズンズンズン
あれは何?
探査・推進ズンズンズン

註.ドローンの目になったつもりで。


474
挨拶でいいねと言って
入り込み
関わりの森に二心持つ


475
いいねの根個から時代に
続いてる
共鳴と異和(ひびきとずれ)この根震わす




  [短歌味体 Ⅲ] リズムシリーズ


476
そよ風そよぎそよがれる
とんとんとん
二階にまでもそよぐそよ風 春


477
じんじじん大気も風も
じんじん
ぽきりと屈するわけには参らぬぞ 冬


478
さらさら乾いてどこか
中空へ
りんりんりりん虫の音誘う 秋


479
じゅっくい濡れる暑うて
暑うて
ままよ 雨濡れ放題の子どものように 夏




  [短歌味体Ⅲ] リズムシリーズ・続


480
追い追い来る折って来る
らんららん
ぽきぽきぽきり追い詰め来るぞ


481
ゆりいかのからだぷるぷる
揺れている
遙か探索の帰路のゆりいか!




  [短歌味体 Ⅲ] ああそこはシリーズ


482
どんなにおとなしそうでも
ああそこは
と無言の内に臨界になる


483
穏やかな波間に浮かぶ
昼下がり
夕に傾き暗転する波間


484
こころには高度も光度も
硬度もあり
場と接続に千変万化す




  [短歌味体 Ⅲ] 視線の不確定性原理シリーズ


485
旅の途次ふと目をやると
向こうから
波の寄せてはさっと身を引く


486
垣間見た内に湧き立つ
風景の
気分とともに修正されゆく


487
遙か遙か視線舞い落つ
浮上する
太古の姿現在色に




  [短歌味体Ⅲ] 視線の不確定性原理シリーズ・続


488
あるものはあるがままに
駆動するか
時間の圧に自然と押し出る


489
目などの触手で
触れるほか
ないないに視線歩ませる


490
近づけば互いの視線
揺らぎつつ
二機のように空中を舞う




  [短歌味体Ⅲ] あかんシリーズ


491
かたくなに閉じゆく扉
追いかけても
ぶつかるばかりのもんもんもん


492
小窓くらい開けとかないと
籠もりもこ
もこ湧き出してメタンハイドレート




  [短歌味体Ⅲ] ああそこはシリーズ・続


493
ここそこもあそこもまた
静かな
凪(なぎ)の夕べのようであるが


494
静かな昼下がりの
水槽の
銀色に跳ねる魚のような




  [短歌味体Ⅲ] ああそこはシリーズ続


495
色々と塗り重ねては
重く濁り
行き止まりに色を失う


496
色ならばこそぎ落とすも
血の流る
心の色は重く沈みゆく


497
さり気ない一言下り
下りゆき
重く閉ざした窓に風の入る




  [短歌味体Ⅲ] チャレンジシリーズ


498
うおんまかそよんまか殺
びおんずる
じわんずこおずおもんがあ殺

註.時々目にする北朝鮮のテレビ放送のリズムで読む。


499
緑萌え春の兆しが
微かにも
まだ雪残る冷たい地から

註.学校の校長の長い話を聞き続けなくてはならないような気分で読む。




  [短歌味体Ⅲ] ああそうかそうなんだシリーズ


500
ああそうかそうなんだ雲(ウン)
雲(ウン)流れ
心は街角に捜しあぐねる


501
ああそうかそうなんだ
目の前の
紙切れ折る折りたたみ居る




  [短歌味体Ⅲ] かいだんシリーズ


502
会社にも階段がある
そこでも
ここでもあそこでも階段状の言葉


503
家族には階段不要
と思いきや
子どもの方へ階段言葉


504
太古には巫女上りゆく
まぶしいぞ
きらきら鏡の階段上る




  [短歌味体Ⅲ] かいだんシリーズ・続


505
例えば舞台に上る
「かいだん」は
無数の光射して変幻す


506
かいだんでかいだんのこと
話すのは
ふしぎなほどに怪談染みる


507
かいだんで待っててねと
言われて
百年も待ち続ける




  [短歌味体Ⅲ] かいだんシリーズ・続


508
かいだんの大気に触れて
踊り場の
空気巻き込みらんららんらん


509
かいだんの中身は言えぬ
一歩二歩
上ってみれば空気漂う


510
かいだんを解体すれば
団塊の
歩んだ道々めくり返される




  [短歌味体Ⅲ] かいだんシリーズ・続


511
かいだんをトントントトン
下るとき
上り始めるかいだんの夢


512
かいだんにかいだん重ね
ぎゅうぎゅう
ぎゅぎゅう固く押し込めらるる


513
かいだんを上り詰めれば
新しい
景色とともにかいだんの始まる


514
かいだんで何かいだんと
問われても
いちにいさんと跳びゆくばかり




  [短歌味体Ⅲ] かいだんシリーズ・続


515
かいだんで遊ぶ子どもら
周期4
でしゃべり合いじゃれ合い揺れ合う


516
かいだんで一転二転
三転し
虹のかいだん下りてくる朝


517
翻訳のかいだんの手すり
ごわごわと
森を踏み迷う「欧米か!」




  [短歌味体Ⅲ] かいだんシリーズ・続


518
かいだんの話は皆無
でもしかし
かいだん書の6Pに記されて在り


519
一人でもかいだんに触れ
増殖し
びびりばびりぶ踊りの輪にいる


520
煙り立つかいだん上れば
しみていく
目鼻口とかいだん人に


521
かいだんも生い立つ雑草(くさ)に
からまれて
苦苦空空(クッククウクウ)ひび割れていく




  [短歌味体Ⅲ] あらあらシリーズ


522
あらあらそお、そおなの?
でもねでもね
そうゆーこともあるし、あるんだから


523
いろいろねいろいろあるわよ
なのであんな
こんなそんなねいろいろだわよ


524
あらいくみどうしちゃったの?
あらあらいくみ
なみだでてるし…… 新井久美15歳




  [短歌味体Ⅲ] 


525
あっ ちっ ち スローモーションで
下りゆく
ざわりざわわん情感の海


526
江戸は遠くなっちまっても
3代目
江戸家猫八亡くなっても江戸は代々続く


527
イメージのささいなところも
生きた時代(とき)の
流れ渦巻く色香に染まり来る


528
過ぎ去った昭和の日々
湧き立つは
土ぼこりしたり砂利道だったり




 「一年経って」 

  ツイッターの手持ち無沙汰から始めた短歌味体。始めてから今日で一年経ってしまった。1000首以上作った。しかし、まだまだ歌の初心者という感じがするばかり。当然だろうけど、山道の霧は深い。(2016/02/02)






  [短歌味体Ⅲ] 


