詩『言葉の街から』 ②


(2019年9月24日~2021年1月1日)

 目次


詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ 日付
1-3       自動運転シリーズ 2019年09月24日
4-6       自動運転シリーズ 2019年09月25日
7-9       自動運転シリーズ 2019年09月26日
10-13     自動運転シリーズ 2019年09月27日
14-16     自動運転シリーズ 2019年09月28日
17-20     自動運転シリーズ 2019年09月29日
21-25     自動運転シリーズ 2019年09月29日
26-29     自動運転シリーズ 2019年10月01日
30-32     自動運転シリーズ 2019年10月02日
33-37     自動運転シリーズ 2019年10月03日
38-41     自動運転シリーズ 2019年10月04日
42-45     自動運転シリーズ 2019年10月05日
46-49     自動運転シリーズ 2019年10月06日
50-52     自動運転シリーズ 2019年10月07日
53-56     自動運転シリーズ 2019年10月08日
57-59     自動運転シリーズ 2019年10月09日
60-63     自動運転シリーズ 2019年10月10日
64-68     自動運転シリーズ 2019年10月11日
69-72     自動運転シリーズ 2019年10月12日
73-76     自動運転シリーズ 2019年10月13日
77-80     自動運転シリーズ 2019年10月15日
81-85     自動運転シリーズ 2019年10月16日
86-89     自動運転シリーズ 2019年10月17日
90-92     自動運転シリーズ 2019年10月18日
93-95     自動運転シリーズ 2019年10月19日
96-99     自動運転シリーズ 2019年10月20日
100-102   自動運転シリーズ 2019年10月21日
103-105   自動運転シリーズ 2019年10月22日
106-108   自動運転シリーズ 2019年10月24日
109-112   自動運転シリーズ 2019年10月25日
113-117   自動運転シリーズ 2019年10月26日
118-121   自動運転シリーズ 2019年10月27日
122-124   自動運転シリーズ 2019年10月28日
125-128   自動運転シリーズ 2019年10月29日
129-131   自動運転シリーズ 2019年10月30日
132-134   自動運転シリーズ 2019年10月31日
135-137   自動運転シリーズ 2019年11月01日
※ 詩『言葉の街から』の「自動運転シリーズ」は、これでおしまいです。
詩『言葉の街から』 対話シリーズ 日付
1-4       対話シリーズ 2020年01月02日
5-8       対話シリーズ 2020年01月03日
9-13      対話シリーズ 2020年01月04日
14-17     対話シリーズ 2020年01月05日
18-21     対話シリーズ 2020年01月06日
22-24     対話シリーズ 2020年01月07日
25-27     対話シリーズ 2020年01月08日
28-30     対話シリーズ 2020年01月09日
31-36     対話シリーズ 2020年01月10日
37-39     対話シリーズ 2020年01月11日
40-45     対話シリーズ 2020年01月12日
46-48     対話シリーズ 2020年01月13日
49-52     対話シリーズ 2020年01月14日
53-56     対話シリーズ 2020年01月15日
57-59     対話シリーズ 2020年01月16日
60-62     対話シリーズ 2020年01月17日
63-65     対話シリーズ 2020年01月18日
66-68     対話シリーズ 2020年01月19日
69-72     対話シリーズ 2020年01月20日
73-76     対話シリーズ 2020年01月21日
77-79     対話シリーズ 2020年01月22日
80-82     対話シリーズ 2020年01月23日
83-86     対話シリーズ 2020年01月24日
87-89     対話シリーズ 2020年01月25日
90-93     対話シリーズ 2020年01月26日
94-96     対話シリーズ 2020年01月27日
97-99     対話シリーズ 2020年01月28日
100-102   対話シリーズ 2020年01月29日
103-105   対話シリーズ 2020年01月30日
106-108   対話シリーズ 2020年01月31日
109-112   対話シリーズ 2020年02月01日
113-115   対話シリーズ 2020年02月02日
116-118   対話シリーズ 2020年02月03日
119-121   対話シリーズ 2020年02月04日
122-124   対話シリーズ 2020年02月05日
125-127   対話シリーズ 2020年02月06日
128-130   対話シリーズ 2020年02月07日
131-134   対話シリーズ 2020年02月08日
135-137   対話シリーズ 2020年02月09日
138-140   対話シリーズ 2020年02月10日
141-143   対話シリーズ 2020年02月11日
144-146   対話シリーズ 2020年02月12日
147-149   対話シリーズ 2020年02月13日
150-152   対話シリーズ 2020年02月14日
153-155   対話シリーズ 2020年02月15日
156-159   対話シリーズ 2020年02月16日
160-162   対話シリーズ 2020年02月17日
163-165   対話シリーズ 2020年02月18日
166-169   対話シリーズ 2020年02月19日
170-172   対話シリーズ 2020年02月20日
173-176   対話シリーズ 2020年02月21日
177-179   対話シリーズ 2020年02月22日
180-183   対話シリーズ 2020年02月23日
184-187   対話シリーズ 2020年02月24日
188-190   対話シリーズ 2020年02月25日
191-194   対話シリーズ 2020年02月26日
195-199   対話シリーズ 2020年02月27日
200-203   対話シリーズ 2020年02月28日
204-206   対話シリーズ 2020年02月29日
207-210   対話シリーズ 2020年03月01日
211-213   対話シリーズ 2020年03月02日
214-216   対話シリーズ 2020年03月03日
217-219   対話シリーズ 2020年03月04日
220-222   対話シリーズ 2020年03月05日
223-225   対話シリーズ 2020年03月06日
226-229   対話シリーズ 2020年03月07日
230-232   対話シリーズ 2020年03月08日
233-236   対話シリーズ 2020年03月09日
237-240   対話シリーズ 2020年03月10日
241-244   対話シリーズ 2020年03月11日
245-247   対話シリーズ 2020年03月12日
248-251   対話シリーズ 2020年03月13日
252-258   対話シリーズ 2020年03月14日
259-261   対話シリーズ 2020年03月15日
262-264   対話シリーズ 2020年03月16日
265-268   対話シリーズ 2020年03月17日
269-272   対話シリーズ 2020年03月18日
273-276   対話シリーズ 2020年03月19日
277-279   対話シリーズ 2020年03月20日
280-282   対話シリーズ 2020年03月21日
283-286   対話シリーズ 2020年03月22日
287-289   対話シリーズ 2020年03月23日
290-292   対話シリーズ 2020年03月24日
293-296   対話シリーズ 2020年03月25日
297-300   対話シリーズ 2020年03月26日
301-303   対話シリーズ 2020年03月27日
304-306   対話シリーズ 2020年03月28日
307-310   対話シリーズ 2020年03月29日
311-313   対話シリーズ 2020年03月30日
314-316   対話シリーズ 2020年03月31日
317-320   対話シリーズ 2020年04月01日
321-323   対話シリーズ 2020年04月02日
324-326   対話シリーズ 2020年04月03日
327-329   対話シリーズ 2020年04月04日
330-333   対話シリーズ 2020年04月05日
334-336   対話シリーズ 2020年04月06日
337-340   対話シリーズ 2020年04月07日
341-344   対話シリーズ 2020年04月08日
345-347   対話シリーズ 2020年04月09日
348-350   対話シリーズ 2020年04月10日
351-353   対話シリーズ 2020年04月11日
354-357   対話シリーズ 2020年04月12日
358-360   対話シリーズ 2020年04月13日
361-364   対話シリーズ 2020年04月14日
365-367   対話シリーズ 2020年04月15日
368-370   対話シリーズ 2020年04月16日
371-373   対話シリーズ 2020年04月17日
374-376   対話シリーズ 2020年04月18日
377-380   対話シリーズ 2020年04月19日
381-383   対話シリーズ 2020年04月20日
384-386   対話シリーズ 2020年04月21日
387-390   対話シリーズ 2020年04月22日
391-394   対話シリーズ 2020年04月23日
395-398   対話シリーズ 2020年04月24日
399-401   対話シリーズ 2020年04月25日
402-405   対話シリーズ 2020年04月26日
406-409   対話シリーズ 2020年04月27日
410-413   対話シリーズ 2020年04月28日
414-417   対話シリーズ 2020年04月29日
418-421   対話シリーズ 2020年04月30日
422-424   対話シリーズ 2020年05月01日
425-427   対話シリーズ 2020年05月02日
428-430   対話シリーズ 2020年05月03日
431-434   対話シリーズ 2020年05月04日
435-437   対話シリーズ 2020年05月05日
438-441   対話シリーズ 2020年05月06日
442-444   対話シリーズ 2020年05月07日
445-448   対話シリーズ 2020年05月08日
449-451   対話シリーズ 2020年05月09日
452-455   対話シリーズ 2020年05月10日
456-459   対話シリーズ 2020年05月11日
460-464   対話シリーズ 2020年05月12日
465-469   対話シリーズ 2020年05月13日
470-473   対話シリーズ 2020年05月14日
474-476   対話シリーズ 2020年05月15日
477-479   対話シリーズ 2020年05月16日
480-482   対話シリーズ 2020年05月17日
483-485   対話シリーズ 2020年05月18日
486-488   対話シリーズ 2020年05月19日
489-491   対話シリーズ 2020年05月20日
492-495   対話シリーズ 2020年05月21日
496-498   対話シリーズ 2020年05月22日
499-502   対話シリーズ 2020年05月23日
503-505   対話シリーズ 2020年05月24日
506-509   対話シリーズ 2020年05月25日
510-512   対話シリーズ 2020年05月26日
513-516   対話シリーズ 2020年05月27日
517-520   対話シリーズ 2020年05月28日
521-524   対話シリーズ 2020年05月29日
525-528   対話シリーズ 2020年05月30日
529-532   対話シリーズ 2020年05月31日
533-535   対話シリーズ 2020年06月01日
536-538   対話シリーズ 2020年06月02日
539-542   対話シリーズ 2020年06月03日
543-546   対話シリーズ 2020年06月04日
547-549   対話シリーズ 2020年06月05日
550-553   対話シリーズ 2020年06月06日
554-557   対話シリーズ 2020年06月07日
558-560   対話シリーズ 2020年06月08日
561-564   対話シリーズ 2020年06月09日
565-567   対話シリーズ 2020年06月10日
568-570   対話シリーズ 2020年06月11日
571-574   対話シリーズ 2020年06月12日
575-578   対話シリーズ 2020年06月13日
579-582   対話シリーズ 2020年06月14日
583-586   対話シリーズ 2020年06月15日
587-589   対話シリーズ 2020年06月16日
590-593   対話シリーズ 2020年06月17日
594-597   対話シリーズ 2020年06月18日
598-601   対話シリーズ 2020年06月19日
602-604   対話シリーズ 2020年06月20日
605-609   対話シリーズ 2020年06月21日
610-614   対話シリーズ 2020年06月22日
615-618   対話シリーズ 2020年06月23日
619-622   対話シリーズ 2020年06月24日
623-628   対話シリーズ 2020年06月25日
629-632   対話シリーズ 2020年06月26日
633-636   対話シリーズ 2020年06月27日
637-640   対話シリーズ 2020年06月28日
641-644   対話シリーズ 2020年06月29日
645-648   対話シリーズ 2020年06月30日
649-652   対話シリーズ 2020年07月01日
653-655   対話シリーズ 2020年07月02日
656-659   対話シリーズ 2020年07月03日
660-662   対話シリーズ 2020年07月04日
663-665   対話シリーズ 2020年07月05日
666-668   対話シリーズ 2020年07月06日
669-671   対話シリーズ 2020年07月07日
672-676   対話シリーズ 2020年07月08日
677-680   対話シリーズ 2020年07月09日
681-684   対話シリーズ 2020年07月10日
685-687   対話シリーズ 2020年07月11日
688-691   対話シリーズ 2020年07月12日
692-695   対話シリーズ 2020年07月13日
696-699   対話シリーズ 2020年07月14日
700-702   対話シリーズ 2020年07月15日
703-705   対話シリーズ 2020年07月16日
706-709   対話シリーズ 2020年07月17日
710-713   対話シリーズ 2020年07月18日
714-718   対話シリーズ 2020年07月19日
719-722   対話シリーズ 2020年07月20日
723-725   対話シリーズ 2020年07月21日
726-729   対話シリーズ 2020年07月22日
730-733   対話シリーズ 2020年07月23日
734-738   対話シリーズ 2020年07月24日
739-741   対話シリーズ 2020年07月25日
742-745   対話シリーズ 2020年07月26日
746-748   対話シリーズ 2020年07月27日
749-752   対話シリーズ 2020年07月28日
753-755   対話シリーズ 2020年07月29日
756-759   対話シリーズ 2020年07月30日
760-763   対話シリーズ 2020年07月31日
764-767   対話シリーズ 2020年08月01日
768-771   対話シリーズ 2020年08月02日
772-774   対話シリーズ 2020年08月03日
775-777   対話シリーズ 2020年08月04日
778-780   対話シリーズ 2020年08月05日
781-784   対話シリーズ 2020年08月06日
785-787   対話シリーズ 2020年08月07日
788-790   対話シリーズ 2020年08月08日
791-794   対話シリーズ 2020年08月09日
795-798   対話シリーズ 2020年08月10日
799-801   対話シリーズ 2020年08月11日
802-806   対話シリーズ 2020年08月12日
807-810   対話シリーズ 2020年08月13日
811-813   対話シリーズ 2020年08月14日
814-817   対話シリーズ 2020年08月15日
818-820   対話シリーズ 2020年08月16日
821-824   対話シリーズ 2020年08月17日
825-829   対話シリーズ 2020年08月18日
830-832   対話シリーズ 2020年08月19日
833-837   対話シリーズ 2020年08月20日
838-842   対話シリーズ 2020年08月21日
843-846   対話シリーズ 2020年08月22日
847-849   対話シリーズ 2020年08月23日
850-853   対話シリーズ 2020年08月24日
854-857   対話シリーズ 2020年08月25日
858-860   対話シリーズ 2020年08月26日
861-863   対話シリーズ 2020年08月27日
864-867   対話シリーズ 2020年08月28日
868-872   対話シリーズ 2020年08月29日
873-875   対話シリーズ 2020年08月30日
876-879   対話シリーズ 2020年08月31日
880-883   対話シリーズ 2020年09月01日
884-887   対話シリーズ 2020年09月02日
888-890   対話シリーズ 2020年09月03日
891-894   対話シリーズ 2020年09月04日
895-897   対話シリーズ 2020年09月05日
898-901   対話シリーズ 2020年09月06日
902-904   対話シリーズ 2020年09月07日
905-907   対話シリーズ 2020年09月08日
908-911   対話シリーズ 2020年09月09日
912-914   対話シリーズ 2020年09月10日
915-918   対話シリーズ 2020年09月11日
919-921   対話シリーズ 2020年09月12日
922-926   対話シリーズ 2020年09月13日
927-931   対話シリーズ 2020年09月14日
932-934   対話シリーズ 2020年09月15日
935-937   対話シリーズ 2020年09月16日
938-941   対話シリーズ 2020年09月17日
942-945   対話シリーズ 2020年09月18日
946-949   対話シリーズ 2020年09月19日
950-952   対話シリーズ 2020年09月20日
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1302-1305 対話シリーズ 2020年12月29日
1306-1309 対話シリーズ 2020年12月30日
1310-1313 対話シリーズ 2020年12月31日
新年シリーズ 2020年01月01日










詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ



静かな夜星も出ている
地球は
回転疾走してるね そうね



星々もじっとして見える
でもアクティブさ
不眠不休の自動運転!



ものはみな生きてるかぎり
膨らみ
放ち消耗する 死を背に自動運転!




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ



生きものの血はめぐるぐる
めぐるぐる
目まいもせずに自動運転!



人知を超えて川は流れる
いつかは
修正を迫る自動運転!



川水を手に掬ってみる
さらさらか
きらきらか判定が難しい




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ



深みのことはわからない
今日もまた
いつものように出かけていくさ



大気に漂うイメージの
うねり突っぱねても
きみもドームの世界の内にいる



「オレは知らないね」も自由
知らない所から
気持ちに関わりなく吹き来る不可避の風の




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


10
晴れがましい舞台まで
いくつもの
険しい峠道上り下りしたよ


11
カチリとはまって ゆっくり
動き出す
やるじゃん自動運転!


12
(たくさんの無名人の
小さな明かり
今システムに大きく点る)


13
にぎやかな表舞台では
いつもなにかの
お祭り騒ぎ (おでかけですかあ)




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


14
人ならばそんなことも
するのか
曇天下に重たい人風が吹く


15
人だから触手がつい
伸びるのか
晴天下傘次々と立つ


16
人なのにイメージの国境
超えて行く
脱皮くり返すイメージ人




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


17
(ああ 天気がいいなあ)
ゆったりと
雲が流れていく昼下がり


18
車だけではない ほらほら
これもあれも
自動運転! 寝っ転がっててもいい?


19
誰もが思っていること
願っていること
紛争と飢餓の夢川を今渡る?


