短歌味体Ⅲ-6

    558首
(2019年5月21日~2020年1月1日)

 目次


短歌味体 Ⅲ    日付
短歌味体Ⅲ 3302-3305 なんとなくシリーズ・続 2019年05月21日
短歌味体Ⅲ 3306-3308 なんとなくシリーズ・続 2019年05月22日
短歌味体Ⅲ 3309-3312 なんとなくシリーズ・続 2019年05月23日
短歌味体Ⅲ 3313-3315 なんとなくシリーズ・続 2019年05月24日
短歌味体Ⅲ 3316-3318 なんとなくシリーズ・続 2019年05月25日
短歌味体Ⅲ 3319-3321 なんとなくシリーズ・続 2019年05月26日
短歌味体Ⅲ 3322-3324 農事シリーズ・続 2019年05月27日
短歌味体Ⅲ 3325-3327 農事シリーズ・続 2019年05月28日
短歌味体Ⅲ 3328-3330 農事シリーズ・続 2019年05月29日
短歌味体Ⅲ 3331-3333 なんとなくシリーズ・続 2019年05月30日
短歌味体Ⅲ 3334-3336 なんとなくシリーズ・続 2019年05月31日
短歌味体Ⅲ 3337-3339 なんとなくシリーズ・続 2019年06月01日
短歌味体Ⅲ 3340-3342 出会いシリーズ 2019年06月02日
短歌味体Ⅲ 3343-3345 出会いシリーズ・続 2019年06月03日
短歌味体Ⅲ 3346-3348 出会いシリーズ・続 2019年06月04日
短歌味体Ⅲ 3349-3351 出会いシリーズ・続 2019年06月05日
短歌味体Ⅲ 3352-3355 出会いシリーズ・続 2019年06月06日
短歌味体Ⅲ 3356-3359 出会いシリーズ・続 2019年06月07日
短歌味体Ⅲ 3360-3363 出会いシリーズ・続 2019年06月08日
短歌味体Ⅲ 3364-3367 出会いシリーズ・続 2019年06月09日
短歌味体Ⅲ 3368-3370 出会いシリーズ・続 2019年06月10日
短歌味体Ⅲ 3371-3373 出会いシリーズ・続 2019年06月11日
短歌味体Ⅲ 3374-3376 出会いシリーズ・続 2019年06月12日
短歌味体Ⅲ 3377-3379 出会いシリーズ・続 2019年06月13日
短歌味体Ⅲ 3380-3382 出会いシリーズ・続 2019年06月14日
短歌味体Ⅲ 3383-3385 出会いシリーズ・続 2019年06月15日
短歌味体Ⅲ 3386-3388 出会いシリーズ・続 2019年06月16日
短歌味体Ⅲ 3389-3391 出会いシリーズ・続 2019年06月17日
短歌味体Ⅲ 3392-3394 出会いシリーズ・続 2019年06月18日
短歌味体Ⅲ 3395-3397 出会いシリーズ・続 2019年06月19日
短歌味体Ⅲ 3398-3399 出会いシリーズ・続 2019年06月20日
短歌味体Ⅲ 3400-3401 出会いシリーズ・続 2019年06月21日
★★
短歌味体 Ⅲ   日付
短歌味体Ⅲ 3402-3404 農事シリーズ・続 2019年07月07日
短歌味体Ⅲ 3405-3407 なんとなくシリーズ・続 2019年07月08日
短歌味体Ⅲ 3408-3410 なんとなくシリーズ・続 2019年07月09日
短歌味体Ⅲ 3411-3413 なんとなくシリーズ・続 2019年07月10日
短歌味体Ⅲ 3414-3417 なんとなくシリーズ・続 2019年07月11日
短歌味体Ⅲ 3418-3420 なんとなくシリーズ・続 2019年07月12日
短歌味体Ⅲ 3421-3423 なんとなくシリーズ・続 2019年07月13日
短歌味体Ⅲ 3424-3427 なんとなくシリーズ・続 2019年07月14日
短歌味体Ⅲ 3428-3430 なんとなくシリーズ・続 2019年07月15日
短歌味体Ⅲ 3431-3433 なんとなくシリーズ・続 2019年07月16日
短歌味体Ⅲ 3434-3436 なんとなくシリーズ・続 2019年07月17日
短歌味体Ⅲ 3437-3439 なんとなくシリーズ・続 2019年07月18日
短歌味体Ⅲ 3440-3442 なんとなくシリーズ・続 2019年07月19日
短歌味体Ⅲ 3443-3445 なんとなくシリーズ・続 2019年07月20日
短歌味体Ⅲ 3446-3448 なんとなくシリーズ・続 2019年07月21日
短歌味体Ⅲ 3449-3451 なんとなくシリーズ・続 2019年07月22日
短歌味体Ⅲ 3452-3454 時間の海シリーズ 2019年07月23日
短歌味体Ⅲ 3455-3457 時間の海シリーズ・続 2019年07月24日
短歌味体Ⅲ 3458-3460 時間の海シリーズ・続 2019年07月25日
短歌味体Ⅲ 3461-3463 時間の海シリーズ・続 2019年07月26日
短歌味体Ⅲ 3464-3467 農事シリーズ・続 2019年07月27日
短歌味体Ⅲ 3467-3469 時間の海シリーズ・続 2019年07月28日
短歌味体Ⅲ 3470-3472 時間の海シリーズ・続 2019年07月29日
短歌味体Ⅲ 3473-3475 時間の海シリーズ・続 2019年07月30日
短歌味体Ⅲ 3476-3478 時間の海シリーズ・続 2019年07月31日
短歌味体Ⅲ 3479-3481 時間の海シリーズ・続 2019年08月01日
短歌味体Ⅲ 3482-3485 時間の海シリーズ・続 2019年08月02日
短歌味体Ⅲ 3486-3488 時間の海シリーズ・続 2019年08月03日
短歌味体Ⅲ 3489-3491 時間の海シリーズ・続 2019年08月04日
短歌味体Ⅲ 3492-3495 時間の海シリーズ・続 2019年08月05日
短歌味体Ⅲ 3496-3498 時間の海シリーズ・続 2019年08月06日
短歌味体Ⅲ 3499-3501 時間の海シリーズ・続 2019年08月07日
★★
短歌味体Ⅲ 3502-3504 時間の海シリーズ・続 2019年08月08日
短歌味体Ⅲ 3505-3507 時間の海シリーズ・続 2019年08月09日
短歌味体Ⅲ 3508-3510 時間の海シリーズ・続 2019年08月10日
短歌味体Ⅲ 3511-3513 時間の海シリーズ・続 2019年08月11日
短歌味体Ⅲ 3514-3516 時間の海シリーズ・続 2019年08月12日
短歌味体Ⅲ 3517-3519 時間の海シリーズ・続 2019年08月13日
短歌味体Ⅲ 3520-3522 時間の海シリーズ・続 2019年08月14日
短歌味体Ⅲ 3523-3525 時間の海シリーズ・続 2019年08月15日
短歌味体Ⅲ 3526-3529 時間の海シリーズ・続 2019年08月16日
短歌味体Ⅲ 3530-3532 時間の海シリーズ・続 2019年08月17日
短歌味体Ⅲ 3533-3535 時間の海シリーズ・続 2019年08月18日
短歌味体Ⅲ 3536-3539 時間の海シリーズ・続 2019年08月19日
短歌味体Ⅲ 3540-3542 時間の海シリーズ・続 2019年08月20日
短歌味体Ⅲ 3543-3545 時間の海シリーズ・続 2019年08月21日
短歌味体Ⅲ 3546-3548 時間の海シリーズ・続 2019年08月22日
短歌味体Ⅲ 3549-3552 時間の海シリーズ・続 2019年08月23日
短歌味体Ⅲ 3553-3555 意味は置いといてシリーズ 2019年08月24日
短歌味体Ⅲ 3556-3558 意味は置いといてシリーズ・続 2019年08月25日
短歌味体Ⅲ 3559-3561 意味は置いといてシリーズ・続 2019年08月26日
短歌味体Ⅲ 3562-3564 意味は置いといてシリーズ・続 2019年08月27日
短歌味体Ⅲ 3565-3567 意味は置いといてシリーズ・続 2019年08月28日
短歌味体Ⅲ 3568-3570 意味は置いといてシリーズ・続 2019年08月29日
短歌味体Ⅲ 3571-3573 意味は置いといてシリーズ・続 2019年08月30日
短歌味体Ⅲ 3574-3577 意味は置いといてシリーズ・続 2019年08月31日
短歌味体Ⅲ 3578-3581 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月01日
短歌味体Ⅲ 3582-3584 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月02日
短歌味体Ⅲ 3585-3587 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月03日
短歌味体Ⅲ 3588-3590 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月04日
短歌味体Ⅲ 3591-3593 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月05日
短歌味体Ⅲ 3594-3596 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月06日
短歌味体Ⅲ 3597-3599 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月07日
短歌味体Ⅲ 3600-3601 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月08日
★★
短歌味体Ⅲ 3602-3604 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月09日
短歌味体Ⅲ 3605-3608 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月10日
短歌味体Ⅲ 3609-3612 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月11日
短歌味体Ⅲ 3613-3615 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月12日
短歌味体Ⅲ 3616-3618 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月13日
短歌味体Ⅲ 3619-3624 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月14日
短歌味体Ⅲ 3625-3627 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月15日
短歌味体Ⅲ 3628-3630 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月16日
短歌味体Ⅲ 3631-3633 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月17日
短歌味体Ⅲ 3634-3637 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月18日
短歌味体Ⅲ 3638-3640 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月19日
短歌味体Ⅲ 3641-3644 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月20日
短歌味体Ⅲ 3645-3647 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月21日
短歌味体Ⅲ 3648-3650 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月22日
短歌味体Ⅲ 3651-3653 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月23日
短歌味体Ⅲ 3654-3657 吉本隆明シリーズ・続 2019年10月14日
短歌味体Ⅲ 3658-3661 即興詩シリーズ・続 2019年10月23日
短歌味体Ⅲ 3662-3664 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月02日
短歌味体Ⅲ 3665-3667 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月03日
短歌味体Ⅲ 3668-3670 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月04日
短歌味体Ⅲ 3671-3673 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月05日
短歌味体Ⅲ 3674-3677 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月06日
短歌味体Ⅲ 3678-3680 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月07日
短歌味体Ⅲ 3681-3683 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月08日
短歌味体Ⅲ 3684-3687 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月09日
短歌味体Ⅲ 3688-3690 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月10日
短歌味体Ⅲ 3691-3693 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月11日
短歌味体Ⅲ 3694-3697 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月12日
短歌味体Ⅲ 3698-3701 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月13日
★★
短歌味体Ⅲ 3702-3704 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月14日
短歌味体Ⅲ 3705-3707 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月15日
短歌味体Ⅲ 3708-3710 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月16日
短歌味体Ⅲ 3711-3714 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月17日
短歌味体Ⅲ 3715-3717 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月18日
短歌味体Ⅲ 3718-3720 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月19日
短歌味体Ⅲ 3721-3724 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月20日
短歌味体Ⅲ 3725-3727 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月21日
短歌味体Ⅲ 3728-3730 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月22日
短歌味体Ⅲ 3731-3733 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月23日
短歌味体Ⅲ 3734-3736 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月24日
短歌味体Ⅲ 3737-3739 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月25日
短歌味体Ⅲ 3740-3742 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月26日
短歌味体Ⅲ 3743-3745 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月27日
短歌味体Ⅲ 3746-3749 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月28日
短歌味体Ⅲ 3750-3752 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月29日
短歌味体Ⅲ 3753-3755 意味は置いといてシリーズ・続 2019年11月30日
短歌味体Ⅲ 3756-3759 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月01日
短歌味体Ⅲ 3760-3762 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月02日
短歌味体Ⅲ 3763-3765 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月03日
短歌味体Ⅲ 3766-3768 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月04日
短歌味体Ⅲ 3769-3771 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月05日
短歌味体Ⅲ 3772-3774 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月06日
短歌味体Ⅲ 3775-3778 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月07日
短歌味体Ⅲ 3779-3781 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月08日
短歌味体Ⅲ 3782-3784 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月09日
短歌味体Ⅲ 3785-3787 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月10日
短歌味体Ⅲ 3788-3790 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月11日
短歌味体Ⅲ 3791-3794 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月12日
短歌味体Ⅲ 3795-3798 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月13日
短歌味体Ⅲ 3799-3801 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月14日
 ★★  
短歌味体Ⅲ 3802-3804 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月15日
短歌味体Ⅲ 3805-3807 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月16日
短歌味体Ⅲ 3808-3811 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月17日
短歌味体Ⅲ 3812-3814 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月18日
短歌味体Ⅲ 3815-3817 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月19日
短歌味体Ⅲ 3818-3820 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月20日
短歌味体Ⅲ 3821-3823 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月21日
短歌味体Ⅲ 3824-3827 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月22日
短歌味体Ⅲ 3828-3830 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月23日
短歌味体Ⅲ 3831-3833 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月24日
短歌味体Ⅲ 3834-3836 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月25日
短歌味体Ⅲ 3837-3839 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月26日
短歌味体Ⅲ 3840-3842 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月27日
短歌味体Ⅲ 3843-3845 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月28日
短歌味体Ⅲ 3846-3849 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月29日
短歌味体Ⅲ 3850-3852 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月30日
短歌味体Ⅲ 3853-3856 意味は置いといてシリーズ・続 2019年12月31日
短歌味体Ⅲ 3857-3859 新年シリーズ 2020年01月01日