529
恵方巻縁起の海から
引き上げられ
リニューアルの列に並んでる


530
スイーツか、なーんだそれと
思っても
そんな甘いもんじゃありませんと座す


531
判断の当否を超えて
滔々(とうとう)と
時間の海を大河は流る


532
陰謀も作為・操作も
夜影に潜み
昼の重力には耐え得ない




  [短歌味体Ⅲ] 『母型論』(吉本隆明)に寄せてシリーズ


533
大洋の夕日まぶしく
陰りゆく
斬惨残(ザンザンザン)陰りゆくばかり


534
呼ばれたと思い思われ
気分にて
しずかな夜の黒戸を開ける


535
とまどいは深く時間に
棹さして
いちにいさんし後ろ向きに進む




  [短歌味体Ⅲ] 『母型論』(吉本隆明)に寄せてシリーズ・続


536
小波立つ柔らかな風
も立つ……
ふと背後には言葉の匂う


537
言葉でははっきりきりと
結ばず
ぼんやりでもからだに響き届く


538
ねえねえにはいはいと応え
言葉なく
日差しやわらかに波立っている




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の下層シリーズ


539
凪の海 今なんか言った?
無言でも
予感実感迫り来る波感


540
なんにも言ってなくても
射す影の
匂う触れる沈黙の肌


541
乖離する躁と鬱とに
裂かれる谷
はしゃぐ声色重く沈みゆくは


542
どこだろう無意識の道
知らずに
とぼとぼ歩き疲れ果てて




  [短歌味体Ⅲ] 風シリーズ


543
今ここに風が吹いている
肌を撫(な)で
確かに風は流れ下りゆく


544
空洞を下りゆく風は
もうすでに
〈風〉という言葉に変身しゆく


545
立ち上る〈風〉にまといつく
色香響き
龍のように小鳥のように




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の下層シリーズ・続


546
網の目が張り巡らされ
愛や自由
高く聳(そび)えて黒根毛(くろこんもう)深く


547
わからないなぜ選んだ言葉
不明の道
懐中電灯(あかり)照らしつつ踏み迷い戻る


548
膨大な言葉の排出
横たわる
見ると一言で言えるかも


549
(心の)風景を描写する
代わりに
膨大な言葉が消費さる




  [短歌味体Ⅲ] 物語論シリーズ


550
石ころが立ち上がり舞い
舞い踊り
飛んでいく言葉なのに血を流す


551
人と人ぶつかり合わずとも
背後には
根深い物語の複雑骨折がある


552
語り合う二人の背から
異色(こといろ)の
線が伸びたり反れたり絡まったり




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の渡世シリーズ


553
たったそこまで出かけるのに
千里にも
見え春霞〈あ〉から〈い〉の愛


554
かんたんに〈うん〉とは言えぬ
相槌は
霧の中から金槌となるも


555
らんららんと走ってるつもりも
下ろし立ての
服のこわばり run rarun




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の渡世シリーズ・続


556
久しぶりの晴れ上がりの空
眼差しの
いい感じに音階たどる 2016.2.10朝


557
目覚めると不明の森に
霧は立ち
小道伝いにあてどなく歩む


558
ぼんやりと夢うつつに
眺め暮らし
大空の青いいなと見とれたい


559
言葉から微細な振動(ふるえ)
探査して
毎夜歩くは言葉の森の




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の渡世シリーズ・続


560
普段なら善悪の中間
でも言葉は
善悪の極北まで巡り巡る


561
ああ風だと寝っ転がりもするが
源流と
風のベクトル場をたどりゆく


562
子ども心胸底より
染みだして
気ままに渡りゆく極北




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の渡世シリーズ・続


563
極北の〈太宰治〉も
下り来て
近く顔合わさば哀しいゴミ屋敷かも


564
人と人美人もブスも
距離次第
時間の内に再分離されゆく


565
自然な佇(たたず)まいを
揺らしさすり
未明の未知の自然を匂う




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の渡世シリーズ・続


566
〈言葉では何とでも言える〉
肌合いは
裏切ってぴく、ぴくぴく震う


567
〈言葉では何とでも言える〉
舞台下り
どこか違う明石家さんま


568
どんなにか目を見開いて
織り成しても
言葉たちには見知らぬ模様の


569
言葉には見知らぬ自分と
自分の背
どことなくなんとなく気配がある




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の渡世シリーズ・続


570
例えばゆきがはらはらと
降りしきる
日に雪となって嫁いでいく


571
ゆきちゃんねえゆきちゃん
と呼んでた
語感変わって雪江去りゆく


572
ぐんぐんとあまてらし郡
あまてらす軍
のぼりつめつめ社長爪切る




  [短歌味体Ⅲ] 異常時シリーズ


573
一、二ミリ違うだけで
かみ合わぬ
ぬぬぬぬぬうっと異変大変


574
ふだんなら思いもしない
歯の痛む
ずきずきずっきん不遇遭遇


575
うれしいと身の震え出し
共振し
うおっほっほっ言葉の楽屋は




  [短歌味体Ⅲ] 知らないシリーズ


576
知ってても知らないと言う
素振りは
動物から人へ引き継がれ来たか


577
知ってても知らないと言う
二つの
懸崖の海から急浮上する


578
〈もう知らない〉と突き放しても
控え目の
力の匂い突き丸くなる




  [短歌味体Ⅲ] ひとりひとりシリーズ


579
人と人、ひとりひとりが
灯る時
合力よりも深い味わい


580
岩をも動かす合力の
振り向きざま
どけどけどけぇいひとりの灯(ひ)を踏む


581
誰かを頼む合力は
みずみずしい
ひとりひとりを干からびさせる




  [短歌味体Ⅲ] ひとりひとりシリーズ・続


582
合力は例えば巨人
細い路地
無き者にしてどしどし進む


583
合力は例えば色
赤・白・
黒・青以外はまるで禁色


584
日差し浴びひとりひとりは
川砂の
プリズムのようにきらめく色の




  [短歌味体Ⅲ] あわいシリーズ


585
ああ、はいと引かれ棚引く
道中は
ひとりひっそり膝を抱いている


586
少しだけあわいあわく
滑りすぎ
あわあわとしたあわいに佇む


587
あわいから無数のものが
飛び出して
直線引くと淡く消えゆく


588
あわあわとあわあわあわわ
馴染んでる
どっちやねんと言われてもねえ




  [短歌味体Ⅲ] あわいシリーズ・続


589
固まらぬ両端のあわい
小刻みに
揺動しながら探る平均台


590
〈待つ〉ちがう〈迎える〉ちがう
双子のよう
で双子でないびみょうなあわい


591
言葉にすると生きの良さが
なんとなく
色褪せてしまい仕舞う〈横超〉


592
左右振れ位置定まらぬ
絶対性
百年後なら静かな着席




  [短歌味体Ⅲ] あわいシリーズ・続



593
対立する〈あ〉と〈お〉の間には
他音他色
蝟集(いしゅう)して濃度高まりゆく


594
母と子のわんわんわんの
側には
少し身を固めネコが静まり居る


595
対立の内では釜が
煮立ってて
なんでんかんでん意味有りげに煙る?




  [短歌味体Ⅲ] なにかかにかシリーズ


596
すーしすーはすすすんすん
すーはすーし
さそせしさんすそんたらさんす


597
ぐるぐるトンぐるぐるぐるる
ぐぐるトン
ぐぐぐぐぐーぐ、ぐるぐるぐるトン


598
ぴちゃぷちゃぴっちゃぷっちゃ
どおいどい
くちゃくちゅくっちゃくっちゅ




  [短歌味体Ⅲ] あわいシリーズ・続


599
〈はい〉と飛ぶ矢 返事しても
引き絞った
矢の背後には無数の泡立ち


600
〈きゃあああ〉と有名人に
飛んでく矢
巫女への眼差し龍を見るように


601
いいんだよ別にいいんだけれど
数万年の
待ち続けた時間のあわいに立つ我は




  [短歌味体Ⅲ] グローバルシリーズ


602
風吹き来るブローブリュー
ブロウン
世界中を巡りに巡り


603
方々の土は言葉の
花開き
夜は岩盤の同一夢を見る


604
手を出してネコと遊ぶ
つもりが
思わぬ所(赤)ズキズキズッキン

註.(赤)は、置き字で読みません。




  [短歌味体Ⅲ] 春シリーズ


605
生き物はみな感知する
崩れ出し
押し寄せ来る柔らかな春波


606
なみなみと注(つ)がれてなくても
下水(したみず)の
ようようと染み渡る春波


607
春波寄せものみなすべて
肌ふるる
耳目より速く染み匂い立つ


608
つっぱる根がはる芽がはる
手がはる
ふくよかにはる春の岸辺




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の渡世シリーズ・続


609
言葉にムチ当てなくても
自然に溶け
響き合い眠る静かな部屋がある


610
走り出しギャロップになっても
手綱締め
〈あい〉が〈愛〉に急変はしない


611
歩み出す ぶんぶんぶん
歩みは続き
〈ぶんぶんぶん〉言葉の路に入る




  [短歌味体Ⅲ] ほっと一息シリーズ・続


612
実際に穴掘っていたら
あ、横道も
あるじゃん、ふいと道が開ける


613
自転車に初めて乗る
知らなかった
こんなにも柔らかな風の


614
人の世はあくせくあくせき
自力の走法
宇宙では他力の人間(ひと)よ




  [短歌味体Ⅲ] 百人シリーズ


615
〈あっ 火の鳥だ〉と耳捉えても
ひとりは
後ろへ駆けゆきひとりは盆栽に


616
〈みんな知ってるよ〉と耳にしても
百人
みんなが知ってるとはかぎらない


617
〈避難せよ〉と警報出て
でんぱする
ひとりは山へひとりは川へ


618
ひゃくにんの濃度及ぶよ
島々に
等質の宇宙巡るように
 
註.「世論調査」というものをちらり思い浮かべて。




  [短歌味体Ⅲ] 音遊びシリーズ


619
いちごにごさんご量り越え
日差し赤
赤夕日の海に沈みゆく


620
ぷるぷるとあまえび淡く
照り映えて
ふれる視線はあまく折れ曲がる


621
かまくらの灯り見てると
くらくらと
おもいは飛ぶよ「北の国から」




  [短歌味体Ⅲ] 百人シリーズ・続


622
百人の匂い立つ色
一色(ひといろ)も
千差万別(いろいろ)あり千変万化(めまぐるしい)よ


623
色々と色決めかねて
とりあえず
揺れ揺られつつ苦海に舟出す


624
街路には服も色々
咲き出して
百人町も華やぐ春は




  [短歌味体Ⅲ] わかれ目シリーズ


625
なべの中だいこんやにんじん
しゃべってる
とってもふしぎとは思わなかった

註.小学校低学年の頃、図書室での映写の授業だったと思う。まだ幻灯機と言ってたか。


626
いつの間にかサンタクロースは
ベール溶け
三太苦労す物語の始まる


627
あの一縫い余分なかったら
はるうらら
さらさらさらと歩み過ぎたのに




  [短歌味体Ⅲ] わかれ目シリーズ・続


628
人はみな生まれ出るより
わかれ目の
峠を越えこえを限りに内向す


629
越えゆけば後振り返る
わかれ目は
際だってイメージばかり細る


630
大人になり小学校に踏み入って
座ってみた
椅子の異和感例えようもなく




  [短歌味体Ⅲ] 物語論シリーズ・続


631
幻の時空を自在に
飛翔する
と見えて主の引く手に付き添う


632
造花でも滴したたる
花のように
幻の朝が降りて来る


633
深みからふかいふかい殻
ふるえる
突き抜け来る無意識の叫び




  [短歌味体Ⅲ] 見てるだけシリーズ


634
見てるだけナノなのにざわ
ざわざわわ
目の差し伸べるじれったいぞ〈手〉


635
見てるだけと言ってもずん
ずんちゃちゃ
奥深い部屋でステップを踏んでいる


636
見てるだけでさざ波立ち
草なびき
涙に滲(にじ)む丘陵(おか)に静かに立っている




  [短歌味体Ⅲ] 即興シリーズ


637
ほんとはかんたんなこと
なのぬねに
始まり遙か糸糸糸の


638
一言が道案内の
面倒さ
に入り込んで前前右……


639
一言が道案内の
面倒さ
迷い込んでメドゥーサ!