20
「今でしょう!」と言われても
濡れ鼠の
重たいハート引きずって渡りたくないさ




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


21
彼岸花を目にしたら
飢餓の不安
小さく彼の背に点ってしまう


22
みんなで分かち合うほかなかった
時代には
それはそれで村はまわる 山向こう世界は遠い


23
(獲物待つ岸辺の鳥は
じっと待つ
こころ、風に溶かして) 人もまた


24
自分ひとりの場所や物を
手に入れたとき
人の胸に虹が懸かっていた


25
鳥たちと違って少しずつ
場所を
変えていくよ 人は




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


26
貧しい時代には寝っ転がる暇もない
あるいは
寝っ転がるしかないということがあった


27
ひとりひとりがこっそりと
寝っ転がる
しかなかったんだよね


28
貧しさを抜け出た先は
夢の島?
地中深くまで貧しさ埋まる不安


29
今も難しい寝っ転がりが
全社会
ゆったり実現できたらいいのにね




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


30
「ジドウウンテンになると
退化するぞ
退化の改新到来するぞ!」


31
退行する言葉が煽りや
逆走する中
ゆっくり走り出す自動運転


32
確かに退化する手足
けど そうやって
自動運転してきたよ 人類




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


33
これも洗濯には違いない
とっくに
川で洗濯は昔話になってしまった


34
さわやかな川の流れと
匂いを背に
洗濯してる時代はあったさ


35
昔にこだわり過ぎるぜ
形変わっても
太古から洗濯は不変さ


36
洗濯板の教育・家族・文化
洗濯板の
亡霊が社会を引っ張っている(バッカじゃない)


37
きみは洗濯板使ってもいいさ
でもそれは
オタク趣味の骨董趣味だね(好きにすれば)




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


38
川まで水汲みから
井戸へ 水道へ
自動運転してきた水の物語


39
水の流れとともに
人のからだも
上下しつつ流れてゆく


40
気づかない知らないところで
子どもから大人へ
少しずつ変身してきたね


41
ほらほらどこかで何か
動いている
気づいた時はもう色づく葉だ




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


42
「自動運転祭りだよ!」
そんな大声
出さなくても 聞こえてるよ


43
「この自動運転に乗れば、
乗れば 乗れば
瞬時に手に入ります」 ふうん


44
「我が社の自動運転
きれいです。
ほらほら虹が懸かって」 どれどれ


45
「ボタンを押しさえすれば
ただちに
お金が出てきますよ」 はあ




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


46
(オットー)もう少しで
現在に
引かれた線に轢(ひ)かれるとこだった


47
現在に引かれている
現在色の
過去線はまたいでいく


48
現在に引かれている
なじんだ色の
現在線の渦中にいる


49
現在に引かれている
未来色の
現在の線はまぶしくてよく見えない




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


50
線を踏むと鳴子(なるこ)鳴り
ドアが開いて
「右でも左でもなく」「普通の日本人です」の顔が現れる


51
SNSに張り巡らされた
いといといと
裏表入れ替わった薄化粧顔の懸かる


52
それぞれの意図の舞台
裏では
他人事のよう水が流れている




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


53
ガンマンがさりげなく押して入る
酒場には
ぴいんと探査線を伸ばす西部劇


54
おそらくは大縄跳びに
入るように
ソラソラソラソSNS息止めて入る


55
高速道に乗り入れた気分が
ハシルハシル
イチャモンの空き缶も投げている


56
オットー危ねぇな
仮面野郎!
何すんだよ なあ 煽り運転かよ




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


57
こんな通路が開通するなんて
思いもしなかった
から景色になじんで思いもしない


58
言葉になった無数のハートは
ピンク色
を見せて三々五々流れていく


59
SNSの高速道
風圧に
いま必死の口からトリエンターレ!




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


60
遙か太古に嘘つきを
覚えてしまった
しまったしまった道が開ける


61
虚飾(うそ)とホントが溶け合って
自然に
隣近所はあいさつ交わす


62
嘘道を危ぶむあまり
子どもらに
オオカミ少年が不幸振りまく


63
しかすがに紅顔無恥は
「ビューティフルハーモニー!」
言葉だけが滑走していく 虚空




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


64
その時は切実な言葉でも
時間の波に
砂浜の貝殻となってゆく


65
あの時あそこでの
エネルギーの
総量は貝殻に溶けているか


66
いま・ここが過去と遠ざかる
誰にも
今・ここエネルギーは気化してゆく


67
振り返る今は必ず
今を引き連れて
固くなった貝殻に会いに行く


68
(でもねあの頃は……)
時間の
埃を払いながら沈黙の椅子に座る




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


69
〈あ〉と初めて声が出た喜びに
草花が
やわらかに揺れている 見える


70
うれしさにターザンみたい
〈あ あああ〉
声が弾んで流れに入ってゆく


71
このふしぎな感じひみつの感じ
分かち合えない
裏通りから我が家に帰る


72
心の内にもイメージの
ゆらゆらと
草花の匂いの漂う




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


73
(ほんとはそれが言いたかった)
心に描いた
砂文字が波に洗われている


74
〈それ〉と言っても言葉には
取り出せない
心の内の我流の砂文字


75
父母の明朝体が
触手を
伸ばしてきてもうまく出会えない


76
違うなと感じる時は
押し返そう
にもひたひたと大水の迫る




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


77
言葉と沈黙の
並行世界
の境界にやさしい歌も吹いてくる


78
そんな時には身と心
ほどいて
世界風に深く当たる


79
去ってゆく砂粒見ても
止まらない
また未来の一粒を構想するのみ


80
ほんと ね夕暮れ でも
一粒の
小さ 明かり あれば   ね




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


81
何気ない日々の風景から
暗転 うわっ
加速する うわわっ 加速する物語


82
追い込まれた主人公
車ごと
崖からダイブする ししっ 死のイメージ!


83
〈主人公〉なのにの疑念
死の峠?
を越えたイメージ流に乗る


84
物語は加速疾走する
イメージは
現世の倫理もバシャバシャ踏み倒して進む


85
主人公と彼の旅したイメージ流
何気ない日々の
積もる疲労に色褪せていく




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


86
木の葉散る 目が追ってゆく
心は
崖っぷちにキキッと止まる


87
その先はもう言葉の舟
に乗らないと
秋の情感には入れない


88
空気の感触が変わり
もう秋
の葉裏から秋の駅に入る


89
〈木の葉〉〈散る〉〈秋〉・・・いくつもの駅
を乗り継ぎ
秋の物語を突き進む




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


90
一枚の葉の中に秋
が寄せている
内圧が降下して澄み渡る


91
見えない病もまた
一葉の
葉脈に溶けて流れる秋


92
病かどうか分離する
難しいな
葉の秋の部屋に引きこもる




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


93
言いたいことは他にありそうな
心の隅
外灯の夜道を歩いて行く秋


94
盛んに寄せて来るもの
よるよるよ
小さな明かりに秋波の立つ


95
そっちは深い夜の淵
落ち込んだら
はい上がる言葉はたぶんないな




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


96
秋の通路はひとつだけ
ビミョウに
時とともに姿形を変えてきた


97
開かれた言葉道から
真ん中や
端っこなどいろんな顔して来る秋


98
誰とも交換できない
秋の一部
誰もが背に負って行き交う


99
秋人が「秋はいらんかな」
とコマーシャル
秋の一部も抽出・販売される




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


100
「えっ?ぼくは何も言ってないよ」
「いやいや
きみの影がほら語ってるよ」


101
通りを歩いてゆく きみの
足取りは
木々などの配置に曲がる光束のよう


102
通りを眺めている
きみを見つめてる
視線にふと気づく きみは




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


103
虫食いの木の葉の道に
入り込む
巨大な空白 人の声する


104
枯れた呼び声が木霊する
死語を抱き
舟はもう出ることはない


105
人間の古い自然も
枯れ落ちる
チルチルミチル新たな芽が出る




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


106
暗い洞窟に入る
しだいに
戻れるのかと疑念が湧く


107
意図を超えて湧いてくる戦(おのの)き
に浸かるとき
古い古い時間の流れる


108
枯れ葉の虫穴から
落ちていったら
閉じられた夢のブラックホールか



詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


109
一枚の木の葉が枯れる
時間の中
波風立つドラマがあった


110
枯れ始める辺りには
ジタバタと
アンチエイジングもあった


111
押し流す奔流を
静かに
見ている 見ているばかりである


112
木の葉の意志を超えて
自然は
推移する 流れていくよ



詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


113
一枚の木の葉が落ちた
たましいに
土煙の静かに立った


114
哀切を哀切は
哀切の
出口のない助詞の部屋の内にいる


115
手向けの言葉は
一言でいい
(あいせつのう……)


116
通路が永遠に閉ざされて
しまった
しまったというおもいに沈むばかり


117
一枚の葉は幻となり
わたしの
部屋の棚に横たわる




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


118
空を舞うカラスたち
カァカァカァと
人の圏外で語り合っているか


119
カラスに憑かれた人は
(かぁかぁ)
外れの駅から病声を上げる


120
カラスも花も圏内に
引き込まれ
童話の駅から降りてくる


121
例えば人が花や
鳥だった
時があった?遙かな分岐の駅々




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


122
何度でも戻ってくる
その場所は
疑問符ばかり降り積もる


123
試験の問いと答の
枠超える問い
たった一歩の未来が欲しい


124
疑問符が少し肌を脱ぐ
赤ちゃんの
肌すべすべと言葉の芽は




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


125
ちっぽけな人間界の
窓から
太古の人の言葉は突き抜けて天へ


126
人間の始まりから
人の数だけ
振り返られた〈生きる〉


127
泣き笑い考える人人人
言葉が
張り付いて世界は回る


128
時代とともに「変面」する
心の
顔立ちにも遙か祖先の匂う




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


129
大声と大文字とが
暴れる時
白昼夢、沈黙は深い


130
極太のマジック言葉
ばかりでは
細線や極細までは掬い取れない


131
居場所のない細線や
極細たちは
意味もなく字の字の遊ぶ




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


132
身心が拍動している
すんなりと
平均台を渡っていくよ


133
現在の大気を吸う吐く
身心は
自然に屈折する してしまう


134
人みな屈折する
屈折率
避けられない現在のクモの糸




詩『言葉の街から』 自動運転シリーズ


135
端(はた)からは(止めたがいいよ)
振り切って
傍若無人と突き進む 見える


136
内からは(あ、またこの道)
背を押され
通ってきただけ 見える


137
上からは死角は消えても
広角の
膜を隔てて隔靴掻痒 見える




☆ ☆ ☆   ☆ ☆ ☆    ☆ ☆ ☆    ☆ ☆ ☆    ☆ ☆ ☆


詩『言葉の街から』 対話シリーズ



もう始まってるの?
(まだのようだね)
じゃあもう少しくつろいどくか



「廊下を歩いていたら
大きな石に
出会いました」「それでどうしたの」



「その石に触れたらたちまち
すり抜けて・・・」
「まあ すてきなトラブルトラベルね」



「晴れ上がった秋空は
いいねえ」
「うん いいわね」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



「ねえね 『突撃!カネオくん』に出てる
田牧そらちゃん
なんかいいわね」「うん なんだろうねえ」



「ソラシドと空まで上って行く
そら気分」
「ううん稚内 空の上は寒そうだぜ」



「意味に出会う以前の無意味」
「無心の
そら模様かもしれないね」



「おそらく誰もが通過する
意味への関所」
「通りすぎたらもう戻れないや」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



「責められているわけじゃない
のに言葉に詰まる」
「あるある、みんなどうやって壊れた橋を渡るのかな?」


10
「そんなの関係ない顔の
言葉があるね」
「たぶんね、頭の神経回路だけ疾走してるのよ」


11
「頭だけじゃないと言っても
言葉に詰まる」
「でも人間の頭時代はごく最近なんだけどね」


12
「詰まる言葉は人類の
さびしい
暗黒面にふれてると思うな」


13
「そうね、日頃は気づかず
飛び越えていく
元気さに差す自分の影みたいな」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


14
「行き詰まったら息も詰まる
言葉も詰まる
排水口に重たい風の吹く」


15
「もがいてもどうにもならない
ことってある
そうして人は生きていくのね」


16
「長い時間がある時に
ふうっと
解を与えて去って行く」


17
「風は言葉にさらされ
言葉は
風にさらされているんだね」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


18
「読者がひとりもいない
作者はいるだろうか」
「うーん、どうだろう・・・」


19
「観客がひとりもいない
ミュージシャンっているのかな」
「素人ならそうじゃない」


20
「ひとりの読者、ひとりの観客・・・」
「自分自身が
読者でも観客でもあり得るわね」


21
「太古にはあり得なかった
世界との
自分サイズの対話 その響きいいな」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


22
「何で人は有名人に
イカレちゃうのかな」
「遙か昔の神(大自然)なのよ、ユウメイジン」


23
「自分が気づかなかった
ことをクリアーに、」
「気づかせてくれたりするね、ユウメイジン」


24
「今自分ができないことは
自分超えて
見えるんだろうね」「おう 神神!」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


25
「現在のぼくらの癖は
人類の癖
長いながーい道のりが刻まれている」


26
「そんなら簡単には
消滅しないわね
ユウメイジン 負の遺伝子よ」


27
「それじゃあ有名人が
恥ずかしくなる歌でも歌うか
ジンジンジンユウメイジン・・・」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


28
「ユウ・メイ・ジン、ユ・ウメ・イジン」
「言葉を
分解しただけじゃダメよ」


29
「ユウメイジンが生きて歩く
その歩幅や
匂いや照り返しを腑分けしなくっちゃ」


30
「有名・人、無名の海を抜け出す?」
「(抜け出す)
(はい上がる)、そのスタイルの内にも秘密があるわね」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


31
「はじまりの朝の草露
日差し浴び
ほら きみはもうユウメイジンだ」


32
「ユウメイジンって朝露と
光とが
必要なのね 幻惑の舞台アイテム?」


33
「いやいやそれよりも
たくさんの
まなざしと手たち 空中浮遊が始まるよ」


34
「華やかなイメージ力が
ペンライトに照らされ
放ち 引く ユーメイジン号の推力よ!」


35
「岸辺のこちら側では
人々の
心の内にも点っているのね」


36
「有名人になったら止められる
アルバイト
でも質量は不変だよね」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


37
「ユウメイジンになる細い道
湿気が多過ぎても
少な過ぎてもいけない ビミョウな」


38
「無名の海の香りは
知らんぷり
はできないね どこかに忍び込ませる」


39
「無名への道を断ったら
冬枯れよね
見えない橋を架けると思うわ」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


40
「(花は 花は 花は咲く・・・)って 
(つっかかるけど)歌を出て
どこにどんなふうに何を咲かせたいのかな?」


41
「パプリカの歌の広場に
入れない
(別にいいけどさ)今日お葬式なんだ」


42
(疑問の言葉が探査する
歌の舞台
裏からはだかの歌が見える)


43
「うーん、好きで楽しめたら
いいんじゃない?
キライなら素通りすればいいし」


44
「それが少しでも隙間があれば歌族が
づかづかと
部屋に入り込んでくるんだよな」


45
「歌を出て歌が変色している
歌活用させられて
見知らぬ建物に入っていく 見える」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


46
「まだ始まらないのかな?」
「そおねえ」
「まあ いいけどさ 天気も良いし」


47
(話って尽きないなあ
生きてるかぎり
人はいろんな話しているよ)


48
(そおね 話は続くよ
どーこまーでも
野を越え 山越え 谷越えて)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


49
「ほとんどは眠っている時
みたいに
地面を意識せずに話しているね」


50
「でも地震がふいに起こると
地面が
地面を地面に意識するわよね」


51
「もう ぐらぐらりぐららに
言葉は
固くなるよ 話しの緊急救命室」


52
「沈黙の激しい揺れの
退いた後
しばらくは余韻が響くシン沈黙」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


53
「ちょっとライトを浴びて
話し出す
場面もたまーにはあるね」


54
「背伸びして背伸びして ザブン
飛び込む
背伸び世界 足が痛いわよ」


55
「まいにちまいにちライト
を浴びてー
ライト言葉になっちまったー 人って・・・」


56
「仕事柄不幸なライト族は
サービス業全盛中
サービス言葉で疾走してるのかな」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


57
「きつくても走った後は
いい汗野
ゆっくり歩く・・・わけじゃないよね」


58
「自分で決める走りなら
少しは
いい感じ野ランニングだけどね」


59
「(どこまでもひろうひろうひろう
疲労野
今年もまた 自殺者数万人か・・・)」


59
「(だいじょうぶ? ううん、大丈夫よ。
の向こう
溺れそうな無数の手 見える)」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


60
人は個別・具体を生きるから
襲い来る
抽象・制度には手足・心をバタバタさせるだけか


61
独り独りバタバタしても
抽象の
大波乗りは難しいわね


62
ひとりまたひとり
大波に
のまれていく 見える




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


63
オヤカタに預けてしまう
一票は
知らない所で専横してる


64
コカタの日々をつなぐ
心の
一票は雨ざらしだよ


65
古い古いつながりの糸
昔より
か細くなっても生きのびてるわね

註.柳田国男に日本的な組織性を論じた『親方子方』(『柳田國男全集12』ちくま文庫)がある。




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


66
初めの平等も
二手に
分かれていく小道がある


67
オヤカタと段差があれば
つまずいて
変身のオヤカタ獣大きいな


68
テーブルをさっと払って
みんな新しい
手を添える朝はまだまだ先か




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


69
めいめいにどういう対話が
あったのか
よいしょと校門を潜っていく


70
今はもう幼稚園などが
あってさ
学校へもすんなり延長よ


71
見知らぬ者も色色と
さりげなく
猫みたいに鼻突き合わせてるよ


72
お互いに無権力の
渦中で
角出したり槍出したりし始める




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


73
日々なじみ暗転して
スネ夫らを
引き連れてジャイアン通る


74
花が何度も咲いて
小さな
こころたちが分裂・増殖してゆく


75
校内の近寄り難い
禁忌の
匂い立つ場所も固まっていく


76
そうやって世界は形成
されていく
のか 空は青、いい天気だ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


77
男の子たちの丘の手前
女の子たち
糸を吐き糸を張り巡らせる


78
糸に触れる鳴子の音で
秘かに
グループ形成を構想する


79
男の子にはたぶん見えない
奥の院に
女王蜂の巣があるんだわ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


80
「みんな」から見えないところ
負の魂が
イスの近くに佇(た)っている

 註.「負」について
 大原富枝自身は、こう言っている。
 ――私が書く作品はあくまで「負の世界」に生きて徹するものばかりです。なぜ中途半端な幸福などを書く必要がありますか。人間は、そして女性は、最初から「負」を背負って生きてきて、「負」を埋めるために生きているものなのです。(松岡正剛 千夜千冊 0741夜 「婉という女」より)



81
負ゆえに石を投げられても
生きていく
ふふふと時には微笑む


82
深い井戸を底まで降りる
そんな冒険しなくても
人は皆スペクトラムを生きる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


83
親方と呼ばれても〈そこ〉
そこだけは
黙守しなくてはと誓ったか


84
次代に譲ってからは
〈そこだけは〉
はやすやすと飛び越されて


85
ひねくれた父ちゃん坊やが
政治して
〈そこだけは〉が次々となぎ倒されていく


86
ひび割れてひそかにあふれる
非歌(ひか)歌う
ブラック、ブラック、ブラック!




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


87
聞こえて来るCMが崩れる
砂のように
ぼくの耳の中息絶えていく


88
一緒に・・・やろう・・・
2020
オリンピック・・・ピック


89
いっ・・・や・・・・・
に・・・・
おりん・・・おりん・・・ぴくぴく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


90
ぼくの税金分の使い込みは
まあ許そう
けど電波の波乗りで僕ん家に侵入するなよ


91
おりんぴっくなんて(どうでも
いいさ) いいさ
若い頃の口癖でつぶやいてる


92
「感動」イラン「元気」もイラン
癒され国の下心
くっついてくるなよ、キモチ悪!


93
そんなふうに見えた聞こえた
それを記しただけ
それで〈批評〉にもなってるはずさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


94
いいんだぜ 思いっきり走って
飛んで跳ねて
きみはきみ、ぼくはぼく のんびりやるさ


95
知らない人の幸不幸
そりゃあ
いい感じいい気分に越したことはないと思うな


96
そんなとこから突き抜けて
人の心
を漁(すなど)る時 えっ!きみたちは誰?




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



箸を上げ下ろすこの世界
ばかりは
重力が強くって強くって


98
そんなの気にしないわよ
と別イメージ
膨らませても とっとっと重力圏落下!


99
月のことはわからないわ
イメージ
イメージイメージ!重力引力圏稼働中!