 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3302
検査の日、決められた通路
を淡々と
通り抜けて 病院を出る


3303
バシィーン 外はいい天気
いつもより
少し軽い心歩き出す


3304
もしも異変が起こってたら
どういう
屈折した迷路に入り込んだものか


3305
仮定法の流れに乗っても
仕方がない
それはその時 今はこの流れに




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3306
仮定法は後悔の小舟か
・・・・・
空白を埋める遅すぎた言葉


3307
どんな家庭にも下りてくる
仮定・対処・構築の
誘惑の鉄の糸糸糸


3308
鉄の過程を踏みしめて
仮定の
舟を漕ぎ出すなんて 知らねえよ




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3309
仮定法は死の匂い
するすると
すべり落ちる空白の森


3310
花も鳥も作り物の
ずんずんと
斜面すべる感じがしないなあ


3311
なんとなく仮定の韻は
他人事
身と心が離れていくよ


3312
それでも仮定の丘陵(おか)を
振り返りながら
しがみついている必死の手




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3313
なんとなく紙ヒコーキ
飛ばしてみる
思ったよりも飛んでゆく 大空


3314
飛ばしたのは空気感じて
離した手
の瞬間のドラマ 消失


3315
消え去ってもロウソクの煙
ゆらゆら
よりも頼りなく記憶の木に留まる 青




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3316
のびるのびる触手が
のびてゆく
そら、空、空、紙ヒコーキへ


3317
距離が揺ら揺らいでる
「道の長手を 繰り畳ね」
淡い青の空の道よ


3318
溶けた青のわたし
ゆっくりと
紙ヒコーキにまたがる




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3319
気負いなくても点灯する
紙ヒコーキ
に乗り込んだ心の座席


3320
昨日の空を夜間飛行
ぼうっと
点った座席 夜空を漂う


3321
絵の具を取り出し塗る
必要はない
気分のままにぱあっと広がりゆく




 [短歌味体Ⅲ] 農事シリーズ・続


3322
ソラマメは種一つから
花開き
無数のさやを実らせる ふ・し・ぎ


3323
咲いても咲いても実らない
不毛の
大地の物語を通ってきたのか


3324
ヨハネの比喩の遙か彼方
一粒の麦
自身は受難を語らない




 [短歌味体Ⅲ] 農事シリーズ・続


3325
鳴かないネコはスリスリして
空腹を
伝えようとする 気・づ・き


3326
伝えるということのない?
ソラマメは
静かに風に揺れている


3327
それでも見つめるわたし
に湧き上がる
過剰の剰余 気づきということ




 [短歌味体Ⅲ] 農事シリーズ・続


3328
ソラマメの鞘(さや)をむいている
ひと鞘に
3個を最頻値に2つ、1つ、たまに4つがある


3329
いずれの実のなり方も
起源・変位・構成に関わって
ふしぎだねと言うほかない


3330
この世のありとあらゆるもの
潜り抜け来た
時間の作品として朝露に濡れている




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3331
あどちゃんのお絵描きみたい
〈あ〉〈お〉〈い〉〈そ〉〈ら〉
と青空がクリアーに立ち上がる