640
閉じていく「異議はないですか」
吸い込む
風圧に黙って踏み耐えている




  [短歌味体Ⅲ] ずれシリーズ


641
普通に声も言葉も
出ているが
ふと気づけば手足そろって歩いてる


642
銀行員じゃないんだから
十円
ぐらいちゃちゃちゃのちゃ鼻歌歌う


643
銀行員になったつもりで
アジアの
軍隊の行進を観てしまった




  [短歌味体Ⅲ] どうしたものかシリーズ


644
今年は40個だけの
まばらな
夏みかんどうしたものか

 註.
父の遺した果樹のひとつである一株の夏みかんの。何年か放っていたが、ここ五六年収穫して夏みかんジャムを作っている。例年は100個ほど夏みかんがなっている。



645
夕暮れにどうしたものか
カーナビ
なしの手作業に霧中(むちゅう) あっ月。

註.農作業していて。


646
飢饉がイナゴの大群のように
伝播する
救荒作物(あれ)でいつまで……どうしたものか

註.遠い時代を思いつつ。


647
プリクラでつるつるつるんと
写っても (しょぼ)
まだまだまだだどうしたものか




  [短歌味体Ⅲ] どうしたものかシリーズ・続


648
歯が痛む世界は一色
赤々と
安らぐ椅子を奪い続ける


649
知らぬ間にトゲトゲ波は
暗転し
痛みの記憶夢に溶けてる


650
約束の日にちまでには
そこに立つ
加速加加速減中加速




  [短歌味体Ⅲ] 即興シリーズ・続


651
鼻歌のしらずしらずの
角曲がり
あらあ こんなとこにこんなものが


652
ええっとね ミーちゃんはね
マーちゃん
ミーちゃんのね マーちゃんミー


653
庭に来る鳥のしぐさの
今日はまだ
みかんがないねと言ってるような




  [短歌味体Ⅲ] 即興シリーズ・続


654
ああ そおか そおだったねえ
見上げれば
寒空遥か鳥の飛びゆく


655
椅子からふっとずり落ちた
心は今
はない柱時計(とけい)の振り子と揺れる


656
シーソーのガッツンする
ことのない
揺れ揺らる朝は春の微風の




  [短歌味体Ⅲ] 即興シリーズ・続


657
外見にはなんてことない
カップでも
共に山越え小皺もある


658
訪れる他人(ひと)には圏外
見え聞こえ
の向こうにはなだらかな丘陵地(おか)の


659
岩ないと伝わらぬ水
があり岩
なくてもあっても伝わる水の




  [短歌味体Ⅲ] シミュレーションシリーズ


660
本番のずっと前から
セリフに入り
しぼんだ風船と成り果て休む


661
ヒコーキに乗ってる積もりが
シームレス
危うい岩肌通り抜け出る


662
紙を次々に折り畳む
だんだんと
苦しさ増すよ 山登り詰む




  [短歌味体Ⅲ] シミュレーションシリーズ・続


663
小さい子がママゴトしてる
ぶつぶつと
何か唱えつつ手足動かす


664
ええっと…司会が言って
次の次
まずは「おめでとう」……そんでそんで


665
知りません十年後(さき)のことなんか
保険の
確率分布の滲んだ手の伸び来る




  [短歌味体Ⅲ] 即興シリーズ・続


666
おお寒は記憶の方へ
退いて
春の花びら舞い落ち始む


667
衣更え近くなりなりて
蟻さんの
手こする音の聞こゆるような


668
蟻さんの不明の高度
よじ上り
幻の世界線を拡張す




  [短歌味体Ⅲ] 即興シリーズ・続


669
スピードを上げても伝う
漂い
流る朝の気配に「おざーす」


670
異国語は知らず知らずに
「しゃらっぷ」
こちらの軒下重力下


671
じゅげむの魂の地形
たどり来て
ゆっくり腰上げ「彼は」と語り出す




  [短歌味体Ⅲ] 物語シリーズ


672
明け方に鶏鳴く声は
消え果てて
失意の内に幻聴する者ある

 註.新聞の事件の記事を読みながら、聖書のイエスの予言思い浮かべつつ、不可避の悪ということを思う。



673
ひとつ道へ羊のように
促されるも
心の地面にはただ異邦の文字の

 註.「私の胸の奥の白絹に、なにやらこまかい文字が」(「父」太宰治)を思い浮かべつつ。





  [短歌味体Ⅲ] 


674
お腹の深みの方から
声は出さない
朝 曇り 今日もまた舟を出す


675
やわらかな雨に濡れる木々
や草花の
ゆったりと飲む朝のコーヒー




  [短歌味体Ⅲ] 言の葉シリーズ


676
ぐるぐると巡りに巡り
ふいと踏む
ふいごの音に春溶け匂う


677
さわさわと幹揺すっても
落ちてくる
ものはなく深、静まり返る


678
葉脈のみどりの道を
たどるとき
言の葉揺れて影差して来る




  [短歌味体Ⅲ] 言の葉シリーズ・続


679
言葉へと喜怒哀楽の
葉となって
音楽のように鳴り響きうねる


680
言葉たち手品みたいに
瞬時に
変身する 鳥・舟・水・火


681
どこからか言葉舞い上がり
どこかへ
落ちていく感情線を通り




  [短歌味体Ⅲ] 入口シリーズ


682
入口では遙か太古と
同(おんな)じに
こんにちわなど言い掛け通さる


683
入口がホームグランド
でないならば
周囲の気配に触手伸ばしてる


684
入口では白、手ぶらでも
日々巡り
日差しに焼けてゆったりと出て来る




  [短歌味体Ⅲ] グローバルシリーズ・続


685
グローバル政経巻きこみ
我らにも
津波のように大地を寄せ来る


686
硝煙染み込んでいても
われらは
ラフな普段着でグローバルに出会う


687
肌色や言葉風俗
違っても
遙か遙かのアフリカの同一夢(ゆめ)




  [短歌味体Ⅲ] 入口シリーズ・続


688
入るのはとても簡単
足抜けは
干潟抜け行くに似て 集団の


689
入るも去るも大道無門
と言ってても
去り際に互いの水の重く濁る


690
感情は個々の出入り口
とは言っても
太古からおんぶお化けのように





  [短歌味体Ⅲ] 世界視線シリーズ


691
バンジーの視線ゆらゆら
迫り来る
ピカソの風景掻き分け流る


692
見渡して衛星の高度から
のぞき込む
目くるめく(遙か太古からの)時間の深み


693
ホラホラ、これが世界視線
突き抜けて
死後の表情までもが見える

 註.「世界視線」

「ランドサット映像が世界視線としてあらわれたことの意味は、わたしたちがじぶんたちの生活空間や、そのなかでの営みをまったく無化して、人工地質にしてしまうような視線を、じぶんたちの手で産みだしたことを意味している。この視点はけっして、地図の縮尺度があまりに大きいために細部を省略しなくてはならなかったとか、さしあたり不必要だから記載されなかったということではない。ランドサット映像の視線が、かつて鳥類の視線とか航空機上の体験とかのように、生物体験としての母胎イメージを、まったくつくれないような未知のところからの視線だということに、本質的な根拠をもっている。いわば、どうしても人間や他の生物の存在も、生活空間も、映像の向う側にかくしてしまう視線なのだ。」(『ハイ・イメージ論Ⅰ』「地図論」P155 吉本隆明 ちくま学芸文庫)





  [短歌味体Ⅲ] 誰にでも通じるかなシリーズ


694
頃合い超えて立ち合えば
いくつもの
ザボンはや落ちて草に埋もるる


695
椅子取りのゲームでさえも
はぐれた子
言葉を超えて佇む峠


696
「八時だね」「うん八時だよ」
暗転の朝
八時の駅は見知らぬ人ばかり




  [短歌味体Ⅲ] 


697
例えば買ったばかりの
靴履いて
約束の地へ足早に行く


698
新しい靴にふれふる
肌合いの
気に懸かりつつ橋を渡る


699
初めての店に入る時
幻の
バリアフリーをふと思い浮かぶ


700
よそ行きはふだんぎ着てても
よそ行きの
心模様の絞り染めつつ




  [短歌味体Ⅲ] 感嘆詞シリーズ


701
あっ 忘れてたと思い直して
気に留めても
しばらくすると晴天の空


702
あっ ととと 思い出して
しまったよ
できれば消し去りたい記憶


703
あらあら 困った風(ふう)でも
お腹には
柔らかな風流れ子を見る




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の表層からシリーズ


704
公人の乾いた言葉
春桜
灰ばかり舞い流れ寄せ来る

註.「花咲か爺」を思い浮かべつつ。


705
言葉に言葉積み重ね
徒労ばかり
汗滲み出し不毛の砂漠


706
はーいチーズ 呼び寄せられても
頑なに
表情を解かない春の




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の表層からシリーズ・続


707
表面を飾りに飾る
言葉たち
井戸は涸れても声はつややか


708
幻の読者をあてに
修辞
修辞修辞!かざりにかざる
 
 
709
舞い踊る修辞者たち
今もなお
俊成の桐の火桶の

 註.中世の歌人、藤原俊成は現実の姿としては冬、桐の火桶を抱きかかえるようにして苦吟したという。



710
肌寒い春の花びら
ひんやりと
乾いた井戸に降り積もりゆく




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の中層からシリーズ


711
いくらかは鏡ちらちら
見い見いし
用事顔にて言葉は歩む


712
鏡との静かな対話
くり返し
ぱたぱたするする装いもする


713
道々にふと湧き上がる
不安から
微妙に道ずれはずれゆくか


714
そんな印象言われても
身に覚え
ないと振り向く旅の途上




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の中層からシリーズ・続


715
不明でも不明のままに
下車せずに
桜咲く未明の駅を過ぐ


716
運ぶ荷ははっきりとは
わからない
駅を目指しているのはわかる


717
きみのはカッコいいなあ
身のふるい
立つはスモークの ダンスダンス!




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の深層からシリーズ


718
「山向かう」山にか山がか
もやの中
追いすがるは手肌の匂う


719
「山向かう」あいまい道を
進みゆく
もや立ち込むも手する感覚確か


720
たどられぬ言葉の岩肌
ひび割れて
下水(したみず)の方風匂い来る




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の深層からシリーズ・続


721
落ちて来て触れた感じに
湿り気の
膨らみつつ寄せ来る数波


722
井戸の底乾いていても
音もなく
後ろの気配で寄せ来るばかり

 註.井戸といえば、私の小さい頃は井戸を利用していた。ひんやり湿って冷蔵庫の役目も持っていた。村上春樹の作品に井戸の描写があったけど、彼は通りすがりではない井戸体験を持っているのだろうか。作品の描写は喩のようだったから井戸体験は不要かもしれないけど。



723
降って来るみどりの匂い
ほの明かり
背の方から自然と身よじる




  [短歌味体Ⅲ] はるシリーズ


724
おだやかに花びら舞い
ゆらゆら
日のぬくもり放ち地に落つ


725
〈ああ〉〈うっ〉〈おお〉
寄せ来る
浸透する 流れ出す はる


726
言葉の圏外でも
はる
言葉に似た舟に打ち寄せ来る




  [短歌味体Ⅲ] はるシリーズ・続


727
おそらくは去年と今年
同じようで
少し違って咲き触れ触らる


728
遙か遙か はる以前があり
おそらくは
時間の果てに はる以後がある


729
べつに苦しくはない
今ここの
はるにまみれて ものみなすべて




  [短歌味体Ⅲ] はるシリーズ・続


730
暖かく膨らむ大気
あちこちに
芽吹きふくらむものたちあふれ


731
衣更えしてしまうように
自然に
背押し歩ます四月の風は




  [短歌味体Ⅲ] はるシリーズ・続


732
雨風に花も散るちる
ちるちるち
花が今散るちるちるちちる


733
花も人も散るは惜しまず
と上っても
見晴らす我に湧き流るるものの


734
目にすれば知らない扉
開いてて
うかれさわぎなみだのにじむ




  [短歌味体Ⅲ] はるシリーズ・続


735
あっぷっぷ はるというゆにつかる
どこがはるか
概念は言えぬただ肌を流れ下る


736
さあここぞと ちちんぷいぷい
はる真っ盛り
海が裂け風そよぐページへ変わらず


737
いちにーさん ダイブする はるは
ダンサーたち
引き連れ出迎えに来て居るか




  [短歌味体Ⅲ] はるシリーズ・続


738
初めて言葉の世界に
湧き立って
はる ハル ひゃる と舌転がる日


739
「春はあけぼの」 春ってそんなの?
こちらでは
ちょっと異国の匂いする


740
春 桜前線のように
列島中に
広まった日 いずれにしても春ですよ


741
大規模の気候変動に
暗黙の
春はどこか化粧顔の




  [短歌味体Ⅲ] 通り過ぎるシリーズ



742
側通る草々匂い
引かれる
おもい計量超えて みどる


743
春は発つ?(わかりやすいけど
違うような)
春 春は瞬時に舞台構成し 消失す




  [短歌味体Ⅲ] 通り過ぎるシリーズ・続



744
二度目には少し和らぐ
天候の
日差しのよう表情解けて見える


745
何度も眺めつつ行き来
していると
その木は (ここの木 ((そこの木 にもなってくる




  [短歌味体Ⅲ] イメージ野シリーズ



746
思いがけず知り合いに出合う
街角の
親しい記憶訪れて来る

註.「の」は、古語の(のように)の意味。


747
すべりそうに水底を歩む
水を切り
魚(うお)のぬるりに時々出合う


748
造花の川には入らなくなった
ふと湧き立つ
イメージの野は流れに揺れる




  [短歌味体Ⅲ] イメージ野シリーズ・続



749
木の葉がお金になるか
と世界を
脱皮して また信じ始める


750
木の葉揺れ小舟になって
すべり出す
星々を縫い突き進みゆく


751
「またこんどね」 言われた言葉
イメージ野
から消えずに時に明滅す




  [短歌味体Ⅲ] 