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


100
ほんとうに、お隣さん何
やってんだろう
時間の肌色がぼくと違うな


101
同じ電車に同席してても
アイマイミー
ユーユアユー 進行して行く


102
あ 木の葉があい・えおうと
紅葉してる
ぼくの中を棚引いてゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


103
椅子に座り、改まって
お決まりの
話し合いのコースを歩まなくっても


104
ぼくとねこぼくと大空
ぼくと・・・
歩いてくる人、対話は尽きない


105
言葉を覚えた、それ以前の
空気に
揺らぐ揺るがす言葉模様




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


106
言葉はやわらかな日差し
しなびた
心にみどりを散布する


107
言葉は鋭い兇器
心は
引き寄せられザクザク ザクザク


108
言葉は大気のように
湧いている
知らぬ間に湧く言葉もある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


109
言葉の重量や
深さや
明暗が違っても同列にひしめく


110
時代の言葉のイメージ
につながれて
上へ上へ這(は)い上がろうとあがいてるよ


111
重力に貫かれて
同列へ
滑り落ちおちおち眠れない


112
漱石の則天去私の
椅子壊れ
老(ふ)けてフツーの父は手持無沙汰だ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


113
おんなじ自由のはずなのに
女と男
古い歴史を背負ってそれぞれ群れ居る


114
男女の谷間を歩く
もわっと
澱(おり)ある言葉が漂ってくる


115
出合いも続けるのも
難しいね
平均台の二色(ふたいろ)の時間




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


116
どちらかの当事者だ
でも時には
ぐーんと退(ひ)いて等しく見渡さないと


117
ないとナイトnightには
片側で
石をつかんでは投げ続けている


118
当事者と観察者
二重の
体温が難しい綱渡りする




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


119
今ここを生きてるようで
小さい頃の
足取りが顔を出すこともある


120
自分を生きてるようで
川村くんや
旗めく言葉の匂いもする


121
純粋な自分というのは
難しいね
いろんなものが混じったり接続したり




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


122
渦巻く自分の中に
ドアを叩く
音がする ああもう時分時か


123
よいしょと部屋を出ると
いい匂い
別世界のよう 天気も良い


124
小世界を行き来する
日々の旅
シームレスだなあ ぼくの丘陵地




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


125
例えば商品棚や在庫など
と対話して
一日の大半が過ぎてゆく


126
時間の小さなひび割れは
自分を
振り返るひそかな場所さ


127
誰もが無意識みたい
一日の
舟に乗り巡ってまた降りてくる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


128
例えば〈はな〉という音に
出会った時
わたしの内にさざ波の立つ


129
すんなりと〈花〉をキャッチ
アンド・スロー
みたいに走り出せないな


130
〈花〉にも手垢かが付いていて
〈はぁなぁ〉と
口ずさんでも溶け出してくる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


131
〈花〉のずっと手前には
繁ったり
萎(しお)れたりする〈は〉の駅がある


132
通勤の朝〈は〉の駅から
すべり出す
〈花〉のことは思ってもみない


133
それでも駅を出る頃には
ネクタイ直し
白手袋して〈花〉言葉を語り出す


134
眼には見えないけど シームレスの
誰もが
武装する モビルスーツ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


135
〈は〉の走り出す極微の未来は
自分道ではある
葉となるのか花となるのか


136
驚きはしないけどくり返す
自分道
小世界へ通じているよ


137
当たり前みたいにきみは
言葉の舟
揺ら揺らと接岸して来る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


138
張り詰めた空気を破る
(ガッシャーン)
〈は〉はははと笑いに倒れ込む


139
重たい blow くらってさ
blow blew blown
〈は〉は笑いの森を駆けて行く


140
「それって バーストイントゥラフター」
何それ?
「burst into laughter さ」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


141
ぼくだって〈は〉の道から
ずれずれて
「ハヒフヘホ~!」と言葉遊ぶさ


142
バイキンの道にも日は照り
いくつもの
筋道があり行き交いがある


143
オイルショック時のよう
まあすくなくて
まあすくなくて焦りふためく見える




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


144
〈あ〉 今のは鳥
だったかな?
(いえいえ鳥ではありません)


145
〈ああ あ〉 もうお終いだ
(いえいえ
まだまだ残りがほらありますよ)


146
〈おお〉 すごい!
(いえいえ
驚くほどのものではありませんよ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


147
〈あ〉 かがやいてるね 
〈うん〉 ひかってるね
〈ああ〉 かぜにちいさくゆれてるよ


148
〈あ〉   〈おお〉
足跡か
何がいつここを通ったのかな


149
〈うーん〉 足がちっちゃいね
こっちは
木の葉が一枚落ちてるだけよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


150
秘境×鉄道を行く
カナダ無人の
雪原えいえんと行くのか


151
寒々した映像から
さむざむを
越えて越えた暮らしのかたち


152
駅舎もない吹きさらしで
2時間も
遅れた列車を待ったのかヤスくん
 
註.NHK「行くぞ!最果て!秘境×鉄道」、2017年2月の第1弾
「縦断 カナダ大雪原」の再放送を観て。旅人:古原靖久。




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


153
昔、星野道夫が
たどったアラスカの
言葉の道を歩いたことがある


154
出会う人出会う眼差し
冷えた大気の下
言葉が人の道なりにゆく


155
満天の星の下独り
野営して
カリブーの群れを目と耳で追う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


156
書かれた世界の遙か
向こうに
語られては消えゆく世界があった


157
それがゆったりした
虹の橋を
すべるような世界だったとは思わない


158
今では頭脳社会の
花盛り
裏通りにも遺伝子の花が咲く


159
花はあっても歌があっても
花がない
歌がない 万人の歌がない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


160
走り続けるゲームは楽しい
日々刻々
走り続けるのは 楽しいかい?


161
仕方かなかった 昔の
スローな
走法には戻れないさ


162
問題はそこかあそこか
どこか
わからない ただ進んでいる日々




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


163
力入れすぎも手抜きも
するりすり抜け
主流の時間は流れる


164
「なるようにしかならない」
いい言葉だ
あきらめの埃払えばバイクが光る


165
力んだ装飾言葉
とは無縁に
地味にバイクは走り続ける




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


166
あ、ここはいつもの曲がり角
雲が湧き
見慣れた風景が暗転する


167
ピシピシと亀裂が走り
迷い込む
魔のデルタ地帯ってわけね


168
そうでもないけどね 歩いている
と急に
クモの巣が 心コロコロさ


169
占いはしないさ ほら
風もまた出る
調子もよくなり滑り出すさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


170
ひと言にどんより空気
重くなる
もう別世界に入ってるな


171
飛び石のリズミカルな
走法は
飛び越してきた闇を知らない


172
ある時ふと耳鳴りする
無意識に
目をつぶってきた闇からの伝言か




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


173
ふさいでもふさいでも 来る
未決の
影が解けて付きまとう


174
あ それは 言わないでも
瞬時に
わかる 言葉にならないものが過(よぎ)る


175
言葉のぬかるみが今は
どこまでも
続いている 予感悪寒終末感


176
いくら元気もらっても
癒されても
焼け石に水の蒸発している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


177
病院の待合室は
マスク人
ぼくら二三人も素で混じってる


178
咳すると空気がぴぃんと
張り詰めて
緊張マクスの気層を感じる


179
病院の待合室から
道際の
木の小枝がふるふる揺れてる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


180
この現在の大気の中から
大気の
かたち成すドーム面へ見えない火を放つ


181
ひとりの奥深い場に
まぼろしの
火柱が映える (ほんとうに?)


182
どんなに小さなことにも
真と偽の
分かれ閉じるみちが見える


183
が それでも いずれの道も
未知の帆に
いっぱい風を受けている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


184
例えば、地名の由来には
いくつもの説
がある。人は自由に考える。


185
電車に乗ったのは
見事な晴天のため
ということもありうるとしても


186
柳田国男が発掘した
わが国の地名の起源
には土地の形状から来たものが大半という。


187
こうした歴史の主流の
足跡の真が、
多様な考えの真を判定する。




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


188
同じ日本語なのに 言葉が
言葉が
通じないことがあるんだな


189
親にもあった昔の通路
忘れ果て
子の通路を閉ざすはてさて親は


190
暮らしの中の日々の手入れ
のように
言葉の通路にも潤いが要るさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


191
始まりの言葉から途方もなく
くり返し
踏み固められてきた微妙な言葉の場所


192
愛も憎しみも行き交う
奥深い
場所に人は出入りしている


193
奥深い流れから
通路を
ウヨウヨ変身し頑迷な顔になる


194
何万年経っても濁り
消えない
微妙な言葉の場所よ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


195
もう言葉がないや Nothing!
と思ってる
とどこからか湧いてくる言葉たち


196
つまづいてオウオウオウと
意味もなく
言葉未満に倒れ伏す


197
二人なら思わぬ所に
滲(にじ)み出し
言葉転がり行楽に出る


198
おんなじ桜道にいて
一つ言葉が
桜とさくらに分かれ匂ってる


199
言葉ってことばってコトバって
自力の
向こうから押し寄せ湧く




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


200
崩落した言葉の道は
進めない
茫然と佇むばかり


201
緑はある岩も水音も
確かにある
言葉ばかりが空白のまま


202
言葉の異常気象
今までの
生い茂った言葉たちが地滑りしてる


203
遙か遙か言葉の始まりが
露岩して
今日の日に照らされている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



204
ぼくが今ここにいなければ
いなければ
この世界は存在しないさ 無


205
むむむむむ無数の世界
カラフルに
オレがわたしがぼくが 世界が存在している


206
ぼくのひと筆がさっと
この世界を
ほうら 微かに震わすだろう




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


207
それぞれが言葉以前の
ことば
心の内に枝を揺らしたり葉を散らしたり


208
小さくても世界と世界が
反発する
交わる少し解け合う


209
色色が押し合いへし合い
噴霧する
互いに額縁の中に収まって 見える


210
始まりの朝見えない各所から
のろしが上がる
色色の音は聞こえない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


211
今ここが全てさとアツく
踊り出す
それはいいけどさ時間の海は深いよ


212
風が流れる歌が起こる
よおく見ると
深い時間の波をかぶってる


213
時間の層をひとひとひとひ
とが続いて
ぼくがきみが今ここにいるんだね




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


214
無数の人から多重化する
世界が
鼓動している ほら、ここあったかい


215
色んな温もりのかたち
言葉の
深みから湧き上がってくる


216
ひとつの言葉は色色の
色を背負い
スペクトルに佇む ああ夕日がきれい




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


217
今日もいつも通りを
歩いていたら
突然襲ってくる見えない影


218
うぃるすみすうぃるすみす
うぃるすみっす!
呪文じゃあ退散ムリだよね


219
横着になりすぎた
人の世界を
かき回してるのかうぃるすみす!




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


220
うぃるすみすは嘘偽りも
なぎ倒す
まるで人でなしみたい


221
人の足跡(そくせき)をたどらせても
うぃるすみすは
心の内までは入り込めないな


222
悪さするうぃるすみすは
からだの中を
歌い踊るブレイクダンス




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


223
見えないものはうぃるすみす
オタクの甘いサ行に
隠れていてもウィル居るじゃん!


224
見つかったからにはもう
ジタバタしない
ア行ラ行サ行からウヨウヨ出るぞ


225
隅っこから発掘された
うれしさに
五十音の全権掌握とネットリ勘違いする




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


226
言葉の人となったからには
チクチク
ジカジカしても脱げはしない


227
しないシナイ竹刀振り回す
凶暴な
言葉の死を願望してる?


228
歩いて行く服の人の
無言の中
緊縛された言葉たちのファッションショー


229
まっさらな恋する前には
戻れない
よれよれのシーツに独り横たわる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


230
人のビョーキは個別的だが
すなわち
生まれ育ちにいろいろあって


231
不明の森を訪ね歩く
霧は晴れない
湿気が気にかかる 嫌だな


232
人類の言葉の日は
楽しいことばかり
ではなく右折してゆくものもあった




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


233
言葉の不在も死の存在も
ただイメージ
の中にのみ生きて増殖する


234
ううん、それはちょっと
ビミョーな
気がする気が晴れない


235
別れてもイメージは残り
さびしい
峡谷には子が取り残される


236
言葉も死も肉体とともに
イメージの
流れを日々旅している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


237
木の幹に手触れてみる
今では
もうなあんにも感じ取れない


238
うっすらと空耳のよう
幻の
韻が夕日の中駆け抜ける


239
木が生きて在り対話する
行き来する
遙かな時代が確かにあった


240
これからは木も人工木だと
イメージの木を
いい感じに構成し始めている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


241
子供の頃鈴の紐に
よじ登り
遊んだ無人の神社を通る


242
ここにも大楠が
何百年か
どっしり座っている


243
見上げると小さな葉たち
小刻みに
揺れている揺れている


244
近くの小さな
郵便局で
カクテイシンコクを郵送した




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


245
遙かな昔には言葉は
単純!
だった(ほんきで遊んでくれてるの?)


246
おとなに近づくと
言葉は
頭脳で定性分析される


247
分析の網目を抜けて
気晴らしの
遊びに出かけてゆく言葉たち




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


248
世界には層と領域があり
時間が
自然な顔して流れてる


249
今日も起き出して
身繕いし
小領域間を行き来する


250
あらゆる層と領域を
縫い上げよう
という作為の特殊領域もある


251
時にはふいと立ち止まり
あらゆる層
領域を超えてイメージの鳥を飛ばす




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


252
ソラマメのさやが黒くなったら
種を収穫する
六月 天日に干すとこんがり色になる


253
去年は冷蔵庫に開きがなく
すぐに入れるところを
数ヶ月後にソラマメの種を入れた


254
十一月、また種をまこうとしたら
ゾウムシが
豆からちらちら出てきた


255
残りのソラマメは
何日か
天日干してゾウムシを放ったが


256
一斉には出ていかない
引きこもりも
中で死んでいるゾウムシもいる


257
残りのソラマメは煮豆にする
600gを
水に漬けたらさらにゾウムシ40匹も出てきた


258
こんな風にささいなことに
手足頭を動かして
日々は流れてゆくよ そうだよね?




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


259
シジフォスの岩運びが
大いなる
徒労に見える時こころは死線に魅(ひ)かれてる


260
大岩の転げ落ちる
乾いた
韻がカラカラと内に鳴っている


261
ギリシアから神話が運ばれ
脱色されて
この地の気分の谷に入る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


262
なあんにも考えてない
ように見えて
内では精神の自然に振る舞う


263
啓蒙の上から目線
クールすぎるぜ
ぼくらは馬耳東風にまたがり進む


264
世界の終わり世界の・・・
唱えなくても いつか
それぞれに世界の終わりはやって来るさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


265
「今 水に潜って苦しいっていう
イメージが
なぜか湧いて苦しみに立ち会ったよ」


266
「たぶん意味もなくと言うほかない
微細な機構から
あなた固有の道に現れたのね」


267
「イメージのふるいどの
時間から
汲み上げるこびとがいるんだぜ」


268
「誰もが時時刻刻と
シームレスの
なめらかな時空旅行をしてるんだわ」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


269
誰もがよくわからない
不明の
森の中 きみならどうする?


270
自分の部屋に引きこもり
シャットダウン
でもいいけどさ 空は青い


271
オロオロする賢治みたいな
みんなの道が
ひとすじなさそうでありそうな


272
積まれてきた小石の上に
またひとつ
慎重に積み上げてゆくさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


273
きっと上から見たら
水溜まり
ぼくら右往左往あるいは気ままに泳ぐ


274
きっと暗めの色を
制御
したくって一滴落とす言葉がある


275
上空を飛行しすぎて
乾いた
視線は病の域に入る


275
視線は自在に変位する
けれども
視線の休む所は潤う水さ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


277
「あっ yuki ゆき 雪が
降ってるよ」
「ああ そうだ 雪だね」


278
「あっ」の谷間から
微かに
りんりんりんと響いて来る


279
突然に深い谷間に
雪が降り
言葉の雪が反響し合う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


280
あの人なら信じられるか
渇いたのど
微風に木の葉が揺れている?


281
日差し浴び信の度合が
変幻する
スペクトル帯を変位していく


282
自身さえ信100%はかなわない
このでこぼこの
世界線、走れメロス!




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


283
差し迫った用件たちは
メモに刺され
視線近くに横たえられる


284
またいつか違う表情でピン留めされるか
終わったものは
ひとつひとつ捨てられていく


285
忘れてもいいものたちは
メモの外
出番をひっそり待っている


286
メモなどなかった時代
懐かしくはない
けれどこれが現在の泳法




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


287
独り 雲がゆっくりと
大空を
渡ってゆくのが見える


288
独り 時にはひとりの
場所から
(おおーい)と小さく呼びかけてみる


289
返事は期待していない
元気をあげよう
とも思わない 微風に独り




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


290
もうここでお終いかと
戸を立てる
とトントンと叩く者がいる


291
シッと耳を澄ました
死が去り
促音がのどの奥につかえている


292
言葉が生きてるかぎり
死は詩は
しわしわになっても歩き続ける




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



293
赤ちゃんは裸ん坊
になってても
気にしないみたいアオアオと這う


294
何という国境を
潜ってきたのか
われら衣服などで武装している


295
ネコの前でおならする
我が家のネコたちに
さざ波も立たないみたい


296
(恥ずかしい)となってしまったからには
ネコみたいに
はだかで街中を歩けないな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



297
「しまったしまったしまった」
「どうしたの」
「はだかと恥がシームレスしまった」


298
裸と恥はだかはじが
ハダカジにしまった
エピデミックパンデミック!


299
「閉まったものは仕方がない」
「箸で食べるしまった」
「化粧するしまった」


300
誰もが普通顔して
通って行く
しまった通りが今日も開いている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


301
心心心降り積もるシンシン
振り払っても
しんしんしんと静まる気配がない


302
二心三心慢心乱心
くり返し
無心虚心に帰心したいな


303
心から心に懸かる
曇天は
焦れったいな鈍色のスペクトル




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


304
言葉の川が流れている
重たい軽い
明るい暗い色んな言葉たちがぷかぷか流れていく


305
時代の大気の下(もと)
踊り出す
言葉もあれば身悶えする言葉もある


306
何気ないぼくのつぶやきも
するすると
言葉の川に吸い込まれていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


307
何気ない大気や風に
揺れる
揺れる揺れるよお おっとっと


308
白線幅のみちをゆく
気軽に
Aとか非Aとか言い出せない


309
「ぼくなんかが根本的に大事におもっていることは、
人間は個人として自由に生きられ自由にかんがえられ、そして不自由がなければいちばんいい
にもかかわらず、社会的にも集団的にも生きなくてはならないということになってしまったということです。」

註.309は、吉本隆明『マルクス―読みかえの方法』より。


310
たくさんの花々みたいに
人の考えが咲いている
人の細道を今日もゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


311
言葉にはクソッタレもあれば
小さな明かりもある
だから詩を書く 言葉の「第十八願」


312
どんな言葉でも自由さ
制限スピード超えて
詩は疾走する 言葉の「第十八願」


313
言葉にいのち流れて
いるかぎり
ぼくも歌うさ 言葉の「第十八願」

 註.
第十八願「わたしが仏になるとき、すべての人々が心から信じて、わたしの国に生れたいと願い、わずか十回でも念仏して、もし生れることができないようなら、わたしは決してさとりを開きません 。」(Wikipedia「四十八願」より)





詩『言葉の街から』 対話シリーズ


314
たったひとりの読者
しかいなくても
詩は書かれるさ 言葉の十八願を超えて


315
生きてるかぎりつぶやき
語るように
詩もまたつぶやき語る 言葉の十八願を超えて


316
言葉たちの無意識の
ふるまいに
人も詩も生きて在る 言葉の十八願を超えて




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


317
喧騒の言葉の道を
低く低く
目線も下げて通り過ぎてゆく


318
ほんとうは言葉では言えない
足音が
言葉のリズムになっているはずさ


319
言葉を大量消費してはいても
無数の
保留が沈黙の内に響いている


320
何事も終止や結びが
必要だ
急かされる句点はむずかしいな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


321
言葉が起動すると
ガンダムの
胸に木霊する人間の深みから


322
するすると機動するぞ
地平が開け
現在の舞台がはじまる


323
どこか惑星系の戦争
ではない
人類の不明の旅の硝煙が今日も上がる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


324
子どもにズームインする
ひたすらに
土遊びをしている昼下がり


325
ああそうか、それしてあれして
そうするんだ
道順がちゃんとあるんだね


326
動植物の土の匂い
の付いた
人間が深みから浮上している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


327
(ネコが行く)いつもの玄関先
撫でながら歌う
「きょうはてんきいいですね あっさですよう」


328
「ココドウイクデスカ?」
「ああ そこね
そこはねどれふぁだんぐれんよ」


329
意味の峠を下ったら
なんとなく
わかり合える言葉の邑(むら)に出る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


330
ゴミ収集ということ
がなかった
長い長い時代があった


331
同じく使われた言葉たちも
静かに
道端に横たわっていた


332
今やコミュニケーション!
消費消費消費
都市の街路を駆け巡る言葉の消費


333
夢のプラスチックも言葉たちも
消費の後は
もはや道端には眠れない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


334
遙か精神の遺伝子は
同じでも
もう言葉は草の上に寝そべることはない


335
自然から隔てられた心は
毎回しぜんに
ぴょおんと翼に飛び乗る


336
草花のみどりや匂い
と隔てられ
言葉は人工の翼をキラキラさせる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


337
時には「何で勉強するの?」
と言ってみたり
「どうせいつか死ぬんだからさ」とすねることあるよね


338
でも黙々と無数の足が
歩いてきたし
歩いているし歩いて行くんだろうな


339
小さな過去と未来に
挟まれて
ぼくら狭苦しい現在(いま)を生きる


340
重力の中心は
今、まさに今
ほうら肌に感じるなあ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


341
ソーシャル・ディスタンシング!
なんとなくわかるけど
シャルシャル歌い踊り出す気分?