註.昔テレビで観た水森亜土。絵描き歌を歌いながらお絵描きしていた。


3332
内情はそんなにリニアー
でもないな
〈あ〉〈い〉をつかみそこない青空へ


3333
ぐるぐると〈あ〉を塗っていると
なんとなく
青空の方へ心ひかれてゆく




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3334
一枚の木の葉が落ちて
ゆくよと
心傾き追いかける 今は


3335
なんとなく気がかりがある
からか 空
洞をひらひら落ちてゆく 夕暮れ


3336
初夏なのになんとなく鈍く
陰り折れ
込んでくる葉のみどり シンシン




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3337
なんとなく蹴ってしまった
石ころが
ぶつかり跳(は)ねぶつかる 石ころは


3338
〈ある〉だけでただ〈いる〉だけで
波風立ち
海も割れる 行き交うものがある


3339
言葉のない絵本アニメにも
静かに
言葉服を着て追いかけてゆくよ




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ


3340
生の魚との出会いの
初めには
誰もが色んな物語の中に浸かる


3341
魚をさばく さばきの道は
枝分かれ
さばかれた言葉たちが横たわる


3342
その通路(みち)を通ったら もう
戻れない
刺身の言葉で飾られるぞ




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3343
くり返し行き交っていると
出会いの
はじまりは消え見慣れた椅子がある


3344
重力の今ではあるけど
時には
出会いのはじまりや終わりが降る


3345
変わらない日々が続く
顔をして
我も彼も風景も今を生きる




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3346
叫ぶわけではないけれど
出会え!出会え!
と聞こえてくる コマーシャル時代


3347
DEAERUDEAIDEAE
誘いかける
!が耳に響いている 遮断


3348
コマーシャル言葉は
なんとなく
わかっちゃうんだよなあ 嘘嘘




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3349
いろんなものに出会いすぎて
ギスギスと
もうね 出会わなくてもいいんだよ


3350
言葉でも出会いすぎたよなあ
煩悩の
残骸とは言わない 無言


3351
出会いがプラスであれ
マイナスであれ
中道(なかみち)を人はぞろぞろ渡ってゆく




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3252
それでも生きてるかぎり
自他に
出会いくり返すだろう 黙々野


3353
言葉の舟に乗り込むとき
どこかから
見られている気配がある


3354
待ち合わせて出会うとは
限らない
靄に包まれたいくつもの層を抜けていく


3355
手ぶらの現在から
ぼくは影
静かにぶつかり来るものに出会う




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3356
(雨が降った 重たい 雨が
降り続いた
雨乞いしないのに雨中の人となる)


3357
〈あなたがきちんとさんに
なってくれれば
雨は上がり日が差したのに〉


3358
(おれの言葉はねじれに
ねじれ
肌荒れ果てて 雨中)


3359
〈待ってぇ 待ってよお
ほら雨
止んでいるでしょう?〉




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3360
(こんなに重たい雨続きの
世界なら
生まれない方が良かったよ)


3361
〈何を言うの光太 わたしたちは
光りあれと
あなたの誕生を祝ったのに〉


3362
(そんなことは知らない この雨
雨続きの
今この椅子 どうしてくれる)


3363
〈(「あんたなんて産まなきゃよかった」
って言う
てしまいたい 世界の終末ガラガラ)〉




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3364
((言葉は花開かず
根腐れ
している しているぞお))


3365
〈(大丈夫 まだ引き返せるわ
わ わああ
ことばが 言葉が圏外 暗転異国)〉


3366
((俺のせいなんて言わせない
それでも
この空虚 どこまで行く 行くのか))


3367
〈(進む止まる引き返す
いずれも
不毛の時 どうしたらいいの)〉




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3368
向こうで言葉がないている
背景深く
泣いている ような ふ 触れることはできない


3369
言葉の肌荒れ果てても
がむしゃらに
どんどん遠ざかって行く 触れることはできない


3370
沈黙の中で量るしか
仕方がない
言葉の姿形がある 一点の黒




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3371
誰でもが家や地域を
潜り抜け
古い下着でいま・ここを歩いている


3372
そんな重い関係ないと
言っても
誰もがその物語の渦中から上がってきた


3373
家の裏手に名は知らない
夏草が
触れられることなく赤々と咲いている




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3374
子は大きくなって家族の
物語の
渦中に飛び込み歩き出す


3375
時には背中の親を
背にして
明日を思い悩む日もある


3376
ここは似てるかそこは違う
だろうな
つぶやきながら人の道を渡ってゆく




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3377
出会いたいのに出会えない
ぼんやりと
ただ通り過ぎるのを見る


3378
出会いたいものがわからない
けれど青
やわらかく波立っている見える


3379
化粧の出会い素肌の
出会い
いずれも人の出会い出会う




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3380
出会いたくないから避けて
行く道も
必ず湧くにやにやストーカー


3381
未来の芽のひとつ花
花びらが
ひとつひとつ散っていく


3382
追い込まれた花のない花は
どうやって
未来の芽を紡ぎ出すのか




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3383
くたびれて歩いていても
日は差す
どこまでも日が差してくるよ


3384
日の微子が肌に染み入り
流れてゆく
ゆくゆくは小さな灯りが点る


3385
泥の眠りに倒れる
直前でも
日差す灯りが点っているよ ほら




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3386
飛んでくる日の微子たちに
肌の丘陵(おか)
微細にふるえ波打っている


3387
無数の微光が上がり
あったかい
灯りが点る肌の丘陵(おか)


3388
肌の丘陵(おか)の凝り固まった
層深く
ほんのりと赤みが差している




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3389
またひとつ急に死が倒れ
こまごまと
死の儀礼の圏内を行き来する


3390
ひとつの死は時間の中の
なつかしい
顔のイメージ流かき混ぜ宇宙(そら)へ


3391
倒れ来るいくつもの死を
くぐり抜け
黙々とひとの道をゆく

全体の註.親戚の人の葬式に出て。




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3392
ああ こんな所に
そんな花
咲いているなんてと通り過ぎる


3393
出会いの舞台の余韻
歩いている
足下に下っていくよ


3394
夕方の見慣れた景色
少しだけ
新しい色やリズムに揺れている




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3395
日々に擦り切れた靴底
足下から
虹色のてんとう虫が飛び立つ


3396
なんとなくぼくの圏内
を告げる
虹の色が漂っている


3397
小さな虹色でも
大きな虹
へ伸びてのびてつながる日もある




 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3398
(ここで会えてよかったなあ
あなたは
素っ気なく通り過ぎてゆく)


3399
(確かに通り過ぎたけど
それは違う
と思うけど色には出ないか)



 [短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続


3400
ザクザクと歩いて行けば
変貌する
広がる道 狭まる道


3401
振り返っても仕方がない
過ぎ去った
足跡ばかりが目に入る




 [短歌味体Ⅲ] 農事シリーズ・続


3402
菜の花の種をもらい植え
四、五年
食べつつ黄色い顔を見る


3403
まだ寒い三月の黄花
群がる
蜜蜂たちはどこにどう居たものか


3404
この花がないなら蜜蜂は
砂糖のない
時代をおいしく生きた人のように生きるのか




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3405
〈なんとなく〉が難しい
空気の
許さぬ圧力を呼吸は感じる


3406
流れる風に溶けている
無職透明の
作為・意志の固い壁


3407
なんとなくとからだ解く時
風は
節々に針刺してくる




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3408
なんとなくの峠から あら
落としてしまった
(からんころんからん) いい音。


3409
通りで買い物袋
ぶちまけて
しまったような眼差し 来るよ。


3410
内側ではそうでもないんだなあ
なんとなく
晴れた空を渡って行くよ ほら。




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3411
おいしいからの峠には
何気なく
「健康」「ダイエット」を携えて奴はやってくる


3412
強制はコマーシャルの
自然さで
ひとつの物語に散布されている


3413
〈なんとなく〉のぼくは ほら
コマーシャルの
遙か圏外を気ままに生きてるぜ




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3414
なんとなくの小道に入る
木陰があり
涼しい風が吹いてくる


3415
追いすがる幻の隣
窮屈な
服の裏通りが確かにあり


3416
自分ちでもなく他所の家(うち)でもなく
誰でも
気楽に出入りできる裏通りの


3417
共有するには あまりに
はかない綿アメの
ひとりひとりに不知火の立つ




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3418
小さな火はあたたかい
かざす手に
なじみのイメージが湧き出す


3419
火を見れば誰もが集う
なんとなく
火あかあかと闇に燃えている


3420
あ、それ以上近づけば
あちちの
火領域に入るよ 入るぞよ




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3421
ぼんやりとゆっくり歩く
(歩いている)
と気づきに入ることもなく歩く