752
そうなんだ と身に染みて
ひとり
驚天動地裂けめくれゆく


753
師は逝きて (そうだったのか)
迫(せ)り出す
未知の風景に立つアーナンダ

註.「アーナンダ」は、シャカの弟子。




  [短歌味体Ⅲ] ブーメランシリーズ


754
クマさんのぬいぐるみと
仕舞われて
ずんずんずんと森の奥深く

 註.助詞「と」の用法は、「動作・状態などの結果を表す。『有罪―決定した』」。つまり、「となって」の意味。



755
森に「奥深く」があるのか
次々に
疑問符のブーメラン投げ放つばかり


756
急ぎ流れゆく雲の
合間には
クマさん再び夢に戻り来る


757
しんしんしん 深深深
夢の中
子どものようでも thin thin sin thin




  [短歌味体Ⅲ] ブレーメンの音楽隊シリーズ


758
ブレーメン 行ったことはないけど
ぼくもまた
ブレーメンの音楽隊さ


759
ブレーメン 修業して
つらい顔
沈めて歌う のではなくって


760
あそこでも彼方でもなく
(振り返る)
きみはいま・ここの ブレーメン




  [短歌味体Ⅲ] ブレーメンの音楽隊シリーズ・続


761
山高く上らないと
届かない
見晴らせない景色もあるが


762
手品でなくきみはわたしで
わたしは
きみだという共通の音 響く


763
奏でるは共通の音
と聴こえても
我が芯にふるえるビブラート




  [短歌味体Ⅲ] ブレーメンの音楽隊シリーズ・続


764
〈革命〉や〈かくめい〉と引き
絞り上り
詰める ことなくふんわりの着地?


765
しかしかし 大道無門
素人も
気ままに歩み気ままに演ず


766
何にもしてないやん!
と言われても
我は本流の流れに沿い抗う




  [短歌味体Ⅲ] イメージ論シリーズ・続


767
ああ そうか そうだよね 揺れる
バランス
絞り一気に小舟に乗る


768
小舟の乾いた板に
ぽつ ぽつ ぽ
つ滴の落ちて染み渡る


769
ひとりでに進んでゆく
小舟には
青い心の滴拍車を駆ける




  [短歌味体Ⅲ] イメージ論シリーズ・続


770
海進、海退 (きっと
世界の
終わり) に追われ 地を上り下る

 註.「海進、海退」
人の小さな生涯の時間を超えた、とても大きな時間のスケールでの環境の変動。縄文時代の海進とその後の海退。
「約9,000年前からの急激な海進と約6,000年前~5,500年前の最大海進期を経て現在に至っています。最終氷期極相期以後の海進を縄文海進といい、海が最も陸地内部まで侵入したのが約6,000年前~5,500年前の縄文時代(早期末~前期)であったことからそのように呼ばれています。」(「地震・防災関連用語集」http://www5d.biglobe.ne.jp/~kabataf/yougo/B_nendai/nendai_jyoumon_transgression.htm)



771
姿形は変わっても
イメージの
遙か深みからイメージ走らす


772
自然の挙動不審に
揺れ揺られ
嵐の中の小舟怒りぶつかりゆく

 註.
柳田国男が書き留めていたが、柿の木などがよく実を付けるように、実を付けないと傷つけるぞなどの呪文を唱えつつ木をちょっと傷つけたりする、そんな自然に対する太古の心性と似通っているか。この場合は、呪文ではなくどうしようもない理不尽さの思いからの怒り。





  [短歌味体Ⅲ] 震災シリーズ


773
くつろぎの椅子に座る
瞬間
予感染みだし黒々と揺れる


774
やわらかな椅子変じて
液状化
黒い砂となりからだの奥へ


775
ずんずんと揺さぶられても
雨濡れた
木の葉の揺らぎこころを下る




  [短歌味体Ⅲ] ほっと一息シリーズ・続



776
土払い手袋脱いで
椅子深く
腰しずめて静まる時の


777
ああ今日も一日の波
静かに
穏やかに退いていく夜




  [短歌味体Ⅲ] 重層シリーズ



778
はい はい。(小石の落ちて
波紋の
広がりゆく 見ている)ええ。


779
月出てる、とってもきれい。
そうだね。
(気がかりの影まんまる月にかかる)


780
階段を上っていく、
(今誰かの
視線触れ来た)夕暮れの街。




  [短歌味体Ⅲ] 重層シリーズ・続


781
自分のこと考えていても
他人が
重なってきてマジリアーニ

註.「マジリアーニ」は、画家モディリアーニとその絵を少し意識した。


782
こうするよと心積もり
していても
場面に立つときみは変貌す


783
作者・語り手・登場人物がいて
物語は
重層する色合い放つ




  [短歌味体Ⅲ] 重層シリーズ・続



784
今年も作る竹の子ごはん
一年ぶりの
思い昨年に重ねている


785
竹の子とこんにゃくと
鶏肉と
椎茸と小さく刻んで炒め合わせる


786
さとうしょうゆ酒入れて
具を作り
酢振りのごはんと混ぜ合わせ


787
それぞれ皿に注いだら
仕舞いに
金糸卵を振りかけ出来上がり


788
複雑になってしまっても
太古の
シンプルな料理に思い重ねる




  [短歌味体Ⅲ] 農に出てシリーズ



789
農に出て下ろし立ての
ステンレス鎌
スパン スパンと草刈り進む


790
何度もくり返してると
ビミョウに
切れ味がスパスパと曇りゆく


791
空(チュン チュン)雲(チュン チュン チュン)
風(ホーケキョ)
晴れ(チュン チュン(ゲコゲコ)チュン)


792
くたびれて家帰り着くと
充足の少し重たい
からだの流れ言葉のドアは閉じて




  [短歌味体Ⅲ] 張り合いシリーズ


793
手を見ても猫類ならば
闘志燃やす
目まんまるに燃え始めてる


794
我に没入 (jump) 飛びかかる
爪出てる
あぶないあぶない (おいおい)


795
人みたいに目合わせ細めたり
配慮して
爪を収めたりもするけれど


796
じっとして内向きに丸く
なっている
今きみはどんな世界に浸かっている?

註.NHK Eテレのねこのうた(言葉+音楽・歌+映像)を意識して。・・・ううん、負けてる?

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「あたし ねこ」の歌詞(NHK Eテレ「0655」)


あたし ねこ
あたし ねこ
ここ あたしんち
ここ あたしんち

これ いつものごはん
これ スペシャルごはん
それ 大好きおもちゃ
それ 落ち着く寝床

あたし ねこ
この人 飼い主
この人 ご飯をくれる
この人 遊んでくれる

あたし ねこだから
人の言葉わからない
あたし ねこだけど
この人の気持ちなぜかよくわかる

あたし ねこ
あたし ねこ
あたし ねこ
あたし ねこ

https://www.youtube.com/watch?v=X0Y8q0x_yjw





  [短歌味体Ⅲ] 一瞬シリーズ


797
一瞬の偶然と
必然の
哀しい出会い流れを切断す


798
一瞬は微分のようで
全ての
有り様の今として現前す


799
一瞬の表情には
歩み出た
自己と引きこもる自己と混じり合い




  [短歌味体Ⅲ] 一瞬シリーズ・続


800
宇宙から見て一瞬
と言っても
かげろうも人もその内を生きる


801
樹齢数千年も
宇宙から
見ると一瞬 時間の木の香の匂う




  [短歌味体Ⅲ] 一粒のシリーズ


802
一粒のすなの姿は
砂浜の
姿と違いひっそりとして


803
一粒のすなの滴は
干上がって
〈砂〉という乾いた言葉となる


804
一粒のそらまめも地に
下れば
芽吹き伸び上げ花結び実を付く


805
一粒は全体に繋(つな)がり
色褪(あ)せる
みどりくぐもる大いなる誤解




  [短歌味体Ⅲ] 一瞬シリーズ・続



806
車窓に切り取られた
一瞬の
表情は誤解かもしれず


807
見逃した一瞬の内に
脱皮して
表情はn1からn2へ


808
一瞬の深呼吸は
やわらかな
みどりの丘陵(おか)に下り立っている




  [短歌味体Ⅲ] 対話シリーズ・続


809
ああ そうね それは そうかもね
でもしかし
わたしの針はこちらへ振れる


810
収束地同じようでも
道違えば
風景も違いビミョウにずれゆく


811
始発からいくつもの駅
ノリノリ継いで
帰り道の終発を見失う

 註.表現に出立したイメージの動機としては、アメリカ帰りの「洗脳」された教育関係や政治関係や経済関係の人々の言葉。その効率・成果など一点張りの機能主義思考。人間というものをやせ細らせる無惨な脳中心の砂漠の思考。





  [短歌味体Ⅲ] 人はなぜかシリーズ



812
動物は内に味わい
人はなぜか
感じ考え信号する

註.人も動物生を持ち、動物も「感じ考え信号する」けれど、動物生を超えたレベルでの人を思い。


813
歩み来て大人になっても
小さい子
のように何で何でと思う


814
触手閉じて無心な時や
眠りでは
世界の内のしずかな旅人




  [短歌味体Ⅲ] 対話シリーズ・続


815
日差し浴びたぶん流れてる
だんまり超え
どしんと自然の列にある石


816
生きていることが蟻蟻と
無心の
我らのように歩き回る


817
やったことある手も伸びて
びゅおーんと
追い越していく車の表情




  [短歌味体Ⅲ] しまったシリーズ


818
おとしておとしておとして
気を付けて
いたのにおとしてしまったなあ


819
おとしたのという弁明は
おそらくは
受け入れられても こちらは倒れたまま


820
しまったとつぶやく前に
ぐらりと
傾(かし)ぎ倒れ臥す〈しまった〉




  [短歌味体Ⅲ] いいなシリーズ


821
反れはいいな凝れもいいな
つるつるつるん
触れ流れゆく肌の速度感


822
いいないいなそんなの持ってて
いいないいな
きらきらきらりん星輝いて(見える)


823
いいないいなそんなところに
立てるなんて
可能性こちらにもあっても(ムリ)