342
〈あ〉と思ったら、〈愛は地球を救う〉も
〈愛飢え男〉も
ぞろぞろ近づいてくる


343
二心や下心あれば
溶け込んで
〈あ〉だけからも臭うんだよな


344
〈あ〉は、しっしっと払いながら
みちのみちを
ひとりゆったり歩いて行くんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


345
AIが[ワタシハ]と言う。
映像は
桜満開の春四月の通り。


346
AIの[ワタシハ]が
しだいに
「わたしは」に聞こえはじめる


347
濃い化粧のAI顔の
男が
映像の海を泳いでいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


348
SNSの波乗りはからだに悪い
ぶつかる波には
この野郎!と言いネコ遊びにはいいねと思う


349
流れていく言葉や映像
のタイムライン(TL)
時にはぼうっと景色を見ている


350
TLの流れからはずれて
沈黙の
支流で水遊びしている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


351
じっとしてるだまってる

列車は静かに走行している


352
中声と大声の渦中
の無言
の mental energy は小さくはない


353
砂場に独り遊んでる子の
手から落とす
砂の風がいい感じだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


354
こちらは晴れ続きだった
やっと夜中に雨
天気がいつもより気がかりだった


355
夜中の静けさの中
たぶん畑は
雨に濡れているのだろうな


356
コロナの迫る沈黙の夜にも
たくさんの
大きな気がかりが泡立ってる


357
あの原発大事故時に
ふと涙が
滲むこともあったがまた コロナの夜




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


358
賢治の時代まで飢饉が
あった
内側は知らないけど 彼岸花


359
今内側にいて
独り独り
頬杖をつき暗雲をぼんやり見ている


360
鑑賞するばかりになった
彼岸花
救荒の赤い不安が過去形から立ち上がる



詩『言葉の街から』 対話シリーズ


361
いくつかのレイヤーの中
分岐する
無数の道があり彼岸花点在する


362
思いもよらぬ特異点
はい上がる
ことができるだろうか 遠い空


363
そりゃあねなんとかするさ
それにしても
暗い昔の歌しかつぶやけないぜ


364
誰にこびへつらうこともない
(きついつらいうれしい)
自然体のうた歌いたいな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


365
少年の時の口癖は
(くだらん)や
(どうでもいい)だったが一応役割は果たしたものだ 惨


366
現在に翻訳すると
ポエムも
非ポエムもどうでもいいか し、しっー


367
危うい細い崖道を
歩いている
だからさもうそっちには行けないな 天気がいい




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


368
地球という水槽の中
に違いなくても
それダメこれダメはストレスすうっとレス!


369
地球変動の赤模様
の下で
誰もが右往左往している


370
未来からの視線行使しても
鳥たちは
バタバタ現在の沼に墜ちていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


371
大都市の夜なのに
静かだねえ
人っ子一人いないわね 濁


372
静かな夜、星が出てるね
向こうで
虫の鳴き声もしてるわ 遠


373
なにげない夜の抒情
の底には
コロナの夜が蠢(うごめ)いている 惨




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


374
123と数量の森へ
入っていくと
いちにいさんと口ずさんだ記憶遠のく うん?


375
数量や確度の網が
振り分ける
ひとつひとつの生(なま)の運命 あ


376
抽象の火の見櫓(やぐら)から
見渡せば
煙に巻かれる人がかすむ う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


377
ひとつの道には色色と
いくつもの
見えないスペクトルの小道がある


378
新緑と日差しの道
を歩む
例えば赤色の帯域へ入る


379
同じ道で出会った人
青色の
帯域から浮上した匂いする


380
日差しを浴びた新緑
人により
ヘビーメタルな音響も立てる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


381
林立するビル群遠く
(おーい おーい)
沈黙の大声で呼んでみる


382
(びくん)とも木霊しないけど
静かに
走行する都市の匂いがする


383
雨に濡れたビル群の肌
黙々と
現在(いま)を呼吸している 深深深




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


384
(う ううう)と言葉になれなくても
もうそれは
言葉の住人言葉の流れの中に


385
(お おおお)と言ったら
シームレスに
相手が接続してくれる 言葉川


386
(あ あああ)と言われても
確かに
よくわからないでもわかることがある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


387
〈あ〉〈う〉ばかりが不明の道
ではなく
無数の不明の訳語のダンス跡の


388
サスティナブルカーニバル
チェンジャブル
ブルブルのアメリカンブルース


389
肌合いのなじんだ言葉から
飛び立って
概念の海で波乗りしてるね きみ


390
それもいいけどさ きみだって
お家帰って
お風呂に入り鼻歌うたいもするよね




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


391
例えば、愛や絆の
抽象の
言葉の橋を渡る時 うっ


392
〈あ〉から〈い〉への道が霞んで
言葉の道
よろよろと進んでいく


393
〈き〉〈ず〉〈な〉の道は泥濘(ぬかる)んで
避けようもなく
〈づ〉の変調にずれてゆく


394
でこぼこの絆の道を
カッコつけ
滑らかに滑る先導獣




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


395
おそらくは化粧する時
心の手も
自然に肌の上をすべるすべる


396
小さな女の子が
口紅を
引いてしまって眼差したちにおののく


397
鏡にふと映る
遙かな
自らの化粧の起源


398
そう言えば鳥や虫たちも
化粧する
ダンスダンスダンスする




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


399
いつまで待っていても
「もういいよ」
のないことがある ありふれた月曜日


400
相手はきれいさっぱりの
青空の下
別のレイヤーであれこれしてる


401
顔を合わせ続ける以上
言うに言われぬ
言葉坂 くっくくくく苦




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


402
〈普通〉をすくい上げる時
水とともに
普通になれないものが必ず抜けていく


403
網目から抜け落ちる
数えられない者
や樹上に超越する者


404
そんな取りこぼしは忘れ
〈普通〉の
ふろしきが部屋の隅にある


405
〈普通〉のふろしきでも
多様な
重力分布が観測されている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


406
心にもビミョウなさじ加減
があり 悔(カイ)
こんこんと湧く火消しの水は


407
その一線に心の手が
ふれると
〈普通〉を越えて気がふれ峠


408
〈普通〉から風に押されて
たったひと言
みるみると水面が赤一面


409
つながりのいとを放てば
社会に
そまりそめられソマリエール 存(ゾン)



詩『言葉の街から』 対話シリーズ


410
今はもう考えられない
あなたのこと
だから「来ないで」コロナの夜


411
「来ないで」「来ないで」
「来ないで」
わたしは独りあなたも独り


412
五月の空はきれい花も咲く
でも「来ないで」
自然も独りわたしも独り


413
「来ないで」あなたは独り
(来たらダメやろ)
(来るなちゅうねん)
「来ないで」独り夢現のコロナの夜




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


414
声が聞こえるこえがきこえる
夜の底から
乾いた大地絶たれる命水


415
自給性をずっと昔に振り捨てて
都市生活に入ってしまったから
コロナの夜は(おお 明日からどうしよう)


416
凍り付いた仕事と消費
コロナの
分断する生命線(おお これからどうしよう)


417
いつものようにコーヒーも飲む
んだけど
遠い今の信号に身は微かにふるえる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


418
家族内の結合手は
歯みがきみたい
自然に無言の内に行き交う


419
テレビでは恥じらいもなく
元気与えるとか言う
その結合手信じられない


420
コロナの夜も結合手は
しまい込んで
ひとりひとり夜の底に座る


421
人や人間界の澱みを
ざらえるように
コロナ夜が降り注いでいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


422
(あ、木の葉が揺れている)
いつもの
感じが別のレイヤーに入り込む


423
(いえ、そんなつもりではなくて)
と思っても
吹きさらしの場所に待たされる


424
(どうも受け身ばかりはいけない)
道端の
花をむしって明日の天気占いでもするか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


425
(ううううー)小さい子の
緊急事態
の中には入り込めないなあ


426
内景は音やリズムの
言葉や
身ぶり手ぶりに漏れ出てはいる


427
(ううううー)コロナの夜も
小さい子の
内景はあんまり変わっていないか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


428
見ている声をかけない
離れている
これも対話なんでも対話


429
黙っているのに言葉は
沈黙の内を
ゆつくり羽ばたいている


430
指示性から引きこもり
静かな
自己表出の海が波立つ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


431
(言葉が燃えている)
カチカチ山
カチカチボウボウどうしちまったんだオレ?


432
(ワカラナイ)としか言いようがない
それにしても
うさぎのダンスが鬱陶しいな


433
しなやかな草たちを踏みつけて
うさぎのダンス
Stay Home ! Stay Home !


434
言葉の縫い目が粗いのは
うさぎの
浸かっている世界像のせいさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


435
しなやかな草たちも
風次第
毛羽立ったりささくれたりもする


436
去年の初夏の風は
3.11も薄れ
「いい風吹いてるね」「ええ、そうね」


437
と とっとっと前のめりの
不安が
初夏のみどりに反復する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


438
スーパーは消費の展示場
少しずつ
日々姿を変えていく


439
〈いいもの〉は人それぞれで
或る人が
一度も触れない品もある


440
冷蔵の化粧もあってか
初夏五月
店頭にまだリンゴたちがいる


441
少し重たい岩手のピーナッツ煎餅の所に
新製品か
軽めのものが! 一度きりの出会いもある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


442
竈(かまど)からの煙立つ立たない
時代遙か
今では数値解析が取って代わる


443
乾いた数値解析が
人の匂いや
煙を追跡できなければ 無


444
ひとりひとりはこぶし開いて
ひっそりと
畳んで数値の向こうへ去ってゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


445
吹く風に心の足は
避けようもなく
沈黙の道を折れ曲がっていく


446
どうしようもなくなくの
うなだれた
通路には他人は入れない


447
ただただ耳を澄ませば
さびしい
足音くらいは聞こえてくるよ


448
言葉はなく言葉はなく
荒涼とした
言葉以前の匂いする街




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


449
「常」にひびが入り「急」が
駆けてくる
心の「常」が夢遊する夜


450
寸断されて「明」「日」がない
都市道に
「崩壊」感覚がずしんと陣取っている


451
汚染された閉域だから
まだまだ
「建」という文字の圏外にいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


452
竜宮城ではないにしても
遠いなあ
期限が来るとナレンコ(名連呼)で近づいてくる


453
無言のYes Noしか
放っていない
としても(きみたち代理だよね)とは思う


454
こちらと無縁な居座り
と見えるなら
蹴ったくり落としていいよね


455
宿縁(しゅくえん)の日々に忙しく
喜怒哀楽に
埋もれ竜宮城の明かりは見えない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


456
あらあ、こんな所に
花が咲いてる
照る日にコンクリートの隙間に


457
喩の峠を下り 湯につかる
ああこの
ゆ加減いいな 体に滲みる


458
肯定は身近の小さな
例えば
見知った人がいい顔して通り過ぎる


459
どんな否定の文脈にも
肯定の
薄暗い地下道がのびている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


460
どんなにジタバタして
泣き叫んでも
どうにもならない巨壁が今ここにある


461
おれが正義だいやわたしが正義よ
血と泥沼の
抜けるに抜けられない世界線がある


462
かれはそれを〈関係の絶対性〉と名付けた
どんな絆も
作為も元気与えるの徒党も巨壁には歯が立たない


463
長い時間の流れの中で
巨壁も
軽く乗り越えられるようになるさ


464
そうしてまた別の巨壁
に人は遭遇する
〈おまえはその主流を見つめて歩け〉




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


465
とっても自然な気分って
あるよね
ああこれはうまい!みたいな それ


466
それ! ソレソレソレで
終日
遊びほうけて眠る 子ども時代だけでござるか・・・


467
よそ行きで乗ってしまった
ブレーキ!
踏んでも(おっとっと)下車できぬぞよ


468
あたり前の気分を畳み
駅を出て
化粧の街へ出かけて行くんだ きみは


469
(ちょっと なんか変だなあ)
と思っても
シームレスに人人人は突き進む




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


470
どおどお と馬を止めて
古い駅
に入って行くと古い時間の匂いする


471
現在(いま)の目からは異装異様でも
それが当たり前
時間旅にわらじをきゅっと結ぶ


472
時間の匂いにもなじみ
だんだんだん
風物に目は慣れ川で水浴びもする


473
あらあ 遠い現在(いま)と違って
言葉たち
土足に踏まれて土と草の匂い立つ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


474
やんぶらか峠を下る
山原(やんばら)の
おんちゃんが風の言葉に染まっている


475
あの山向こうはよお知らんな
時々は
見慣れぬ言葉どさりと運ばれてくる


476
これもそれも同じニホンゴと
言いなさるか
そお言われてもよおわからんばい




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


477
山向こうからやって来る
赤ちゃんは
バブバブバブ異国語を放つ


478
んまっんまったーたん
意味網の
下の方をバタバタ泳いでる


479
赤ちゃんの言葉は無意味
ではなくて
言葉の手前の匂いや味のダンス!




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


480
雨が降っている 人によって
異なる雨
が降っている 明日の畑はまだいいか


481
雨音を耳にしながら
心走ってゆく
植えて間もない西瓜畑へ


482
畑に行かない日々もまた
苗たちは
わたしの知らない日々の流れの中にいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


483
あのみどりの葉の勢い
見ている
甘い果実のイメージが張り付いているか


484
西瓜もまた人と同じく
老い枯れて
種を置いて消えてゆく


485
ぼくらの〈ああ〉とか〈おお〉とか
言葉にならない場所を
さりげなく宇宙波が通り過ぎている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


486
宇宙は遙か遠く
また身近でもある
この二重の内にわれらは日々蠢(うごめ)く


487
生命はほんとうは ほら
宇宙塵
に過ぎないのではの疑問符の中にある


488
それでも人の生涯は
永遠みたいに
日々小さな呼吸をしてる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


489
植物も人も信号を上げずに
世界圧に
ひっそりと枯れ死する と見える


490
(信号を上げずに?)それは違う
ような気がする
無言苦が虚空に放たれてはいないか


491
命あるものならば喜怒哀楽
言葉の駅の手前で
歌い踊り嘆き悲しみ放っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


492
(ああ今日もいい天気だな)
ささいなこと
あんまり振り返らずに今日も飛び石を踏む


493
不吉な影の差す場を
通る他ない
時がある(目をつぶったらいけないなあ)


494
どうにもならない影縛り
そんな時は
抜け出して別の道に入ればいいさ


495
ささいな一日から滴る
一滴
ふと振り返る視線に輝くこともある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


496
こんな時代になっても飲めない
ことがある
乾いて乾いて街をさまよう


497
「自販機ならあそこにありますよ」
親切心も
ひび割れた言葉の肌に弾かれる


498
乾いた言葉の肌を潤す
言葉がない 歌がない
ただ自らの深奥をのぞき見る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


499
他人の詩を読むのは
他人を理解する
と同じく難しい 数十年の年輪の


500
言葉の選択と連結
喩の飛行
言葉の手がよく見えないな


501
でもね、どんな手も同時代
の匂いや味や好みの
マス・イメージの海からはい上がってくる


502
肌合いの感じでわかる
だけでいいんだよ
と思っても靄の中突き進む




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


503
自分の言葉のようで
自分の言葉じゃない
みんなの言葉のようで我が家から言葉は出て行く


504
言葉は時代のイメージ
のベッドに眠り
同床異夢、ひとりひとり飛び散っていく


505
言葉は個と時代の
あわいに座り
イメージ群を燃やし燃やす燃やしたろか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


506
耳にした〈い〉に引っかかり
イメージの
裏街道をひとり進んでゆく


507
表ではあったかい朝ごはん
急いで
食べては各々方散っていく


508
簡素な旅装で走る
走る裏街道
忘れられた時間のなか遠めがねもなく走る


509
闇の中耳を澄ませば
いろんな
つぶやきが寄せて来る気配する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


510
闇の中ほのかな明かり
が見える
急にバサッと音もする


511
流れる時間の中の
光景は
次第になじみは薄れていく


512
「さようでござる」「まろは」「おじゃる」
耳は異国に
肌合いは見知った感じもする




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


513
時間の上層は
ビビッド顔で
フレキシブルにサラリーとカッコ付けてる


514
流れ流るるイミテーション
中空の
模倣のエロスだけは遺伝子だろ


515
少し下った時の岸辺には
逢坂や
伏見坂の女衆が歌い踊る


516
ここはどこ?いまはいつ?
時間の
苦い流れの中に浸かっているぜ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


517
虐待もねこっかわいがりも
同じ人の道
荒れた心模様にズンズズンと爪立てもする


518
人の道からハズレようもない
誰にでも
アリエール落ちない汚れ よごれ?