3422
((橋 手すり 川の草々
あそこに家々
車が通り 過ぎてゆく))


3423
もう一度((手すり 川の水
小さい流れ))
心も流れ下ってゆく




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3424
費やされたたくさんの文字たち
たどりながら 物語の
見晴らし広がる通路をゆく


3425
ぱあっと濃縮された
靄(もや)が寄せる
他人の家の匂いがする


3426
いけられた花々に
なんとなく
触れてみた 冷やっ


3427
三角や丸の窓があり
趣味が違うなあ
と思いながら日差しを浴びる




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3428
なんとなく家族という
言葉を
指でなぞってみる 〈かぞく〉


3429
ひとつひとつ味が違う
家族でも
同じ文脈で同じ椅子に座る


3430
言葉に浮上するもの
しないもの
溶け合った靄の通路をゆく




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3431
時にはちちははや
ばあちゃん
を中空に探している


3432
顔を知らない祖父、さらに
さかのぼって
流れはうまく見えないけど


3433
おそらくは今と似たような
ことくり返し
くり返し流れてきたのだ 今は。




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3434
浅い川底から
拾い上げた
小石ヌルヌル してないし これいいな


3435
形もほら感じいいよ
いいなあ
小さな手で触っていた


3436
ものすごい時間の内を
行き来して
今その感触に触れる




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3437
(あっ 蝶がひらひらひら
飛んでいる)
と視線の手前で思うことがある


3438
(ひらひらひら)の中では
無意識が
呼吸している気配もある


3439
こことそこ 距離の時空の
ささやきに
つかの間耳は浸かっている




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3440
〈効率と成果〉の波を
かぶる時
(なんとなく)が椅子から立ち上がる


3441
それでもなんとなく
言い出せない
言葉 (そんなことはどうでもいいさ)


3442
ひとつの言葉が描く
離脱線
の夢の航跡が中空に残っている




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3443
花を見て花占いの
匂い出し
手を伸ばしている時もあるさ


3444
〈生きている〉が浸かっている
大気に気づかず
歩いている 歩いているなあ


3445
ハッピーなら気づかなくても
いいよ いいさ
大気の下いい感じで歩いている




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3446
〈なん〉〈と〉〈なく〉心ひび割れて
砂浜に
乾いた風が吹いているばかり


3447
砂地から〈ななとくん〉
さっぱりと
立ち上がりもする夏の夕暮れ


3448
なんとなくの丘を下って来た
ぼくには
きみはまだ丘の上の人に見えない




 [短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続


3449
時間まで間があるから
からんころころ
転がり下る空き缶を目は追う


3450
時間の枝葉に引き止められ
完全に
抜け出て青空に出ることはない


3451
〈地上を旅する者〉は
もまれもまれて
神の汚(よご)れた足裏をゆく

註.大原富枝に『地上を旅する者』という小説がある。それを少しイメージして。




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ


3452
青い あおいなあ
じっと
眺めているとあおが滲みてくる


3453
青とあお 微妙に違う
理屈を言えない
子どものように立ち尽くす


3454
言葉が浮かぶ時間の層
窓開いて
同じ言葉でも色合いが違う




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3455
見ていると風景には
ぼんやりと
入口があり滑り込む


3456
あんまりにぎやかではない
ゆらゆらと
静物画が動き出すよ


3457
小さな渦も巻いていて
なんだか
ひかれる気持ちも湧いてくる




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3458
身の丈身の回りでも
気づかずに
違う時空を行き来している一日だったよ


3459
時にはそのシームレスが
ほころび
時空の裂け目に暗雲が立つ


3460
いくつもの暗雲を潜り抜け
静かな
眼差しをふと向けているのさ




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3461
着慣れたズボンが昔のまま
やって来ても
どこかしっくりしない日も来る


3462
きっぱりと「太ったんだよ」
と言われても
言うに言われぬ物語の時間がある


3463
言葉にはまだ青すぎて
収穫が
できない朝がある 時間の遍歴




 [短歌味体Ⅲ] 農事シリーズ・続


3464
さあっと晴れ渡った午後
農作業の一休み
今日は仕事休みだからトンボもゆっくり飛ぶ


3465
晴れてるね 汗も出るけど
一休みの
飲み物が いつもよりゆったり飲んでいる


3466
月並みの言葉の手前で
(ああ そら)
とつぶやいている たぶん誰もがね




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3467
澱んでいる時間の流れ
いくら叫んでも
どんより感は吹き飛ばない


3468
政治の流れもおんなじさ
つまらない
天井桟敷からそっぽ向く


3469
眺めている風景に落ちる
青の一滴
待ってたよと膝を乗り出すもある




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3470
休みだから羽を伸ばす
と流れ出す
ようにはできていない 入り乱れる時間


3471
他の時間を呼び寄せてしまう
のはぼく
しかいないようで 誰だ〈ぼく〉?


3472
ぼくかきみか呼び出してしまった
休日の
召喚魔法 魔王動き出す




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3473
ランダムに湧き出る光景も
なんだか
ぼくの色合いに染まっているよ


3474
あの日その日巡り巡る
ぼくはただ
今ここの時間旅行


3475
シームレスな日々のすき間から
青白い
月もうさぎものぞいている




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3476
静かなシームレスの
接続にも 微
熱光音にぎやかに跳ねる


3477
見える聞こえるものだけの
世界の中
別世界が稼働中


3478
ちんもくの子どもらの一団
小さな
銅鑼(どら)の音響かせてゆく




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3479
〈世界は〉とイメージする
瞬間
世界は立ち上がって来る


3480
〈世界は〉と語り出すと
凝集し
編制して世界の表情をする


3481
ぼくのイメージ以前には
世界よ
ふだん着で足伸ばしているね




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3482
世界とぼくの間には
簡単には
飛び越せない川が流れている


3483
霧が出て見通せない
時も多い
世界よ 焦れったい世界よ


3484
世界時計とぼくの固有時計
進み方や
時を刻むリズムがちがうなあ


3485
いずれにしてもぼくの時間は
大きい
世界の時に 微 刻まれていく




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続



3486
お経がわけもわからず
流れる中
底流に手を合わせる沈黙の


3487
おそらくはアノクタラサンボダイ
とは少し違う
じかんの道を歩いている 今


3488
葬式の線香に
匂い立つ
折り合わされた二色の時間




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3489
ぼくのじかんが流れている
突然の
侵入する電話営業時間


3490
(いやだなあ)という気分の
流れから
立ち上がり寄せる波に向かう


3491
あいまいに漂う時間
隠れた真意
僕は儀礼の武者を振る舞いきる




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3492
きみの財布に入ってる
交換不能の
小さな時間 なんか不満でもあるの?


3493
空虚の通路を通って
(べあべあべあべ)
接続されてる 変身!ベア獣!


3494
海に浮上しウチテシヤマン
太古からの
哀しい〈私〉の接続法


3495
ハリボテを担(かつ)いでるね
ほらほら
きみの靴ひもほどけてるよ




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3496
街角で待ち合わせ
出会いの時
流れふれあう二色の時間


3497
出会い初めの鮮やかな発色
からころから
落ち着いた涼風色に座る


3498
「あ それいいね」「うん」交わされる
飛び飛びの
飛び石にも時間の涼風の流れる




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3499
朝礼の校長言葉の
下々に
伏せて見えるカラフル言葉の群れ


3500
上からは微子にしか見えない
大声の
強力粉空しく空中浮遊してる


3501
視線向け静かにしてても
見てはいない
聞いてもいない並行世界の色微子たち




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3502
あんまりに近くにいた
ばっかりに
言葉のつばきが飛んでくる


3503
つばきのかかった者たちは
窮屈な
モビルスーツで手足同時に進んでいく


3504
居眠りの戦法使い
知らぬ間に
右へ左へよけているぜ




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3505
言葉にはその地の匂い
滲みていて
「きれかね」と同時に匂い立つ


3506
「きれいですね」と言い換えても
「きれかね」
が裏地に縫い込まれている


3507
おんなじ料理でも
びみょうに
違う 言葉もリズムもそうさ




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3508
空気のように意識しない
青い時の中
たくさんの微小時間が生きて歩いて呼吸している


3509
夜でなくてもドームの上から
星光る
時間の無数の糸が差している


3510
ドーム状の青い時が
無ければ
「自己責任」の微小時間ばかりか




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3511
柔らかな時が流れる
肌合いの
言葉以前に浸かっている


3512
意味・無意味を超えた岸辺
差し入れた
手に時間の流れさらさら 青匂う


3513
とどまることのない世界流
とりあえず
死にセットされた永久機関




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3514
砂遊びしてる子の内に
流れる
時間は 流流流流流流(ルルルルルル)


3515
獲物待つ太古の人の
手の砂が
ルルルルルルと流れ下る


3516
世界には意味や目的に固まる
以前の
手を流れる時間 ぼわっとある




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3517
言葉のすき間にも ほら
耳を澄ますと
じかんが飛び跳ねてるよ


3518
し・ろ・い・・く・も・・の
な・が・・・・れ・・て
い・く・・・よ ああ・・・風


3519
それとなく見つめる
(ああ・・そう
そ・う・な・ん・だ そうだった・の・か)




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3520
大声やボールド体は
時間が
ケンケンガクガク凍り付いている


3521
飛び散る氷のかけらは
子どもらの
砂場や台所蹴散らしていく おいおい!