  [短歌味体Ⅲ] いやだなシリーズ


824
言葉にはなれなくても
どこかなんか
いやだなと思う重りに引かるる


825
いやだなん いやだよー 歌ってみても
黙する
灰色の壁のようなものがあって


826
物事には始まりがあり
中程経て
終盤? 湧き続ける 〈いやだな〉イメージ




  [短歌味体Ⅲ] しまったシリーズ・続


827
もう食べてしまったからには
火の消えた
灰の中からイメージの火を焚(た)く


828
しまったけどどこだったかな
とドアあけ
しめあけしめしまった思いは


829
他人から「それはしまったね」と
言われても
深さ色合いふかい溝がある




  [短歌味体Ⅲ] いいなシリーズ・続


830
人はみな濁りの中に
いいないいな
の漂い流れ微(び)匂い立つ


831
いいないいな黙っていても
ブーメラン
みどり潤い日差しに映える


832
いいないいな収穫され
なくても
すくっと野に立ち続ける




  [短歌味体Ⅲ] いやだなシリーズ・続


833
嫌田嫌田と言われても
何のことか
嫌の味がわからないなと思う


834
いやだいやだと嫌気が
差すと
無縁の人の顔立ち揺れる


835
いやだなと思っていても
少しなら
目立ってもいいかなと思う芽ある




  [短歌味体Ⅲ] 何にも言わなくてもシリーズ


836
何にも言わなくても
表情の
さっとくもり漂う雲の


837
ぼんやりとただ見てるだけ
と見えても
回廊をくねくねと上っている


838
話し合い異論反論出なくても
静かに
無数の花々風になびいている




  [短歌味体Ⅲ] 無シリーズ・続


839
無 を語る言葉だけは
最後の
最後まで居残り無にならない


840
何にもない 無 と言っても
仮定法
と同じく今を無にはできない


841
無 と言ってもイメージの球面を
言葉が
無となるまでに疾走していく


842
無ならば猫の〈希望〉
のように
朝もやの中駆け抜けていく




  [短歌味体Ⅲ] ぶらんこシリーズ


843
遙か始まりのぶらんこ
ひたすらに
大気震わせ大自然に問う

 註.柳田国男を読んでいたら、ぶらんこについて触れている文章に出合った。何事にも始まりがある。「ブランコの話」(『柳田國男全集22』P468-P476 ちくま文庫)



844
初めてのぶらんこという
席占めて
ずーんずんずーん流れる風に合う


845
初めてはなめらかでなくても
新しい
風ふくらみ肌触れ流る




  [短歌味体Ⅲ] ふくらみシリーズ


846
少しずつ熱巡り巡る
突然に
ふくらみ始める頂の餅(もち)


847
ふくらみに言葉退き
やわらかに
情感の丘陵(おか)をすべり下る


848
ふくらみにネコのふみふみ
現在に
時間の深みから雪崩打つ




  [短歌味体Ⅲ] やわらかシリーズ


849
やわらかい や・わ・ら・か・い
かんかくの
ふわあっと流れ上り広がる


850
やわらかい と言葉のたどる時
自らの
年輪の層を突き抜けてくる


851
目を閉じる 色・形・音以前の
溶け合いが
暗い背景に滲んで来る




  [短歌味体Ⅲ] 詩と歌シリーズ


852
詩は歌をずしんとうらやむ
太古には
同根の遠く離れ来て


853
〈あ あ あー〉 始まりのうた
焦がれる
少年の手繰り寄せる魂(たま)


854
大いなる自然の大波(たいは)
かぶりつつ
手練手管のうたで相対す




  [短歌味体Ⅲ] もやもやシリーズ


855
遙か昔信号機設置
され始めた
時の変な気分 もうおぼろげ


856
ことばたちが疾走している
信号が
赤になってもからだは走っている


857
ほんとうの心安らぐ
休憩が
よくわからない 立ち食いそば屋




  [短歌味体Ⅲ] イメージシリーズ・続


858
ニワトリの鳴き声する
とあれば
その地のイメージ収束していく


859
二昔前灯りあっても
世話無しの
蛍光灯ではなかった


860
昔も今もいろんな出会い
親しげに
風物とくり返す 不変の




  [短歌味体Ⅲ] いちにいさんシリーズ


861
瞬時に反応するも
反応を
生み出すのはとても難しい


862
したがって回路を作り
水流し
123と激流する


863
123と流れに乗り
大気圏
を抜け出ては青みゆく在所




  [短歌味体Ⅲ] この今のシリーズ


864
(チチ チチ)(チュン チュン)(・・・ ・・・)
鳥が鳴き
静かな今日今の 気づき


865
ペンが急に床に落ち
音立てる
けれど不吉なこと 何もない


866
あっ ああ つまづきかけて
持ち直す
この今が いつも漂うけど 気にしない




  [短歌味体Ⅲ] ふれるシリーズ


867
ふれる 前と後には
深い淵
ずしんと夕暮れうつむき暮れる


868
そこはだめ と禁じる匂う
扉に
かき分けかき分け伸びゆく ふれる


869
ふれるとは身よじるエネルギー
の対話?
ぼおっとエロスのあかり点る




  [短歌味体Ⅲ] おはようシリーズ


870
長らくも馴れ親しんでも
六月の
長雨不審に降り続き居る


871
意味もなく何気なく見える
「おはよう」の
乾いた頬に滲みていく朝


872
「おはよう」に背く踵(かかと)
のあっても
配慮遠慮無くダイブする




  [短歌味体Ⅲ] 色々シリーズ・続


873
赤 情熱の赤
遙かには
丹塗りの顔があかに打ち震う


874
青 少年の青
峠越え
水底へ沈みゆく不安湧き立つ


875
白 純白の
バリアー
魑魅魍魎(ちみもうりょう)を禊ぎ払う


876
色々の好みのままに
良いのでは
勝手にしろとつぶやき退(しりぞ)く




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の旅シリーズ


877
血と死を拭(ぬぐ)い去り
「真剣に」
が新たな時を旅し始める


878
まんじゅうをちょっとすいません(ひかえいひかえい)と
押しのけて
前景を占拠するスイーツ


879
消えてゆく土埃(ほこり)も立たない
方言は
死してイントネーションと化しゆく




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の旅シリーズ・続


880
効率能率 起立能率効率
(尻叩か
れてもおれはねむいちゅうーの)


881
新しい物語銀翼きらめかせ
イカロス飛ぶ
みんなが乗らなければ失墜す


882
誰にでも晴れがましさは
あるけれど
ただひとり天空を飛びゆくばかり




  [短歌味体Ⅲ] 越境シリーズ


883
もう一回 止まらぬエロスを
出迎える
遊技場システム稼働す


884
前のめる〈もう一度だけ〉
から始まる
破局漂うプレリュード


885
積み積みに積み上げていく
「あっ」という
一瞬のアンバランス




  [短歌味体Ⅲ] 越境シリーズ・続


886
暑くなる夏の気配
大気の中
漂い始める 〈うっ〉


887
遙かな 小さい頃の
黒雲の
今この関を破る ストーカー


888
そおなんだああそおなんだ
深まり
濁り溢れ出る一瞬の




  [短歌味体Ⅲ] 越境シリーズ・続


889
あと半歩踏みとどまらないと
崩れゆく
氷河となる特異点の(最後の場所)

 註.(最後の場所)は、言葉にならない心のつぶやき。


890
流れのままに越えていく
ああ もう
戻ることはないとぼんやりと眺める


891
まるでスローモーション
の夢のよう
瀕死の視線から見えている




  [短歌味体Ⅲ] いいもんねシリーズ


892
いいもんね いいもんね 言い付けちゃうから
いいもんね
おいこらあ! まてえ!


893
いいもんね いいもんね まだまだあるから
いいもんね
それくらい くれてやらあ!


894
いいもんね いいもんよ
どんなもの
よりいいもんね かがやく姫は




  [短歌味体Ⅲ] いいもんねシリーズ・続


895
いいもんね いいもんね 知らなくったって
いいもんね
月曜日がなくったって いいもんね


896
いいもんね いいもんね 小さくったって
いいもんね
快適ならば いいもんね


897
いいもんね いいもんね
抑揚違えば
こわいもんね こわいもんね


898
外がどうあろうと いいもんね
いいもんね
つながりの糸切ったり繋(つな)いだり


899
日差し浴びいいもんねいいもんね
ここさえ
穏やかならばいいもんね




  [短歌味体Ⅲ] 


900
喧噪(けんそう)にうつむく背中
しずかに
異色(いしょく)の朝や夜が下りている


 ※ 短歌味体をツイッターの手持ち無沙汰から始め、現政権が転がり落ちれば止めようかなと思っていたが、もう1500首になってしまった。





  [短歌味体Ⅲ] イメージ論シリーズ・続


901
何かを見てはいても
まぼろしの
像がすうっと立ち上がり歩む


902
色も形もないイメージの
流れつつ
あったかいコーヒー色に染まる


903
冷たい石 イメージの舟
に乗り込んで
日差しと風に帆ふくらませゆく




  [短歌味体Ⅲ] 越境シリーズ・続


904
悪意なく知らない内に
越境
してしまっている一瞬がある


905
うとうとともう少しいいかと
沈みゆく
夕日とともに見知らぬ駅へ


906
目覚めては遠い異境の
匂い湧く
後悔は苦い覚醒に似て




  [短歌味体Ⅲ] 