519
「とてもいい感じの人だったのに」
隣からは
見えない関わりの濃度曲線がある


520
ふいと振り向いてみる
遅れたひかり
がある限りは悲しみの中の一滴




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


521
耐えに耐えゆっくりと覆(くつがえ)る
小舟が見える
もう後は闇深々と


522
(あっ そこを越えてしまったら)
しまった
閉まった もう元には戻れない


523
ビミョウな境界線
を投げやりに
跨(また)いだらそこはもう暗黒面


524
ハッピーエンドがいい
に決まってるのに
ダークサイドにズルズルと人の道は




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


525
手練手管で言葉を捕縛
次々に
中空に放つ日もあるが


526
ふと浮上して心に懸かった
言葉が
メモも取られず海に帰ってしまった


527
またいつか大きなひれが
波打つように
新しい姿で現前するか


528
意図合理効率を超えた
頭脳の外から
不随意に湧き出るものがある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


529
打ち上げられた同じ言葉でも
美しく
発火しない空白の空がある


530
背後の心模様が
言葉を
絶対的に染め上げてしまう


531
面々の計らい超えて
虚も充も
むせるような人の道がある


532
青空に緑が映える
ことがある
いのちあるものの震える 深滲(シンシン)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


533
大空は駆けているぞ
見えない
足がある速度があるんだ


534
人間を超えた大きな
時間の中
大空も少しはくたびれていくよ


535
そんな風に見えない聞こえない
世界内を
走っていく人間もいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


536
(あ)土曜日(う)もう五時か
風立ちぬ
(お)にぎわう商店街(え)いい匂い


537
(映像)・ゆったりと街歩き あ ネコ
店先の
人店の中へ 車車車 もう夕暮れ時か


538
「うー そんでねそんでね
うーうー」
泣き濡れた言葉道に迷い込む



詩『言葉の街から』 対話シリーズ


539
すきやんちゆう
ぼんやり道
を歩いてる明日は晴れかな


540
せかせか道にさしかかり
なかなか終わらぬ
PCの「スキャン中」に何度も頭ぶつける


541
けるけける蹴るけれ蹴るよ
急な
ことば坂を転がり突き進む


542
水辺にじっと佇む
鳥みたいに
人も時間に溶けていた時もあったか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


543
特別なジョバンニの切符・・・
とくべつな?
たぶん万人の中に眠っているさ


544
人間界の「通れる/通れない」の切符
ではなくって
誰の手にもある善人/悪人超えた切符


545
切符に気づかなければ
生涯
無意識の銀河鉄道を走る


546
何かが書かれている
わけではない
汚れても失くしてもノープロブレムの切符さ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


547
小さい子どもなら
言葉の塀が高すぎて
うまく言葉屋敷にたどり着けないぞ


548
大人でも言葉の櫂(かい)の
ない小舟
立て続けの波波波には立ち尽くす


549
飛び石の言葉軽やかだね
無数の
黙する石を踏んでるよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


550
ひと言でもいい気はする と
140字
が立ちはだかっている いるぞ入るぞ


551
入ってしまえばきみはもう
140字
の人になり140字の服を着ている


552
自由につぶやいていいんですよ
を背にして
140字の歩幅で言葉の森を歩く


553
今はもう千言万言でも
尽くせぬ
イメージ群を140字に緊縛する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


554
一杯のコーヒーの味
忘れてしまった
わけじゃない今は霞んで見える


555
一杯のコーヒーのためには
これしてあれして
と七曲がりしなくてもいいんだけどね


556
一杯のコーヒーまでの
時間が
複雑骨折してる時がある


557
人の道には越すに越されぬ
峠があり
今日はこの宿に泊まらねばならぬ 悲




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


558
記号の〈あ〉体に近づいた
現在も
家に帰ればぐったり体の〈あ〉と横になる


559
遙か時間の岸辺に立つ
日焼けした裸の
〈あ〉が体ごとぶつかってくる


560
〈あ〉の旅は桃と違って
時間の川
蠢(うごめ)く人の声と下る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


561
もうお終いと畳んでる
夜が明けたら
またいつもの朝だね 眩


562
朝とともに日に慣れて
また一日
ぐるうり巡り帰ってくる 疲


563
前回は手の片隅にあり
この夕べ
言葉の椅子から歌舞音曲の海へ漕ぎ出す 新


564
舞台を下り華やかな衣装
化粧のまま
小さな椅子にほっとくつろぐ 安




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


565
〈あ〉は何度も何度も
ぶつかり
弾(はじ)かれ言葉の壁が押し広がる 微


566
ある日〈あ〉は羽が生えて
風に乗り
真新しい言葉の部屋に入り込む 浮


567
「あ あ、あああ」何か新しい
朝がはじまる
感じで舟に乗り漕ぎ出してみる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


568
張り詰めた最前線は
つらいな
こぼしたつぶやきは深い井戸へ


569
誰もがいつかは立つ
最前線
見よう見まねの峠を越えていく


570
(あ きれいな花が咲いてるな)
良寛の
眼差し収めて次の峠を目ざす




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


571
街中の通りを流れ流れる
いい匂い
するイメージの店頭に立つ


572
きれいな花にとまらず
言葉にとまる
〈あ〉 あっぷる!


573
あっぷるぷるぷる
アップルパイ
パイの丘陵を下る


574
〈う〉 うみ! 静かの海
甘い海
からだの芯に反響する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


575
「きみはいつもそんな〈あ〉の
曲がり方」
「そんな背中のこと言われてもねえ」


576
「ほらほら、、、〈あ〉ってなってる
だろう?」
「何よ、、、あなただって、。。、・・〈あ〉でしょうに」


577
社会の局所は
制圧できるかもしれない
勝ち組負け組なんてくだらない


578
言葉には言葉で決着
しない
隔靴掻痒の沈黙が佇(たたず)む




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


579
歯が痛み続ける時間の
内では
もう初夏の微風も 虚


580
歯が痛むことのない初夏の
風の中にいて
二色の時間のことを思う


581
小さな石ころにぶつかった
ささいなことが
日々の時間に大きな波を起こし 縮


582
小さな世界の日々に
日差し浴び
誰もが言うに言われぬ言葉坂を上る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


583
言葉は花火のよう
材料・構成に
観客の視線を意識する


584
観客を一人も意識しない
静かな
独り花火も上がることがある


585
花火は作者と同一ではない
ただその時の
作者の心のパフォーマンスさ


586
花火から作者への道
言葉を逆行する時
断たれたクモの糸も見える




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


587
一枚の木の葉が今落ちていく
見上げると
無数の物語が風にふるえている


588
ぼくもまた一枚の葉
今ここに
みどりの言の葉と揺れている


589
言葉の峠の向こうには
語られない
無数の物語の明かりが見える




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


590
言の葉の葉占いをする
〈良葉か 不吉葉か〉
信はないが遙か太古の流儀の匂う


591
人を捧げても鶏を捧げても
神は、自然は
何にも応えはしない (迷妄か)


592
とは言っても迷妄の霧は
装い変えてあり
今なお途上 (果てしない途上か)


593
人の感じ考えは 層成して
迷妄を分離できない
マス・イメージの下の深い影 (迷妄とは)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


594
遠く石ころと見なした者は
大石の
上に上り世界視線を歩んでいく


595
雑技団のどんな秘技が
皇帝を
生み出し押し出し着地させたか


596
今頃に『毛沢東の私生活』
読みながら
石ころみたいな人々の昔今の内を思う


597
生臭い石ころにも
深あい
普遍視線があるある根は深い




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


598
「明日のことなんてわからないから
くよくよしても
無意味でしょう?」 ムイミか


599
(どうしようもなく湧いてくる
ここからは
言葉が人形にしか見えない) ドウシヨウモナク?


600
悩める者の内と外
言葉たちが
飛び交いすれ違う 見える


601
言葉の収束する
場所が違う
高さが違う流れが違う



詩『言葉の街から』 対話シリーズ


602
「もういいかい」「まあだだよ」
二つの
言葉が鬼場の中でもがいて見せる


603
場を守る守りの神は
見えはしない
でもはっきりと瀰漫(びまん)している


604
気分にまかせてふいと
抜け出た者は
がみがみの逆襲に遭う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


605
「なんであそこではいと言ってしまったの?」
「峠の茶屋
で早くお茶したかったからよ!」


606
「それは絶対許せない
そこはゆずれない
ってことが人にはあるよね」


607
「そんなにツッパってたら
やっていけないわ
あなたも妥協はするでしょう」


608
(紅茶かコーヒーかなら
妥協もするさ
でも譲れない絶対線があるんだよな)


609
(いずれにしても絶対線の
手前には
誰もが独りの椅子を持っている)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


610
ひとりだから弱者というわけではない
三階や
高層ビルの言葉たちに生身でぶつかっていくさ


611
ぶつかったぶつかってしまった
(ズズンズズズ)
幻の言葉壁はひと揺れもしない


612
放(はな)っても放っても
言葉は
突き刺さりはしない言葉壁の向こう


613
言葉壁の向こうとこちら
の現在は
黙する言葉川の主流に注いでいる


614
そうして言葉川は
主流の
秘密を抱いて静かに今を貫流している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


615
葉が一枚ふるえて落ちる
ただそれだけで
周りの言葉の色が変わっていく


616
記号の顔してても
情動の
暗い裏道通って矢が飛んでくる


617
たかが言葉でも群れなして
じんわりと
有刺鉄線で囲んでくる日々もあるよ


618
ジーンとくる通りの裏では
ずり落ちて
オレオレ詐欺に熱中する言葉たち




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


619
テレビドラマと違って
普通は
ひとり黙っているな


620
テレビドラマはそんなにも
間が恐いのか
言葉ベタベタ貼り付けている


621
ドラマの架空世界の
言葉たち
無数の間に沈黙の川が流れている


622
舞台上の合間に
演技者は
沈黙の川に足浸けてくつろぐ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


623
人に関わりなく
雲仙岳は
悠久の時間の海に立つ


624
例えばいろんな角度と
距離の
雲仙岳の物語があり


625
非・雲仙岳の物語でも
避けようもなく
この列島の山の物語に収束する


626
今ではもう山山山と
ならされて
山々の神話は押し入れ深く


627
山の神話は死滅しても
姿形変え
深い遺伝子の奥から滲み出ている


628
言葉を今この耳目だけで
イメージする
幻の雲仙岳が煙る

註.坂口恭平のパステル画「雲仙普賢岳」を見て。




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


629
イメージは距離の関数
みたいに
変幻自在に現象する (ちょっとちがうような気がする)


630
距離は物理的と精神的
二重に
触手に関わってくる (暗黒物質の影響波もありそうだ)


631
もちろん近すぎても
見えない
情動・概念に逸れていくイメージもある


632
例えば山口さんが
どう見えるか
好悪のスペクトルが光り出す




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


633
イメージは気分次第の
〈わたし〉
が主人のようで背景は根深い


634
遠くても近くても
人の心の
姿を捉えるのは難しいね


635
育った時間と時代の空気
呼吸し
イメージを放つのは〈わたし〉なんだけど


636
ああ ここからは
山口さんの
〈いや違うよ〉という奥深い無言が見える




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


637
言葉の滑り台は
快適さ
するするとーんと伝わっちゃうな


638
でもほら見てごらん
滑り台の下
イヤホンして音楽に身を揺すってるよ


639
猫さんはみゃんと鳴く
あるいは鳴かない
でもなんとか滑ってくるね


640
胸に手を当てると苦しい
もどかしい
沈黙坂が眼前に浮かぶ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


641
やわらいだ休日も終わり
今日も
蝶は韃靼海峡(だったんかいきょう)を渡っていく


642
字画の響きに背を押され
張り詰めた
一日の韃靼海峡 波高し


643
韃靼人のダンスはいつまで
生き残るか
いつかは演歌とともに消えていくのか


644
消えても消えても次々に
手を替え品を替え
ダンスも歌も韃靼海峡に湧く




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


645
初めての王は気さくだった?
出会えば
「おうよろしく」「ああはい」と応答する


646
おうが初代の〈おう〉になり
二代目が
勘違いして〈王〉座に座る 厳


647
タイムマシンに乗り込んで
初めての
〈おう〉に出会ってみたい


648
タイムマシンというのは
自分の足や手や目
時間旅する相棒さ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


649
どの国のテレビドラマも
あたりまえ
みたいに〈王〉を歩ませる


650
非〈王〉や〈王〉の起源の
物語
を滑り込ませたドラマはないか


651
潜んでる動物生の残滓(ざんし)から
火事みたい
火の〈王〉が燃え上がる


652
遙か彼方からの照り返しを
現在の
あらゆるものが浴びている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


653
ひとつの着想が
飛び立つ時
深い時間の空洞がふるえる


654
王子と乞食は近づけない
イメージ流
に浸かっていた時ひとつの通路が開いた


655
物語のこの通りでは
無意識流れ
『王子と乞食』が語り合う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


656
学校では委員を決める時
誰もが
ほとんど逃げ腰だったなあ


657
珍しく自分から立つ
委員長候補!
もいたけどそれってレアメタル


658
大人だってPTA
学校に
出向いた人でも(こっち指名しないで!)だよね


659
それなのにああそれなのに
議員さん
誰もがなりたがるっておかしくないかい




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


660
漁したり畑耕したり
すること止めて
巫女さんが銅鏡をキラキラさせ始めた秘密が知りたい


661
社会理論の抽象の切り口
ではなくて
倉無しと大きな倉ありに分かれ行く実感の秘密を知りたい


662
時間の地層深く
実感の
ひみつの層が素通りされ埋もれている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


663
眼差しを向けては引っ込める
そこにもまた
数十年のなじんだ情動の湧く


664
言葉通りの手前には
色色と
取りそろえて沈黙交易がある


665
敢えて言葉にされることがない
通りでは
沈黙の味を誰もがかみしめている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


666
さわやか一杯の通り
の裏手では
どんな手品を仕掛けているのか


667
言葉にも観客には
見えない
影がある舞台劇がある


668
言葉の奥の舞台では
黒衣(くろご)たちが
せわしく行き来し蠢(うごめ)いておるぞ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


669
〈あ〉の曲がり方って
人それぞれだよね
そうして互いにぶつかることもある


670
人なかでアップルパイ投げてしまって
アポーパイ
落ちて崩れて広がるアアパポー


671
たくさんの人の内にいても
〈あ〉〈お〉〈い〉と
小石水面走らせ独り遊ぶ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


672
外は晴れていてもここは
どんよりの
終わりのない長い道


673
今日は平穏であればいいな
不安に揺れる
ふいと心に矢が飛んでくる


674
中立はあり得ない
誰もが
権力線の上に分布する閉社会


675
閉ざされた救いのない
自由の
挙動を制する関係の絶対性


676
あらゆるものは虚ろな
無縁 ただ
死の近傍に生動する

 註.李志綏 『毛沢東の私生活』、柏原兵三の『長い道』(村瀬学『いじめの解決 教室に広場を』言視舎2018年で取り上げられている)を読み、吉本隆明 詩「少年期」を思い起こしつつ。





詩『言葉の街から』 対話シリーズ


677
「ねえねえ お空はなぜお菓子でできてないの?」
「うーん お空はね
お菓子じゃないけどサンタさんみたいだよ」


678
「お空は何かをプレゼントするの?」
「それはね
朝と昼と夜をくれるんだよ」


679
「それは食べられないから
つまんない」
「でもね ターちゃんもね毎日朝と昼と夜を食べてるんだよ」


680
「うーん。 じゃあ雨って何かな」
「うーん 雨はね
お空の喜びや悲しみみたい」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


681
曇り空「アムロ行きます!」(註.1)
もう後戻りは
不可能な言葉宇宙に迎え撃つ


682
木の葉とともに揺れ帰り眠る
情感の
古い言葉たちはもう散ってしまったんだ


683
今はもうモビルスーツ
を装備して
言葉宇宙を自在に飛び交う


684
空虚な古い概念群を
蹴散らして
ただ空虚の言葉宇宙を飛行する

(註.1)
『機動戦士ガンダム』より




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


685
もちろん情感の木の葉は
揺れ続け
枯れては生まれ途絶えることはない


686
新たな装いの
言葉宇宙に
木の葉も新しいリズムで揺れている


687
ジブリの双葉ヒコーキも
青空を
スロー!なテンポで飛んでいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


688
一人の人は 集団の中の人は
信じられる
と思いますか 人であるあなた わたし


689
たくさんの自然な泡が
光当てれば濁り泡
二重三重(ふたえみえ)の色渦巻いている 世界よ!


690
理想の矢も今ここの
体たらく!
から始めるしかないよね


691
体たらくって言ってもね
今は こうでしかありえない
とつぶやく小さな明かりが点っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


692
詩が楽しいわけじゃない
滅多に
言葉が晴れ上がることもないからね


693
詩が苦しいわけでもない
言葉が
疾走する時風を受けるバイクのよう


694
詩は人の喜怒哀楽の
底流を
なにものかに促され突き進む


695
詩は言葉の舟に乗り
このふかい!
あらゆることを潜り抜けようとする




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


696
〈考える〉ことを考える
深みに
はまると人間の深みも匂う


697
〈〈考える〉ことを考える〉
はビョーキ
じゃないかと青天の言う


698
しかすがに万葉から
言葉は
感じ考え歩いてきた その果ての


699
何でもいいけどさ ぼくは
深くは追わない
今は甘あいスイカが食べたいな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


700
(それっていいな)と思う時
流れる
ぼくに不在のもの 岸辺に立つ


701
〈いいな〉の内にいたならば
いいな自体
を生きてる書いてる字体よ


702
〈いいな〉を巡る内と外
すべての物語は
淡い間(あわい)の帯域に進駐する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


703
大いなる自然と人から
神と人へ
間(あわい)の物語が降り積もる


704
太古からの物語の
人形(ひとがた)は
今も息づいている 言葉の内


705
だからさAKB48の
物語もさ
身震いするほど古いじゃないか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


706
微偏差のアイドルたち
光の輪に
入れ替わり立ち替わり顔見せするよ


707
短いスパンの舞台では
新しい!
に古いものはひっそり席を譲る


708
新しいものには熱い息が
fu fufufu
まるで有名人みたいに光と降り注ぐ


709
古いものは遠慮して
ステイホーム
寝そべりくつろいでいるね




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


710
ヘタでも自分の歌
うたうんだ
何も足さない何も引かない


711
カッコつけて英語を歌に
混ぜてもいいさ
遙か新日本語はそうやって誕生したんだから


712
文字なんて持たなかった
借り出して
叩いて伸ばして織り畳む 悩悩(ノウノウ)


713
新・旧の言葉たち
ひとつの
歌の言葉に溶け合い響く




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


714
ふと振り向くといつものように
るるる るるる
ながれている 流れているね


715
変わりない拍動みたい
でもなにか
何か異変の予感 体がだるい


716
流れの石の下
探ってみる
不安の魚がさっとかすめていく


717
流れ続ける流れと
ふるえる触手
人は時にその合致とズレの内に生きる


718
自分のようで自分じゃない
流れに沿って
口笛吹きながら歩いているよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


719
深刻が下りてきている
身も心も
深黒に・重たく・染まって・いる


720
深刻な壁を前に
ついつぶやき歌う
(うーみはひろいな おおきいーな)


721
深刻は時間とともに
姿形
色合い変えていくんだな


722
絶対的な壁も心も
幻だったみたい
大雨の後の晴れ上がる大空




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


723
空から魚が降ってくる
そんな日には
葉の緑がいつもより濃く見える


724
定常状態の内にも
無数の
変化の波が打ち寄せる


725
変化が目立ってくると
水かさが増し
流れが速くなっている う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


726
農に出てシャワー浴びて
ごはん食べた
心地よい重たさの中にいる


727
日をまたぎゆく時ままならぬ
余剰も
ギシギシリと降り積もっている


728
言葉の遠出はできない
誰もが
そんな二十四時中を泳いでゆく


729
こだわりは夜の夢路に
もつれた
言葉の糸糸糸と揺れている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



730
リンカーンには小学生の頃
伝記で
出会ったのだったか もう何も覚えていない


731
後年出会ったあのリンカーンの
人民の言葉は
トランプ以前と以後に渡ってその不在を奏でているか


732
おそらく数々手を汚した偉大なリンカーンも
伝記の本から
いつか消えて無名の領域に帰っていく


733
政治の死は遙か太古の
政治の始まり
をおさらいする なんという回り道!