3522
時には氷のかけらの
時間圧!
ケトバゼ蹴飛ばしたくなるぜ

註.「ケトバゼ」は、万葉集 巻20 4346 防人歌の「言葉(けとば)ぜ」より。
 父母が頭掻き撫で幸くあれて言ひし言葉ぜ忘れかねつる




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3523
あたたかい出来上がった
一皿にも
たくさんの言葉や沈黙が


3524
にんじんには青い言葉が
ピーマンには
赤い言葉が溶けているよ


3525
炒められ混ぜ合わされた
時間たち
今ほっとして湯気が立っている




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3526
文字たちがやかまし過ぎて
うんざりだな
ともじもじと文字の輪で言う


3527
文字の木のてっぺんまで
上って
上から目線を発射し続ける奴もいる


3528
文字というパワードスーツ
を身にまとい
世界中を意のままにと思っていないか?


3529
文字に仕込まれ育った
時間
文字の木はただ静かに立つ




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3530
アリさんみたいな文字の
行列
ゆったり隅っこを歩いている


3531
内を流れる光りの
つぶつぶが
微笑む明かりが見えないか


3532
真ん中走る大文字が
隅っこまで
制圧しようと煽(あお)り運転する




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3533
なんにも無いと思えても
何かある
どこかからぶくぶく湧いてくる


3534
その人の死とともにおそらく
時間は
消滅する ぶくぶくは無く


3535
生きてるならぶくぶくがある
死んだように
生きてても あるさ あるよね ほら




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3536
おそらくは死んでしまったら
土水岩木
に溶け込んで人間界をたつ


3537
時空という考えもない
言葉の届かない
ただただ無音の砂嵐画像 死か


3538
死の内に命は入れない
ただイメージ流
がぐるぐる死の肌をなでる


3539
死は、人の過去形のイメージ流
のぽおっと
人間界の人の内を流れる




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3540
どんよりした内の空や
がらんどう
の心道(こころみち)にも時間が流れている


3541
ふっと見上げる空がない
人にも
いつまでも待つ空の青い時間


3542
よそ行きの修飾の
峠の向こう
ありふれた時間の鼓動が響いて来る




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3543
直球の言葉はひとり
沈黙の
時間の海にずしりと刺さるばかり


3544
水面の上には誰も
出られない
ただぶくぶくと 〈関係の絶対性〉


3545
同じ空の下生きてきた
時間たち
カラフルに屈折する交叉する衝突する




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3546
目覚めるとここは球面
の中だ
とは思えないな シームレス時間


3547
見つめていると天球に
星々が
流れ星も落ちて来る


3548
真っ暗な天球から
ずんずんずずん
時折鈍い響きがくるような




 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3549
いろんな大きさの時間
の泡々
シャボン玉のように流れる


3550
泡の音階を踏みゆくと
ぱちぱちぱちん
割れて砕けて虹色時間


3551
時間のしずく掬ってみる
古い古い
楠の木の枝折った匂いする


3552
大きな木の根の時間
泡立って
ぼくの天球を彩っている




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ


3553
裸のまま意味は置いといて
言葉の海へ
ばしゃばしゃ入ってゆく


3554
衣装に慣れたからだは
メロスのように
ひとり恥じらう言葉の海辺


3555
海歩く足が重いな
と足を見る
無数の意味の藻がからみついてる




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3556
日に映える朝のすろっとん
すりっと
するりすりる朝の空気の


3557
日に照らされた海面を
すべってゆく
トゥントゥントゥララトゥララ


3558
潮の匂い微かに滲みている
あの海の
像を引き連れ立ち上るトゥララ




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3559
おばさんの頬が温(ぬる)む
向こうは
意味の峠ぞろぞろ人行き交う


3560
いいから持って行かんね
おばさんの
微笑みは意味を置いといて来る


3561
こうして少年のぼくが
記憶の
装いでほら今生き返る




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3562
ある晴れた日少年のぼくは
意味もなく
草花に手触れながら歩いた


3563
重たいつながりの意味
をはがしたり
抗ったり以前の一歩がある


3564
信じてもらえないかも
しれないけど
〈意味〉に手触れずにここまで来たよ




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3565
「意味五万円で売ります」
表通り
は意味売りで混雑してる


3566
いみもなくとかおもわずとか
厳しく
検閲される意味の関所


3567
意味も無意味も過ぎ下った
谷地に
こじんまりと意味は置いといてが咲く




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3568
SNSの被膜に隠れて
固い意味を
ちぎっては投げちぎっては投げつける


3569
ビョーキだよと投げつけたい
意味を飲み込み
荒れた心のSNS大地にぼくはいる


3570
意味ならば避けようもない
意味アリ地獄
沈黙で耐えるほかない 関係の絶対性




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3571
玄関に立つぼくは
手短に
意味を告げて靴を脱ぎ上がる


3572
意味は置いといて話す
流れから
意味の座布団は尻に敷く


3573
尻に敷かれた意味たちは
出番のない
演者たち暇を持て余す




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3574
どこもかしこも意味意味意味の
コマーシャル
ルンルン意味通りを行く人々


3575
(階段を降りていけば
違うのよ)
意味通りからのささやきもする


3576
何度も消しては書く
ほんとうの
意味を求めて三千里 (クスッ)


3577
とりあえず汗に濡れたシャツ
の水洗い
絞っても意味の汚れが落ちないな



 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3578
母親は意味の匂いを
込めて子に
「おかあさん」とか「ママ」を催促する


3579
今ではもう「かあちゃん」は
途絶えて
しまったか 意味の匂いの変遷


3580
意味の匂い気づかずに
子は心地よく
「たーたん」とか「まんま」とかくり返す


3581
小さい子は意味は置いといて
「おかあさん」
とか「ママ」とかくり返しくり返す




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3582
子どもを抜け出す頃は
流れから
「おふくろ」「おやじ」と呼び始める


3583
あるいは「お」を取って
「かあさん」
と呼び方にお年頃がにじむ


3584
気づかれない言葉たちにも
時とともに
微妙な変位が訪れる




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3585
ふれる 肌ふれる
ふれ合う
波間からさざ波の立つ


3586
どんな波も生きる
エロス
の舟とともに来る


3587
あ 月がきれいね そうだね
二人で
ゴミ出しに行く夜の道々




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3588
晴れた空の下の木々の
葉揺れが
不吉な不安に揺れている


3589
そんなまひる間時間は
意味ありげに
刻まれていく 葉は揺れている


3590
大きな意味の流れに沿って
たくさんの
アリたちが小意味を運んでいる




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3591
ここはもう 木の葉揺れ
不安が散る
こころの意味も無く場に降り積もる


3592
うずくまる負の意味は
どうしたら
風になびく意味の椅子に座るか


3593
くねくねと七曲がりの
先には 静かな
意味場があるの かもしれない…




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3594
揺れる葉の中に意味もなく
滑り込む
うすみどりの日の差す気配 苦しくはない


3595
みどりの流れに浸かり
流れていく
ゆくゆくは木の心臓に至るか 少し高ぶる


3596
赤味を帯びてくる気配
流れから
やわらかな内風の匂う ただ無心に肌さらす




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3597
通り過ぎる道々の
草花を取り
もてあそぶ蜜蜂の少年


3598
無心に薄くうすーく
なっていっても
心の在所を指差す無意識の意味


3599
振り返る真昼間に
真っ白な
時間を針は指している




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3600
まだ言葉のない小さい子は
無ではない
なにか流れて いる ような…


3601
蠢くカエルの卵たちの
言葉以前
言葉からはよく見えないなあ




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3602
夏なのに雨続きの
毎日に
暑くなくていいけど?を付す


3603
地球の大きな時間の
サイクルに
?の触手が伸びてゆく


3604
「温暖化」の意味は置いといて
地球の
大きな身震う周期に思いを馳せる




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3605
「じゃんけんぽん」から「ぽん」だけが
転がり出る
出会い頭に「びっくりぽん」


3606
ぽんぽんとゆったり進む
小船が
過去の白い煙から出現する


3607
ぽんぽん痛いよおと
通り過ぎる
小さい子が足摺(あしず)りしている


3608
(もうすぐか?中はどんなかな?)
ポン菓子の
熱いひみつを知りたくて ぽん!