[短歌味体 Ⅲ] ふれるシリーズ・続


907
目が触れたと怒り来る者は
どんな目の
物語に追跡され来たか


908
ETがふるふる触れる
ぼわっと
明かり湧くのはどんな魂の場所か


909
物語肌触れなくても
下りてきて
心に触れる人いきれのする




  [短歌味体Ⅲ] 静かなシリーズ


910
言葉は花火 熱くも
冷たくも
自在に花開き舞い散る


911
し・ず・か・な 打ち上がり散った
「静かな」の
総量に(悔恨とともに)触れている今


912
静かに夜の背中に入る
無数の
悲しみたちが立てかけられている


  [短歌味体Ⅲ] 微分シリーズ


913
ゆるゆると滑り出す時
からだは
スローモーションでチェックしてる


914
ちろちろと流れゆく水の
高低を
感じ分けるように音階を踏む


915
シャッターを押す手前の
一瞬に
イメージ群は集結する




  [短歌味体Ⅲ] 微分シリーズ・続


916
そおっと、そおぉぉっとよ
気配が
ふれ伝わると起動してしまう


917
どおしよう ど・お・し・よ・う
と巡っても
変化なさそうで波の少しやわらぐ


918
知らない間に呼吸している
気づいたら
少しは行く手に灯りが見えそう




  [短歌味体Ⅲ] びぶんシリーズ


919
「ほうらね?」「ほらね!」
びみょうな
起伏を下る足裏の触感


920
雲行きの傾く気配に
歩行は
なぜか足占(あしうら)を踏んでいるよ


921
味見して薄すぎる時
加える
さじ加減がびみょうだな




  [短歌味体Ⅲ] びぶんシリーズ・続


922
物語の森を歩き
次々に
掛かる枝葉に「待機電流」流る


923
言葉がみどりに映える時
イメージは
心臓みたいに拍動している




  [短歌味体Ⅲ] 四字熟語シリーズ


924
知らなくても知ってるよと言う
言葉がある
老若男女、白昼堂々


925
心の手足ばたつかせ
一瀉
千里を擬装して現る


926
満月を隠す雲と
漂うても
空に匂う喜色満面




  [短歌味体Ⅲ] 二度三度シリーズ


927
二度目には、気づかなくても
一度目と
対面、対話しつつ現れる


928
二度三度くり返すうちに
風景は
揺らぎ収まり道が開ける


929
二度三度くり返すうちに
悪の道
ひた走りに走る 砂漠




  [短歌味体Ⅲ] 二度三度シリーズ・続


930
二度三度とうんざりしても
お互いに
固有の線分描き分かるる


931
キレる時二度三度の
つらい峠
遙か下界に超出している




  [短歌味体Ⅲ] 二度三度シリーズ・続


932
二度三度どんより空気に
峠越えは
「越すに越されぬ田原坂」


933
二度三度目にしていると
春風の
暗転して砂漠風になる


934
二度三度好悪の分かれ目
出発から
旅装に仕舞い込まれている




  [短歌味体Ⅲ] どうしようかなシリーズ


935
玄関で雨降るを見て
わがネコも
どうしようかなと手足ためらう


936
イメージをぶつけ合いながら
内心で
どうしようかなとループしている


937
明日雨ならどうしよう
かなかなかな
当てのない七曲がり下りゆく




  [短歌味体Ⅲ] どうしようかなシリーズ・続  


938
いちまいにまいさんまい
花びらを
呪(まじな)いの流れに追っていく


939
判断の霞む谷間に
蝟集(いしゅう)する
あの手この手の誘い来る匂う


940
ブランコに揺れるからだを
預けつつ
おもい流るる夏空の雲




  [短歌味体Ⅲ] そんなことシリーズ


941
そんなことすなに文字を
書いた
抗力あっても無重力のよう


942
そんなことこんなこと
あんなこと
湧き出す記憶ランダムの花火


943
街角をふいと曲がると
「風立ちぬ」
映画に涙する太宰治




  [短歌味体Ⅲ] あんなことシリーズ


944
あんなことするんじゃなかった
今は もう
色が決まってもう戻れない


945
あんなこととおもい走らされる
言葉の手
には否定の匂いばかりの


946
小さな「あんなこと」はいつでも
生起し
誰もがうまくぶつかり避(よ)け進む




  [短歌味体Ⅲ] 何してるのシリーズ


947
何してるのってせわしなく
タタタタタ
野菜を細かに刻んでいるよ


948
何してるのって言われても
ねえ ただ
田他多手多
と一つ音階にふるえるばかり


949
何してるのって言われても
ねえ ただ
雲が ゆったり 漂い 流るる




  [短歌味体Ⅲ] 何してるのシリーズ・続


950
「なんばしょっと」と言われたら
耳は自然に
固有の丘陵地(おか)を下っている


951
「何してるの」と声聞こえると
自然に
こちらからもクモの糸が伸びていく




  [短歌味体Ⅲ] こんなことシリーズ


952
こんなこと簡単じゃない
と部屋に入ると
暗いくらいなあとcryすることがある


953
傍目には流れる水の
肌触り
よくわからないなあと幻で触れてみる




  [短歌味体Ⅲ] ええっとねシリーズ


954
ええっとね(もくもく)えーとね
(もわもわ)
えええーとね(もやもやもわ)


955
ええっと(大空晴れて)
(誘うよう)
ええっと(立ち上り来る言葉よ)


956
まだひとり足りないか?
日は昇り
もうみんなの心は膨らみ過ぎてるのに




  [短歌味体Ⅲ] 微シリーズ・続


957
微笑して微流に乗る
微動する
乗り心地よ 目的地はなく


958
峠では右左へと
微動する
バランス!ぱらぱら落ちゆく小石もある


959
しいんと静けさの凪
かすかに
揺れている?まぼろしの微




  [短歌味体Ⅲ] 微シリーズ・続


960
しずかな 微 夜の底へ
下りていく
その先は 微 道があるような


961
「知りません」という顔の
映像に
どこか変だなと微に入り細へ


962
雨垂れの 微 石に落ち続け
遠 ずっと向こうは
終 境も見えない雨のカーテン




  [短歌味体Ⅲ] いいなシリーズ・続


963
いいなあと花の色合い
またたどる
ときはじめのいいなあと出合う


964
いいなあと他人をたどる
足取りは
自分の場所からはみ出ている


965
いいなあと自分はみ出る
旅立ちは
結局は自分と対話す




  [短歌味体Ⅲ] 入口シリーズ・続


966
その道の専門でなくても
出入りする
大道無門しずかに開いている

 註.経済でも教育でも政治でも音楽でも美術でも、どんな専門的になってしまった領域も人間的なものに過ぎず、万人が出入りできる層が必ずあると思う。



967
細々(こまごま)と機材あふれる
通路には
ただ一筋のモチーフが引かれている




  [短歌味体Ⅲ] 人のあわいシリーズ


968
ひと滴落ちただけでも
うっすらと
部屋が赤みに呼吸し出す


969
何気ない相手のひと言に
凪の海
波立ち泡立ちさざ波重ぬ


970
独りだねとつぶやいて
自分と
〈自分〉のあわいに佇(たたず)みくつろぐ




  [短歌味体Ⅲ] 人のあわいシリーズ・続


971
死にたいと人間界を
超えるひと
否定の孤韻閉じかけている


972
極悪に見えたとしても
頑(かたく)なに
たださびしい否定の足跡


973
小さい頃のエナジーが
消えていく
そんなに苦しいかこの人界は




  [短歌味体Ⅲ] こうそくシリーズ


974
校則に拘束される
と気づいたら
光速で離脱し非在に籠もる


975
高速に乗れば速いが
いっそうに
風景からの非在を拘束される


976
責められたあのこうそくは
どのこうそく
か夢うつつにこうそくされる




  [短歌味体Ⅲ] 政治論シリーズ・続


977
身内内では違っても
言葉が
心と乖離してのっぺらぼうの


978
幾重にもウソにウソを
重ねても
ウソぴょーんとお笑いなら終わる


979
公人に変身ベルト
していたら
ばれなきゃウソも痛まない




  [短歌味体Ⅲ] 人のあわいシリーズ・続


980
誰でもが人のあわいに
立つからは
抜け荷をしてても同じ駅を出る


981
「スイーツ」もどこかひとつの
港から
人のあわいを巡りに巡る

註.スイーツという言葉を思い。


982
あんぶれーらかんぶれーら
意味もない
音のうねりが人のあわいに滲(し)み入る




  [短歌味体Ⅲ] うるさいシリーズ


983
うるうるぱちぱち
(うるさいな)
ぱちぱちうるるん(うるさいな)


984
どうしたの(うるさいな)
毛羽立ち
波が荒い(うるさいな)


985
何歳ですか(うるさいな)
(ただこの
世界の深みしずかに立つ)




  [短歌味体Ⅲ] ブチ切れシリーズ


986
この音その音あの音
(うるさいな)
「こんにちわ」に「(うるさ)いな」と言ってしまう


987
これもそれもあれもいつも
みんな全部
積み重なりの「(うっ もう知)らん!」


988
言葉に色と重さと動きとが
装備され
飛び交い飛び交い来る来るぞ




  [短歌味体Ⅲ] 光と影シリーズ


989
終日光射す街
にも影、闇
無数に点在し呼吸している


990
陰日向ないと言っても
その向こう
静かな日向に影差している


991
影と光は対だから
振り切ろう
にも振り切れぬ朝は始まる




  [短歌味体Ⅲ] 光と影シリーズ・続


992
衛星の目が映し出す
遙かな
明暗は臨死体験のよう


993
今ここに二重の視線
内省線
を走り抜ける余韻の響く


994
この心の光と影も
太古に比べ
大して違わない でも末梢的




  [短歌味体Ⅲ] 視線の深度シリーズ


995
表皮の下(した)野原や
川があり
草風になびき水の流るる


996
皮下に風、色鮮やかに
流るるは
心の表も裏もなく


997
アリさんとじっくり顔見合わす
こともなく
生命科学は微視下を漂流す




  [短歌味体Ⅲ] 視線の深度シリーズ・続


998
(無音) 大きな音立て
たくさんの
泡不満げに立ち上りゆく


999
(光と闇) 車行き交い
終末を
食べ・飲み歩く人々あり


1000
(起源) 始まりなんて
忘れた
ように箸を使いこなしている




  [短歌味体Ⅲ] 境目シリーズ


1001
1000の峠いつものような
靴音で
静かに越えて行く朝の日差す


1002
振り返るといつの間にか
バランスの
靄(もや)に煙る谷を(自転車)走りゆく




  [短歌味体Ⅲ] 言葉シリーズ


1003
まるで言葉を忘れたように
うーあうーあ
言葉の門をバンバン叩く


1004
多言費やしても
乾いて
言葉は砂丘を歩むばかり


1005
乾板に言葉の像が
浮かぶとき
寂しい音色青く流れる




  [短歌味体Ⅲ] 夢シリーズ


1006
じんかいにまみれていても
くたびれた
言葉のベッドに青い夢を見る


1007
言葉が橋を渡るとき
潜熱の
ように放出される夢


1008
暗転する「いないいないばあ」
の一瞬
の暗夢は暗い洞窟へ退(ひ)く




  [短歌味体Ⅲ] 言葉シリーズ・続


1009
千万言を費やしても
閉ざされた
固いドアはしんと静まり


1010
「癒やされるう」神はへらへら
扉から
外へ出て来たと言葉は記す


1011
「きさん なめとんのかあ」
「なめてます」
と時間の静かな深みから絞り出す


1012
遡上(そじょう)する魚のように
列島の
始まりの流れに言葉は独り立つ




  [短歌味体Ⅲ] 言葉シリーズ・続


1013
風が吹いていなくても
「風が吹く」
と書き記す風言葉のある


1014
風 ノアール ノエール
風へ
風から ノルルエールア


1015
「風が吹く」 風言葉は
呪(まじな)いのよう
不在と現在に橋の架かる




  [短歌味体Ⅲ] 言葉シリーズ・続


1016
急にうっ止まる原付バイク
わが青春の
揺ら揺ら駆け抜け来て止まる


1017
ヤマハの250cc中古のバイク
に乗っていた
仕事の鎧引きはがすスピード!