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


734
圏内に来た『暴れん坊将軍』って何?
ずっと昔
不明の言葉の道をたどったことがある


735
再放送を観始めて
しまった
荒唐無稽でも嫌いじゃない


736
作品と照れつつ見入る私の
内面と
無意識面を滑ってゆく


737
たぶん旅は権力の
秘密と
消滅とが匂い立つ通路を下る


738
集落の外れの丘に
憂い顔の
長老ひとり立っているのが見える




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


739
言葉の走法や表情は
無意識の癖みたい
にひとつの影に飛び跳ねる


740
(あっまたキラリ光ったよ)
飛び跳ねる
言葉の魚の鱗(うろこ)が見える


741
癖ばかりはどうしようもない
鏡に映った
気恥ずかしさの椅子に固くなる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


742
一年半ほど前に買った
ヘーゲルの『世界史の哲学講義 上』
をやっと読みはじめている


743
おそらくは精神の運動性と
言葉のみ
を頼りに人間と世界史の線分を抽出する


744
例えば山々と平地の中に間に人々の織り成す
無数の線分
共通の影が論理へ構成される


745
不慣れな固い言葉の建築群の道を
うつらうつら
ヘーゲルの人間理解を測りながら歩いている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


746
ヘーゲルの言葉は固い
チャイナマーブルみたい
でも頬張れば人間精神の抽象の味がする


747
人倫と情愛の家族(註.)のヘーゲルも
子どもやネコを
劣る自然性と感じたのかどうか

註.ヘーゲル の『精神現象学』に触れた吉本さんの考察より
 (『共同幻想論』「対幻想論」P394-P395『吉本隆明全集10』晶文社)


748
海向こうとこちらと
グローバルな波の下
ヘーゲルの言葉の海は深い




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


749
肉を炒めているとき
(ごめんね)
ふと沈黙の内につぶやくことがある


750
はるばるオーストラリアから来てる
(肉になってしまって)
それより先は追えない 静まりの死


751
(かわいそう)とか(むごい)とか
思い始めた人間は
今日も肉を食べる矛盾を生きる


752
大声で議論するにはビミョウで
2万年後の
スタートレックの世界を静かに待つしかないか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


753
互いに大声になってしまう
は自然として
渦中のきみは (どうしようか)


754
言葉の石でも人に投げれば
血が出る
誰もが罪人(つみびと)に変身する


755
石投げを強要されたきみは
一歩抜け出て
(水切りの跳ねゆく姿をイメージしているばかり)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


756
ぼくはぼくできみはきみさ
二人の
間の路に違う曲が流れている


757
ぼくは楠の木の葉
きみは椎の木の葉
ともに葉は大気に揺れている


758
葉脈の道を抜けて
ぼくはきみ
の葉裏の道を歩いている


759
日差しの降り注ぐ下
同じような
日の匂いがする葉脈の道




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


760
滴り来るずしりの言葉に
薄い膜が
掛かっている 隔靴掻痒


761
「悲しいな・・・」そうなんだ
(木々も葉も
グレーに沈んで川も澱んでるね)


762
「これはボクのヒコーキ びゅーん!」
ふうん
(にぎやかに楽隊が進んでいくね)


763
「昨日ぼくが出会ったのは・・・」
(ちっちゃい
頃のさびしい自分だったね)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


764
(仕草も声もカワイイね)
でもそれは
とどのつまりコマーシャルだよね


765
(ぼくは買わないからいいけどさ)
ちょっと醒めて
カワイイ仕草の構成を見てるんだ


766
生きて身を置く〈現在〉は
全否定はできない
上層ではアイマイミー深層では拒む


767
(世の中そんなものさの声がする)
でもぼくは
自分のハートの砦を死守するんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


768
みこさんみこさんどこ行くの
あらあら
薄暗い殿(でん)の奥へずんずんと


769
立ち去ってしまったずんずんの
匂い漂い
空間に仕切りができてしまった


770
みこさんの5W1Hか
ひそひその
つぶやきだけは感じられる


771
仕切りをまたいで進むには
拍手(かしわで)を
打たなければ鳴子が不吉に鳴り響く




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


772
優しくても巫女さんゆえに
ぼくではなく
あらぬ方を見ている巫女さん


773
あらぬ方には霧が出ている
人知が
くずおれていく場所に立つ巫女さん


774
先生も時に変身して
抽象の
巫女さん顔を流している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


775
人にはいくつもの通路
があって
これはネコへそれはあいさつへあれは怒りへ


776
ネコへの通路からそれて
とっても不幸なネコたちに
街の裏手の通りで出くわしたことがある


777
不幸な?ブサイクに見えようとも
ネコたちは
〈不幸〉とは別のネコ世界を生きている? 人もまた




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



778
〈語り手〉は〈登場人物〉を眺める
心の内に入り込む
峠を下った物語の村へと客引きする


779
〈語り手〉の語らない
〈登場人物〉は
物語の村はずれに佇んでいる


780
〈作者〉は物語の村はずれに
控え居て
聞き耳立て映えを気にし黙々と書き記している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


781
遙か太古には人は
大いなる自然と
吹きさらしの舞台で物語りした


782
〈登場人物〉の見知らぬ
振る舞いも
語るほかないと〈語り手〉は思う


783
これは語ったらまずいかな
と思い走る時
〈語り手〉は〈作者〉の影を感じている


784
〈作者〉のモチーフを背負い
語る時
〈語り手〉は白熱する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


785
結婚式場の〈語り手〉(司会)は
びまんする
〈作者〉の意志に乗って華やかに進む


786
〈語り手〉(校長)は頑なに
〈作者〉の意志に沿い
うんざり顔の聴衆をなぎ倒して突き進む


787
ぼくが〈語り手〉(校長)なら
「夏休み楽しんでね」
「また九月に会いましょう」でお終いさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


788
誰もが〈語り手〉になり
聞き手にもなる
言葉の仕入れ先はわかっている


789
〈語り手〉になる時シームレス
仕入れた言葉に
自家味付けして出している


790
思い上がってはいけない
〈作者〉は
マス・イメージさきみもぼくもしがない〈語り手〉




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


791
いやいやそんなこたあ
知ったことじゃない
おれが世界の中心さ


792
もしもおれがこの世界から
消え去ったら
物語は the end さ


793
そりゃあおれと別世界が
To be continued
かもしれない でも知りようもないな


794
ぼくもきみもいつなんどきか
死に落ちる
静かな無言の宇宙に還る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


795
ひとつの生命(いのち)の始まりは
アッハ
小宇宙の胚胎さ

註.「アッハ」は、埴谷雄高の『死霊』より。


796
死後のことを語っても仕方がない
出生前は語られても
死は一切の無 言葉を超えた無


797
完全なブラックホールを隔てて
生と死は
生の側の物語で包み込まれる


798
人は誰でもいつかは
〈しかたがない〉
人の道を下ってゆくんだろうな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


799
「今はまだ人生を語らず」という歌のセリフがあった
語らなくても
生きて無言の内に語っているさ


800
「みじゅがきらきらきれい!」
「そおね
水がキラキラ光っているね」


801
大上段に語る時
何かが
するりすり抜けていく 血は静かに巡っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


802
手を上げてはっきりと言う
ばかりの
アメリカ流が世界流とも思えない


803
二項三項の大声の対立の
古戦場には
不毛以外が生えていない


804
大切なことは静かに
しずかに
水面下を流れているよ


805
ほら 水の中 石の下には
魚たち
住んでいるんだ 上からは見えないな


806
あらゆる領域の言葉
を鋭く貫く
普遍の流れに手を差し伸ばす


805に関して、固い註を付けると、

「教訓」は、aを描写して、aを離脱し、上層のAやBの世界に入る。「教訓」話のわかりやすい実感できる例は、生徒の前で語る校長さんの「教訓」話。
「比喩」は、aを描写して、aと別れてしまうことはなく、言わば水平方向の視線(世界内視線)と上方からの視線(世界外視線)―簡単に言えば、内からと外からの視線―を同時に行使している。





詩『言葉の街から』 対話シリーズ


807
漢字ひらがなカタカナが
強弱付きで
戦闘区域を飛び交っている


808
ゴチック体の非コロナも
電子の海に
繰り出して来るぞ 何でもありだね


809
ぼくはひとりの暮らし人
何の権限も持たない
岸辺から正当な処遇を求めるだけさ


810
コロナでも調べはするが
暮らし離れた
政治家の上空の文体は取らないな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


811
内面からこぼれ落ちるように
ある時
白いハンカチが落ちることがある


812
小さな物語の
顔をして
白いハンカチが通りに落ちている


813
歩みせわしい人々は
自然と
白いハンカチをよけて過ぎていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


814
白いハンカチの物語は
進行する
風や人が関わり波打つ物語


815
拾って洗って乾かして
引き継いで
使おうなんて者はほとんどいない


816
掃除係の人が掃き寄せて
ゴミ箱へ
回収する 暗転


817
白いハンカチの小さな物語は
フェイドアウト
人々は無縁に無心に死後を生きる?




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


818
白いハンカチ事件は
誰にもあることさ
平均台の日々を生きているんだから


819
白いハンカチが通りから消失しても
人と人は
小さなハンカチによってつながっている


820
ハンカチの日々への想像力
色色の
スペクトル帯を白が舞う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


821
ぼくにも「ハンカチ」のない
時代があった
無縁に野山や庭先に進軍し布陣した


822
はんどかちーふって何?
「ハンカチ」は
たぶん学校とともにやって来た


823
振り返ればハンカチ以前にも
「ハンカチ!」
問題は確かに存在した


824
持たされても慣れないものは
紛失する
紛失は無意識の内にするり落ちる?




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


825
「言葉には秘密の
ドアがある
ここには光も差している」


826
(ことばにはひみつの
とびらがある
ここはひかりは見えない)


827
(知らない間にとびらは開く
光が差す
通路を抜けて行く)


828
(外の光の粒々が
宇宙線みたい
言葉のからだを貫通していく ズン ズン ズン)


829
「いずれにしても光の中
個の固有性が
世界の普遍性と交差する」




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


830
言葉の通路には
誰が描いたものか
見慣れた絵が掛かっている



831
「愛は地球を」の古びた言葉の
破片は踏んで
通路をひとり言葉駅へ向かう


832
今日もどこかで言葉が倒れる
音が聞こえる
ぼくのことばが静かに起立する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


833
言葉駅から乗り込んで
誰もが
どこかに向かっていく


834
向かっていく?言葉は
うなだれて
無にさえ向かっていく


835
言葉駅には何を売りつけよう
ということもなく
人寄せのキャッチコピーに満ちている


836
「ゲンキアタエル」「ゲンキモラウ」
恥じらいもない
交換と消費 その情熱は何?


837
ことばのぼくは駅の通路から
非広告の裏道へ
ゆったりと歩んで行く




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


838
言葉駅では言葉が
お互いに
関心を放ちながら入り乱れる


839
言葉族Bはスマホに
熱中し
タヌキ言葉をブツブツとつぶやいている


840
言葉族Cは逆さ言葉で
話しかけくる
「カスマジンシヲミカタナア」


841
水切りの走法で
言葉族Dが
マスコミ道に入っていく


842
言葉族Aは無言のまま
いつものように
言葉の電車に乗り込んでいく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


843
言葉駅には集まってくる
にぎわいの中
言葉たちはちょっと鏡を気にしている


844
他人の言葉の体を
チラ見して
自分の居ずまいを正す者もいる


845
他人の言葉の通路を
透視する
と言葉とぶつの交換を思案中も見える


846
暗がりではゴシック体の
結社言葉に
からだを売っている言葉もいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


847
気がつかなかった 言葉は
整形されて
言葉の舞台に現れて来るのだ


848
言葉の駅から電車に
乗り込むと
もう心は整形されてしまった しまった


849
薄い化粧の匂いも
漂って
うっすら後悔の言葉の座席に座っている

 註.ツイッターで、「先生(美容外科医)は名前まで整形なさるのですか…」のツイートに昨日出会って、この詩を思いついた。





詩『言葉の街から』 対話シリーズ


850
言葉の駅から言葉市場へ
言葉が
自然な仕草で他人と出会う


851
まるで言葉の自然な仕事
みたいに
言葉が白い息を吐いて交換される


852
言葉と言葉の色が重なり合う
来た道を
装い変えて帰って行く言葉たち


853
つぶやきは自分に帰り
反響する
交換されない波紋が立っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


854
価値、無価値、反価値の判定言葉の
居並ぶ中
重たい空気が流れている


855
言葉と言葉がひとつの部屋の中
飛んだり跳ねたり
ぶつかり合ったり 部屋は深い


856
心ころころころがり
擦りむいたり
血が滲んだりして居るぞ


857
息苦しいぼくはハンカチ
となって
窓の外にひらひらする 無援




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


858
極微の時間の内を走行し
トンネル抜けるとぱあっと
「赤い布切れ」という言葉が生まれる


859
(あか     い
   布
 きれ)


860
(あか トイエバ い
チノ 布
ニオイガ きれ ナゼカタダヨウ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


861
ゆったりと椅子に腰掛けている
(すうっ すうっ すうっ)
超高速で走り抜けるものがある


862
感じ 取れ なくても
隙間は
きちんと縫い合わされている


863
わからないみちは恐れることはなく
柔らかに
会うことが待たれている未知の道さ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


864
昨日のことであった
他人(ひと)の言葉が
薄暗い所からぼくの言葉に蹴りを入れたきた


865
「うっかり娘」が放つ
ヰ ヰ ヰ ヰ ヰ
言葉の棘が飛んでくる

註.NHK「LIFE! ―人生に捧げるコント」で、石橋杏奈が演じたうっかり娘。


866
相手の言葉の破片
が刺さったままの
言葉の肌に異和感がある


867
(ああ風が心地よい)が
ダークダークダーク・・・
(ヰああ風がヰ心地ヰよい)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


868
小さい子が歌う「ころな
ころな
みついつころなもおもおころな」


869
若者が歌う「殺無 孤露無
U U U U U
U U U U U UUU イエーイ!」


870
男が歌う「コロナは××
コロナは●●
コロナは△△コロナは×△■」


871
女が歌う「コロナってやーね
マスクもやーね
でも手を洗わなくっちゃ コロナ」


872
ぼくは歌わない いつものように通りを歩く
少し足が重たいな
と思えば言葉のコロナがすがりついている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


873
ABE趣味の時間
連呼すると
ABEが動き出す手も振る ブルブルしちゃう


874
空虚の時代のオタク趣味
政治まで
オタク趣味となりにけるかも


875
ABEの次はEBAか
BAEか
数十万年の時間の底からぼくはつぶやく(くだらねえ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


876
確かに一段ずつ上って行くと
(修行するぞ 修行するぞ 修行するぞ)
言葉はバベルの塔になる


877
えへんおほんうっふん
高い所から見下ろす
言葉の表情がはっきり見える


878
エレベーターなら言葉は
すうっと
無意識みたいに橫超する


879
超言葉に出会うため
ぼくらは
宇宙エレベーターに乗り込むんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


880
宇宙のこともいいけどさ
ぼくは今
このぬかるみに心の足を取られているんだ


881
全てが宇宙なのさと言われても
宇宙には
階段があってすぐには頂へ行けないよ


882
ふだんはぼくらの小さな世界に
気づかないほど しゅわあ
宇宙は溶け込んでいるんだ


883
宇宙暦50000020200901
秋風が
流れ始めているJapan列島


 2015年2月2日からほぼ毎日、この短詩(短歌味体な→短歌味体→詩)を書き続けている。最初の動機は、安倍晋三政権へのツッパリからであった。もう5年過ぎた。今では書き続けることがもう自然体に近づいている。宇宙の時間からすれば無に近いけど、わたしたちはその〈無〉の内側を日々生きている。





詩『言葉の街から』 対話シリーズ


884
人間界の窓から
宇宙をのぞく
星がとってもきれいね


885
と言っても星は大爆発
直前かもしれないし
ここからはよくはわからないね


886
この人間界でも外からは
よくはわからないね
日々人は生まれ生き死にしている


887
心のドアを開けて
上り下りしていくと
世界の顔は確率変動する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


888
ほとんど鳴かないねこは
けずりぶし
入れるまで付きまといやめず


889
付き合い長いとわかる
ごまちゃんは
(ああ 流しに上って水を飲みたいんだ)


890
赤ちゃんならば
ううう うう
おあおあおお でちゃんとわかっちゃう




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


891
同じ言葉だからって
等しく
全ての通路を交通できるわけじゃあない


892
家族と国家の中の
言葉たち
大きくすれ違いそれぞれの内に籠もる


893
例えば役所のカウンター
奥からは
恋人言葉はやっては来ない


894
大宇宙 静かだな
無縁に
日々のドアを開け閉めしている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


895
日々の通りにいき止まる
思いの深みに
宇宙の滴が落ちてくる


896
疲労の川の澱(よど)みにも
大宇宙の
微かな無言が差している


897
癒されるのではなくって
大宇宙の
無意味の意味を静かに味わうんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


898
誕生のとおおい謎は
不明でも すべて
今ここにこのようにある


899
いろんなことまちがっても
わからなくても
その本体に貫かれて生きてある


900
ということはその本体の
魚の背に乗り
泳いでいけばいいのだろう


901
何千年も力こぶ入れて
つかんできた魚たち
は川の主ではなかったということはないか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


902
たぶん通りすぎてきた
種(たね) ひとり
感じてきた 種の内外(うちそと)


903
この種の内から感じる
ほかない
遙かな宇宙を見下ろすような


904
大宇宙の下(もと)の種宇宙
を生きる
イキルいきる小さく生きているのさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


905
種は芽を出し手足を出す
ゆっくりと
種宇宙が人間界に着地する


906
現在は種生から始まった
らせんの運動
言葉の舟に乗り時空に火花を散らす


907
散らす火花は正反合と進む
ものではなく ミツバチみたい
あっち寄ったりこっち寄ったり




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


908
空間は見知らぬものに
つながりをつけ
無関係・有関係・中性へと分岐していく


909
真新しい赤いリンゴも
静かに
時間の海で腐蝕していく


910
新鮮なイメージの集団も
時空を縫って
流行遅れのファッションとなっていく


911
古びても命やハートを失わない
ってあると思う
どこ向いてんの? それ それなんだけどなあ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


912
Aは非AもBもCも含んで
Aである
この時Aはたくさんの小波に送られ船出する


913
単独のAがピュアAであるならば
はしゃいでいても
孤舟孤愁を進むばかり


914
AがBやCに転向しても
Aの根は
枯れてはいない 根毛ぴくぴくしてる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


915
それはね遠いとおおい
何だか
ふしぎにとおおおおい所さ


916
そんな小さい子の舟は
現在の
消えゆく縁側で遊んでいるのかい?