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3609
えんぴつでノートにぐるぐる
しているよ
午後二時の教室の中


3610
小さく切り取られた場所で
誰もが
自分の顔を出してる教室


3611
サーチライトが巡ってくると
一瞬
もぐらのようにキョトンとしてみせる


3612
先生の意味を求める
まなざしに
ぐぐぐ、ぐいっと引かれそうになる




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3613
ようちえん行ったことない
けど思うに
意味先生に少しカクカク歩く


3614
ようちえんに行かないと
世界の終わり
のずっと手前の駅にひとり立つ


3615
ようちえんがあたりまえになり
自然な
意味しばられの子どもたち




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3616
意味虫が声の強弱に
煽(あお)られて
人の顔をぞろぞろ這(は)っていく


3617
人の顔肌は意味虫を
弾いたり
口に入れたり忙しい


3618
死角では意味意味無意味
押し合い
へし合い座席取りバトルがある




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3619
「右でも左でもない」「普通の」「日本人です」
「親米リベラルです。反日は嫌いです。安倍首相断固支持!」
「世間から見ればやや右寄りの浪人」「祖国日本を憂いる極普通の日本人です」
 (う)


3620
「吾唯足知」「ホワイトプロパガンダ漫画家」
「原発あってこその福島」「日本が好き 保守」
「もへもへ 」「リベラルになりました」「『日本を取り戻す』戦いをする」
 (ぐ)


3621
「日本人でよかった」「日本が大好きな愛国少女です」
「プラモこつこつ作ってます 立ち位置はリベラル」
「数学と地質学と論理と日本歴史と京都とズージャと」
 (が)


3622
「Journalist / Editor」「2作目カフカ『変身』」
「穏健な保守派」「普通の主婦です」
「放射線やニセ科学の本を出してます」「祖国は日本、故郷は沖縄、日本はひとつ!」
 (ぐ)


3623
SNS意味特殊界をめぐったらめちゃ濃意味
濃意味の飛沫かぶって
くたびれてしまった しまったしまった


3624
脳の神経網が走る
走るうー
SNSの幻想面の濃意味くん、ちゃんとごはん食べてるかい?




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3625
ミーニング、ミーニン(グ)
ミーニ(ング)……
意味山脈のどこで意味が途絶えるか


3626
ぱな、ふぁな、はな、色んなはなを
包み込み
ぱっと手品の「花」が開く


3627
山脈の尾根を向こうとこちらから
上って来る
ワラー、うおたー、ワラー、わら




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3628
読経の流れから出る
とたんに
忙しく動き回っているアリたち見える


3629
元々の意味たちは死に
溶けてしまい
荘厳な蟻たち読経を黒々と流れていく


3630
(そんなことアリか)の疑問符を
押し倒し
漢字音音音流れていく




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3631
「教育経済学」という言葉に
出会った。
意味は欲望のままに接続・増殖する


3632
教育交通論・教育英語民間試験学
教育栄養学
教育宇宙論・狂育心理学 意味の疾走!


3633
欲望の意味の圏外で
現場は
今日も校庭をはしゃぎ回っている




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3634
誰か何かを擁護する
じわじわと
強い力で押し出て来る 航跡が見える


3635
悪いものは触れられず
嘘でも
華飾り付けるポジショントーク


3636
意味無意味は飛び越えて
欲情する
強力意味の磁場 お猿のお尻が赤い!


3637
意味が絞られ意味の矢が
びゅーんと
飛んでいく意味変身の爽快感!




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3638
言葉は生涯の
作品さ
きみの背から意味の濃淡も癖も出る


3639
濃意味に取り憑かれて
生涯を
脇道にする者もいるよな


3640
良いも悪いも意味分散 なのに
引き絞る
手が濃意味に憑かれている




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3641
じぶん家(ち)からイメージ界へ
次元を超え
遙かな距離を瞬時に行き来する


3642
数十万年の時間圧
に押し出され
知らぬ間にここに来ていた!


3643
掬(すく)い上げるイメージの意味の滴は
透き通り
イメージ界を塗り上げていく


3644
じぶん家の椅子から遠く
来たもんだ
イメージの出所が背に霞む




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3645
得意げに乾いたイメージの
石を積む
呪文はやっぱり Deconstruction !


3646
鏡にはシシフォスの
意味に疲れた
石運び に 見えないか 自分よ


3647
じぶん家(ち)とイメージ界の
椅子の感触
大違いだよ でも無視かよ




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3648
ぽたっと滴が落ちた
濃意味は
気にも留めず意味道疾走する


3649
意味に意味を重ねては
呪文!
ザン ザンバラリ虚空を斬る


3650
濃い過ぎる意味の言葉は
とある
意味教の門へ消えていく




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3651
「意味するよ」「ねえ イミしない?」
「意味してるよ」
「そんなんではなくて もっとイミイミしない?」


3652
無意味なんて思いもしない
声が上がる
意味するばかりのシナイ半島


3653
無意味と意味の向かい合う
固いベンチの
真ん中に座り意味なしりんごを食べている




 [短歌味体Ⅲ] 吉本隆明シリーズ・続


3654
ひたひたと水が寄せて来る
自分ち
でなくても幻の水が寄せ来る


3655
悲しいのは自分ではない
のに土手
を転げて来る幻の悲しみ


3656
自分にも似たような時や場が
あったから
自然にシンクロナイズドスイミング


3657
癒されも見返りもなく
なくなく
感じてしまう〈存在倫理〉




 [短歌味体Ⅲ] 即興詩シリーズ・続


3658
景気づけに地元の小神に
どっかの大神
持つて来るクルクルクル 悲しい手品


3659
にぎやかにお祭り騒ぐ
それはいい
とは言わない それもいいさ


3660
何言っテンノウとは言わない
ただ心の内は
静かにフェードアウトの道遙か


3661
しずかに自分の内で
対話する
それ無しでは何にも変わらないさ




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3662
木にとまるセミの抜け殻
みたいな
意味虫が鳴く ミイミイミイミ


3663
子どもらは次の遊びに
夢中さ
セミ殻のミイミを踏んでいく


3664
大人たちはどこのスター
かしらんと
チラ見チラ目して過ぎていく




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3665
意味に疲れ意味の店先で
休んでいる
ふとコンクリートの感触がする


3666
「意味アリ!」「意味ナシ!」
波打つ旗
押したり押し返されたり見える


3667
意味の騒音が遠離り
じふん家の
椅子に座ってる感じの湧く




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3668
濃い意味と薄い意味は
混じり合う
こともなく意味の病谷に注ぐ


3669
意味の病谷深く
負の意味が
秘境のように埋もれている


3670
負の意味はあらゆる意味と
手をつながない
とりあえず無意味の意味層を流れる




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3671
無意味は誘うよりも
ひとり
ぼそぼそと憩ってしまう


3672
意味は広いな大きいな
と得意げに
勧誘勧誘また勧誘する



3673
夏だからしょうがないと
セミのような
意味時雨に打たれてないか




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3674
意味にも「先導獣」が居て
くり返す
かんどう・あたえる げんき・もらった


3675
表通りのテレビから
打ち鳴らす
カンドウ・アタエル ゲンキ・モラッタ


3676
否定しようのない道から
現れる
なんとなく重たい意味行列


3677
くり返しくり返すなか
意味菌が
乾いた肌から取り込まれていく




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3678
軽ーいテレビにも「明るい」「元気」
「感動」を
与える重意味に充ちている


3679
観ているとアカゲンカンに
葉揺れして
人の匂いの出入りがある


3680
その一歩、あの一節と
接続の
中間地が観える聞こえる




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3681
重意味にはいつもみたいに
無意味の
かかと踏んづけ靴で踏んでゆく