1018
銃もバイクも境界線を
超え行けば
もう戻れない二人の破局




  [短歌味体Ⅲ] 言葉シリーズ・続


1019
縁日のいろかたちにおい
かけるこえ
溶け合った縁なき道をゆったり歩む


1020
純粋な〈個〉はあり得ない
絆切っても切っても
もまれまみれてこの〈世界〉に立つ


1021
したがって人は誰でも
つながりの
心模様をいくつもの階層に持つ


1022
まぼろしの言葉の世界なら
全世界
を相手にたたかうことができる




  [短歌味体Ⅲ] イメージシリーズ・続


1023
川音や堰(せき)を流れる
勢いを
飽きることなく眺め触れ居る


1024
今では川から遠く
離れ居て
まぼろしの水音耳底を流る


1025
イメージの古井戸の深みから
一陣の
風吹き上がり今も涼しい




  [短歌味体Ⅲ] 言外のシリーズ


1026
「知ってる?」「これ知らないの?」
さざ波立つ
声色に湧く不穏の煙


1027
煙り立つといっても 斬(ザン)
向かい来る
ことはなく静かな波面の陰る




  [短歌味体Ⅲ] ふとシリーズ


1028
呼吸の合間感じる
瞬間は
ふと内省の間(ま)に流れ居る


1029
不随意の呼吸の流れに
棹(さお)さして
どこへ流れ入るかとふと思う


1030
裏側に絶えることない
拍動の
ふと触れてみる言葉の触手




  [短歌味体Ⅲ] 二重奏シリーズ


1031
晴レテイルとりべるじらべる
昨日マデノ
雨続キとりべるじらべるウソノヨウ


1032
アアソレネちちちちちゅん
モウスグ
ちちち受ケ取リニ来ルヨちゅん


1033
月ガはらはらはるキレイネ
ウン ソウネ
ふるふるふるふる銀ノ滴




  [短歌味体Ⅲ] 二重奏シリーズ・続


1034
何にも言葉がないなあ
(日差し、波
のふるふる揺れているのが見える)


1035
それをわたしにくれるんだ
(丘陵(おか)に霧
立ちしっとり肌潤う)




  [短歌味体Ⅲ] 無意識シリーズ


1036
からっと晴れ上がった
つもりでも
無意識からか陰り漂う


1037
無意識とはいいながら
けはいや
においのように触れている感じの


1038
無意識と意識の橋を
行き来して
シームレスに日の出を眺め居る




  [短歌味体Ⅲ]  無意識シリーズ・続


1039
今何か言った?と振り
返るとき
無意識の境を抜け出ている


1040
ああいい天気とつぶやく
以前には
静かに流れ落ちゆくものがある




  [短歌味体Ⅲ] 無意識シリーズ・続


1041
ハッピーのない日々ならば
からだもまた
そんな日々を蓄積していく


1042
うれしいねとこころ深く
染み渡る
時があるならばその道や良し





  [短歌味体Ⅲ] もしくは抜字シリーズ


1043
あしははれるだろと
ゆぐれき
ぼくつぶやた ゆうやけまぶ


1044
「どらえもんだしたか」
しずかに
こころざわきむねおどせる




  [短歌味体Ⅲ]  解読シリーズ


1045
明日は晴れるだろうと
夕暮れ時
ぼくはつぶやいた 夕焼けが眩しい


1046
「どらええもん出したろか」
に静かに
心ざわめき胸を躍らせる
 
註.本日の作品は、それぞれ1043,1044の作品の言葉の解読に当たります。




  [短歌味体Ⅲ] 農事シリーズ


1047
もうここは(イノシシも出るし)
いいかと
放っていた畑を久しぶりに訪ねる


1048
深々と畑は埋まり
草々の
栄え伸びてにぎやかではある


1049
とりあえず畑の際でも
と刈り始め
もういいかなから深追いし刈る




  [短歌味体Ⅲ] 農事シリーズ・続


1050
一瞬の刺すテロリスト
気づいたら
目の上から痛み下り来る


1051
ハチにはハチの理由(わけ)がある
深追いを
悔やんでも仕方ないことがある


1052
前日にハチに刺される
歌詠んだ
けど偶然さ深追いはしない


1053
悪意を秘めてもいないのに
四五日は
悪相と気分低下に耐える




  [短歌味体Ⅲ] 『日本はなぜ、「基地」と「原発」を留められないのか』(矢部宏治)を読んでシリーズ


1054
なんとなく知りつつも
白日の下
わかってしまえば絶句の極み


1055
アメリカ屈従のマゾを
きれいごと
に言う病の口はどの口か?


1056
昔は中国屈従、遙かより世代継ぐ
負の遺伝子よ
ぼくらはどこで立ち上がるのか?


1057
このクニの住民の美点
大らかに
花開く遙かな幻の道は




  [短歌味体Ⅲ] 人付き合いシリーズ


1058
太古から人と人との
付き合いも
練りに練られてこの程度かも


1059
他人(ひと)のいる場に入り込めば
知らぬ間に
衣装を正し少し固い顔




  [短歌味体Ⅲ] 言葉のいのりシリーズ


1060
たあたんたあたん
まんましゃ
あん まんましゃあん


1061
ひいふうみいよお右回り
いついつ休み
ひいふうみいよお左回る


1062
ふくらむすくらむ深
深深
ふくらまんとすくらむならば




  [短歌味体Ⅲ] 言葉のいのりシリーズ・続


1063
風は吹く この風景を
風浸し
新たな芽を促すように


1064
(ううううっ)「うみ!」生まれ出る
子のように
海が波立ち立ち現れる




  [短歌味体Ⅲ] 言葉遊びシリーズ


1065
蟻居り侍り蟻蟻
蟻蟻蟻
降り檻蟻居り侍る


1066
今も水流るるか さあ知らないよ
歌志内
幌内中札内稚内よ




  [短歌味体Ⅲ] 葉シリーズ


1067
ひらひらひらひら風の
ある限りは
ひらひらひらひら言葉に揺れる


1068
外見には寡黙な葉揺れ
交響の
音立て内に幅広に流る


1069
るるるずず るる るるる るる
ずうずずず
るうるうるう るる るるる




  [短歌味体Ⅲ] イメージシリーズ・続


1070
イチジク一枚拾う
みどりの葉
茂る陰にイチジクの実赤く


1071
みずみずしいスイカに触れる
みどりの
球面をすべりゆく眼差し




  [短歌味体Ⅲ] イメージシリーズ・続


1072
走ればいいさと思っていても
顔かたち
いいなとコマーシャルの車で駆けてゆく


1073
追いかけて追いかけて
雪国の
女(ひと)はイメージ線上に消ゆ




  [短歌味体Ⅲ] 人付き合いシリーズ・続


1074
うかうかと尻馬に乗り
祭りの後
の冷たい風に吹きさらされる


1075
魂近く触れないと
他人(ひと)は
千変万化捉え難く


1076
自らも深い時間の
海にさらされ
魂の錘鉛(すいえん)を下ろす




  [短歌味体Ⅲ] 服シリーズ


1077
遙か始まりは薄暗がりに
お互いに
引き合うように居る心と服は


1078
今では白昼に
堂々と
にぎわう街路を練り歩きもする




  [短歌味体Ⅲ] 服シリーズ・続 


1079
スーツ着て腰肩首を
締め付けて
自然と馴染みゆく世界に立つ


1080
それでも家に帰り着けば
うんざりと
脱ぎ捨てて普段着にくつろぐ




  [短歌味体Ⅲ] 服シリーズ・続


1081
もう思い出せない 夏空に
じっとり汗
遙か服を着せられた頃を思う


1082
思えば服にも年輪
があるけれど
色合いの好みはあんまり変わらない




  [短歌味体Ⅲ] 服シリーズ・続


1083
真っ白のTシャツに
ミッキー
マウスがいて風を受けている


1084
こちらからは見えなくても
ミッキーは
風の中動き回っているさ


1085
イメージは食べる者には
ぴったりの
服となり身を駆動・加速する(あるいは 落ち着かせる)




  [短歌味体Ⅲ] 服シリーズ・続


1086
人知れずよく着るTシャツと
避けられる
Tシャツがあり日々自然に流る


1087
おそらくは理由(わけ)を聞かれる
こともなく
誰もが肌合いの言葉を持つ


1088
おそらくは気づかれること
なくても
そこに小さなしみが付いている




  [短歌味体Ⅲ] ぼんやりとシリーズ


1089
Tokyouの駅に人混み
ぼんやりと
比べながら計測している


1090
おそらくは振り返ることなく
人混みを
振りきりきりと日々をつなぎゆく


1091
あらあ そんな田舎の駅があるんだね
と通り過ぎても
夢以外には反復しない


1092
むこうとこちら かれとわたし
の断層を
ぼんやりと見つめる場所の




  [短歌味体Ⅲ] ぼんやりとシリーズ・続


1093
小さい子の 転んで しまった
泣き出す 前 の
小さな すき間 の 見える


1094
やわらかな 風に 揺れている
木の葉たち
ぼんやりと肌合いで見ている


1095
話し合いの席に腰を
沈めていても
ぼんやりと中空に浮かび居る




  [短歌味体Ⅲ] ぼんやりとシリーズ・続


1096
オリンピックおりんぴっく
おりんぴく
ぴくぴく浮かれ構わぬが わたしは別に。


1097
わたしの心をかすり
もしない
ものたちの数々が葬列に見える


1098
理念は死 けれど稼働し
続ける
澱みは深く 明るすぎる風景




  [短歌味体Ⅲ] 情感シリーズ


1099
じょうかんにいわれなくても
ふるふると
駆動し始め流れを作る


1100
じょうかんにもげかんにもなくても
確かに
潜在するよう流れている


1101
じょうかんにまにあわなくても
船出は
既に終わりいつもの航路を指している




  [短歌味体Ⅲ] 情感シリーズ・続


1102
ひとひらの 分離する 一瞬
イメージは
ひらひらひらと舞い始める


1103
乾いててもにじみしみだす
涙のように
煙る情感の丘陵地




  [短歌味体Ⅲ] 情感シリーズ・続


1104
かぐや姫もポケモンGOも
バーチャルな
同じ空間に生き生きと浮上する


1105
実在はしなくても
見えるだけで
感じ流れる情感の丘陵(おか)


1106
病との分岐点よ
スイッチ
切ったら現実に帰還する




  [短歌味体Ⅲ] 情感シリーズ・続


1107
ひとつ種の花々のように
情感も
固有の色合い風にそよぎ居る


1108
悲しいこと嬉しいこと
情感の
流れ同じでも少し干上がってきたか


1109
干上がっても新たな水路
新たな
情感とともに流れている(け・は・い)