917
「童話的」という言葉通り
の向こうにも
小さな懐かしい通りがあった


918
「あった」けど今はもう
気楽に
立ち入ることのできない区域になってしまった




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


919
「これ一枚でお願いします」
「ああ樫の葉ですか
濃いみどりが匂い立ちますね」


920
「はいどうぞ 新しく出たばかりのスマホですよ」
「うーん
ふぁっほふあっほの色形がいいですね」


921
市場経済の交換の
裏通りでは
にぎわいの楽隊に客は心早らせている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


922
どこですれ違ってしまったか
もううまくは
出会えない朝焼けの道と黄昏の道


923
血縁の暗く閉じゆく
言葉の
通路が息苦しいしいしいしい


924
小さい頃は言葉の通路
通ることもなく
あんなにいい感じに笑っていたのにのにのに


925
芽ばえた生臭いものが過(よぎ)った
またまた過った
老いの峠に冷たい風の吹く


926
もう目も悪くなってしまい
文目(あやめ)も分かず
菖蒲にくらっと殺めてしまったしまった

註.事件への鎮魂の試みの歌として。



詩『言葉の街から』 対話シリーズ


927
政治経済は、鼓腹撃壌(こふくげきじょう)みたい
心には遠く
軒先では喜怒哀楽が流れ出る


928
政治経済は神社の祝詞みたい
空疎なのに
なんで神社のお札みたいに有り難がるの


929
たぶんね 山の上の
(今ではただの)磐石が
磐座(いわくら)となり今のお札まで変移してる


930
もうね しがらみの 要らないものは
ほーりなー
一人一人さっぱりと行くホーリーロンリーマウンテン


931
ほんとうの難しい問題は
人と人との
関係の平均台を今日も行く


 創作メモ

まず「ホーリーローリーマウンテン」(Holy Loly Mountain )という言葉が、書いている言葉の場面以外の何の触発もなく、ふと湧いてきた。忘れていた。ずっと昔、子どもに教わりつつやってみたゲーム「MOTHER」に登場する山だった。残念ながら、こういう記憶やイメージの出現の機構についてはまだ解明されていない。




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


932
「ぼくには できる」 (できない) (できる)
「ぼくは できない」
ひとりの葉揺れを超えて時空は流れる


933
「そんなものは蹴飛ばせけとばせ!」
どうしても
忘れられない蹴飛ばせない「けとばぜ」

註.父母が頭(かしら)かきなで幸くあれて言ひし言葉(けとば)ぜ忘れかねつる (万葉集 防人歌)


934
言葉には絶えず消費する
交換する
消耗する表層とそれは静かな深層がある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


935
対立する古びた概念Aと
概念Bが
対消滅して光放っている


936
右とか左とかリベラルとか
もういくらマッチ擦っても
暗い海波は無縁に揺れている


937
太宰治の作中のように
この列島の
読めない人文字を静かに感じている


 創作メモ

「対消滅」は、物理学用語。「粒子と反粒子が衝突し、エネルギーが他の粒子に変換される現象」
936は、寺山修司の歌、「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」を連想している。





詩『言葉の街から』 対話シリーズ


938
「朝」という飛び石を踏む と
ムスウノ
アサガミナモニキラキラシテイル


939
風の中向きを意識した
言葉の足は
始まりの「朝」にベクトルを踏み込む


940
テレビの最速早送り
の通りを
「朝」は脇目も振らず駆け抜けていく


941
「朝」はひとつの言葉通りから
ひとつの部屋へ
慣れたドアを開けて椅子に座る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


942
慣れた言葉の部屋でも
昨日と今日
なんかどこか微かに違う


943
あれ、あんなものが
あんな所に。
どんな言葉を張り付けていたのだったか


944
気づきの舟に乗って
小さな
言葉の部屋の時空を巡り巡る巡れよ


945
気づきにはいつも必ず
気づかれない
影が付きまとっているみたい




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


946
ろくはらななはらはちはら
くはらくー
リズムの韻が何かにぶつかる


947
いちじょうにじょうさんじょう
くじょう
ネギのみどりが滴ってくる


948
ひーふーみーよーいつか秋となり
見上げれば
ヒーフーミーヨーイツか雲が浮かんでいる


949
sun sun さらさら
意味もなく?
にぎやかな意味通りを通りすぎていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


950
びゅわあああ あ あ あ
あん あん
水切りの小石がいのち放ち、終える


951
ビュワーンビュワーンはしる
子どもなら
「はしれ超特急」の歌の内側から歌える


952
大きくなると飛び越えた言葉の
谷間から
冷たい風が吹き上がる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


953
幻のさびしい細道だね
と風のささやくも
ぶるっと不安振り落とし進む


954
どんな細道も必ずや
大道無門(だいどうむもん)
くよくよしなくってもいいんだよ


955
ほうら見上げるだけだよ
感じるよね
空も風もいつもの もう秋だ


956
重荷を背負っていたり
どこかぴいんと
張り詰めていたり 解除キーは〈気づき〉だよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


957
共鳴する心は
はやる心で大橋を渡り
大きな川に合流し響き合う


958
行き違う心は
飛び石ひとつひとつ飛び
枝流からちょっと異音異風に折れて行く


959
何げない心は
寄せ来る風もすり抜けて
ああいい感じと川水に足を浸ける


960
心変わりの記憶かみしめれば
ひとつの心は
ほんとは被告人の心が少しはわかる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


961
〈委員長〉になる朝は
(さあて今日は
どの言葉の服を着ていくかな)


962
(ちょっとカッコ付けた
この言葉の服
テンノウがいいかな?)


963
ナニイッテンノと言われても
このクニでは
〈委員長〉の服の裏地にもテンノウが張り付いているんだぜ


964
ミンシュシュギと言われて75年
でももっと太古から
裏地から表地にまだテンノウは棲息しているのさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



965
AさんよりBさんの方
が重い
と存在重量を見積もる時


966
きみはもうテンノウ制の
内側で
スイスイ泳ぎ回っている


967
テンノウはこの列島の
さびしい
遺伝子が圧に自然に泳動していく


968
ひとりの水平の目線から
とざい、とうざーい!
テンノウはふいと起き上がってくる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


969
(この気持ちは誰にもわからない)
と凍りつく
一瞬があり 日の中をまた歩き出す


970
結合手を営業みたいに出し合うのは
大きな言葉
手前で小さな言葉たちが揺らいでいる


971
大きな言葉ばかりが
大手を振って
小さな言葉たちをなぎ倒し進む


972
ブンガクは例えば色の
全スペクトル帯
占拠するというか自然にくつろぐ


973
ブンガクは心と言葉の
微細な
揺動面を飛行する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


974
悪なのかもしれないけれど
けれどけれども
この止むに止まれぬ心の焦足!


975
知らぬ間に〈法〉のバリアー
突き破っている
(やぶりからぶりからぶだやーぱん)


976
外見(そとみ)には切り取られて
犯罪の
範疇に押し込めらるる


977
ひとつの出来事から
いくつもの
物語の層が湧き出ている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


978
はた目には大きな駅の
無数の
時空の連結網もうもうとして


979
見知らぬ人人人が
網の中に
滑り込んでいく 見える


980
ぼくは朝日の中伸びてゆく
やわらいだ
心を絞ってひとつの路線に入る


981
秋晴れの下の朝の空気
言いようもなく
いいなと肌心は内に感じている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


982
風に揺れる木の小枝に
触れてふれる
古い〈抒情〉の手前で折れて行く


983
いつもの道を歩いている
乾いた
言葉の森を歩いている


984
打ち捨てられた旧来の〈抒情〉
という道から
新しい風の中今どんな道を歩いているのか


985
歩いているのは確かだが
歩幅や速度や
心の色を言い当てることができない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


986
(これ言ったらまずいかな)と
バリアー感じて
言葉が急止し沈黙につんのめることがある


987
バリアーではなく深い溝だ
ありありと線引きして
言葉の相互浸透を断ち切っている


988
おんなじ同時代のマス・イメージ
を浴びて来ていても
いくつもの時間の層から織り成されている 言葉は


989
だから時には透明なモビルスーツ
に乗り込んで
言葉の海を突き進むのさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


990
あんまり深く振り返ることもなく
この重力世界
日々行ったり来たり休んだり


991
人世界(じんせかい)ぼおんのおの
のお煩悩に囚われて居るぞ
囚われて居るぞ居るぞ居るぞ


992
例えば抽象の岸辺から浚(さら)われてきた
仏教言葉が
ある昼下がり加重加圧する


993
それでもはね除けることは
しないんだよね
だからますますお経が響く


994
擁護するでも誘われ行くでもなく
街の騒音のよう
ただ推移するに任せ自分の興味関心をゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


995
善悪の此岸(しがん)の通りには 無
むむむむむ
いいもわるいも溶け合い言葉飛び交う


996
法曹の言葉はカクカク鋭
疱瘡に
罹(かか)った病者の善悪と降ってくる


997
そんなあんなこんな制して
ホウソウの
言葉が肌にチクチク刺さってくる (そんなあ)


998
子どもらは「うんこ!うんこ!」と
はしゃいで
倫理の川をバシャバシャ渡る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


999
一枚の(いちまい? )木の葉(きのは? )
が落ちる時(おちる? )
風の手(て? )に誘われているよう(さそわれ? )


1000
(走行する言葉たちの
ハンドルが
微かに左右上下に揺れている )


1001
点滅する言葉たちは
振り返りつつ
疾走する世界線




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1002
ひとつの道を選び行くと
スポットライト
の下にいた(エラビユクト?)


1003
きみが勝ち組なら
誰かが必ず
負け組の道をとぼとぼ行く(カチマケグミ?)


1004
(この世界の道を100%
受け入れるなら
そういうこともあろうアラーナ)


1005
人とこの世界の受容と
拒絶の
曲線は複層複雑の物語さ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1006
あのねほんとはね
その席の隣で
みてきいてわらってないているんだ


1007
そんなに言葉が超合金
と見えるかもしれないけど
内なる灯りはその灯りとおんなじさ


1008
抽象の道路を走行していても
風景の芯には
いつもそのみどりが溶け込んでくる


1009
忘れても忘れ果てることは
できないね
育った世界は言葉の表情に出てくる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1010
〈語り手〉も〈登場人物〉も
まだ不在の時
〈作者〉はひとり黙劇に下る


1011
モチーフの弓引き絞る
熱を潜めて
〈作者〉は言葉の森を走り続ける



1012
なじんだ世界に句点
を打つと
〈作者〉はゆったりと朝のコーヒーを飲む




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1013
とんとんとん(うん?)
ドアが開き
流れ出て行くイメージの通路


1014
宝石箱は片隅に眠り
小さな朝は
少しいい感じで歩み出る


1015
小さなこだわりは
誰にもあり
新しい朝の空気がぬぐい去る


1016
この朝に何があろうと
吹きまくる雨風の中
小舟は揺られつつ進む




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1017
放った小石が当たり
こんこんこん
イメージの通路を跳ねていく


1018
イメージのつまづく時は
揺れている
重心の ずれもどりずれ


1019
定まらぬイメージイジイ
ジイジイジ
言葉の水溜まりにはまる


1020
秋空のようなイメージは
どこか心が
嘘っぽくて晴れ上がらない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1021
秋空〈が〉か秋空〈は〉か
はじまりの
舞台からイメージ流が分岐してゆく


1022
いずれにしても秋空の
定型は
踏まないなイメージの足は


1023
秋空を見ているみんなの
晴れた心の
裏通りを静かに通り抜けてしまう




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1024
別に賑やかなお祭りは
嫌いではない
秋空と釣り合おうとするお祭りの


1025
人が集まるとヤバイバが現れることがある
そんな光景を
避けて裏通りをひとりゆくのか


1026
ひとり ゆく
ことには
とおいとおい発祥があるような気がする


1027
だから秋空の中
乾いた心が
ひとりいい感じで通り抜けてゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1028
〈わたし〉が糸操(あやつ)っているとはいえ
わたしの年輪の方からと
時代の方からとイメージ流は立ち上(のぼ)る


1029
舞台上で〈青〉と名づける
には微妙
緑や赤のイメージ粒子が紛れている


1030
打ち上がった冬の花火の
イメージ流は
イメージ粒子の総和で瞬(またた)く


1031
万葉の頃には気にもしない
自然さの
内にふかくふかくダイブしているシン自然さよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1032
それでも例えば人と犬
別れ近づく時
静かにひと滴落ちて広がり滲む


1033
〈煩悩〉という言葉でもすくい取れない
心の身をよじる
ジタバタジタバタ バタ タバ タ。


1034
人間界のはずれには
静かな
それはしずかな銀河の水が寄せている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1035
人間界のはずれでは
ヨーロッパみたいに
自然状態は獣のような悪ではなくて


1036
善も悪も消失する
大自然の縁では
人も獣のようにやさしくなれる?


1037
人間界の〈善悪〉は
獣たちを
どこでどのように超えているのか




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



1038
遙かな動物たちとの
別れの日
人はどんなさびしさを沈め歩き出したか


1039
「草や木がまだ口をきいていた頃」
と後振り返る
人は動植物の間に埋もれていた


1040
長い長い道歩いて
れいこんの
みちみちた世界 魂のビッグバン!


1041
自然に そう自然に
れいこんの
海に浸かって感じ考え呼吸していた


1042
動物たちはたましいの
聖なる衣装
を着せられて 例えばイオマンテ!




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1043
もうそこより先は行けない
と足踏みしてると
遺伝子解析が人類の足跡をぼんやり照らしている


1044
人という峠を下り
まだ行ける
生命のビッグバンまでは


1045
旅装を解いてくつろぐ
ああこの日々もまた
なんとかなった明日のドアも開くだろうさ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1046
気づかなくても存在する
としても
気づかなければ〈存在〉しない


1047
人間界の峠を越えると
〈気づく〉も
〈世界〉も砂時計は終わる


1048
それでも世界は存在する
と言うのは
世界内の存在だけだろう


1049
ともかくも〈死〉は世界への
静かな
着地世界の砂粒と横たわるだろう




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1050
人間界の内と外
に囲まれて
言葉は生まれ育ち死んでいく


1051
あらゆる比喩の探索
を超えて
限界線が引かれている


1053
恒河沙(ごうがしゃ)以上の言葉を拾い集めても
境界の
向こうを照らすことができない。


1054
不可能は更新されていく
けれども
言語を絶した不可能の絶対性の匂う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1055
親類の人の入院
知ってはいたが
ふいの死の知らせに通夜に出かける


1056
身内ならその人の輪郭の
揺れ具合
見続けて来たんだろうな


1057
晴れた日に山陰の畑の
その人に
軽く会釈することもなくなってしまった




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1058
つめたい〈死〉は冷たい
無量に
冷たいとしか言いようがない


1059
それでも詩はしわしわになっても
追跡する
手応えのない静かなデスロード


1060
現在の自然な〈死〉は
葬儀屋さんや坊さんたち
に仕切られた道を通っていく


1061
同じく手を合わせても
〈ナンマイダブ〉
とは少し違う道をぼくは歩いて行く




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1062
相変わらず重たいけど
少し軽くなる 心は
歌の空洞を歩いているよ


1063
ふいと目の前に下りて来た
クモの糸に
泣きたいような言葉が少し温まる


1064
下りているいつもの朝に
(ああ いいね)
古くて新しいあいさつする




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1065
同じこの大地に住むものは
遠くても
少し気になる (おおーい)


1066
もちろん(気に入らねぇな)
と思う
事も物も色色あるにしてもね


1067
借り物の〈愛〉という言葉は
よそ行きで
着込んで肌合い恥ずかしくて


1068
この列島の古い戸棚
探っても
〈愛〉と言う言葉は出て来ないなあ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ



1069
こんなつもりの言葉たち
人気(ひとけ)の風に
押し押されあんな言葉になってしまった


1070
閉まった言葉の部屋で
あれこれと
悔やんでも仕方ないことだけど


1071
あんなそんなこんな言葉のしがらみを
突き抜けたら
スッとするだろうな 幻の言葉のバイクよ


1072
高じた閉域は余裕なく
闇夜に
急発進して突き抜けようとする




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1073
言葉が疾走する
しかすがに
日々のやわらかな時間は一歩一歩進んでいく


1074
ちっぽけに見えるかもしれない
きみもまた
日々の大河の上に浮かび流れているよ


1075
遙か太古から人間たちが
考えたこと
邪悪も溶けて水は流れ続ける


1076
(あっ 木の葉流れる)
一瞬にも
人と人の世の重力が掛かっている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1077
アラスカ の 星野道夫が
思い浮かべた太古の姿
(この浜辺で漁から帰る夫と出迎える妻よ)


1078
人の生活と風習の
姿形は変わっても
あんまり変わらない日々の表情


1079
遙かな時間の波間を
貫いて
抽出される日々の表情 光の粒々




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1080
ひとりひとりの心の表情から
抽出され
光となる時 内在する光子よ点(とも)れ


1081
心の海岸線が
トポロジーによって変換され
言葉の海から浮上する


1082
切り整えられて捨象されたものの
破片たちも
言葉の岸辺に波打ち寄せている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1083
遙かな時間の向こうから
泡立つ
小さな泡がひとつふたつ


1084
泡立つのをなぜ感じるかというと
ほら 今
この心の内にも泡立っているからさ


1085
正史ばかりの歴史の裏通り
柳田国男は
泡立つ歴史の道々を訪ね歩いた


1086
たぶん簡単に思えること
が実現される
にはたくさんの泡立ちがあった




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1087
フェイクの花咲くよそ行きの表通りに
カジュアルな
言葉の服が行き交う風通しはまだか


1088
徴候はぼくらの歩む
足韻の
リズムに宿っているはずだ


1089
相変わらず表通りは
古ぼけた
権力臭のアカルイ作為のみちみちている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1090
(ほんとうはぼくは他所の子
かもしれない)
心の肌がざらざらひりひり


1091
(夏休みになったら
あれしてそれして)
気持が今この水路を流れている


1092
(次はもうピシャリと
言ってやる)
向こうの思わぬ出方に言葉の足萎える




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1093
ko こお、こお、こおっこ
ニワトリが
にゅっと顔出しこちらを見てる


1094
Oh おう、おう、おう
尖った顔が
ズンズンズンと迫っていく


1095
e え?そおなの?
theにも
derにもtheaterにも潜んでるんだ・・・


1096
e え?「云々」には潜んでないね
フロイトの
言い間違いの研究によると何を潜めているのかな

註.安倍晋三総理は、「云々」を「でんでん」と読んだ。




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1097
強大な猛威と慈愛の
地母ゆえに
か弱い人類は大自然を神と畏(おそ)れる


1098
母の歓心を買い宥(なだ)める
子のイメージには
大自然に神が居座って見える


1099
大自然を地母と見まがう
幼い人類は
死の不安に耳目ぴいんと張り
神話と物語をあてがった
さあさあさあ 夜を歌い踊るぞ


1100
人類の出生の秘密が
人間界に
根付き枝葉を伸ばし花開いていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1101
物語、もの・かたり。
物語は
なぜ作られ続けるのか


1102
言葉が遙かな始まりの動機を
深く沈めて
カラフルな言葉の家が作られ続ける


1103
おんなじようにぼくらの言葉も
深みから
日々出会い交差し別れをくり返す


1104
あんまり問われることのない
裏通りを
疾走していくものがあり太古の匂う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1105
物語の大まかな流れは
風景画の
輪郭のようにわかりはする


1106
わからない言葉野から
いくつかの
小道へ入っては踏み迷う


1107
風に揺れているイメージ野
を行く 時に
作者の足どりは杳(よう)として


1108
物語 世界は作者さえ
よく知らない
迷路に似て右へ左へ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1109
ふと背後が気になる
言葉が
ひとつの表情で立っている


1110
読まれる言葉の内には
作者にも
気づかれない言葉の気配もする


1111
気にもしなかった時代から
無性に
言葉が気がかりの通りに入っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1112
こっちこっち こっちだよ
手の鳴る方へ
ハイハイハイ こっちの水は甘いよ


1113
こっちはねひとの道
こっち以外はね
さびしいけど人は歩けないんだよ


1114
そっちを向いてもね
きみは人
ひとの言葉の道を歩いてルンバ!



詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1115
いやなことが枯れ葉のように
降り積もると
子どもは冬の予感 気づき始める


1116
立ち上がり歩くことを
気にもしなかった
日々が倒れ込んでくる 始まりの冬


1117
歩き疲れることが振り返る
ふりかえる
虚空の中足首が痛むばかり




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1118
車窓の風景から
次々に
振り切り許さぬ手が伸びてくる


1119
毎朝走り続ける
はしりつづける
無意識の内に寒さに身構えるよう


1120
それでも時にはゆったりと
足を伸ばす
きみは人間界の船に乗ってしまっている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1121
重たい心を抱えていると
言葉も陰り
よろよろと鈍色通りを歩いている


1122
あ 今日は好きなスイーツを
買って帰る
ひとり慰むこともあれば沈むこともある


1123
ここからは ああ あんなにも空は遠く
青く深い
にぎやかな一団が通り過ぎていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1124
部屋にひとり電波はつながっている
が切れている
切れて居るよ 透明な時間


1125
切れている つながりたいのか
わからない
時のアクの底の澄んだ部屋 青の時間


1126
歌でも息切れはする
息の合間に
ひとり足を抱えて座り遠くを見ている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1127
〈さびしい〉と〈うれしい〉は
手を取り合って
人類の終わりまで行くのかもしれない


1128
仕事が業態変更するように
〈孤独〉もまた
時代の顔とともに色を変えていく


1129
鋭いナイフのように
透き通った
孤独がぼくらの中に住んでいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1130
もう冬か 移りゆきはシームレス
でもバキバキと
どこか解体・建設現場のよう


1131
拾ったもの捨てたもの
そんなことより
年輪が少し増した感じする


1132
深みでは知らず知らずの内に
ぼくらの日々よ
宇宙がきらきら生動している




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1133
一日の道には未知に傾く
時にはある
道端の黄色の花にちょっと立ち止まる


1134
一日を計算し始めると
生涯が計量の
重たい縛り縛られに感じられてくる


1135
時にはさ鼻歌でも歌い
風景に
なじむように歩いていくんだ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1136
流れに小石をひとつ
投げ入れる
川の顔色がちらり変わったかな


1137
生きて在ることの関わりは
小さな
小石ひとつにもありありとある


1138
ひとつの言葉であっても
人と人との
関係の門を開け閉めしている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1139
言葉道を歩いていたら
「あ」石につまづいて
照れる「あい」のつもりが「えい」と力んでしまった


1140
煽り運転に遭遇して「愛」は
かたち成す前に
(あ あ あ ああ)と寸断された


1141
言葉道にも日は差し
風も流れる
いつもと変わらぬ歩みもある


1142
たまには飛び石みたいに
跳ねていく
あい あいうえ あいうえ あいうえ お




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1143
今日は違った道を
歩いてみる
見知った景色が少し新しい言葉道


1144
慣れた道の自然さから
少し外れると
久しぶりのひとに出会っている


1145
身も心もいつものみどり葉に
自然と浸かっている
停滞のようで微進




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1146
ほら透き通った水の
いい感触
言葉の川が今流れているよ


1147
気づかれない鼓動のように
人から
人へ無心に渡されていく言の葉裏


1148
きみのみずみずしい新しい
言の葉にも
古い手垢がいくつも付いてるよ


1149
独創というのはたぶん言葉の
可能性の
発掘者かもしれないな




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1150
言葉を揺らしたり
落としたり
今では割と自由に操っている


1151
遙か昔小さなわたしは
渡される
言の葉を知らず知らず何枚も食べた


1152
母を通して渡された
ひとの形の
言の葉には微かに見知らぬ響きがあった?




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1153
言の葉をやり取りする
葉裏には
互いに気づかぬ幻の線条があるみたい


1154
言葉には巨人の始まり
の一歩が
確かに深く刻まれてあるんだろうな


1155
不幸にも言葉たちは
反省期
に入り込んでしまっている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1156
だから「しみじみ」とか「さわやか」とか
言葉はもう
屈折して素直になれない


1157
実感が薄ーい言葉たちは
葉のあちこちに
ピアスを付け始める うー痛っ!


1158
印刷された緑模様のトレイ
に載せられて
物たちはイメージの舟と来る


1159
もうぼくらはフェイクとは思わない
人工の
自然にあちこちでなじんでいる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1160
「造花」が自然にしっくり
してきたら
ぼくらの心も「造心」へ衣更えしてる


1161
ほんとにこの世はシームレス
目新しいこと
重ね重ねて自然に頂に来ている


1162
派手な服着始めてから
時間の海に
きみもぼくも服になじんでいく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1163
初めて服を着始めた日
世界は
光ってぐらり傾いた


1164
長い時間の内に色褪せて
〈恥ずかしさ〉が
服の動機になってしまった


1165
現在から見渡せる
古い動機は
深く深く疑った方がいい




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1166
あらあ 何という様変わり
薄ーい宇宙服が
新しい時代を画する


1167
ぶくぶくの宇宙服は
展示館に
静かに安置されてしまった


1168
新しい宇宙服の秘密を
まとうことはなくても
日々時代に共有してる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1169
「いい風ね」と言われて
「ああ」と言う
風とことばに触れている


1170
「お月さんまん丸だよ」
「明るいわね」
静かな夜の言葉道


1171
古びてくる言葉道
乾いてる?
肌深くに水の道があるか


1172
例えばオウベイとか
遠い見知らぬ
二人の言葉道を思う




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1173
少年時それとは知らず
棕櫚(しゅろ)の葉に乗り
滑りに滑った言葉道


1174
何度も滑った棕櫚の
青い匂いは
言葉以前のことばの湯気が立っていた


1175
学校に取り込まれた少年は
少し堅苦しい
別の言葉道を歩いていた


1176
下ろし立ての靴が痛い言葉道
脇道に
枝葉が自由に繁っていた いい匂い




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1177
誰もが同じ言葉道
大道を
ひとりひとり違うリズムで歩く


1178
反発する・親和する渦中
ではなくて
中性の無意識的な顔に〈ひとり〉は埋もれている


1179
足を取られる言葉の草道
ほんとうは
太宰治の〈かくめい〉をつぶやき歩く

 註.
「じぶんで、したことは、そのように、はっきり言わなければ、かくめいも何も、おこなわれません。じぶんで、そうしても、他におこないをしたく思って、にんげんは、こうしなければならぬ、などとおっしゃっているうちは、にんげんの底からの革命が、いつまでも、できないのです。」(「かくめい」太宰治 青空文庫)





詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1180
自分から無限遠点へ
ふらふらと上昇していく
〈大宇宙〉に触れる揺れる青年期


1181
自分の洞窟深く
深く下りて行く
と世界は〈死〉の色に染まる青年期


1182
青年期と老年期が
この日々を
(慌ただしいな)とぼんやり見てる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1183
青年期と老年期からは
堕落に見える
壮年期黙々と前に進む


1184
〈死〉も〈大宇宙〉も
大文字で浮かんでは来ない
ふと見上げる中空に浸透している壮年期


1185
〈効率〉〈競争〉〈成果〉など壮年期の支配論理が
世界に波及する けれど
壮年のひとりひとりが風に流しているわけではない




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1186
行きがけには世界は
半顔しか
見せない記述できない


1187
半顔を世界の全てと
思い込む
青年期は時に若いねえと告げられる


1188
言葉で捉えるほかない
としても
知識だけでは全世界から弾かれる




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1189
「この知れ者め」とは言われない
だからますます
得意げに知の木登りしていく


1190
知に病む者も気づかない
あっ知知、と
巷に静かに帰って行くことはない


1191
知と地と血のにじむ関係は
架空の場所で
夢のよう 静かにおこっている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1192
(はるな愛さん激太り!)
「うそお」「どうして?」
CMの谷間からひとりひとりの時空へ静かに沈む


1193
テレビの人には違いないが
ゲイニンか
コメンテーターか? 脱領域・脱専門


1194
取りあえず要らないものが
満開だ
例えばはしゃいでるテレビの中 白骨の御文




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1195
電波でつながっている
テレビの内
と茶の間 霧のロンドン


1196
双方向で視聴者アンケート
トルトルト
トトロがテレビの外を通る見える


1197
ぼおっとテレビに見入ってる
溶け込んでる
ガクッと目覚めてテレビの内を思う


1198
編集・構成は流れ出る
テレビの内から
人人人の顔・声・身ぶり




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1199
流れ来る流れ出す
意図を超えて
時にはぼうっとしてる いい天気だ


1200
ぼうっとしてる中には
アリさんも
ねこも何やら動いて見える


1201
えっとええっと それは
ぼうっとした
世界から社会に出向こうとする言葉




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1202
大好きな食べ物ではない
としても
毎日毎日食べている


1203
公表する意見がなくても
会議に
いつものように出ている


1204
書くことがもうすっからかん
になっちゃった
と思っても自然と湧水する




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1205
今の子どもは山や川には
行かない
どこへいってしまったか


1206
おじいさんは山に行かない
おばあさんは
川に行かない どこへ行ってしまったか


1207
若者が家にいる
壮年も
家にいるずっと家にいる


1208
こもよみこもよこもりぬの
こもりくは
ふと差す日差しさえまぶしいぞ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1209
雲ひとつない晴天の
海に浸かる
ゆらゆらと深みにまで下りて行く


1210
墓石の間からぼんやりと見える
青空に
(ああ世界がある 世界が呼吸している)


1211
視線を静かに収めて
ゆっくりと
家の方へ下ってゆく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1212
深みに下ってゆくと
区画された
世界の方から一色(ひといろ)の匂いする


1213
あめがやんでる医者もヤンデル
異国の
ヤンデルセンもやんでる21世紀


1214
社会がやんでる国境がやんでる
行き来する
人がやんでる止まないヤンデル時代


1215
やんでる兆しはわかっても
脱出口が
よくわからない疲労野ヤンデル世紀




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1216
毎朝飲む薬残り少なく
なってきた
(病院に縛られてるな)と思う


1217
命拾いしてしまった
けれども
悔い改めの日々ではないよな


1218
月一の病院の
窓から
見上げる (空が青いなあ)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1219
学校や会社を抜け出して
言葉や音の森
に入り込めばきみはもう世界の主人公さ


1220
モチーフは日々積み重なる
もやもやの
時間の沼地に足を取られる


1221
数々のまほうの言葉
を繰り出すも
背後の世界が後ろ髪引く




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1222
〈かくめい〉の道は途絶えて
五里霧中
長さん刀はいけねえよ


1223
「小国寡民」「ユートピアだより」
遥か古代からの
〈かくめい〉の危うい道筋がありをりはべり


1224
小さな善や悪を制圧する
革命は
人間の本性の大道をはずれてしまう


1225
革めいもはるかな後方
埃かぶった
書物の中に横たわっている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1226
数々の革命論は
八百屋の店先に
倒れ伏し葬送されることがない


1227
明るくきれいになった
都市の通りを
老いた革命論の言葉もよろよろ通る


1228
〈かくめい〉って何?にぎやかな
通りの
若者たちがちら見して去る


1229
〈かくめい〉は今日の箸の
上げ下ろしにも
他者へのひと言にも トウダイモトクラシー


1230
〈かくめい〉は ほらほら
人類の
人間性の年輪に深く眠っているよ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1231
いろんなものが絡み合う
曇り空の
海辺には言葉の舟はつながれたままの


1232
ままよ火急の催促にも
kazega・・・と
言葉の舟は揺れるばかり


1233
はかり得ぬ言葉への水圧に
言葉は
からだを揺れ揺られ揺する


1234
ゆれる前方に不知火のよう
イメージの
連なりが立ったら言葉の舟は出航だ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1235
荒れた畑を開墾しつつ
ソラマメを蒔く
時間の枠の中で手足頭が没入してる


1236
焦りはない時折言葉の
泡も立つ
仕事?の内に溶け入っている


1237
今は社会の圏外に
言葉はいて
足を投げ出しくつろいでいる


 d





詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1238
音がする と立ち上がって
(何でしょうか)
と言葉がドアを開ける


1239
眠っていたわけではない
部屋の内に
言葉はくつろぎ歩き回っていた


1240
向こう 人が歩いている
歩いている
言葉は部屋からズームズーム・イン




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1241
太古の糸は実感がわかないけど
無意識みたいに
現在の関係の糸を上り下りしている


1242
いとをたぐり寄せたり退けたり
紡いだりして
呼吸している いい気分って大事だね


1243
狭いうるさいひどい信ジラレナーイ
世界だけど
住み慣れてしまったし ほら夕焼けがきれいだね


1244
人間界の関係網の
圏外に出ると(冷やっ)
大いなる自然からも太い糸が伸びている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1245
純度を上げていけば
苦しい善
純度を下げれば絶望の悪 人間界よ


1246
言葉が出自を忘れ
遊行する
純度を明示できないところに現世はあるぞ


1247
止むに止まれぬたましいは
あくがれ出でて
例えば〈フリン〉という善悪の岸辺に立たされる


1248
小さい子は泥まみれで
現世を遊ぶ
ぶんぶんひゃらりこひゃらりこ 善悪の外




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1249
静かで穏やかな青空
の下には
シンパイ・アリサも歩いてるんだろうな


1250
アリサも冬に下って行く
くよくよしても
よくならないわと思いつつもクヨクヨする


1251
青空の下のコロナの存在
が信じられない
とつぶやいてシンパイ・テイシが去る


1252
心ころころころがって
入り込んでいく
重たい夜の予感悪寒のアリサ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1253
わたしたちの〈信〉の起源は
あの遙かな胎内の海原にあり
と深みに上り詰めた吉本さんは語った

註.吉本隆明『ハイ・エディプス論』P36-P39 言叢社


1254
あらゆることがこの現在のみ
で判定される
うなだれ引き返す沈黙たちがある


1255
現在の〈批評〉は 遥か
人や世界の
無意識層まで潜って帰る うっぷ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1256
良い加減に入らないと
アッチッチ!
言葉も火傷する


1257
いつものように自然に
言葉の足を入れた
ひゃっ!水が溜まってる


1258
言葉の流れにも
びみょうな
さじ加減の塩梅がありをりはべり


1259
火傷しても凍えても
時には
真っ直ぐ突き進むこともある 言葉よ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1260
雨あられ降る日には
身を屈(こご)め
内に小さな火は燃やして歩く

1261
古いなあと次々と
着せ替えられる
言葉の芯は数万年もの


1262
古い新しいの谷間
に湧いている
湧き水を飲んでみる ううむ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1263
赤ちゃんの言葉の服は
お仕着せ
でも内からあぶあぶ湧いてくる


1264
壮年の言葉の服は
流行に敏感
どんかんあきかん蹴散らし進む


1265
老年の言葉の服は
よれよれだ
だからなんだとツッパリも潜む

1266
し、しっ! しが通っているよ
生きてあるものみな
しを背中にダンスダンスダンス




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1267
昨日の〈あ〉とこの〈あ〉とは
少し違う
異同が二筋に棚引いている


1268
今度こそはと〈痾〉に変身し
臨んだら
〈暴〉は凪いだ〈好〉で現れた


1269
〈あ〉がいつものように踏み出すと
信号が黄から赤へ
遮断されて立ちつくす〈あ〉




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1270
テレビドラマを観ていると
〈あ〉の所で
涙がにじむ観客のわたし


1271
自然に涙にじむ物語の
丘向こうでは
作者の自然な技が掛けられている


1272
作者も観客も
越えた峠に
にんげんの涙の川が流れている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1273
スマホやカーナビ時代
旧来の
道案内は細々と生きのびている


1274
英会話の道案内は
まだ昔のまま
改訂されずに閉じられている


1275
(ああ)(うん?)(ええっと)
(そうですか)
じゃあ行ってみますありがとう




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1276
二昔前は川で洗濯していた
今はもう室内で
ひとりつぶやきながら洗濯している


1277
ver2.0が主流をなす
丘のふもとでは
ver1.0が足投げ出してくつろいでいる


1278
システムが変位する
奥深く
キシキシキシと軋み姿形を変えていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1276
二昔前は川で洗濯していた
今はもう室内で
ひとり鼻歌歌いながら洗濯している


1277
ver2.0が主流をなす
丘のふもとでは
まだver1.0が足投げ出してくつろいでいる


1278
システムが変位する
奥深く
キシキシキシと軋み姿形を変えていく




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1279
ふと見渡すと(ずいぶん変わったなあ)
と巡る視線がある
自分もまだらになっている


1280
時間のトンネルの中では
せわしくて
気づかないなあ (あら店がなくなっている)


1281
内に寄せる小さな波の
数々
気づきは自然な感触の流れに眠っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1282
小石をそうっと置いてみた
と 流れ出す
微かに新しい世界の匂いがする


1283
傍目から大石を抱え
移し積む
イメージの道には立ち入らない


1284
小石の中にあらゆるいしが
詰まっている
いしを超えたいしがある




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1285
百鬼夜行の通りを
今歩いている
歩いているんだな


1286
そんなつもりはなくてもつもりつもる
積圧に
暴発しないとすれば すれば


1287
時間の揺らぎの中
Kのこころが
通りすぎていく そのしんとした背中よ




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1288
ふと 深い井戸へ舞い落ちていく
恨みの皿の
こなごなに割れる音がする


1289
今はもう(いちまぁい、にまぁい、さんまぁい・・・)の
つぶやきしずめ
抽象の階段を上ってゆく


1290
ああ こんなにも
空が青い
言葉が目に滲(し)みる


1291
言葉の滴が滲みてくる
心は
しいんとした大空に響き渡るものを聞いている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1292
例えばそこに行かなかった
行けなかった
行こうと思いはしたが行かなかった


1293
〈行かなかった〉は事実である
あるあるある
複雑系のかなしいアルルカン


1294
事実が冷たく横たわっている
と見えるかもしれない
ほんとは事実は心と同じにもやもやしている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1295
きちんと織り畳まれた
事実の手前で
沈黙が行ったり来たりしている


1296
事実の絶対性って
カフカの城みたい
近づく者を退けそびえている


1297
事実と事実をつなぎ
合わせられると
罪の匂いが立ち上る




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1298
人は人間の囲いのなかで
生きていく
ようになってしまったしまった


1299
閉まってしまったからには
良い呼吸
できる空気と風とが社会には必要だ


1300
囲いのなか不幸なネコも人も
凍える夢に
遠い危うい野生の自由を夢見ているか


1301
遥か遠く歩み始めた
分かれ道
(もう戻れないわ)(戻れないね)




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1302
全体から見て人のせい
にもできない
自分のせいにもできない うっ


1303
溶け合って分離できない
沼地に住む
われらは切るに切られぬ絆人


1304
小さなもやもやの
上の方
世界がそびえ立っている


1305
宇宙の方にも
飛んでいく
このもやもやもやの泡




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1306
今日新しい言葉を拾った
「キス・アンド・クライ(Kiss and Cry)」
女の幸不幸かと思った


1307
何度もやり取りして
覚えたての言葉
に湯気が立つ アーちゃんよ


1308
仕入れた記憶は遠くアイマイなのに
あらあら
みんなが言葉人間になってるよ


1309
ひとつひとつのキス・アンド・クライの不安
を超えて
人間界も大いなる自然界もただ無言で光り点っている




詩『言葉の街から』 対話シリーズ


1310
閉じた窓の熱ある二人の
小さな世界も
巨大飛行船の振動に微動している


1311
人や世界の曲率を
振り切って
対立・抗争・疾走することはできる


1312
振り切っても振り切っても
この世界の
固有の曲率は突き進んでいく


1313
したがってあなたやわたしのドラマには
見えない所で
この世界がざっくりと交差している




詩『言葉の街から』 新年シリーズ


特別にあたらしいことを
と焦らなくても
そのうちにドアの前に立つものがある


ふいと現れる他力
と自力が
語り合い未来の形が芽ばえる


微妙な感じ考えのみち
びみょうな
さじ加減の力が配分される


いつもの言葉のみちから
なかなかに
良い塩梅にとはいかないなあ あっ辛





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