3682
重意味を断ち切るには
スイッチ切るか
チャンネルボタンを押してゆくだけさ


3683
重意味に無意味ふりかけ
ていくよ
あらあらあらひび割れていく




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3684
経済は意味を駆動し
意味を蒔く
あちこち意味が競って芽を出す


3685
お金だけもハートだけも
少なくて
二つの兼ね合いに人も会社も揺れる


3686
出かけない 買わない って
経済には
無意味そうだけど人には意味あるよねえ


3687
人は経済より広く
深いから
無意味も大きな意味を持つさ




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3688
意味はどこにも泡立ち
生きてるかぎり
意味無しは難しいぞ


3689
意味家から無意味は負
ふふふふと
オクレテルーまなざし向けられる


3690
強力な意味接続の
圏外に
自然に抜け出る無意味小さく点る




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3691
現実を吸い吐く人の
振る舞いは
はた目には不思議な意味に固まる


3692
死にそこないの島尾敏雄は
妻のため
泣く泣く芸術院賞を受けてしまった


3693
それでも〈島尾敏雄〉は
〈芸術院賞〉の意味の席に
収束することなく発散していた




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3694
くり返し夢まぼろしの
通路に入る
死が迎えに来ているような


3695
深刻に引き寄せ対話する
死、死はイメージ
イメージの意味として死ぬばかり


3696
死は神以上に超えてる!
シジフォスの
背を遙か次元を超えて見ている いない


3697
〈死〉は言葉をすり抜けて
黙する
宇宙として静かに立つ




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3698
死の外でひたすらに日々
割れた手が
ふと振り返る 誰もいない


3699
灰汁(あく)のある意味の自然は
洗われて
時代は意味を透明化してゆく


3700
固まりがほどけて漂う
欲望の
ひとつひとつが国境を越えていく


3701
躾も決壊して
欲望に急かされ
管理線を引く 虐待家族




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3702
透明な時代の中に
新しい
みどりの意味の芽を探してるんだけどなあ


3703
くたびれたこれそれあれの問題は
わかっているのに
温かなみどりの意味が見えてこない


3704
向こう岸がよく見えなくて
焦(じ)り焦りと
否定ばかりが狂い咲く 今は




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3705
例えばね、歌の歴史を
凍らせて
コアだけをそっと温め直していきたいな


3706
霞み立つ歌の道から
現れる
でもどこかなんか違うよねえ


3707
おんなじ道を歩いている
(あのこはいいな)
足取りと視線が違うさ




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3708
広い海を背にして
物書きは
組織は要らない 自己組織


3709
歌の始まりから数え切れない
言葉たちが
費やされ消えた その費やしよ


3710
歌はただこの舟に乗り
あの海へ
漕ぎ出してゆく 一人の祝宴だ




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3711
言葉の意味の重量は
大声でも
沈黙でもゴチックでもおんなじさ


3712
いくら強調しても
放たれる
意味は増量されない


3713
ひとりひとり放つ意味は
時間の
積み重なる固有圧に彩られる


2714
衣装を脱いでいけば
裸の
意味が恥ずかしげにうずくまる




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3715
意味だけでなくその感触が
ぱこーん
としっくりこないな しっくり


3716
正確には意味のおしりが
腰下ろす
椅子との相性が悪いな


3717
意味ならば抗っていても
この世界の
どこかにとりあえず着地する




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3718
さびれた意味の裏通り
古い演歌は
エモい国境の向こうを流れる


3719
重たい意味のシャッター通り
もう生き返らないね
テレビでは疾走するコマーシャル群


3720
おもいもよらぬ水かさに
ぷかぷかと
おもいおもいが意味拡散




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3721
〈わたし〉〈ぼく〉〈おれ〉の
意味エネルギー
七変化しても変わんないなあ


3722
〈子ども〉〈青年〉〈大人〉
〈男〉〈女〉
競ってもねえ 人はおんなじ意味エネルギー


3723
〈普通の人〉〈政治家〉
〈天皇〉
競うもんじゃないよね 人はおんなじ意味エネルギー


3724
人類(ひと)が築いた意味城は
今はもう
フラットになり誰もが出入りする




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3725
意味の肩に別の意味の手が
触れる と
意味が増殖する 花・が・咲く


3726
意味もなくと言われてもね
微弱な
意味ベクトルがこっち向いてるよ


3727
小さい子が指差して
あおあおと
太古の人みたいに叫んでる




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3728
無意味の階段はなかろうが
意味もなく
縁起担いで階段上る 朝


3729
意味にはまっていく階段を
ゆっくりと
上ってゆく 朝が動き出す


3730
沈黙の中にいろいろ
詰め込んで
意味の電車に乗り込んでゆく



 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3731
どこにでも意味網が
張り巡らされ
人は自然にアクセスしてる


3732
時代が張り巡らした
意味網は
野山にいても追いかけてくる


3733
ちょっとオフラインにするかと
ままならぬ
ただ無心の意味離れに意味は去る




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3734
ネコたちは意味なんて
知らないさ
今日もただじっと日差しを浴びてる


3735
ネコたちが鳴く鳴かない
に関わらず
人は何となく意味場に触れる


3736
それでもネコは意味を越え
人を振り切り
向こうの峠を下ってゆく




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3737
人は皆日々意味を食べ
意味を吐く
意味病に罹っている


3738
ビョーキとはほとんど誰も
思わない
からからと得意げに意味を説く


3739
しかすがに赤ちゃん見れば
バブバブと
我が身さえこそ動(ゆる)がるれ




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3740
頭上から意味を解析
されようと
ゲーム世界を疾走する


3741
熱っついオレの連打は
冷えた意味・・・
なのか?意味場から分かれゆく二人


3742
内と外、場が問題だ。
行動が
二色の意味に分岐していく




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3743
小さな意味のくつろぎに
上から
ドシンと乗っかる大意味は


3744
「い、痛てぇなあ、この野郎!」
「まあまあ
我ら意味族の同志よ!」


3745
「同じ意味は着てても
心は
異族、勝手に名簿に載せるなよ」




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3746
「これに触れてみて下さい
とりあえず
質問はナシね すぐにわかるから」


3747
(それって 意味の落とし穴
とちゃうか?
ずるずるずると意味にひかれて・・・)


3748
「風景が少し変わったでしょ
いい感じ
なってると思わない?」


3749
(次は何が来るのかな?
これって
意味の催眠商法では?)




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3750
幻の駅頭で意味連呼してる
者たちが
(イミレンコイミレンコ 濃ゆ!)


3751
くり返し耳にしてると
イミレンコン
イミレンコン意味転換す


3752
厚切りレンコンの穴
意味詰まり
意味臭の漂い出す




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3753
階下からネコが呼んでいる
うるさいな
と思いつつ振り向いて下る


3754
柔らかな意味の森へ入っていく
出入り自由なのに
なあんだ勝手口から出たいだけ?


3755
ネコもすねるみたいだから
ほんとうの
気持ちはどこにしまったのかな




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3756
湯気の立つ焼き芋のような
言葉のつもりでも
見知らぬ人の意味人格は煙っている


3757
匂い立つ意味人格も
相性の
合わない人には香りしない


3758
ちょっとした所でつまづく
他人の
意味階段の手触りの


3759
イミいみ意味、収束する
人の匂いと
現実と 稚内に迷い込む




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3760
話している他人の意味波
ドア開いて
ザンザンザザンと寄せて来るよ


3761
いい感じのあの子の意味波
春の温(ぬる)い
川水ぴちゃぴちゃと寄せて来る


3762
意味は張り巡らされた
クモの巣の
揺れる音階と批評家は言う




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3763
敷地に自足する意味の木々
大意味が
どしどしどしと揺さぶりをかける


3764
意味の木はインミインミョ
インミュヌ
揺さぶりに身をくねらせる


3765
大意味の大風にみな
しなるしなる
しなってなびく土蜘蛛の




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3766
「あれあれ、あれはどうなった?」
「あれかあ、
あれはなんとかかたついたよ」


3767
「きみはそこがだめなんだよ」
(そお言われても
そこがどこなのか底の方なのか?)