  [短歌味体Ⅲ] 情感シリーズ・続


1110
「ああ いいな」 情感の無言の
丘陵(おか)に はためく
微かな結合手が見える


1111
見返りを意識すること
のない夜空に
星々が光明滅させ合っている


1112
いっさいの操作・作為を
含まない
超純水の流れを思う





  [短歌味体Ⅲ] 情感シリーズ・続


1113
ちいさな細道を行き来
するばかりの
変わり映えのない日々 そりゃあいい


1114
細道から「元気もらったあ」と
大通りに
出ることはない ただ沈黙に流れ下る


1115
細道に咲く花々に
時には
水をやり 少し恥ずかしげに眺め居る




  [短歌味体Ⅲ] 情感シリーズ・続


1116
ひとしずく落ちただけでも
生き物は
振り向いて安堵や異和の波紋を立てる


1117
人により反応の固有値
異なって
ひとりひとり分岐して行く




  [短歌味体Ⅲ] 服シリーズ・続


1118
赤色の服を着てたら
膨らんだ
餅のように落ち着かない


1119
自己評価を上げ底して
しまってるよ
おい待てええ!膨らむ赤よ


1120
ぼくはそこにはいない 底
にのんびり
風に触れているばかりだよ




  [短歌味体Ⅲ] 情感シリーズ・続


1121
表情は言葉裏切り
突き進む
「すすむくん」と呼び寄せようにも


1122
「どうしたの?」と言われても
言うに言われぬ
日見峠朝日がまぶしい


1123
ひと言が言うに言われぬ
高森峠
くねくねと車酔いしてしまったよ




  [短歌味体Ⅲ] 関わりシリーズ


1124
関わりは見えないクモの
糸のよう
かんからかんと空き缶の蹴られゆく


1125
眼差しを向けても向け
なくても
しんしんと視線行って帰り来る


1126
肌合いをしゅるしゅると
流れゆく
通り過ぎゆくものみなすべてに




  [短歌味体Ⅲ] 関わりシリーズ・続


1127
ずんずんと降り積もるもの
雪の重み
に耐えかねた葉のようにぶるん


1128
見えなくても内にふるえる
無数の糸
風になびいてる 不安の丘陵地(おか)




  [短歌味体Ⅲ] あれは何だったかなシリーズ


1129
ああ あれは 何だったか・・・
言葉では
ない けど言葉の匂いする


1130
探査する触手は すでに
触れている
のだろうが あれは 何だったかな
 
1131
ああ あれは 名前でも概念でも
ない ないけど
かたち成す前の芽の匂いする




  [短歌味体Ⅲ] 関わりシリーズ・続


1132
肩痛く届かないから
湿布を
貼ってもらった ひんやり滲みる


1133
AIのロボット進化
遂げゆくも
日溜まりの中の二人の波紋についに届かず


1134
金メダル否定はしない
けれど主流は
(あ これおいしいね)(うん そおね)

 註.「金メダル否定はしない」を厳密に言えば、金メダルは叙勲などと同じく、わたしには関わりのない、中性的などうでもいいものということ。





  [短歌味体Ⅲ] あれは何だったかシリーズ・続


1135
風が どこからか吹いてくる
吹いている
微かに匂う記憶を引き連れ


1136
いくつもの始まりを越え
ても浮かない
顔して走行し続けている


1137
迷い迷って360年
証明の
時代が着地した「フェルマーの最終定理」(ていり)




  [短歌味体Ⅲ] 関わりシリーズ・続


1138
関わりを避ける関わり
もありありと
〈関わり〉の夢と現実が関わり合う


1139
「もう知らない」と去っていく
女の子は
関わり合いの渦の下へ潜り




  [短歌味体Ⅲ] あれは何だったかシリーズ・続


1140
言葉ならキーワードの破片
連結し
検索網の霧に浮上す


1141
数え切れない夜々を潜り
日本語の
成立!から振り返る霧中




  [短歌味体Ⅲ] あれは何だったかシリーズ・続


1142
あれあれ あれだよと伸び
ゆく霧中
触れることなく霧消す 断(ダン)


1143
やっと思い出した言葉でも
係留
しないとまた渓流から滝壺へ




  [短歌味体Ⅲ] ちょっといいですかシリーズ


1144
ちょっといいですかと言いながら
ずかずかと
わたしの通路いっぱいに迫り来る・・・


1145
傍若無人の歩きよう
通路の
端の草木をバキバキ折り来る


1146
わざとじゃないから 深深(シンシン)
奥処から
無意識のように滲み歩み来る


1148
無意識は切断された
遠い世界
からブラックホール放射し来る




  [短歌味体Ⅲ] ちょっといいですかシリーズ・続



1149
ちょっとの感じで滑り込み
一時間も
次々に言葉を連射し続ける


1150
(ちょっといいですかあ) から
沈黙の
森のファルセットが響いてくる

註.「ファルセット」は、音楽の「裏声」による表現。


1151
きみの沈黙の裏声は
確かに
日差しに映えるみどりの葉揺れ




  [短歌味体Ⅲ] 内外シリーズ


1152
外からは遊んでいるよ
と見えても
刻々と狭い道安らぐ場所は


1153
もう行き止まりとメモを残す
者には
外からはかける言葉がない


1154
課長さん死ぬくらいなら
仕事ほっぽり
出せばと外からは余裕が見える


1155
去りゆくたましいの内
なる音色
深い呼吸とともに胸に刻め




  [短歌味体Ⅲ] 夏シリーズ


1156
夏 ほっとほたあ
ほてすと!
ぐんぐんぐん白熱する気


1157
だいじょうぶか〈夏〉?
灼熱の
襲い来るのは数十億年後?




  [短歌味体Ⅲ] 夏シリーズ・続


1158
アリさんに天空から
襲い来る
災厄は見えてもわれらへの灼熱よく見えず


1159
われらの小さな夏
遙か超えて
拍動すこの大地も宇宙も




  [短歌味体Ⅲ] 秋シリーズ


1160
ちゃわんを落っことした
〈あっ〉という
すき間に〈秋〉はひんやり流るる


1161
言葉への執着
脇へ押し
秋空に〈あいえうお〉無言表出


1162
やわらかに肌を流れる
秋感じ
つつも桜散る西行のよぎる




  [短歌味体Ⅲ] 秋シリーズ・続


1163
秋の木の葉が落ちてくる
心も
秋色に染まり落ちていく沼地


1164
同じ赤でも大気も光も
ちがう
真夏から秋へ移行する赤


1165
移行する 自然も からだも
移行する
観念も移行する みな張り合わさる 秋


1166
〈秋〉と固まる以前の〈あき〉
に浸(つ)かる
チョコレート以前のチョコをなめるように




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の風景シリーズ


1167
「普遍」を目指す言葉は
ないか
たとえ無意識にでも流れ出す通路は


1168
「現実を超える文学」は
局所系から
飛び立って大河の主流へ


1169
「アフリカ的段階」 と「理論」の言葉が
取り出せなくても
われらは無意識に遙かよりそのものを生きる


1170
「詩人批評家の誕生」 生まれ育ち
成熟し
枯れ果てていく おそらく人みな


1171
ひとりの生涯の
「全体像」
ひとりの今の「全体像」 むずかしいね

全体の註.「 」の言葉は、買ってまだ読み始めてない『吉本隆明』(田中和生)の表紙の言葉より。




  [短歌味体Ⅲ] 服シリーズ・続


1172
かっちかちのゴムの張り
ズボンを
作った者は試したのか?といいたい気分


1173
ゴムが緩んだら
少しだけ
ほっとして自由の気分流る


1174
ささいなことが解け緩んだら
人生一大事
が消え失せる 秋晴れの空の下


1175
気になるとならないの村境
知らぬ間に
移行していて竜宮からの気分




  [短歌味体Ⅲ] 音の感触シリーズ


1176
くも くも もくもくもぐも
もくもくも
ぐもぐもぐもぐ もぐもぐもぐも


1177
たんたんた たたたん たんた
じんじんず
だん だだだん だんだんだだん




  [短歌味体Ⅲ] 追い詰めシリーズ


1178
砂浜の砂砂砂の
一粒の
巨岩のでこぼこに見える


1179
あなたのここそこあそこ
乾いた葉
のようにひねて元に戻らない


1180
あそびはどこにもなくて
キュウキュウと
固く閉じていく監視所の視線




  [短歌味体Ⅲ] 秋シリーズ・続


1181
うつらうつらに会い来るは
いい感じの
秋風ばかり 風の背に触れる


1182
そういえば今年の蝉時雨
あんまり 
聞かなかった 去りゆく記憶


1183
季節の飛び石を踏む
こともなく
秋は急に訪れている 朝




  [短歌味体Ⅲ] 追い詰めシリーズ・続


1184
閉ざされてそれでも足掻く
逃げ道の
背後にひんやり差している目


1185
娯楽でもつい力かかる
将棋に
詰まり獣のようにおののく




  [短歌味体Ⅲ] 追い詰めシリーズ・続


1186
追い詰める規則は神に
変身し
二者択一の審判下す


1187
追い詰まりこれあれそれの
膨大な
事由の揺らぎ沈黙に沈む




  [短歌味体Ⅲ] 秋シリーズ・続


1188
秋 いろんなものが あき
あきが あきの
大気があきに染まり色映える 秋


1189
一枚の葉にも秋がある
一枚の
落ちた心の葉にも秋があった




  [短歌味体Ⅲ] 秋シリーズ・続


1190
宇宙線のように〈秋〉に
貫かれ
ながらもいつものように呼吸している〈秋〉


1191
言葉もまた赤いリンゴ
〈秋〉色に
色付いている (あら そお? そうね)




  [短歌味体Ⅲ] なんにもないシリーズ


1192
もう行き止まりと思う
足下に
水の滲み出すことがある


1193
なんにもないもうなんにもないと
畳みかける
乾いた砂漠の砂に微風




  [短歌味体Ⅲ] なんにもないシリーズ・続


1194
閉じてしまわなければ ぽろん
風が
奇跡のように今ここに立つ


1195
見えぬ未来を当てにはしない
なんにもない
の飢餓線上に彼岸花の赤




  [短歌味体Ⅲ] なんでもないけどシリーズ・続


1196
つまらないもの下らないもの
いつかとけて
なんでもない普通になるか


1197
謙遜も尊敬もともに
過剰は
なんでもないを越境して行く


1198
つまらないものですがと一つ言葉が
波立てる
波紋の湧き下りゆく村境




  [短歌味体Ⅲ]  固有値シリーズ


1199
修復するためにか
通い詰めてた
軍艦マーチ背にすってんてんに荒れ帰る


1200
若い頃通い詰めてた
チューリップ
開くに魅せられ時を忘れる


1201
心魅(ひ)くものと道行きは
今もなお
固有の表情をしている




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