3768
「あれは、おもしろかったね」
「うん」
「あんなに迫って来るなんて」「うんうん」




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3769
言葉がしっくりくるとき
しずかに
意味の椅子に腰下ろす気配する


3770
呼び寄せるというよりも
ふうっと
言葉が意味携えて来ている


3771
なじみなのに意味訪ねて
行く行くと
見知らぬ生野の景色広がる




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3772
色褪せた大意味の先端で
小意味が
尖(とが)ってゆく尖ってゆく


3773
小意味は熱を帯びる
先端に
あかあかあかと超意味点(とも)る


3774
超意味は超えているから
いつものね
というわけには見えないきこえない




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3775
意味の海をこおろこおろと
かき回す と
意味んちゅがちゅるちゅる伸びてくる


3776
親だけを知ってる人が
訪ねてきた
そんな意味かく乱の昼下がり


3777
単一の匂いや味の
水ではない
対流・渦流の意味の海


3778
権力は発祥忘れ
晋菅晋菅(シンカンシンカン)
黒意味を白意味と言い張る




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3779
言葉はすばやく駆けていく
意味の海
自然に目指してゆくカーナビ


3780
意味の海漂っている
意味素の靄(もや)
ジンジンズズンと引き寄せる


3781
意味素たちがわたし色に
染まってゆく
おうおうおうイカすぜ私意味




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3782
訪れる店のよく食べる
メニューの
私言葉私意味がある


3783
避けたりすり抜けたり
無意識のよう
私言葉の意味の通路よ


3784
意味・無意味、ウソほんとう
の手前で
私言葉は私意味を主張する




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3785
意味と意味とぶつかる
小意味同士が
入り乱れて殴り合う


3786
大意味に手伸ばす意味スネ夫
とまどいの意味のび太
大意味に変身する意味ジャイアン


3787
意味ドラえもんに照射され
小意味たち
小社会を今日も旅する




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3788
超高速の時間旅
内省は
ゆっくり進み展(ひら)けてくる


3789
触大気、触対流
大気感
カンカンと意味の警報が鳴る


3790
ぼんやりと多層の大気感
肌触れつつ
意味の視線は走る走る




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3791
当たり外れのすぐわかる
意味テスト
じゃない誰にも吹く風の意味さ


3792
その意味をたずねて三千里
途次憩う
言葉の森は森閑(しんかん)と


3793
ひとりだけ。頼りになるのは
言葉の
目耳鼻と足しかないさ


3794
すり減った意味靴を見る
また明日も
歩いてゆくだろうな言葉の森




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3795
あーあーあーと意味板を踏んでゆく
赤ちゃんの
心地よいリズムに意味降り積もる


3796
意味不明すら頭になく
ただ親の
さそいの舟に乗り漕ぎ出してゆく


3797
あれはあーあー島それは
うーうー島
波に揺れ具合がたのしいな


3798
なんどもなんども
飽きることなく
舟繰り出すあーあーあ-うーうーう-




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3799
晴れた日の学芸会
決まってる
意味の平均台ゆらゆら進む


3800
決まってるコマーシャルの
道筋に
ふと小さな小石を置く演者


3801
すべてが計画通りの
舞台には
作者を超えた意味分散の光の粒々




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3802
「彼は意味もなく石ころを蹴った」
としても
深意味か朧(おぼろ)意味はありそうだ


3803
ぼんやりと景色を眺めるともなく
眺めてる
と 起動する意味の気配の



3804
入り乱れる現在の舞台に
意味もなく
過去や未来が押し寄せて来る




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3805
意味祭りに出かけなくても
遠くから
意味祭り歌が聞こえてくる


3806
引き剥がす意味蹴ったくる
そんなに
つっかからなくても峠を越えると意味は消える


3807
今日は意味を忘れて
のんびりと
思いきやビリビリ意味の追跡




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3808
新しい意味の促す
空気感
名前の浮かばぬ十夜二十夜


3809
新しい物は出来上がり
舞台袖に
じりじり出番を待っている


3810
かき分けてぴったり息が合う
「あったかインナー」
意味接続され人散ってゆく


3811
背後では漢字族と
アルファベット族と
いい感じ求めて攻防してる




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3812
手を伸ばしいつもの意味舟に
乗り込む
聞き慣れた意味の水音がする


3813
大きな意味の魚にまたがり
遠くまで
行くんだ 遙か昔よ


3814
吹き寄せる意味風に
手を振る
こともあるさ おーい(おーい)




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3815
神(シン)意味なんてくだらねぇ
と言う若者も
神社の鳥居くぐることもある


3816
神(シン)意味の水飲んだなら
私言葉が
シンシンシン、シンマジックワールド!


3817
私言葉がシン意味に
カチリと
はまりはまるるシンシンダンス




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3818
朝、今日もまた意味の川
流れてる
眠気顔にシームレスに流れ出す


3819
空目空耳ではなく
くっきりと
肌合いを流れている


3820
月の輪熊のような
さびしい
意味の徴(しるし)に気づくこともなく歩む




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3821
通りで出会う人の
顔を見る
一瞬の内に意味以前の匂う


3822
はっきりと指し示せない
揺れている
意味量りのデジタル数字


3823
(ああ、あれね)胸の内へ
触手は
はまり込んで出られない




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3824
SNS通りでもふかしてる
意味のバイクが
ブォンブォンブォオオン(仲間もいるね)


3825
カッコイイのかい?ふかしてる
音の匂いが
カビ臭いぜ(言わないけどさ)


3826
犯罪・スポーツニュース
食べ歩き番組
刃きらりの雨乞いに大地は染みるか


3827
スマホがポケベルに見える
未来は来るさ
同じ意味矢にブチュと貫かれ




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3828
夕暮れを歩む心に
触れて来る
ふれてくるものがある


3829
足音、風の音、鳥の音、
ぐらりと
音が反転する意味以前のおとの流れる


3830
まだ意味の丘は遠い
〈そと〉が
空洞を撫(な)ぜて下っていく




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3831
いつ頃から意味を振り返る
ようになったものか
小さい頃は無心に近かった


3832
丘はただぼくらの丘で
意味の丘
なんて知らなかったな 遠い日々


3833
シュロの葉の小さな舟に
乗り込んで
びゅわーっと丘をすべり下る




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3834
意味のいとをたぐっていくと
ほとんど
いつもうなだれる心であった


3835
そうしてとぼとぼと歩く
日々が降り
積もってしまった その足音よ


3836
小さい頃の丘は
変貌し
盛んに意味花を咲かせている




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3837
意味道の高速に入る
「What do you mean ?」
(わいっ、どーゆー意味?)


3838
煽(あお)られて車線変更する
意味ハンドル
必死に握り突き抜けていく


3839
意味通りにはいろんな顔が
浮かんでる
目ざせイスカンダル、空気が濁る

註.イスカンダル。ここは、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』に出たイスカンダル星のこと。




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3840
昨日のような晴れた日を
歩いている
小石につまづくことがある


3841
走ってた車が急に
路肩に入る
エンジンの意味システムのダウン


3842
昨日までの仲良しに
地震みたい
亀裂が走っていくのが見える




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3843
一瞬の夢うつつ
重たい
意味の匂い漂う昼下がり


3844
見知らぬ廊下を歩いている
その先は
深い谷 夢の廊下よ


3845
意味を求めて三千里
の横すり抜ける
ぼくの住まいは意味の圏外さ




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3846
意味海の探検に行くぞと
意味の服
意味メガネ付けて意味の岸辺に出る


3847
どっぼーんと飛び込んだ
意味の海
(深い 深い ふかいぞ・・・)


3848
じたばた推進する
手足は
意味圧にからめ取られてる


3849
意味海よりやっとのことで
浮上する
心は意味の水滴っている




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3850
意味の歴史の数十万年
人とともに
右往左往と熟成してきた


3851
ひとつの意味を羽織る時
かすかに
見知らぬ時間の匂いが漂う


3852
意味生成の舞台裏
泥臭い
言葉が取捨選択精製される




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3853
眠ってる表通りの
意味圧は
消失して閑散としている


3854
意味を束ねようにも束にならぬ
シャッター通り
ならぬならぬと言ってもどうにもならぬ


3855
どうにもならぬ裏通りでは
我知らず
新しい深意味の匂い嗅いでいる


3856
生きてるかぎり無・意味は
ありえない
意味の通りに意味の街に




 [短歌味体Ⅲ] 新年シリーズ


3857
毎回おんなじことを
している
でも今日は、新しい街角に出た。


3858
毎回おんなじことを
言っている
でもほら、新芽が出てるよ、


3859
くり返しているようで
少し違った道
少し違った大気中を歩いている、




 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続






 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続






 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続



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